青山文平のレビュー一覧

  • 白樫の樹の下で

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    内容(「BOOK」データベースより)
    いまならば斬れる! 人を斬ったことのない貧乏御家人が刀を抜く時、なにかが起きる――。

    幕府開闢から180年余りが過ぎた天明の時代。江戸では、賄賂まみれだった田沼意次の時代から、清廉潔白な松平定信の時代に移り始めた頃。二本差しが大手を振って歩けたのも今は昔。貧乏御家人の村上登は、小普請組の幼馴染とともに、竹刀剣法花盛りのご時勢柄に反し、いまだに木刀を使う古風な道場に通っている。他道場の助っ人で小金を稼いだり、道場仲間と希望のない鬱屈した無為の日々を過ごしていた。ある日、江戸市中で辻斬りが発生。江戸城内で田沼意知を切った一振りの名刀を手にしたことから、3人の

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    2021年03月02日
  • つまをめとらば

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    表題作「つまをめとらば」ほど、等身大の人間が描かれた作品は無い。
    等身大に描くというのは、何もかもを剥き出しにすればよいというものではない。それは、誰もが普遍的に胸に秘めた、しかし言語化することは難解で、上手く形容し難い《なにか》を、数多もの語彙を用い、緻密に構成した《物語》という媒体に落とし込むことでようやく表現することが可能となる。それはどう足掻いても不完全にしかなり得ないが、完全ではないという事実が、作品への印象を玉虫色に染め上げる。この作品を「赤」と思う方もいるし、「黒」と思う方もいるだろう。はたまた「赤っぽい黒」「青っぽい緑」「白とも赤とも青ともいえないような色」など、表現することが

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    2021年02月08日
  • 鬼はもとより

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    貧乏藩の藩札の話。
    自らの藩を守るために藩札を出して財政的に凌いだもののやがて野放図になり失敗したことを忸怩たる思いを抱いて暮らす主人公と武家として商売に精を出す後見人が、本当に貧乏に喘ぐ藩に招かれ、見事に再生する話。
    物語としてはかなり都合よくできているが、貧乏藩の家老の決意とその心情に心打たれる。
    一名を賭して藩の改革に挑む家老の覚悟とその仕様に泣かされる。最後まで読んで題名が府に落ちた。
    面白かった。

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    2020年04月12日
  • つまをめとらば

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    非常にしっかりした、丁寧な作品だと思った。文体がきれいで、かつ余計な部分が無く、落ち着いて読めるのが気持ちいい。内容も大人で、40代中盤の今読むと味わい深い。良作だと思う。

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    2020年03月14日
  • つまをめとらば

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    時代ものの短編集。男女の縁があったあと、どうなったかが色々なパターンで書かれている。設定がきっちりしているためか、1つ1つの編に読みごたえがあって楽しい。
    下手をすると一揆になる藩の飛び地に一人で赴任する「ひと夏」、亡くなった妻の書いた本を読むか悩む「つゆかせぎ」、妻目線の悩みが書かれる「乳付」辺りが印象に残った。

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    2019年10月12日
  • 半席(新潮文庫)

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    父は、御目見以上の役に就いて旗本になったが、その後役を解かれて御家人に戻った。一代御目見以上だった。片岡直人は、今の半席の状態からもう一度御目見以上になり、子も生まれた時から旗本である永々御目見以上になるのをを目指している。今の徒目付は、そのための腰掛のつもりであったのだが、次第に徒目付の表の仕事はもとより、徒目付組頭の内藤正之から押し付けられる幾つもの裏の仕事に魅力を感じていく。この裏の仕事とは、決着がついて刑が決まったしまった科人が、なぜそんな罪を犯したか明らかにするというものだ。謎を解くための着想を得る過程が、なかなかに面白い。その中で、片岡は成長していくのだ。片岡の心の動きを読んでいく

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    2019年06月30日
  • 半席(新潮文庫)

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    半席の身を脱し勘定役へと転身し旗本格を得たいと考えていた主人公が、徒目付での上司である内藤の「たのまれ御用」を努めるうちに、武家社会の摂理を自ら感じ取っていく目付の仕事に魅了されていくお話。

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    2019年06月11日
  • 半席(新潮文庫)

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    良い本だった。
    各編の最初の組織、役職の説明はなかなか頭に入らない所もあったが、ストーリーは見事なものだった。
    とりわけ「六台目中村庄蔵」には、グッとくるのがものがあり感動させられた。
    本書で青山文平は見事な作家だと再認識した。

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    2019年04月15日
  • 白樫の樹の下で

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    剣の道に生きることで未来を切り開いて行こうとする
    幼馴染の貧乏御家人3人
    その純粋さゆえに壊れてゆく。

    1本の刀と出会ったことで転がりだす過酷な運命

    青年たちの必死さと純粋さがヒリヒリとする1冊

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    2019年04月11日
  • つまをめとらば

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    太平の世、江戸時代
    下級武士たちの恋と友情、生活を描いた短編集

    時代は変われど、男女の仲は同じ。
    どの話もちょっと捻った終わり方が楽しい

    ふわ~っとした読後感

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    2019年03月27日
  • つまをめとらば

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    ひともうらやむ、つゆかせぎ、乳付、ひと夏、逢対、つまをめとらば
    の6編。
    どの作品もなんとなくさわやかな読後感が残る、柔らかい春風のような読み終わりだった。
    いい作品集だった。

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    2019年02月25日
  • 白樫の樹の下で

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    時代小説ながら、途中までのミステリー感はすごかった。これが最後まで続けば文句なしの五つ星だったが。。ミステリーなしとしても、一人の青年の成長の物語として読み応えがあった。

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    2018年10月17日
  • 鬼はもとより

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    本の表紙に惹かれて買った。
    なぜこの表紙、題名なのか読み進めて行くと分かり、胸が締め付けられる。泣いた。久々にいい本に出会えた。

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    2018年09月19日
  • つまをめとらば

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    苦手な時代小説だけど、直木賞受賞作ってことで。結果、これは比較的好きな方。短編集だけど、表題作が特別出来が良いってことはなく、全般的に質が高かったのもポイント。タイトルが示す通り、結婚や離婚を題材に据えた物語が並ぶんだけど、そんな中、系統を違えて提示されているのもお見事。

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    2018年06月14日
  • 鬼はもとより

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    ネタバレ

    藩札の専門家として自藩を立て直せなかった主人子が、財政難の藩を救う話。最初は「?」と思ったけどあっという間に引き込まれて読んだ。タイトルもうまいと思う

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    2018年04月09日
  • 鬼はもとより

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    司馬遼太郎や山本周五郎にも、ひけを取らない文章を書く作家に出会った。昨今、時代小説を書く作家は多いが、これほど言葉が、文章がインパクトを持って心に沁みた作家は初めて。香り立つ文章と言ったところか。
    話も武家にしかできない藩建て直しの財政問題を感動的に描いてくれて、また一人、お気に入りの作家が生まれた。

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    2018年01月19日
  • 鬼はもとより

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    派手でダイナミックな戦国の世を舞台には選ばず、小難しいイメージのある「経済」をテーマにした時代小説ということで、読む前はお堅い地味な作品なんじゃないかと不安だったのですが、心配は杞憂に終わりました。とても面白かったです。藩札という恐らく誰も取り扱ったことのないであろうものを主題に据えた作者の勝利だと思います。
    美点はいっぱいあって、抄一郎が現代でいうところの敏腕コンサルタントとなっていくまでの成長過程も良かったですし、最貧藩の立て直しにかける清明の命懸けの覚悟がもたらす緊張感も読みごたえがありました。現代の経済政策への批判的視点があるのもいいですね。馬鹿の一つ覚えのようにお札をじゃぶじゃぶ刷れ

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    2017年11月19日
  • 白樫の樹の下で

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    時代ミステリーの形をとっているが、いろんな読み方ができ、作品の主題も人によってはいろんな風に捉えるのではないだろうか。

    現在にも通じる格差と貧困、若者のアイデンティティ探し、友情とは?様々なテーマを含んでいるので、読む人によって違う読み方が出来るでしょう。

    文章が良いので非常に読みやすかったのですが、もう少し書き込んで欲しいところもあったかな。

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    2017年08月05日
  • かけおちる

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    ネタバレ

    2016/12/4
    カット中読んでたら美容師さんに
    「どんな本ですか?」と問われたので
    「あまり何も起こらない時代小説です」と答えた。
    あとがき読んだらあながち間違いでもなかったな。
    最後の岩淵家老が素敵だった。
    こういう人に弱い。

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    2016年12月04日
  • 白樫の樹の下で

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    未来の展望が開けない青年たちの夢をかけた、切なくて苦しい青春時代小説。悪政で有名な田沼意次の時代から、松平定信の時代に移り始めた頃の江戸が舞台。御家人の村上登は、道場仲間と貧しいながらも、清浄な武士への鍛錬に勤しむ日々を暮らしていた。そんな時手にした一振りの名刀が大きく三人の運命をかえていくことになる。。本作品、友情と反目、はかない恋など時代に翻弄された士分たちの心の機微を巧みな言葉とともにあぶり出しつつ、辻斬り犯を巡るミステリアスな面など多彩な要素を含む。がすべての要素は、天下泰平の時代に巣くう”貧困”の一点に集約されるよう区切りなく物語は進んでいく。それにしても精緻なロジックと貧困がもたら

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    2016年04月30日