西條奈加のレビュー一覧
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初めて読む作家さん。
元芸者で、神楽坂で履物店をいとなむお蔦さんと、両親の転勤と引っ越しの間、中高一貫校に通うために同居する孫の望の物語。
一世代飛ばした距離感が良い。
両親との関係はお互いになまなところもあるが、「おばあちゃん」は、押しも押されぬオトナである。
読んでいるこちらも、おばあちゃんの、とくにお蔦さんのような、世間が広く、人生の酸いも甘いも知り尽くした言葉には重みを感じるものである。
人の死なない「日常の謎」だが、『罪と人の心』がテーマになっているあたり、すぱっと犯人を逮捕して終わり、と言う爽快感がないうえに、意外に重い。
お蔦さんは、「子供だから知らせないでおく」「子供にはまだ早い」と決めつけるところがなく、少しづつ、望にも経験させた方がいいだろうというさじ加減を図っては、一緒に事件を解決し、望は成長していく。
その代わりと言っては何だが、お蔦さんは花街の人らしく自分で料理をすることがなく、孫の望が台所を預かる。
代々、男が厨房に立つ家系らしい。
人情物と青春物が絡み、面白い。
短篇集かと思いきや、複雑な糸で編まれているのだった。
罪かぶりの夜/蝉の赤/無花果の実のなるころに/酸っぱい遺産/果てしのない嘘/シナガワ戦争
表題作の前の2編は導入部といった趣。
表題作からの3編は重く、「それでいいのか?」と思ったが、最後は主人公が一段階レベルアップして、いいところに落ち着いた感あり。
そして、「さすが、お蔦さん!」と声を揚げたくなる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ元女優であり,元芸者である粋な「お蔦さん」という老女を探偵役に据えた連作ミステリ短篇集。狂言回し的な位置付けで,中学生の滝本望という少年が用意されている。物語の舞台は,東京の神楽坂。望の両親が,父の仕事の都合で北海道に転勤しており,神楽坂には望と祖母であるお蔦さんが残っているという設定である。
滝本家は,代々男性が料理をするという家柄であり,中学生でありながら望は,かなりの料理の腕前であるという設定。設定だけ見ると,かなり特殊な作品である。日常の謎系のミステリだが,ややブラックなテイストに仕上がっているのも特徴の一つ。個々の物語は緩やかにつながっており,滝本望が恋心をいだく石井楓という少女を巡るストーリーが展開する。ブラックなテイストは好みなのだが,個々の作品のミステリとしてのデキはそれほど高水準ではない。ミステリというより,主人公の「お蔦さん」を含む,犯罪絡みの物語を楽しむという雰囲気の作品。評価としては★3かな。個々の作品の所感は以下のとおり
○ 罪かぶりの夜
中学生が,恋愛感情を抱いている相手のために,犯罪者になろうとする話。というか,恋心を抱いている相手を利用して犯罪者にさせようとする話。ブラックなテイストの作品で読後感の悪さはなかなかのもの。
○ 蝉の赤
学園祭で展示されていた絵画が破損するという謎を解明する作品。ダミーの解決では犯人がカラス。真相は挫折していた画家が破損させたというもの。凡作。
○ 無花果の実のなるころに
振り込め詐欺がテーマの作品。孫だと思っていた人物が振り込め詐欺の犯人というなかなかブラックな読後感の作品。実は犯人はいい人だったのかも…という救いはあるが…。
○ 酸っぱい遺産
お蔦さんが,芸者時代の客の遺言により,株式を相続するという作品。相続人から相続放棄をするように言われるが…。相続をめぐる人間関係のドロドロが描かれており,やはりテイストはかなりブラック。創業者のじいさんに似た相続人を同族会社から追い出し,裸一貫から会社を興すように仕向けたという話。ミステリとしての謎は皆無だが,お蔦さんの人柄がよく描かれている良作。
○ 果てしのない嘘
滝本望が恋心をいだく石井楓という少女をめぐる話。石井楓の母が,望の同級生である小坂翠の父親と不倫をしたことがあり,小坂翠の父親を恐喝しようとしていたという話。滝本望と石井楓の父である乾蝉丸という画家が,真相を楓と翠に隠すという嘘を突き通すことを選ぶ。これもダークな話。
○ シナガワ戦争
中学生同士の喧嘩の話。全くミステリ的な要素はない。凡作。 -
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座敷童やかぐや姫伝説などを盛り込んだ時代ファンタジー。
人間の罪悪感を映し出す目を持つ、イオという睦月童の女の子。前半は、大店の若旦那である央介とともに、江戸の街中で起こる事件の解決に乗り出す話で進められるが、後半は一転、その睦月童の力の根源である睦月神と対決する話へと移っていく。
前半の、睦月童の不思議な力を使った事件解決の話をもう2、3話読みたかったかも。後半の対決編もかぐや姫とか八百比丘尼伝説が盛り込まれて面白かったのではあるが、前半から後半への転換が性急すぎるのが残念だった。
結末は、果たして明るい未来、過酷な未来のどちらを予感させるものか、考えさせられるものであった。神様と言えど、人間に対して万能とは限らず、試練を与えるものなのかな。後味の良くない終わり方ではあったけれど、決して不快ではなかったのが良かった。 -
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おめえの鏡は罪じゃあなく、人に残った人らしいところを映すんだ。人にとっていちばん大事な、あったかい心だ。
ある東北の村から日本橋の酒問屋に招かれた一人の少女・イオ。彼女は「人の罪を映す」という不思議な目を持っていた。荒れた生活を送っていた酒問屋の跡取り息子・央介は、彼女の目をみたことで激しい良心の呵責に襲われ、かつて自分が犯した罪を贖おうとする。やがて更生した央介とイオは、彼女の目を使って、江戸で起こる数々の事件を解決していくことに。しかし、イオの出生の秘密を知る侍が現れたことで、二人の運命は大きく動き始める……。
人にとって「罪」とは何か。そして「許し」とは何か。イオの不思議な能力の源泉に隠された秘密とは何か。そしてイオの過酷な運命を、央介は救うことができるのか。 -
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不思議な力をもつ睦月童のイオと酒問屋の跡取り・央助との交流を描いた江戸時代を舞台とするファンタジー小説。
4話まではイオの力を使って人々を改心したり、事件を解決するなど畠中恵の『しゃばけ』シリーズのような日常ミステリを扱った作品のように感じるが、5話以降はイオと睦月童の謎に迫っていくことがメインになり4話までとは内容が異なってくる。そのためミステリ的内容を求めると肩透かしをくらうかもしれません(とはいってもそこまでミステリしているわけではないが)。
西條作品を薦めるなら、この作品よりも『千年鬼』の方がファンタジーとしては楽しめたのでそちらをおススメします。