青山文平のレビュー一覧

  • つまをめとらば

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    2015年(下期)直木賞受賞作
    江戸時代中期の下級武士の世界を描く
    6話からなる短編小説
    ①ひともうらやむ
    ②つゆかせぎ
    ③乳付
    ④ひと夏
    ⑤逢対
    ⑥つまをめとらば

    男より女の方が逞しく、活発。男は一歩引いた落ち着きを感じる。

    好きなのは⑤逢対かな

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    2025年04月25日
  • 下垣内教授の江戸

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    青山文平の描く武士の姿に、武士とは何かを考えさせられる。武士個人の哲学や生き方を描いているようでも、時代の掟にがんじがらめになっている、と思えてならない。

    豪農で武士の資格をとった下垣内家の家長昌邦は、自分は武士に向いていない、俳句を嗜んで人生を送りたいと思っていても、忠実に武士であろうとする。
    突然の出来事により、弟邦雄は兄の仕事を受け継ぐのだが・・・。
    兄からは前を向け、と言われたにも関わらず、邦雄は後ろを向いて、武士であろうとすることを選んだ。兄の思いを知るために。

    ある新聞記者の取材のもとに、美術の目利きとして明治時代に活躍した下垣内邦雄の、幕末の意外な姿が描かれる。

    知識がすご

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    2025年02月05日
  • 本売る日々

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    淡々としているのにミステリー要素もあり、先が気になる。そしてどの話も読んで良かったと思う結末。時代小説に慣れていなくても、作中で挙げられる書物の事を何も知らなくても引き込まれる。

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    2024年09月04日
  • 底惚れ

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    良い終わり方です❣️人情噺のサゲのように。ほぼ1人語りなのが他人によって合わない人が居そうな感じ。その合わない感じがサゲ間際に一気に会話で終わりになるのが素晴らしい❣️ぜひぜひ一度お読みください。

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    2024年07月23日
  • 鬼はもとより

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    ネタバレ

    とてつもなく貧困な北国の小さな藩が、藩札(藩内で通じる紙幣)を通じて経済再生を図る物語。

    江戸中期の地方経済なんて全く未知の世界で、せいぜい年貢とか冷害とかそんな言葉を知っている程度だったが、船舶すぎる知識でも十分に楽しめた。

    まず登場人物たちの設定や背景や描写が良い。主人公なんて女たらしの修行をしている剣術免許皆伝の男。さらには脱藩してその藩をつぶすきっかけすら作っている過去があるという、情報が多すぎて混乱する設定。それなのに小説の中ではすんなり分かりやすく入ってくる。勿論、主人公以外の登場人物たちも生き生きと働き、いきいきと命を落とす。

    そう、この小説では命の落とし方もまた大切な描写

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    2024年07月12日
  • 白樫の樹の下で

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    江戸の、時代の過渡期で武士という立場に悩み翻弄される「佐和山道場」の村上登、青木昇平、仁志兵輔の三人の武士たち。
    その一人、本作の主人公である村上登がある商人から名刀を預けられるところから物語が動き出す。

    昇平が小普請を抜け出世し、出世は二の次とした剣に生きる風の登。間に挟まれた兵輔。そんな中、町で無惨な辻斬りが頻発する。

    それを打ち取り出世を目指す兵輔が動きだし、三人の人生の歯車が少しずつ違えていくさまは本当に切なかった。

    時代を扱うものなので読みにくい字もあれど文章が読みやすくページ数もちょうどよいと感じた。

    様々な背景を読みときながら楽しめますし、誰が辻斬りだのを推測しながらも読

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    2024年06月05日
  • 白樫の樹の下で

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     大きな白樫の木の下にある佐和山正則が開いた道場に通い、剣術を磨き友情を培った「小普請組」である三人の若者(青木昇平、村上登、仁志兵輔)の物語が、村上登の目線で描かれている、
     平穏の世を送る江戸期にあって、”剣術”によって己を律して行かなければならない『武士』の生き辛さが、とても切なく感じられた。

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    2024年05月28日
  • 底惚れ

    H

    購入済み

    「俺」の一人称で最後まで続きます。
    芳と俺との行き違いで、事件が起こり芳が行方不明となり、その後、俺の自省を中心とした心理描写、銀次の心理描写、信の心理描写が抜群です。江戸時代の時代小説ですが、いつの時代でも通用するのではと思います。
    一読に値する小説です。

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    2024年05月21日
  • 父がしたこと

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     主人公・永井重彰の父・元重は、御藩主の世話をする小納戸頭取。ある日その父から、御藩主が内密に外科手術を受ける、と聞かされる。執刀するのは、全身麻酔を扱う町医・向坂清庵。実は向坂医師には、重彰の嫡子・拡の命を救ってもらった経緯があり…。
     結末はあまりにも想定外の結果で、しかしそれぞれの人物の“命”をかけた物語が、とても良かった。藩主と家族の両方を守った元重は、「武士の鑑」だと思う。

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    2024年05月14日
  • 跳ぶ男

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    学生時代に縁があり能に多少関わって、沢山の舞台や演者の方を観させて頂いた事を思い出しました。江戸時代の「能」を通して、見事過ぎる武士の生き方を描いた傑作と思います。小説の筋とは関係ないですが、能には色々なものがあり、例えば佐渡ヶ島には沢山の能舞台が残っているのですが、そんな農村で演じられたお能なども、機会あれば観てみたいなどと思いました。

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    2024年04月04日
  • 本売る日々

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    は〜、すごい。着地点もお見事としか言いようがない。
    褒める点しか無い一冊。
    「底惚れ」がなんてったってすごかったから、そりゃ期待はして手に取ったけれど想像を遥か遙か超えて圧倒的に面白い。
    小説を読むのって、面白いんだよね、理屈じゃないんだよね、と純粋に感動させてもらえて感謝の念さえ浮かぶほど。
    「これくらいの辻褄合わせがある方が読者としては気持ちよいもんね〜」なんて小賢しい感想を持つ暇もないほど。
    あっひとつ重箱の隅をつつくと改行が多いよね、もっとぎっちりみっちり詰めてボリュームアップしてほしい〜!!
    今年は青山文平さんを読みまくる年になりそうだな。

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    2024年03月25日
  • 本売る日々

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    本当に凄い本だった。私が書店員だったら本屋大賞にこの本を投票したい。
    時代ものは苦手意識があったけれど、本を売る話が3遍で非常に読みやすかったし書物がいかに重要であったかも書かれていて共感できるところも多かった。
    何より「初めての開板」のラストは圧巻。
    本好きにはたまらない時代小説だと思う。

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    2024年03月08日
  • 父がしたこと

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    一気読み。参勤交代で痔になる大名。初耳。大変だ。エコノミークラス症候群も多発していただろうな。「父のしたこと」まったく肯定できないが、それが忠臣という時代…。それにしても、あまりに実直…。教科書でしか知らない江戸時代の蘭方医が、生きた“お医者さん”として目の前に。資料探しも大変だったろうな青山さん。次も楽しみ。「守旧のためなら捏造でも誣告でもなんでもする妖怪・鳥居耀蔵」「人はいったん相手を敵と識別すると、とことん残酷になれるものらしい。己の酷さに昂るらしい。それが武勇伝にさえなるようだ」「藩士に動き癖をつけてはならぬ。動けば出世できるのが前例になれば、次の藩政の曲がり角でも必ず動くものが出てく

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    2024年02月23日
  • 本売る日々

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    ネタバレ

     先般電子書籍に関する本を読んでいたので、江戸時代の本屋の話を読んでみた。時代は文政年間、本が好きで本屋になった男が主人公。三つの中編からなる。

     「本売る日々」は、71歳の名主と後妻に迎えた女郎上がりの17歳の娘との関係を描いている。

     「鬼に喰われた女」は、和歌に関係した男女の関係を八百比丘尼伝説に絡めて描いている。この話が一番気に入った。

     「初めての開版」は、医学・医術の普及と進歩に関して開明的な医師の話である。ラストが清々しい。

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    2024年02月14日
  • 半席(新潮文庫)

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    ☆4.5

    御家人から旗本への出世を目指し、徒目付の仕事に真面目に取り組んでいる片岡直人は、徒目付組頭の内藤雅之に外部からの頼まれ御用を度々任されてしまう。
    出世に関わりない仕事であるのに、その面白さとやりがいに、自らの狭い視界を広げさせてゆく。
    六編収録の連作短編集。
    事件が起きても、犯人の自白とその処罰が決まってしまえば、それ以上の捜査は行われない。
    しかし人情としては「何故」がわからなければ先に進めない人もいる。徒目付組頭の内藤はその「何故」を頼まれ御用として片岡に託す。
    この内藤がとても魅力的な人間で、片岡と共にこちらも絆されてしまう。
    そして「何故」を追うたびに、その事件の奥にある人

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    2024年02月11日
  • 父がしたこと

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    物語の前半はちょっと読みにくい、ちょっとこの世界に入りにくいところもあるが、中盤以降は青山文平ワールドに浸ることができた。青山氏の本は残らず読んでいるが、今回も期待に違わず最後まで一気読みしてしまった。
    隠居した父の年齢を超えているせいか、主人公よりも父に感情移入するところが多かった。
    願うしか救いようがない時に禁句はない。謀るのは好まぬが、謀なければならぬときには能く謀る。

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    2024年01月28日
  • 白樫の樹の下で

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    ネタバレ

    「やっと訪れた春に」がオモシロかった青山文平を追っかけてみようとデビュー作(別ペンネームでは既刊ありらしい)を読んでみた。

    リズムに乗らず若干読みづらさもあるが、物語の構成は天才的。無差別辻切りの犯人捜しミステリーとしても、剣豪小説としても、青春友情譚としても、十分に読ませて熱量もあって、良くこのページ数できっちり治めたものだと思う。

    登場人物の死亡フラグからの退場がとんでもない早さでとまどったが、なるほどジラさず進めることで物語のテンポを作る手法もあるんだなと。そのテンポは熱を帯びるし、解説曰くの「成長譚ではない」主人公の変化を読み取らせやすくしているんだなと、いやテクい上手い。

    ただ

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    2024年01月28日
  • 本売る日々

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    読み始めは、あまり興味を感じない内容でしたが、読み進めていくうちに、段々と物語の中に引き込まれていきました。本の装丁も凄く素敵で、またこの作者の本を読んでみたくなりました。

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    2024年01月22日
  • 本売る日々

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    ネタバレ

    新刊案内でタイトルとあらすじ読んで読みたくなった『本売る日々』(青山文平)。

    本の行商人という『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語 』(内田洋子)に似たようなものを感じたからかもしれない。

    今でこそいろんな書物があり、インフラが整えられてそれらをすぐに手に入れる手段がある。

    そしてネット世界が広がり、あらゆる情報が、いろんな人のもとへと届いていく。

    しかし昔はそうはいかなかった。

    情報は人が数日かけて運び、常に時間がかかるものだった。

    そんな世界で主人公が「この人にはこの本を届けたい」という強い気持ちを持って行動した経緯及び結果を読んでて感嘆のため息の連続でした。

    本を知

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    2023年11月06日
  • やっと訪れた春に

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    ネタバレ

    本家と分家、交代で藩主を出していた橋倉藩では十四代目当主候補岩杉重政が相続を辞退し、ようやくその分裂めいた状況が終息するかに見えた…が、重政暗殺により事態は急変、本家分家それぞれの近習目付であり幼馴染であり親友の長沢圭史と団藤匠が暗殺犯を追う。

    事件の成り立ちも、登場人物たちの動きも思想も、間違いなく江戸時代の一地方藩を舞台にした時代小説なのに、現代社会派ミステリーの味わいを深く漂わせる。官僚の、家族を亡くした男の、老いて思うように生活できなくなった還暦過ぎの、それら全ての悲哀はすべて時代を超えて通じる感情であり、物語。

    清廉さ鋭利さを伴う友情や愛情は北欧ミステリーの味わいにも似ているよう

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    2023年08月31日