青山文平のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かった!
最初から先が気になってどんどん読み進めた。
藩札掛として貧乏藩を立て直す話だったんだけど、主人公の聡明さと覚悟が伝わって来て痛快だった。
殺陣の描写もあって楽しかった。
清明の人生どうなっちゃうの〜って気になってたら、最後はああやっぱりね……でもどうすんの……って終わり方だった。
そしたら主人公が全く私と同じ気持ちで終わってて、すげ〜ってなった。
すげ〜ってのは、私は小説を読んでて登場人物に感情移入したことがほぼ無いんだけど、これは人が人に向ける感情において、私の気持ちと差異がないのがすごいなって思った。
私が青山文平を読んでる理由はそこだな。
前読んだ『乳付け』でもそ -
Posted by ブクログ
橋倉藩の近習目付を勤める長沢圭史と団藤匠はともに齡六十七歳。本来一人の役職に二人いるのは、本家と分家から交代で藩主を出す――藩主が二人いる橋倉藩特有の事情によるものだった。だが、次期藩主の急逝を機に、百十八年に亘りつづいた藩主交代が終わりを迎えることに。これを機に、長らく二つの派閥に割れていた藩がひとつになり、橋倉藩にもようやく平和が訪れようとしていた。加齢による身体の衰えを感じていた圭史は「今なら、近習目付は一人でもなんとかなる」と、致仕願を出す。その矢先、藩の重鎮が暗殺される。いったいなぜ――隠居した身でありながらも、圭史は独自に探索をはじめるが……。
今作も面白かった〜♪
加齢による -
Posted by ブクログ
ネタバレ目次
・本売る日々
・鬼に喰われた女(ひと)
・淇一(きいつ)先生
主人公の松月平助(しょうげつへいすけ)は、本屋である。
江戸時代、本屋というのは二種類あって、一つは読本や浮世絵を売る地本屋、つまり今年の大河ドラマの主人公である蔦谷重三郎がやっているようなものと、もうひとつはこの主人公のような物之本屋である。
物之本の本とは、「根本」の本であり、「本来」の本であり、物事の本質を意味する。
だから扱うのは、仏書、漢籍、歌学書、儒学書、国学書、医書などである。
現代で言うと本屋というより古本屋の方が、その在り方に近いかもしれない。
自分の目で売る本を選び、店に置く。
店主が目利きであれば、そ -
Posted by ブクログ
青山文平の描く武士の姿に、武士とは何かを考えさせられる。武士個人の哲学や生き方を描いているようでも、時代の掟にがんじがらめになっている、と思えてならない。
豪農で武士の資格をとった下垣内家の家長昌邦は、自分は武士に向いていない、俳句を嗜んで人生を送りたいと思っていても、忠実に武士であろうとする。
突然の出来事により、弟邦雄は兄の仕事を受け継ぐのだが・・・。
兄からは前を向け、と言われたにも関わらず、邦雄は後ろを向いて、武士であろうとすることを選んだ。兄の思いを知るために。
ある新聞記者の取材のもとに、美術の目利きとして明治時代に活躍した下垣内邦雄の、幕末の意外な姿が描かれる。
知識がすご -
Posted by ブクログ
ネタバレとてつもなく貧困な北国の小さな藩が、藩札(藩内で通じる紙幣)を通じて経済再生を図る物語。
江戸中期の地方経済なんて全く未知の世界で、せいぜい年貢とか冷害とかそんな言葉を知っている程度だったが、船舶すぎる知識でも十分に楽しめた。
まず登場人物たちの設定や背景や描写が良い。主人公なんて女たらしの修行をしている剣術免許皆伝の男。さらには脱藩してその藩をつぶすきっかけすら作っている過去があるという、情報が多すぎて混乱する設定。それなのに小説の中ではすんなり分かりやすく入ってくる。勿論、主人公以外の登場人物たちも生き生きと働き、いきいきと命を落とす。
そう、この小説では命の落とし方もまた大切な描写 -
Posted by ブクログ
江戸の、時代の過渡期で武士という立場に悩み翻弄される「佐和山道場」の村上登、青木昇平、仁志兵輔の三人の武士たち。
その一人、本作の主人公である村上登がある商人から名刀を預けられるところから物語が動き出す。
昇平が小普請を抜け出世し、出世は二の次とした剣に生きる風の登。間に挟まれた兵輔。そんな中、町で無惨な辻斬りが頻発する。
それを打ち取り出世を目指す兵輔が動きだし、三人の人生の歯車が少しずつ違えていくさまは本当に切なかった。
時代を扱うものなので読みにくい字もあれど文章が読みやすくページ数もちょうどよいと感じた。
様々な背景を読みときながら楽しめますし、誰が辻斬りだのを推測しながらも読 -
購入済み
「俺」の一人称で最後まで続きます。
芳と俺との行き違いで、事件が起こり芳が行方不明となり、その後、俺の自省を中心とした心理描写、銀次の心理描写、信の心理描写が抜群です。江戸時代の時代小説ですが、いつの時代でも通用するのではと思います。
一読に値する小説です。 -
Posted by ブクログ
一気読み。参勤交代で痔になる大名。初耳。大変だ。エコノミークラス症候群も多発していただろうな。「父のしたこと」まったく肯定できないが、それが忠臣という時代…。それにしても、あまりに実直…。教科書でしか知らない江戸時代の蘭方医が、生きた“お医者さん”として目の前に。資料探しも大変だったろうな青山さん。次も楽しみ。「守旧のためなら捏造でも誣告でもなんでもする妖怪・鳥居耀蔵」「人はいったん相手を敵と識別すると、とことん残酷になれるものらしい。己の酷さに昂るらしい。それが武勇伝にさえなるようだ」「藩士に動き癖をつけてはならぬ。動けば出世できるのが前例になれば、次の藩政の曲がり角でも必ず動くものが出てく
-
Posted by ブクログ
☆4.5
御家人から旗本への出世を目指し、徒目付の仕事に真面目に取り組んでいる片岡直人は、徒目付組頭の内藤雅之に外部からの頼まれ御用を度々任されてしまう。
出世に関わりない仕事であるのに、その面白さとやりがいに、自らの狭い視界を広げさせてゆく。
六編収録の連作短編集。
事件が起きても、犯人の自白とその処罰が決まってしまえば、それ以上の捜査は行われない。
しかし人情としては「何故」がわからなければ先に進めない人もいる。徒目付組頭の内藤はその「何故」を頼まれ御用として片岡に託す。
この内藤がとても魅力的な人間で、片岡と共にこちらも絆されてしまう。
そして「何故」を追うたびに、その事件の奥にある人 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「やっと訪れた春に」がオモシロかった青山文平を追っかけてみようとデビュー作(別ペンネームでは既刊ありらしい)を読んでみた。
リズムに乗らず若干読みづらさもあるが、物語の構成は天才的。無差別辻切りの犯人捜しミステリーとしても、剣豪小説としても、青春友情譚としても、十分に読ませて熱量もあって、良くこのページ数できっちり治めたものだと思う。
登場人物の死亡フラグからの退場がとんでもない早さでとまどったが、なるほどジラさず進めることで物語のテンポを作る手法もあるんだなと。そのテンポは熱を帯びるし、解説曰くの「成長譚ではない」主人公の変化を読み取らせやすくしているんだなと、いやテクい上手い。
ただ -
Posted by ブクログ
ネタバレ本家と分家、交代で藩主を出していた橋倉藩では十四代目当主候補岩杉重政が相続を辞退し、ようやくその分裂めいた状況が終息するかに見えた…が、重政暗殺により事態は急変、本家分家それぞれの近習目付であり幼馴染であり親友の長沢圭史と団藤匠が暗殺犯を追う。
事件の成り立ちも、登場人物たちの動きも思想も、間違いなく江戸時代の一地方藩を舞台にした時代小説なのに、現代社会派ミステリーの味わいを深く漂わせる。官僚の、家族を亡くした男の、老いて思うように生活できなくなった還暦過ぎの、それら全ての悲哀はすべて時代を超えて通じる感情であり、物語。
清廉さ鋭利さを伴う友情や愛情は北欧ミステリーの味わいにも似ているよう