原基晶のレビュー一覧
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借りたもの。
工房放火事件の犯人の判明と裏切りというショッキングな展開。
チェーザレ、アンジェロらの洞察と推理、駆け引きが緊張感を増す。その舞台となる場所が、今までの豪華絢爛な建造物ではなく、石造りの簡素な物置の描写も細かくて、そちらにも目が行ってしまう……
ボルジア家の面々が内に秘める泥沼な人間関係が仄めかされる。チェーザレの弟ホアンの嫌味、妹ルクレツィアとの教育係でもあるジュリアは父ロドリーゴの愛人。ルクレツィアの愛くるしい顔に秘める打算的な一面……
そんな中、チェーザレは本当に信頼できる人間を傍に置いている。
腹を割って話すミゲルとアンジェロ。天然でチェーザレを支えているアンジェロのフォ -
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借りたもの。
イタリア半島情勢、歴史の転換期である1492年がはじまる。
同時に、チェーザレやアンジェロ達がその情勢・政治的駆け引きに直接関わってゆく――大人になってゆく――大きな節目の時でもあった。
長くイタリア半島の均衡を保っていた三国同盟の破綻……教皇領とナポリ王国が同盟を結ぶ。
それまでのミラノやヴェネツィアと対立する形になる事、地政学的に包囲された形になるフィレンツェは危機感を募らせる。
そうした情勢の変化で軍備に金をつぎ込まざるを得なくなり、レオナルドの騎馬像が頓挫してしまう。(原型はこの後起こった戦争でフランス軍の弓の的にされちゃう…)
美術好きとしてはあないみじ。
チェー -
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借りたもの。
戦争の勝利で始まり、次の戦争の予感で終わる巻だった。
遂にイベリア半島でレコンキスタが完了する。イスラーム側の無血開城――ゆえに今に至るまでその美しさを保持している――……これに至るまでも様々なドラマがあるだろうが、描かれないのは致し方なし。
しかし、これは新たな戦いの始まりに過ぎない……
シャルル8世の領土拡大の野心が仄めかされる。長きにわたるフランスの介入、世俗的とも思えるが当時のカトリックの教皇は領主でもあった。複数の都市国家でもあったイタリア半島。
そうした勢力の抗争……戦争の予感がする。
オルシーノ・オルシーニ……哀れだけれどそれ故に卑屈。彼の妻・ジュリアがチェーザ -
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借りたもの。
クリスマスのミサに挑むチェーザレ。同じ頃、ローマでも父・ロドリーゴ枢機卿とジュリアーノ枢機卿の対立・派閥争いもありながら、各々の教会で粛々とミサが行われる。その聖句は前巻の友人や腹心の部下による裏切りやアンジェロの負傷といったフィオレンティーナ団の傷心に寄り添い、庶民・貧しい貧民の慰めとなるのだろうか…
ピサ大聖堂で皇帝ハインリヒⅦ世の墓を前に、チェーザレは思いを馳せる。
ダンテ研究の第一人者であるランディーノ教授にチェーザレは教えを乞うた。
それはチェーザレ達が生きる時代――中世ルネサンス――に至るまでのイタリア(ピサ)情勢が語られる。
そこからチェーザレが導き出すのはダンテ -
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借りたもの。
お祭りお忍びの続き。女の子たちをナンパしたり、フィオレンティーナ団と合流してしまったり。何だか今の大学生たちとやってることが大差ないので微笑ましい。
その一方で工房放火事件の犯人とチェーザレを狙う刺客、その黒幕が仄めかされる。
アンジェロは相変わらずチェーザレに振り回されている……
アンジェロとミゲルが対話するときが一番興味深い。
軍人の象徴のようなミゲルと庶民・文人の象徴となるアンジェロがおりなす会話となり、戦争(軍事力)と外交(交渉)のせめぎあいを端的に表している。
露店で買って事故で壊されてしまった秘密箱は修復され、冒険の記念として教訓を仕舞っていた。
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借りたもの。
チェーザレの妹・ルクレツィア。近親相姦の噂がついて回る美貌の姫君のお姿を遂に拝顔……可愛らしいそのお姿。
今では抵抗のある、女性に対しての教養不要論…(マナーや美しさは重要視されるけど)男の寵愛を争う女の闘いが不穏でもある。
当時のカトリックの価値観で、聖職者に妻帯は許されないにも関わらず、関係を持つ婚姻を結ばない女性を“淫売”と蔑み、その二人の間に生まれた子供は庶子となる……
領主のような当時の聖職者。彼らの抱える男性優位な矛盾は現代との差から一般人には抵抗を覚える。
チェーザレはメディチ家との繋がりを持って父ロドリーゴの教皇選出への後押しをする地盤固めをするものの、ロレンツ -
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借りたもの。
ドミニコ修道会の怪僧・サヴォナローラの台頭。
そして大学の学生団の派閥争いがそのままルネサンスの縮図となっている。フランス団が幅をきかせはじめている。「フィレンツェの軍事力が脆弱なせい」という台詞は、国防において軍隊の重要性――それを持たず傭兵で賄っていたが故に独立した立場が不安定な商業都市国家であるフィレンツェ――を浮き彫りにする。
ニッコロ(マキャヴェリ)が指摘する、共和制の人間であるアンジェロと君主制の人間であるチェーザレ…相いれない立場の二人が語る互いの正論は、民衆の視点だったという言葉に、国を動かす人間が求められている姿勢を垣間見る。
アンリに純粋に否を説くアンジェロ。 -
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借りたもの。
ドメニコ修道会が統治(管轄)している地域の貧困と劣悪な環境を目の当たりにして愕然とするアンジェロ。
今では理解しがたい?宗教家と統治が結びつき、清貧の下でまともな職につけず物乞いをするだけの人々(すなわち、手に職を持ち資本主義活動を行うことができない。当時の世界は第一次産業が主たる仕事だから致し方ないが)の姿に、中世のリアリティを感じる。
また、システィーナ礼拝堂にミケランジェロの大作《天地創造》《最後の審判》が描かれていないことにも感動を覚える。
ダンテ『新曲』のウゴリーノ伯のエピソードから、罪という概念から現実的な統治者や為政者の話となり、マキャヴェリ『君主論』の原型を垣間見 -
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借りたもの。
とにかく徹底した中世ルネサンス描写に息をのむ。神は細部に宿るのか……!
当時のフィレンツェ――フィオレンティーナ――の街並み、雰囲気が繊細に描写されていて、フィレンツェに行った事がある人は、読んでいて街並みを鮮やかに想起させられるのではないだろうか。
天井まで細かに描かれ、本当にその空間を歩いているようだった。
また、馬の描写がとても美しく…それはルネサンスを象徴するレオナルド――彼がよく描写した対象であり、素描や未完成の作品が多くあること――を想起させる。
今、競馬に多いサラブレッドとは異なる、胴が長めのアンダルシア馬は当時の軍馬。
食事のシーンではナイフと二股フォークの置き方 -
購入済み
マキャベリ登場
現代でも大変に有名な政治&人間学に関する本を書いたマキャベリが登場する。早熟な政治的天才であるチェーザレとのやり取りがなかなかに面白い。外交 政治に関しては、現代でも参考にすべきことは多いが、キリスト教に関することが大変に重要な位置を占めているところが要注意である。華麗な絵柄はこの巻でも当然健在である。
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重厚豪華華麗な絵柄
なんと言っても作者の重厚豪華華麗な絵柄にまずは圧倒される。歴史上ある国が華やかに栄えるときは、何故か様々な偉人 芸術家などが次々と世に出てくる という話がある。ルネサンス期のイタリアが見事にそれに該当する。そのような時代を作者はアンジェロを狂言回し 語り部にして、見事な作品にしている。
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チェザーレ
チェザーレボルジアの話なので購入しました。絵もきれいです。建物や衣装まで描きこんであります。中世イタリアの詳しい情報も巻末にあり大変勉強になります。
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読み応えあり。
読み応えあり。
塩野七生さんのルネサンスものの小説でイメージしていたものが具体的な形になった感じ。
しかも、ルネサンス期のイタリアの街を描いた絵がとてもきれいで真に迫っている。 -
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「星は誘えど強制せず・・・か」
占星術がまだ生き残っていたの時代。
レオナルド・ダヴィンチが、ナポリ国王に進言する前の一コマのセリフ。
遂に、コンクラーベまでたどり着いた。
チェーザレの歴史にとってはまだまだこれから。
終わるコトが見えない進み方なのが心配だけど。
教皇選のやり取りにワクワクしてしまう。
人間が神の代理人を選ぶ仕組み。
なんとも皮肉な選挙方法だけど、人間らしさたっぷり。
「イエスの代理人」に選ばれる事。
その欲望に忠実なのが、枢機卿に必要な素質の一つ。
いや、そこに手が届きそうな場所に近づいたら、どんな人も「欲」から「夢」をみるのだろうな。
そんな人生の瞬間があること