【感想・ネタバレ】父がしたことのレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

 主人公・永井重彰の父・元重は、御藩主の世話をする小納戸頭取。ある日その父から、御藩主が内密に外科手術を受ける、と聞かされる。執刀するのは、全身麻酔を扱う町医・向坂清庵。実は向坂医師には、重彰の嫡子・拡の命を救ってもらった経緯があり…。
 結末はあまりにも想定外の結果で、しかしそれぞれの人物の“命”をかけた物語が、とても良かった。藩主と家族の両方を守った元重は、「武士の鑑」だと思う。

0
2024年05月14日

Posted by ブクログ

一気読み。参勤交代で痔になる大名。初耳。大変だ。エコノミークラス症候群も多発していただろうな。「父のしたこと」まったく肯定できないが、それが忠臣という時代…。それにしても、あまりに実直…。教科書でしか知らない江戸時代の蘭方医が、生きた“お医者さん”として目の前に。資料探しも大変だったろうな青山さん。次も楽しみ。「守旧のためなら捏造でも誣告でもなんでもする妖怪・鳥居耀蔵」「人はいったん相手を敵と識別すると、とことん残酷になれるものらしい。己の酷さに昂るらしい。それが武勇伝にさえなるようだ」「藩士に動き癖をつけてはならぬ。動けば出世できるのが前例になれば、次の藩政の曲がり角でも必ず動くものが出てくる。あるいは、次の曲がり角を待ち切れずにみずから曲がり角をこしらえようとする者も出て来る」

0
2024年02月23日

Posted by ブクログ

物語の前半はちょっと読みにくい、ちょっとこの世界に入りにくいところもあるが、中盤以降は青山文平ワールドに浸ることができた。青山氏の本は残らず読んでいるが、今回も期待に違わず最後まで一気読みしてしまった。
隠居した父の年齢を超えているせいか、主人公よりも父に感情移入するところが多かった。
願うしか救いようがない時に禁句はない。謀るのは好まぬが、謀なければならぬときには能く謀る。

0
2024年01月28日

Posted by ブクログ

初青山文平。
久しぶりに、華岡青洲の「麻沸散」(全身麻酔薬、通仙散)の文字を見た。
史実を土台にした医療時代小説だけど、本筋は武家小説。
気になって、いろいろ考えてしまった。
藩主の妄言とは?どこの藩?
向坂先生は気の毒だとか。
関係ないけど、
華岡青洲の直系の子孫は東京で歯科医院を営んでいる。

0
2024年04月08日

Posted by ブクログ

「本売る日々」に続いて2冊目の作品。武士としての生き方の第一はなんとしてもその当主を守ることなのかなと感じました。自分の家族よりも重き置くというのは、現代社会の価値観で考えると理解に苦しむ一端もありました。私息子も先天性の腸の病気があり、この時代に生きていたら、とても耐えられない状況に置かれたのかなと思います。鎖肛の孫や息子を護ろうとする凛とした女性たちの生き方には感服しました。

0
2024年03月23日

Posted by ブクログ

藩主の痔瘻の治療や新生児の鎖肛など、肛門の話を扱った小説は稀でありながら興味深く読ませてくれた。
御城の小納戸頭取を勤める永井元重は、藩主より絶大な信頼をよせられていた。藩主の治療に必要な麻酔は、この時代には蛮夷として忌避されていたが、医師の向坂清庵は痔瘻手術に麻酔を使ったのだったが…。
藩主を思う元重は様々な思惑、恩義、葛藤を抱えていたが、譲れない事象の為に家族の思いを裏切り自戒の念に苛まされる。
苦しみながら父がしたことを捉える息子の心情が、感情を抑えながらも沁みるように感じさせる結末だった。

0
2024年03月05日

Posted by ブクログ

タイトルに惹かれて手にした
みんな立派過ぎて・・・
感嘆しかない
それでも、そうしないといけなかった??
それが悲しい

0
2024年03月02日

Posted by ブクログ

譜代藩の譜代筆頭の家に生まれ、一旦はともに医師を志した父子。

藩主と我が子の恩人である蘭方医を山の事故で失い、一家の柱となる母を卒中で亡くし、更に隠居したばかりの父も海の事故で亡くすという悲劇を続けざまに経験し、その中で父が果たした役割を知った主人公は、自家で武士であるとはどういうことかを痛切に理解し、別の道を選ぶ。

静かな佇まいの中、武家の覚悟を感じる味わい深い一品。

題名は地味すぎるきらいがある。

0
2024年03月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「父がしたこと」

タイトルに惹かれ
読む前から(父は何をしてしまったの?)と
気になって仕方がない。

青山文平さんが描く世界だから
「父のしたこと」の大きさは
とても許されることではないだろうと予測はつく。

蘭学排撃の嵐が吹き荒れる中
藩主の病の治療は外科手術で行われることになった。
当時は漢方医が主だ。
手術で藩主に危機が及べば一大事。
相当な覚悟が必要だったと思う。
どのように蘭方外科が成ってきたのか。
丁寧に書かれているのでその歴史も知ることができる。

曲がらぬ一本の筋。
ときには、それが厄介なのだと改めて思う。

0
2024年02月15日

Posted by ブクログ

藩主の手術に秘密裏に麻酔を使うことを決めた側近、江戸時代の蘭学の位置。

物凄く渋く、江戸時代蘊蓄に溢れ、意外なラスト。良かった。

0
2024年02月07日

Posted by ブクログ

っぽく無いタイトルですが、生粋の時代小説です。
英邁な藩主。その身の回りの世話をし、藩主からの信頼の厚い小納戸頭取の父。そして目付の主人公。藩主の持病は痔。領内に住む蘭学の医者に全身麻酔下での手術を受け、成功するのだが・・・。
痔、あるいは主人公の子の鎖肛(肛門が生まれつきうまく作られなかった病気)と、蘭学に関係して下半身の病気を取り上げたのはなかなか面白い試みです。
相変わらず厳しい文体で、武家の生き様を描いていきます。父と子のみならず、母や嫁も、みな異常に張り詰めている感じです。そして、他に登場する脇役(武士以外)たちも悪人が居ないというばかりでなく、弛緩した人物が出て来ません。もともと奇矯と言っていいほどの武士の倫理観を描くのが得意な青山さんですが、ちょっと行き過ぎかも。デビューして10年以上たち、もう少し肩の力の抜けた作品が出てきても良いような気がします。
一種のサスペンスドラマで、最後に謎解きがありますが、少々無理があるかな~。

0
2024年01月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

いかにも青山文平らしいというか…
でも、納得いく結末かと言われれば、ちょっと。もし、本当に「父がしなければならなかったこと」だとしたら、真相は息子にも書き置くべきではなかったのでは(それでは小説にならない、というのは置いとくとして)。

0
2024年04月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

目付の永井重彰視点で語られる静謐な物語。
蘭方が認められ、発展し始め、漢方医からの反発が強まるなかで行われた藩主の外科手術。執刀医の向坂は重彰の息子の恩人だった。藩主の信頼厚い小納戸頭取永井元重は、失敗したときに孫の恩人を守るため、策を巡らし、息子と二人だけで藩主の手術・療養を乗り切ることにする。

医師を志したことがあり、世の中の流れにも敏感で、思慮深く、柔軟な思考をもっている元重。先進的な考えを持つ英明な若き藩主。父と同じく医師を志したことがあり、息子の療養に際しても妻を守り、夫婦協力することを当然と思う重彰。芯の通った聡明な母と妻。良心的な名医向坂。
どこをとっても悲劇になりそうもないのに、静かな語り口が不穏を孕む。

そしてあってはいけない出来事が起こる。

遺書で全ては明らかになるが、が!
結局のところ自己満足にしか思えないのは仕えるべき主をもたない、現代人だからか。
聡明で柔軟だと思えた人が犯した二つの罪。二つめはずるいなとすら思ってしまう。封建制の呪縛からまだ逃れられない世代というべきか。

0
2024年03月23日

Posted by ブクログ

時代に於ける、医療の歪んだ思考に唖然とした。漢方を扱う内科医が頂点で、麻酔術を扱う西洋外科医が底とは…全身麻酔で藩主、そして重彰の息子を救った向坂先生。その向坂先生が何故…未だモヤモヤしている。

0
2024年02月07日

「小説」ランキング