ブリキのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
“もういい、もう嫌だ。もう、死にたく、ねぇよぉ!
埋め尽くしていた光が彼方へ消え去り、現実が向こうに映る。
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
悲鳴を堪えて下唇を噛み続けると唸り声のようにも聞こえた。その声に同調するように眼球の色を変化させる。視線と意識を額の前へ強く押し出すイメージを持って、アメンボを睨む。
赤く、禍々しく。捉えるように、吸い込むように。暴虐をそこに潜めているように。
だから頼む、逃げてくれ。あっちへ行ってくれ!騙されてくれ!
「ぇおぼ!」
顔面を殴り飛ばされた。二度、三度と首から上がちぎれるような衝撃に襲われて、前歯が二本ほど吹っ飛ぶ。口の中がスースーした。ナイフ男の拳も歯で切れて、鮮血がほとばしる。
騙されてくれない。いやむしろ、能力の発現を邪魔しようと果敢に殴ってくる。
この距離まで迫られたらこんなハッタリは意味をなさない。
左手からきゅぽん、とナイフ抜ける。ずるりと肉の一部が刃にこびりついて引きずり出される。「いひ、いひ、ひぃぃ、ひぃ、いひ」その奇妙な感覚に相応しい、情けない悲鳴が漏れる。痛がることさえ押し退けて、絶望的な絵面を前に心が折れそうになる。
誰でもいい。神様でもいい。
もう死なないならなんでもいい。靴を舐めても犬の糞を食おうとも構わない。殺されたくない。こんな、なんにもないままで死にたくない。終わりたくない。だから、俺は。
どんなことをしても時間を稼ぐ。引き延ばす。そして、考えろ。考えるんだ。”
痛々生々。
トカゲ君が本当中二という感じで。
スガモさんが本当悪女という感じで。
どう展開するのやらわくわく。
“「お金持ちは人の使い道が色々あるから」
「......教主様と同じ意見とはね」
ぼやきつつ、カワセミは目を細める。
まったく、金持ちはなにを考えているのやら。
いや金持ち云々ではなく、この女がそもそも異常なだけかもしれなかった。
「ま、細かいことはいいか。目玉の色を変えられるやつなら、僕も会ってみたいし」
ひょっとすると、自分と同じタイプの超能力を隠し持っているかも知れない。
或いは、資質の差こそあれども詐欺師に属する者なのか。
「じゃあお願いね。さすが世界最高の殺し屋さん、どんな仕事も断らない」
「お褒めにあずかりなんとやら。でも上手くいくとは期待しないでくださいよ」
暗殺とは勝手の違いすぎる依頼なためか、カワセミが予防線を張る。それを受けて巣鴨は、ふふんと鼻を高くする。得意げで、悪戯めいて。この世を斜めから見下ろす人間の顔で。
カワセミが散々見続けてきた、自分に仕事を命じる人間の顔つきだった。
向き合っている赤眼をまったく恐れない少女、巣鴨涼が不敵に言い放つ。
「大丈夫。全部、私の思ったとおりになるから。それがお金持ちの生き方だもん」” -
Posted by ブクログ
“「きみって、藤和エリオの友達かなにかなの?」
質問は、真の予想通りだった。
真はそこで顔を上げる。そして。
平然とした表情で、嘘をつく。
「え、それなんの話?」
自分の声なのに、それは耳も骨も、なにも揺るがさなかった。
言った途端、真の頭は潰れていた。
少なくとも真の認識では、頭の中身の左半分が潰れたように重々しくなっていた。
目の前に立っている男子生徒が遠くなり、教室の輪郭が曖昧となる。真は自分が今、どんな表情を浮かべているか分からなくなる。男子は尚も話を聞き出そうとする。
「いや、だって見たぜ、藤和が籠に載ってるの」
「んん?だから、なんの話だ。トウワッテダレダヨ」
真の頭は真っ白になる。目の前の現実味がどんどんと薄まり、薄い膜を一枚、男子との間に敷いているようだった。三半規管に異常を来したように、真の頭がふらつく。
「俺、引っ越してきたばっかりでさ。町のこと、よく知らんのよ」
言葉の内容は嘘ではない。だが、気持ちに大きな嘘をついていると、真は実感する。
自信の限界を悟って、席を立った。
「飯買いに行かないといけないから。んじゃあ、な」
真は逃げるように、だが早足にならないよう気を遣って教室の入り口へ向かう。
疑惑を晴らすことも、いっそ認めてしまうこともせず中途半端に、場から離れる。
その途端、流子と目が合った。だが流子の方はなにも把握していないらしく、目を丸くしているだけだった。真はなぜか申し訳ない気持ちになって愛想笑いを浮かべて、廊下に出た。
廊下ですぐ、真は腹部を押さえる。
気分が悪かった。本当に気持ち悪くなっていた。”
ここんとこの表現上手いなーと思ったり。
前川さん素敵。
女々さんは変わらんなー。
本来の一巻より幾分シリアスな気が。
“「お前、なんで布団巻いてたの?」
その質問に、エリオの首がかくんと伸びる。
ひくっと引きつるその頬に、真は波を感じる。
波の到来だ。
引いて引いて、また引いていたエリオの波。
押し返していたそれが、砂浜にやってくる。
顔の表という、乾ききった砂浜に。
砂浜を、感情の波が濡らし尽くす。
真はそれを待つ。口を噤み、海面に揺られて。
潮の匂いに様々な目覚めと、始まりを感じながら。
「う、く、ぃ、ぃ、ぃ」
そうして、エリオの顔が崩れた。
引き締めていた目元や鼻が弛緩して、だらだらと、溜め込んでいたものを流す。
「怖いんだよぉ」
ぐずぐずと、涙も抑えきれなくなったエリオが本音を吐き出す。鼻を啜り、肩を震わせてえづく。水色に輝くものすべてが崩れ落ち、海に還ってしまいそうな震え方だった。”