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御家人から旗本に出世すべく、仕事に励む若き徒目付の片岡直人。だが上役から振られたのは、不可解な事件にひそむ「真の動機」を探り当てる御用だった。職務に精勤してきた老侍が、なぜ刃傷沙汰を起こしたのか。歴とした家筋の侍が堪えきれなかった思いとは。人生を支えていた名前とは。意外な真相が浮上するとき、人知れずもがきながら生きる男たちの姿が照らし出される。珠玉の武家小説。(解説・川出正樹)
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Posted by ブクログ
☆4.5 御家人から旗本への出世を目指し、徒目付の仕事に真面目に取り組んでいる片岡直人は、徒目付組頭の内藤雅之に外部からの頼まれ御用を度々任されてしまう。 出世に関わりない仕事であるのに、その面白さとやりがいに、自らの狭い視界を広げさせてゆく。 六編収録の連作短編集。 事件が起きても、犯人の自白と...続きを読むその処罰が決まってしまえば、それ以上の捜査は行われない。 しかし人情としては「何故」がわからなければ先に進めない人もいる。徒目付組頭の内藤はその「何故」を頼まれ御用として片岡に託す。 この内藤がとても魅力的な人間で、片岡と共にこちらも絆されてしまう。 そして「何故」を追うたびに、その事件の奥にある人の心、人の思いに切実さを感じる。 自らもまた別のものの見方や心の奥深さを知り、この御用のやりがいの沼に落ちてゆく片岡の姿に、笑いつつ武士としての正しさは何だろうと思う。 読後感の爽やかさまで含めてとても好きな作品。 「半席」 片岡直人は組頭の内藤雅之に、矢野作左衛門が筏の上で鱮釣りをしていて足を滑らせ水死した事件を調べ直してほしい、と頼まれた。 勘定方への出世の足がかりになるとも言われ引き受ける。 作左衛門は八十九歳でありながら家督も譲らず元気であり、息子の信二郎との釣りを趣味としていた。 水死した時も直前まで信二郎もその場にいたという。 作左衛門は筏の上をひどく焦って走っていたとの目撃者の証言もあり、片岡は再度話を聞くためその目撃者の元を訪れた…… 「真桑瓜」 八十歳以上で御役目につき働く者たちの集いの会「白傘会」で起きた事件の調べを任された片岡。 ずっと和気藹々と開かれていた宴席で、最後の水菓子が出された後それは起きた。 山脇藤九郎が岩谷庄右衛門に脇差で斬り掛かったのだ。 二人は長い付き合いで、会の中でも仲の良さで知られていた。 庄右衛門の傷は浅くはないが深くもなく、穏便にすませたいと言うものの、当の藤九郎が何故斬り掛かったかを黙して語らないため、そのままでもいられなくなっている。 片岡はその動機を探るため、事件のあった会に参加していた者に話を聞きに行く…… 「六代目中村庄蔵」 小伝馬町牢屋敷に入牢している一季奉公の茂平は、主殺しをしてしまい鋸挽の刑に処されることになっている。 茂平が主を突き飛ばし、倒れた時の打ち所が悪く亡くなってしまったという事故に近いものではあったが、主殺しには違いなく、茂平はすでに処刑を待つ身である。 茂平は奉公先の高山家では重宝されており、一年毎に雇い直され二十年以上勤め上げていた。 どんなことも真摯に勤め、忠義に厚かったはずの茂平がなぜそんなことをしたのか。 牢内での安全も無く調べが急がれる中、片岡は茂平に会うべく牢屋敷へと向かう…… 「蓼を喰う」 御目見以下から御役目を勤め上げ旗本にまでなり、御役目柄、後のことにも不安がない生活のはずの古坂信右衛門は、何故か突然辻番所組合の仲間に斬り掛かった。 しかもその相手は調べてみると、近所ではあるが関わりを特には持ったことのない池沢征次郎だった。 信右衛門の屋敷の塀沿いに立っていた征次郎に言葉もなく歩み寄り、いきなり抜刀したらしい。 信右衛門は征次郎とわかって斬り掛かったとは答えるが、その理由を問われても黙して答えなかった。 片岡はこの理由についての思考の手がかりを求める…… 「見抜く者」 徒目付の仕事の一つに人物調べがある。 重職を得る場に立つまでの関門を通るたびに、この人物調べは行われる。 そのため徒目付は、関門を突破できなかった者の恨みを買うことがある。 危険の伴う役職でもあるのだ。 この時も番入りを終え、その恨みが膨れ上がる時期が来ようとしていた。 片岡の上司に、加番に在職しながら道場主を務める芳賀源一郎がいる。 元々道場内でも屈指の腕前を誇り、高弟一同から道場主に推挙されたほど。 世にその腕を知られた芳賀が襲撃にあった。 しかも芳賀でさえ手こずるほどの強さを持つ襲撃者であったという。 しかし七十四と高齢で、その動機がつかめない…… 「役替え」 片岡は仕事での移動中、路上の真ん中で中間が仲間の一人を囲みいたぶっているのを目撃する。 それを止めはしたが関わっていることはできないためそのまま立ち去ろうとしたところ、いたぶられていた男に覚えがあると気付いた。 その男に自らの住処とそこを訪れるようにと伝えたが…… アベレージ高い短編集。 一番好きだったのは「六代目中村庄蔵」かな。 あぁ、とやるせない息を吐いた。 あと、作中出てくる食べ物が軒並み美味しそうで、すごく美味しい魚料理と少しの酒を嗜みたくなった。 スズキの洗いの魅力に負けそう。
短編六つの連作。上司から、出世の妨げになるような課題を提案され、自分なりに事件に至った理由の仮説を立て検証する中で、人の心中を察する深みがわかり、人間として成長していく。この上司、飄々としながら、思いやりのある魅力的な人間である。最終章の明るい前途を感じさせる結末も快かった。2026.6.19
2025.04.16 人間の「青くささ」はいつまで許されるのか、あるいは、いつまでも「青くさく」いるべきなのかを考えながら読んだ。
江戸の御家人、片岡直人が様々な事件の裏にある真の動機を探り当てる6つのミステリー。青山文平の時代小説は丁寧な書き方ながら、江戸のセリフや舞台の回し方などが小気味良い。上司の組頭、内藤雅之の江戸の旨いもの紹介の語り口も優れたグルメ噺の程を出していて味わい深くて良い。少し古い小説だが正月に酒でも飲みなが...続きを読むら炬燵で読むのは最高か、うちには炬燵ないけど。 元は雑誌の連載だったのか、半席の意味合いや直人の出自の説明が毎回同じように各編に出てくるところにやや鬱陶しさがあって星は減らすが、なんかいい気分にさせてくれる時代小説であることは間違いない。
初めましての作家さん。 主人公の片岡直人は、徒目付(かちめつけ)という、 職員の監察係をしている。 旗本、永々(えいえい)御目見への出世を目指し 仕事に励んでいたが上司である内藤雅之に、外から 持ち込まれる頼まれ御用を言いつかり これがまた、犯罪を犯して計が決まっている犯罪者から 「なぜ」そのような...続きを読む事をしたのか?という理由を 調べる事になる。 「半席」「真桑瓜」「六代目中村圧蔵」「蓼を喰う」 「見抜く者」「役替え」の6作の連作短編集 人情モノに加えて直人の成長物語でもあり、 楽しめました。
ホワイダニットを時代物でコーティングしたお話。もちろん本筋も面白いんだけど、出世に焦がれつつも思い悩む主人公に、雅之、源内という魅力的なまわりの人物のさりげないサポートがよかったです。あと、このお話の食事の場面は飯テロといっていいほど秀逸です。
どこかの文庫紹介で、歴史ミステリとして紹介されていた本。とても良かったです。 ミステリのジャンルとしては、ホワイダニット系になるかと思うのですが、その動機はどれもこれも「そうせざるを得なかった」やるせなさや、諦め、悟り、いろいろなものを感じられ、感情豊かで素晴らしい。 時代背景や歴史もの特有の用語な...続きを読むど、歴史小説を読みなれていないと多少難しく感じられる部分も多いですが、お勧めできます。
おもしれえ。江戸時代の探偵物ってのが斬新だし、ちゃんとミステリとして成立してるのが凄い。連作短編集なんだけど、どの話も味わい深くて良い。このシリーズ続いてくれてもいいと思うな(調べたら続編あるらしい)。
仮説を立てて検証をする。対象が違えど、心持ちは似たところがあるなと思いつつ、職場や上司との関わりを自身と比較しながら読んだ。我が身の行く末も考える「役替え」の読後感、面白かった。
主人公の青年、徒目付の片岡直人、上役の内藤雅之をはじめとする登場人物設定、描写が素晴らしい。 科人すら「真の動機」が明らかにあると、「仕方なかったのか? 気の毒な、、」と思わせる。ある意味、潔さまで伝わるかと感じました。 一話完結の謎解きと思い、途中で読み止めてはいけません(^^) 6話で一冊、...続きを読む徒目付の片岡直人デビューの一冊になっているのかもしれません。続編出たら読みたいです。 テレビドラマにしたら、主人公青年より人気が出そうな渋い上役の内藤雅之で江戸のグルメ紹介を差し込み、街で家系図売りをしていた沢田源内のニヒル役が気になるでしょう。科人役もあじのある俳優が喜んで引き受けそう。青山文平さん、アッパレ!であります。 星が4つに留まったのは、他の方々が難しいと感想しているように、各話で繰り返し説明してくれている御家人の階級、組織、周辺の江戸言葉、欲張って投げ込み過ぎたかな? 私も歴史好きながら、何度か行を遡って確認する事があったので、辛い点にしました。
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青山文平
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