青山文平のレビュー一覧

  • 泳ぐ者(新潮文庫)

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    いやいやながら始めた事件の「なぜ」を明らかにする仕事に、面白さを感じていく主人公。
    事件に覚えた違和感の探索の先に、隠された人生、心の奥底の秘密が明らかになる。
    主人公の置かれた環境も変化する中、今後どの様になって行くのか気になる。

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    2024年02月11日
  • 父がしたこと

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    藩主の手術に秘密裏に麻酔を使うことを決めた側近、江戸時代の蘭学の位置。

    物凄く渋く、江戸時代蘊蓄に溢れ、意外なラスト。良かった。

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    2024年02月07日
  • 父がしたこと

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    っぽく無いタイトルですが、生粋の時代小説です。
    英邁な藩主。その身の回りの世話をし、藩主からの信頼の厚い小納戸頭取の父。そして目付の主人公。藩主の持病は痔。領内に住む蘭学の医者に全身麻酔下での手術を受け、成功するのだが・・・。
    痔、あるいは主人公の子の鎖肛(肛門が生まれつきうまく作られなかった病気)と、蘭学に関係して下半身の病気を取り上げたのはなかなか面白い試みです。
    相変わらず厳しい文体で、武家の生き様を描いていきます。父と子のみならず、母や嫁も、みな異常に張り詰めている感じです。そして、他に登場する脇役(武士以外)たちも悪人が居ないというばかりでなく、弛緩した人物が出て来ません。もともと奇

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    2024年01月21日
  • 泳ぐ者(新潮文庫)

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    この前に読んだ『木挽町のあだうち』からの流れもあって手に取りました。ミステリー小説としても面白く、また、通りの名前から、現実の距離感が結びつけられる程度に、私に土地勘があれば、時代小説として、もっと面白く読めたのではないかと思いました。
    また、読んだタイミングもあってか、申し訳ないは要らないというくだりでの "いざというときに助けるのは当たりめえだ。ふたんから国が見ているのが伝わることが肝なのさ" というセリフに重みを感じました

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    2024年01月06日
  • 半席(新潮文庫)

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    江戸の御家人、片岡直人が様々な事件の裏にある真の動機を探り当てる6つのミステリー。青山文平の時代小説は丁寧な書き方ながら、江戸のセリフや舞台の回し方などが小気味良い。上司の組頭、内藤雅之の江戸の旨いもの紹介の語り口も優れたグルメ噺の程を出していて味わい深くて良い。少し古い小説だが正月に酒でも飲みながら炬燵で読むのは最高か、うちには炬燵ないけど。
    元は雑誌の連載だったのか、半席の意味合いや直人の出自の説明が毎回同じように各編に出てくるところにやや鬱陶しさがあって星は減らすが、なんかいい気分にさせてくれる時代小説であることは間違いない。

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    2024年01月04日
  • 跳ぶ男

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    1人の男が能と直向きに静かに向き合って生きていくお話。
    最後私は切なく感じてしまったけれど、彼は後悔もしていないし辛いとは思っていない。
    こういう生き方が出来る人は多くはいないんじゃないでしょうか。とてもかっこいいと思いました。

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    2024年01月02日
  • 春山入り(新潮文庫)

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    ネタバレ

    司馬良太郎(歴史作家として、史実に反すると批判されるらしいが)、池波正太郎、藤沢周平で彼らが没した時、もう読めないのかと悲しくなった。今活躍している時代ものの作家は、この三人の誰かにつながっている気がする。私にとって青山文平は藤沢周平に連なっていて、武士の哀歓を見事に描いて楽しませてくれる。『約定」、『乳房』、それおぞれとても味わい深い感動がある。

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    2023年10月09日
  • つまをめとらば

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    江戸時代あたりの夫婦だったり恋人だったり男女関係から話が展開されて最後もそこにオチをつけるような短編集。時代ものは漢字が難しいのだけど、テンポ良く読めて面白かった。長編も読んでみたいかも。

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    2023年09月01日
  • 跳ぶ男

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    会話を通して語られる能の世界の知識等が多くて読み疲れることもありました隙のない文章で綴られる青山文平文学を堪能しました。

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    2023年06月14日
  • やっと訪れた春に

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    時代小説とミステリが合わさったような小説。普段は現代ものばかり読んでいるので、初めは文章や単語に馴染めなかったが、登場人物やその時代の暮らしがとても魅力的で飽きなかった。
    ストーリーも大胆で面白く、最後は一気に読んでしまった。

    宮部みゆきさんの時代小説と同じく、梅干しやうどんなど、素朴な料理がとっても美味しそう。

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    2023年04月29日
  • 白樫の樹の下で

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    ネタバレ

    出だしに長い竹刀を持った道場破りが出てきた。津本陽の書いた千葉周作に槍のように長い竹刀を使う大石種次に対し、樽の鍔がわりにして応じたという話が出てくるので、そういう種類の剣豪ものかと読み始めたが、なかなかに複雑なストーリーだった。青山文平の登場人物の描き方はいつも通り手が混んでいて、物語は二転三転し、謎解きも簡単ではなく、最後まではらはらしながら読み進むことができた。

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    2023年03月09日
  • 跳ぶ男

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     石高わずか二万二千の藤戸藩道具役に生まれた屋島剛。道具役といっても能役者。母に死なれ、後妻を娶った父に見捨てられ、野の石舞台でひたすら稽古に励む。目付鵜飼又四郎によって、藩主の身代わりになるように告げられる。能役者であるが故に見出されたのである。
     能の蘊蓄をうざいと感じるむきもあるでしょうが、能の背景の説明がなくなれば物語の体をなさないので、我慢して読み進むとようやく面白さに辿り着けます。最後はどう締めくくるのかとドキドキしながら読み進むことができました。青山文平という時代もの作家の静かなすごみを感じさせてくれるよい作品だと思います。

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    2023年02月01日
  • 励み場

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    うーむ青山文平はしみじみ良い。名子っていう聞き慣れない概念が物語の鍵なんだけど、初めて知りました。背後から姉に声をかけられるシーンで泣けた。面白かった。

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    2022年12月16日
  • 半席(新潮文庫)

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    初めましての作家さん。
    主人公の片岡直人は、徒目付(かちめつけ)という、
    職員の監察係をしている。
    旗本、永々(えいえい)御目見への出世を目指し
    仕事に励んでいたが上司である内藤雅之に、外から
    持ち込まれる頼まれ御用を言いつかり
    これがまた、犯罪を犯して計が決まっている犯罪者から
    「なぜ」そのような事をしたのか?という理由を
    調べる事になる。
    「半席」「真桑瓜」「六代目中村圧蔵」「蓼を喰う」
    「見抜く者」「役替え」の6作の連作短編集
    人情モノに加えて直人の成長物語でもあり、
    楽しめました。

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    2022年10月08日
  • 跳ぶ男

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    江戸時代を舞台にした能の役者の子どもが主人公。時代小説で、自分に能の知識はほぼないことと、主人公の考えごとの細やかさに、油断すると何言ってるかわからなくなるので気も抜けず。
    主人公の剛が、又四郎、八右衛門に知識を授けられていく様も心地よい。
    終盤の剛の案には、ハテそううまくいくのかと思つつも、最後のシーンの余韻がすさまじかった。
    読み応えのある小説でした。

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    2022年09月25日
  • つまをめとらば

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    時代小説の人情物、男性作家だったら青山文平さん。
    どのお話も心に染み入る、六編中では「ひと夏」が特に良かった。

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    2022年09月18日
  • やっと訪れた春に

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    藩主が二人いる橋倉藩。
    当然、そこには二人の近習目付を置くことになる。
    だが、藩主相続を望まないという申し出と共に
    藩はひとつにまとまった。
    春が訪れようとしていた。
    が、そこで起きた暗殺事件。
    P220
    〈時々の代をつなげていく者たち〉の
    命(めい)に縛られた過酷で悲しすぎる生き方に胸が塞がる。

    青山文平さんらしい、重厚で情に溢れた作品。
    読み終えてほーっとため息が出た。

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    2022年09月17日
  • やっと訪れた春に

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    老境を迎えた二人の重臣。

    その老後を淡々と描くと思いきや、二人が仕えた元藩主が突然殺害される。

    背景に二人の祖父たちが関わった班の重大事件が浮かび上がる。

    藩主の交代制や、考えにくいが屍体を斬る稽古は、何度も縫って使い回すことも含め、実際に例があったという。

    間者が同様の訓練を永年にわたってできたかは何とも言えないが、間者故に可能だったとも言えるか。

    2つの殺人と藩の過去とのつながりが明らかになるに従い、犯人の深い絶望にも思いが至る。

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    2022年09月09日
  • つまをめとらば

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    思い当たる心の動きに、わかるわかる、ああそうかもしれない…。
    気に病むという言葉があるが、特にそのあたり、深くうなずきながら読んだ。
    それぞれ、同窓会でもあればAさんがどうした、Bさんがどうしたと話題に出てきそうなお話。
    時代も身分も飛び越えて身近で、筆致には軽やかさと人肌のぬくもりを感じた。
    せつなさあり、おかしみあり。
    味があった。好きだな。

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    2022年08月14日
  • やっと訪れた春に

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    なんだか青春恋愛物みたいなタイトルですが、れっきとした武家物の時代小説です。しかも主人公は致仕した老人だし。
    主人公の心の声を鋭く短い文章で書き連ね、言わば点描画の点を短い線に置き換えたように、物語が形作られて行きます。文章は短いけれど、次々にミッチリと打ち出されるので、ある種の饒舌感もあります。また、時に対象を直接描くのではなく、周りを描くだけのところもあり、置いてけぼりを食いそうになります。
    ひとことで言えば時代サスペンス。最初からグイグイと読ませます。
    かつて城下の鉢花という桜の名所で藩主自らが佞臣達を討った大政変。後に武神とあがめられ、藩領の育成・繁栄にも力を発揮した藩主の政変を支援し

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    2022年07月30日