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江戸幕府が開かれて180年たった、天明期、最下級の御家人で小普請組の3人の幼馴染が活躍。当時は竹刀剣法花盛りの中で、彼らはいまだ木刀を使う古風な道場に通っている。ある日、江戸城内で田沼意知を切った刀を手にしたことから物語が動き始める。いまだ人を斬ったことがない貧乏御家人が刀を抜くとき、なにかが起こる……。傑作時代ミステリー。第18回(2011年)松本清張賞受賞作。
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Posted by ブクログ
江戸の、時代の過渡期で武士という立場に悩み翻弄される「佐和山道場」の村上登、青木昇平、仁志兵輔の三人の武士たち。 その一人、本作の主人公である村上登がある商人から名刀を預けられるところから物語が動き出す。 昇平が小普請を抜け出世し、出世は二の次とした剣に生きる風の登。間に挟まれた兵輔。そんな中、町...続きを読むで無惨な辻斬りが頻発する。 それを打ち取り出世を目指す兵輔が動きだし、三人の人生の歯車が少しずつ違えていくさまは本当に切なかった。 時代を扱うものなので読みにくい字もあれど文章が読みやすくページ数もちょうどよいと感じた。 様々な背景を読みときながら楽しめますし、誰が辻斬りだのを推測しながらも読めたりして、懐の広い作品に感じました。
大きな白樫の木の下にある佐和山正則が開いた道場に通い、剣術を磨き友情を培った「小普請組」である三人の若者(青木昇平、村上登、仁志兵輔)の物語が、村上登の目線で描かれている、 平穏の世を送る江戸期にあって、”剣術”によって己を律して行かなければならない『武士』の生き辛さが、とても切なく感じられた。
青山文平の出世作である。 ある武士の生き方、剣の道を通して、武士とは、そして人間とは何かを考えさせられる。 結末は、複雑なメソッドが絡み合ってファイナルに向かう。手の込んだ小説である。
254頁を薄いとみるか、厚いとみるか。 筆者作品は「妻をめとらば」から惚れ込んで読んできただけに、文体、内容、着地は文句ない。 が、しいて言えば人間性の書き込みがあっさりしすぎか。 松本清張賞という冠に疑問を抱いたが、次々と殺されて行く江戸の社会と舞台の中州で蠢く邪念疑念のウソ寒さ・・若者を取り巻...続きを読むく息苦しさに加えて圧倒的な貧困と先の見えない人生の道程。 見方を変えれば種々の面白さが見えるだろうが、全く五里霧中の筋と捉える向きがいても驚かぬ・・終始流れる霧の様な。。 私はあえてそこをミステリーの醍醐味と思い、筆者ならではの語彙の美しさも楽しんだ。
ミステリー仕立てでなかなか面白かった。しかしヒロインも脇役も唐突にあっさり死に過ぎ。江戸の頃は箱崎のあたりに中洲なんてのがあったんだねえ。
内容(「BOOK」データベースより) いまならば斬れる! 人を斬ったことのない貧乏御家人が刀を抜く時、なにかが起きる――。 幕府開闢から180年余りが過ぎた天明の時代。江戸では、賄賂まみれだった田沼意次の時代から、清廉潔白な松平定信の時代に移り始めた頃。二本差しが大手を振って歩けたのも今は昔。貧乏...続きを読む御家人の村上登は、小普請組の幼馴染とともに、竹刀剣法花盛りのご時勢柄に反し、いまだに木刀を使う古風な道場に通っている。他道場の助っ人で小金を稼いだり、道場仲間と希望のない鬱屈した無為の日々を過ごしていた。ある日、江戸市中で辻斬りが発生。江戸城内で田沼意知を切った一振りの名刀を手にしたことから、3人の運命は大きく動き始める。 令和3年2月26日~3月2日
剣の道に生きることで未来を切り開いて行こうとする 幼馴染の貧乏御家人3人 その純粋さゆえに壊れてゆく。 1本の刀と出会ったことで転がりだす過酷な運命 青年たちの必死さと純粋さがヒリヒリとする1冊
時代小説ながら、途中までのミステリー感はすごかった。これが最後まで続けば文句なしの五つ星だったが。。ミステリーなしとしても、一人の青年の成長の物語として読み応えがあった。
時代ミステリーの形をとっているが、いろんな読み方ができ、作品の主題も人によってはいろんな風に捉えるのではないだろうか。 現在にも通じる格差と貧困、若者のアイデンティティ探し、友情とは?様々なテーマを含んでいるので、読む人によって違う読み方が出来るでしょう。 文章が良いので非常に読みやすかったので...続きを読むすが、もう少し書き込んで欲しいところもあったかな。
未来の展望が開けない青年たちの夢をかけた、切なくて苦しい青春時代小説。悪政で有名な田沼意次の時代から、松平定信の時代に移り始めた頃の江戸が舞台。御家人の村上登は、道場仲間と貧しいながらも、清浄な武士への鍛錬に勤しむ日々を暮らしていた。そんな時手にした一振りの名刀が大きく三人の運命をかえていくことにな...続きを読むる。。本作品、友情と反目、はかない恋など時代に翻弄された士分たちの心の機微を巧みな言葉とともにあぶり出しつつ、辻斬り犯を巡るミステリアスな面など多彩な要素を含む。がすべての要素は、天下泰平の時代に巣くう”貧困”の一点に集約されるよう区切りなく物語は進んでいく。それにしても精緻なロジックと貧困がもたらす悲劇を余すことなくつまびらかにする切れ味抜群の筆力が凄すぎ!筆者の時代小説にかける真摯な想いを強く感じる秀逸な作品です。
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