あらすじ
五年の武者修行から帰ってみれば……。
直木賞作家が贈る濃密な傑作時代小説集。
寛政の世、浮世離れした武者修行から五年ぶりに帰国した男を待っていたのは、美貌の女が仕掛ける謎――。
表題作ほか、二十俵二人扶持の貧しい武家一家で、後妻が生活のため機を織る「機織る武家」、新田開発を持ちかけられ当惑する三十二歳当主を描く「沼尻新田」。
閉塞した武家社会を生きる人間の姿が鮮やかに立ち上がる傑作三篇。
※この電子書籍は2017年4月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
このミス2018年版7位。100頁弱の短編?3編からなる短編集です。すべて、江戸時代の同時期の話でテイストは同じですが、主役はそれぞれ異なります。で、とにかくこの本凄いです。3作とも素晴らしい、というか完璧です。最初の2作がストレスなく読めてとても面白く、表題作が最後に残されておりすごく期待します。表題作は途中までは、なんだ尻つぼみかな、と思ってたら、ところがどっこい最後に鳥肌たちます。
全編無駄なく研ぎ澄まされた文章で表現能力が半端ないです。三浦しをんとかのお仕事小説にも通じるんですが、全く初めて接する江戸時代の風俗や仕事を、ほとんどなじみのない単語を使いながら端的に理解というか、その場で経験しているような感覚にさせる文章力。その表現力は心の深いところの動きや、行動などああらゆるものを短い文章でストンと理解させます。
主人公の心の動きにぐいぐい引き込まれるとともに、意外性のある話しの展開、ちょっとあり得ない話を納得させる論理的な説得力。一作目はなるほどと思い、二作目はムーっと唸り、三作目は鳥肌が立ちました。
Posted by ブクログ
中編3本。どれも面白いんだけど、何冊も青山文平読んでるとなんか聞いたことのあるような設定の話が出てくるな。1つ目の機織りの話は知識として面白かった。2篇目は美しくはあるんだけど弱い。3篇目は武者修行の描写が真に迫ってて、これは珠玉の一篇か?と思ったけど急に修行打ち切りで肩透かし。今まで読んだ青山文平の中ではどれもいまいちかな。いや、感じ入ろうとすれば感じ入れる内容ばかりなんだけど、なんかそこまで感情移入ができなかったのかな。
Posted by ブクログ
★3の中。上でもいいかなー?
なんだかんだで青山文平さんの四作品目。
「つまをめとらば」方式。
特に縛りもまとまりもない時代物短編三編。
・機織る武家
芸(手に職)は身(家)を助く。
・沼尻新田
清くて不純な開発は。
・遠縁の女
俺も別嬪の幼馴染が欲しいぞー。
この人のこういう自由な短編はおもしろいわー。
「半席」とか「泳ぐ者」みたいな固定主人公の連作短編も悪くはないけど、特に説明も何も要らないこういう方があってるのかも。
三編とも、どうということもない。
何か大事件が起きるでもなく、歴史的な何かが起きるでもない。
不思議もない。
殺人もない。
種も仕掛けもない。
少しはあるか(笑)
俯瞰してみるとその時代の中でよくありそうな話なのにじわっとくる。
でも、よくある人情譚でもない。
なんだろう?
文芸かなぁ?
いやエンタメだな。
これが文章力ってやつなのか、すいすいいける。
なんでもいいか。おもしろいんだから。
それにしてもこの人、よく調べてるなー。
機織りの織り機だの。着物だの。模様だの。野方衆だの。武者修行だの。
こんなの上っ面をなぞっただけでは書けないだろうに。
表紙は単行本よりこっちの文庫の方がいいね。