青山文平のレビュー一覧

  • かけおちる

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    ネタバレ

     時代小説家は、『キャラクターの心情を3文以上記述したら血を吐いて死ぬ呪い』にかかってるのか?
     とまで疑ったくらい、前に読んだ『海神の子』が悲惨な出来だった。だが、その疑念は杞憂に過ぎなかった。

     本作は、時代
    背景に即した、血肉のかようキャラが描写されている。
     タイトル通り、かけ落ちした、武士の妻、そしてその娘がでてくるお話。
     といっても、女性視点は謎解き的にでてくるだけ。
     殖産に賭ける下級武士(事情もち)とその娘婿がメインキャラ。

     かつ、読者は『各キャラの述懐』を総合することで新たな光が当てられ、主人公・阿部重秀と同じような新鮮な驚きが、味わえる。
     時代小説読みなら知ってて

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    2022年03月28日
  • 鬼はもとより

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    江戸時代の地域経済問題についての小説はほとんど読んだことがなかったが、着眼点もストーリーもとても面白かった。価値を生み出す農産物などがない貧しい藩がどうやって困窮から抜け出すのか、その実現に向けた武家の矜持。今の世の中にかけての感想評論など多くあるが、本当にやるべきことをいかにできるか、その覚悟がタイトルにあり後半の物語で進む。

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    2021年10月10日
  • 遠縁の女

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     このミス2018年版7位。100頁弱の短編?3編からなる短編集です。すべて、江戸時代の同時期の話でテイストは同じですが、主役はそれぞれ異なります。で、とにかくこの本凄いです。3作とも素晴らしい、というか完璧です。最初の2作がストレスなく読めてとても面白く、表題作が最後に残されておりすごく期待します。表題作は途中までは、なんだ尻つぼみかな、と思ってたら、ところがどっこい最後に鳥肌たちます。
     全編無駄なく研ぎ澄まされた文章で表現能力が半端ないです。三浦しをんとかのお仕事小説にも通じるんですが、全く初めて接する江戸時代の風俗や仕事を、ほとんどなじみのない単語を使いながら端的に理解というか、その場

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    2020年06月30日
  • 鬼はもとより

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    藩札で藩の経済に取り組む物語ですが、武家の矜持の一端を教えられました。「考えても分からぬときは軀に聞く」「たかが力不足なんぞの理由で、力を出せぬのが罪なのだ」
    続編を読んでみたいです。

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    2019年03月12日
  • つまをめとらば

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    藤沢周平に負けず劣らずの素晴らしい内容。男女の機微を会話の中に上手く入れ込んでいて、いたく共感出来る。

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    2018年10月06日
  • かけおちる

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    ネタバレ

    先日直木賞を受賞した青山文平の「かけおちる」を出張中に読んだ。

    時代は寛政期で、西暦で言うと1789年から1801年と、江戸時代のそろそろ後半だが、まだまだ開国の機運も全く無い「江戸時代ど真ん中」である。江戸時代は恐らく日本の歴史上最も何も無かった時代のように思われ、私も殆ど印象が無い。その時代を背景に描かれたこの「かけおちる」は、そんな江戸期の恋愛小説というか、人を愛するというのはこう言うことなのかな、と言う小説だった。

    主人公である阿部重秀は、東北の小藩である柳原藩の、齢六十手前の執政である。執政とはその藩の職位の中における家老・中老に次ぐ地位を占める、藩でも相当上位の行政官だ。元

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    2018年01月15日
  • つまをめとらば

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    江戸あたり、お武家男女の心理戦六篇。
    各編主人公たちがイイ男だと思えるのはあまり武家武家してないからかも(なにそれ

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    2025年11月18日
  • 下垣内教授の江戸

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    青山さんの本ということで期待して購読。幕末から明治初期にかけての横浜〜多摩地区が舞台。昭和初期の美術界の大御所と言われる下河内先生だが、幕末には人を斬るための旅に出ていたという。どうしてそうなったのかを自叙伝に語る内容なのだが、真面目、誠実、一生懸命に生きる人々と、保身、金儲けに走る人々の対比が上手く、弱い方に味方してしまう読者としては切ない。米や反物といった「物」から、「金」の社会に移っていく様子、それに翻弄される市井の人々が描かれているが、現代も「金」「映え」「コスパ」などに振り回されていることを暗喩しているようにも読める。

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    2025年10月01日
  • 江戸染まぬ

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    青山文平さんの著作はこれが初めてな気がするけれど、文から立ち現れる独特の温度感に、人肌くらいに冷めたお茶を飲む時のような心地よさがあった。

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    2025年09月26日
  • 鬼はもとより

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    面白い!時代物ということを忘れてしまうくらい読みやすく、キャラクターも良い。武士という設定を非常に上手く伝えているし、ストーリー展開も立体的で引き込まれるものでした。
    これを読んだ後に「妻をめとらば」も読み、改めて引き出しの多い作者だなと感服しました。

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    2025年09月09日
  • 本売る日々

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    ネタバレ

    医は一人では前へ進みません。みんなが技を高めて、全体の水準が上がって、初めて、その先へ踏み出すものが出るのです。そのためには、みんなが最新の成果を明らかにして、みんなで試して、互いに認め合い、互いに叩き合わなければなりません。

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    2025年09月01日
  • 本売る日々

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     江戸時代の後半、主人公・平助は本屋「松月堂」を営み、城下から在郷の名主らに本の行商に出ます。舞台が華やかさと無縁の村なのが特徴的です。
     平助は、人気の読み物などは扱わず、学術書にこだわる矜持をもっているのでした。異問や謎を、本を介して解き明かしていく3編の連作物語です。

     単なるエンタメやミステリーではなく、本が生活に根差し暮らしを支えていた情景が浮かびます。本を愛し知識を求める人々の個性が豊かで、当時の本を作る・売るという様子を知り、さらに本の世間への浸透や寄与を想像するよい機会となりました。

     作中に出てくる多くの言葉へも共感が多かったです。特に、「本は出会いだ。蔵書は出会いの喜び

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    2025年06月26日
  • 本売る日々

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    本屋で見かけて一度は手に取ったものの、(いやいや積読半端ないし)と諦めた。
    しかし、やっぱり気になる。
    えーい、今買わねば後では出会えぬやもしれぬ!と購入。

    買って良かった。
    惣兵衛さんの御新造さんの森と里の際の話、これは自分の場合はまさに子供と社会との関わりについても言えるし、名主がなぜ国学をやるのか、についても考えさせられた。他にもあるを信じられることで楽になる、というのは実感してるからなあ。諦めるわけでも見放すわけでもない。
    だけど、他があると思えることでちょっと楽になることはある。

    今の自分にとって、何か種を植えてもらったような、そんな本だった。

    気になったのも、このタイミングで

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    2025年06月15日
  • 父がしたこと

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    ネタバレ

    とても読みやすく良質な作品である。ビックリした。が、御殿様の妄言とは何だったのか?? 作品内でヒントがあったのかな?他の方のレビューを読んでも考察などが見つからない。ということは私の読み方が浅いわけではなく、読者の想像に委ねられているということだろうか。
    私の頭に浮かんだのは、御殿様は元重さんを禁じられた意味で愛しており、元重さんもまた心の内で愛していた(それ故に彼の痛みを感じることができた)という説しかない…。

    元重さんは、心の深いところで家族よりも誰よりも御藩主を愛してしまったこと、それが痛みの共有という形で証されていることを畏れ悩み、また御藩主に立派になってほしい気持ちと、自分が彼の愛

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    2025年06月07日
  • 伊賀の残光

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    2025.04.19
    謎解きの要素も味わいながら、なおかつ、最後にも謎が残るところがよい。
    隠密働きの詳細をいろいろ想像してみた

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    2025年04月19日
  • 半席(新潮文庫)

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    2025.04.16
    人間の「青くささ」はいつまで許されるのか、あるいは、いつまでも「青くさく」いるべきなのかを考えながら読んだ。

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    2025年04月16日
  • 春山入り(新潮文庫)

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    2025.04.11
    いずれの作品も終わり方が良い。余韻と謎を残しつつ終わるイメージ。
    特に「約定」は良い。人にとって「覚えておくべきこと」と「忘れること」「忘れるべきこと」こういった差異について考える機会となった。

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    2025年04月11日
  • 下垣内教授の江戸

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    正史には残らない市井の幕末。あれだけの混乱期、それはそれは色々あっただろう。幕府は倒れるべくして倒れた事が腑に落ちたし、混乱を乗り越え我が道を進んだ美術家もいたんだ。阿片戦争、アロー戦争のイギリスの非道ぶりに「よくもあれだけの不正義を抜け抜けとやるものだ」NHKの映像の世紀見たあとだけに驚かないが、今まさにアメリカが傍若無人に…なのに皆マヒしつつある…

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    2025年02月20日
  • 下垣内教授の江戸

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    三人の人を斬った兄の気持ちを知るため、下垣内教授は手練れ浪人を探す旅に出るのだが…彼が出会った剣の手練男と白根山の絵画との奇縁に心を打たれた。美しさと哀愁を帯びた物語。

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    2025年02月17日
  • 下垣内教授の江戸

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    目には入っていても、見てはいない。何につけ、見落として見ていないと、何も見えてこない。
    何より大事なのは、今を生きることだ。死んだ者への高校は、生きているものの将来を損なわいやすい。後ろに引かず、前へ進め。気持ちの持ち方次第で景色がガラッと変わって見えることがある。

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    2025年01月31日