池永陽のレビュー一覧
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賑わってるけど乾いた場所。コンビニ。
オーナーは珈琲店を開きたかったが、妻の希望でコンビニを始める。しかし、その矢先、子供が轢き逃げに遭い他界。間も無くして、まるで後を追うように妻も交通事故で鬼籍に入る。
生きる意味を見失い、なりやげな経営のコンビニに人々は集う。七篇の物語。
コンビニで働くバツイチのパートに恋に落ちた極道。「ユビ、ゼニ、ケジメ」本気ならまず堅気になりなさいと言われ...
女優を夢見て上京し、舞台監督に体を許すが失声症に...
博打打ちの天性のクズ男に、これじゃいけないと分かっていながらも別れられない水商売の自分。そんな中生真面目な中年に結婚を申し込まれるが、クズ男が刺し殺され...
オヤジ狩り少年と援交娘。ある日、犯行現場を押さえられ、それを見られた誰かに鞄の中に入れられた手紙は中原中也を引用した恋文が...
60代狭窄症の淑女と70代初老の恋。純潔を貫く爺さん、本当は抱かれたい淑女。何故もそんなに爺さんは手を出さぬのか。敬虔なクリスチャン...最期は命を賭して...
読者に余韻を与えるこの筆力、凄いな。
人間模様、悲喜交々だな。久しぶりに良書です。 -
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老人たちの静かな喜び
鋳物職人として働いてきた作次が退職をして毎日家で過ごすようになると、果たして何をして過ごせばいいのかと戸惑い、悩みそしていらだちすら感じるようになった。普段の生活の中でだんだん彼は独り言が多くなっていった。その内、猿が彼の頭に座っているのに気付いた。作次だけに見えるこの猿は彼の独り言の聞き役なのだろうか。
作次が住む地域に「ちゃちゃ」という喫茶店があり、そこでほぼ毎日午前中は近所の仲間二人とおしゃべりで暇を潰している。彼らは皆、老人特有のひがみや被害者意識いわゆる疎外感を抱いているから、おしゃべりといってもほとんどが愚痴り合いだ…
作次が喫茶店の娘の悩み相談に乗っているところでは、娘の一途な恋心を傷つけないように上手く心をなだめ、娘が将来の希望の職業であるデザイナーへの道に気持ちを集中させるのに成功する。
作次は息子夫婦との同居生活をしている。息子の嫁に最近無言電話が掛かってきていて気になるのだ。不倫でもしているのかと勘ぐる。しばらくして、嫁の方から過去の不倫の件で脅されていると打ち明けられて、是非止めさせて貰いたいと頼まれる。
更には、健造の夫婦仲の悪さの愚痴を聞いたり、逆に夫婦仲の良い正光夫婦の自慢話に耳を貸したりと付き合いに忙しい。ただ、作次は年齢からか体力面や精神面で衰えを見せ始める。ある時、作次は家で失禁をしてしまう。そしてそのことで作次は落ち込む。しかしそこにある息子の嫁の下着を見て連想し、想像を膨らませることで気を紛らわせ、失禁で落ち込んだ自分を慰めてその場を逃れるのだが、もちろんそんな不徳な自分に気付いて反省もするのだ。
息子の嫁から頼まれていた不倫相手の社長に会いに行くが、社長は作次が予想していたような人柄の人ではなく、非常に紳士的な対応に安心する。
こうして作次は息子夫婦との共同生活にも喜びと幸福を感じるのである。しかし相変わらずふだんの生活を送る中、独り言が益々増えていくのである。
老齢期はいわば不毛の時期だとも言える。何か実りあるものを得たい、暗い夜空に煌めく星を見たいと願うのは何も老人だけに限らないが。毎日独り言をブツブツと言いながらも生きる意欲を失なわないことが大切だと、この物語が教えているようだ。
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珈琲屋の人々第三弾。
以前の第二弾を読んだのが3年前だったので内容をよく覚えていないが、“昭和の夜のドラマ”という雰囲気は、やはり色濃く感じる。
前科のある珈琲屋のマスター、宗田行介(そうだこうすけ)、幼馴染で想いあう関係の辻井冬子(つじいふゆこ)、同じく幼馴染の島木。
悩める人々は迷える子羊のように珈琲店へと足を運ぶ。
口の重い行介にかわって、商店街一のプレイボーイで話術の巧みな島木が話を聞き出し、冬子が思い切ったアドバイスや審判(!?)を下すこともある。
良いトリオかもしれない。
結果として行介の人殺しは商店街を救ったため、英雄視される一面もあり、子供の頃から住み続けた町でもあるので、石もて追われることはない。
しかし、“前科者を見る堅気の人々の目”というものが常に存在する。
行介を“人殺し”と好奇の目で見ながらも、救いを求める人々が珈琲屋を訪れてやまない、それはどういう心理なのだろうか。
共通するのは、悩みの他にある“罪の意識”というものだ。
皆、罪深い。
そして、非常に自分勝手だ。
それが人間というものなのだろう。
訪れる女性たちが口にする「男はずるい」という言葉、「人間は弱いから、自分では半分しか決められない。あとの半分は他人任せ」というセリフが鋭い。
行介は、責任を半分逃れた人の罪を代わりに背負い、悲しみ、欲を持たず、癒しの珈琲を出し続ける…まるでメシアのようではないか。
1巻目では秘めていた冬子の想いも、巻を追うごとにあらわになり、行介との関係は、この巻では各短編をつなげる一本の大きな流れになっている。
『恋敵』『ヒーロー行進曲』『ホームレスの顔』『蕎麦の味』『宝物を探しに』『ひとつの結末』『恋敵』 -
Posted by ブクログ
>頭頂部だ。
>頭の上に猿がいる。いくぶん・・・・
表題と言い、このふざけた様な書き出と言い、最初はユーモア小説かと思ったのですが。。。
先日読んだ「コンビニ・ララバイ」の池永陽のデビュー作。第11回小説すばる新人賞受賞作です。
主人公は息子と二人暮しの老人。息子が結婚して嫁さんと同居することになるのです。主人公は、突然家庭に入り込んできたこの若い女性が常に気になって仕方ない。そして、一方で自分が片隅に追いやられたような気もしてる。暇つぶしに行く喫茶店で会う友人は熟年離婚の危機にあったり、仲の良い夫婦ながら妙に訳有りそうだったり。
「コンビニ・ララバイ」と同じように、ちっぽけな日常の中で、小さな人間が、やるせないながらもどこか一生懸命に生きている。そんな姿を好感を持って描き出している作品です。
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Posted by ブクログ
1作目は違和感なく
珈琲屋の物語のとして、うまく作り方だねと思ったが。
2作目の『ちっぽけな恋』篇は、話によってかなり
ムラがあるような 気がした。
行介が 節くれ立った大きな右手を アルコールランプで
焼く描写が 何ともなくせつない。
『人を殺した手』とシンボライズされるが、その手だけが人を殺したわけではないだろう。
と思う。そして、それが贖罪なのか。罪を忘れないようにしているのか?
また、おとづれるヒトが、その手を見て、何らかの感慨を抱く。
そのシーンが たびたび、くり返されることが 読んでいて怖いのだね。
ここに出てくる人は、離婚歴があり、何らかのトラウマがあり、
それが、子供にまで及んでいる。
人殺しがマスターの珈琲屋が、駆け込み寺みたいになっている構成だね。
島木のもつキャラクターは、なんともいえず、憎めないオトコ。
しかし、友人でありながら、行介のかたくなな心を融かすことができないのはなぜなのかな?
冬子の想いが理解できるがゆえに、島木は プレーボーイだけでなく、もっと踏み込まなければ。
『特等席』
おでん屋の木綿子。美人でどこか陰があり、凛としている。
そんな木綿子に 島木は 惚れるが、一番の特等席に さえない山下がすわっている。
その山下は、妻子とも分かれ、ひとりぼっちで 生活していた。
木綿子に惚れ、無理心中を企むが、行介の何げない励ましで。
ちょっと、心理的に飛躍があり、ムリがあるなぁ。
『左手の夢』は、すばらしかった。☆は10個くらいあげたい。
なんと言っても、君代だよ。そのセツナイ想い。
そして、なんとしても、心がとどけと 願う。
刑務所からでてきた 夫に対する 寛容でありながら辛辣な言葉。
夫のあいかわらずの行き当たりばったり。
『大人の言い分』
この物語は 果てしなく 奈落に堕ちていくようで つらかった。
理世子の どうしようもない マイナスパラレル。
勇樹が、おもいっきり,かわいそうなのだ。我慢が爆発する。
あぁ。島木が くどいた方が 別の展開があったのでは。
『ちっぽけな恋』
杉原千明。快活で、先走っている勝ち気な女の子。
軟弱な 彼氏 芳樹。必死に守ろうとする。
母子家庭と父子家庭。結構簡単に ハッピーエンドにもっていこうとする。
でも、芳樹。ちょっと 千明はやめた方がいいと想う。
それも、ムリがあるよ。
『崩れた豆腐』
60歳近くになると、たそがれ症候群になってしまうものなのか。
邦子の なんともいえないような 心の隙間に、
オカラコロッケが、花を添える。
勇三が なんともいえず しぶくて、いいなぁ。
『はみ出し純情』
自分の居場所がないというのは、なんとも言えず つらい。
『指定席』
木綿子が 再び登場。
木綿子と冬子が 鞘当て。
でも、なんでそんな風になるのだ。次に続けたいのかな。
しかし、なぜか この珈琲屋の物語 せつなすぎる。
次作 3弾目は ちょっと、読む気が起こらないなぁ。 -
Posted by ブクログ
淹れ立ての熱いコーヒー。
それが ごつごつした手で出される。
なぜか、そのヒーヒーのあったかさが、手を通じて伝わる。
口の中にはいり、身体も 『ほっと』する。
この珈琲屋に来る人は、何らかの悩みを持っている。
それぞれが 善良で、善良であるが故に悩み、
想いもつかないことを考えてしまう。
この珈琲屋のマスターは、行介。
インターハイにでたことがあるが、地上げ屋のヤクザの
横暴に 我慢できず、殺してしまった。
服役して もどってきたのだ。それで、オヤジのあとを継いで
珈琲屋をやっている。
幼なじみの冬子が、離婚して、もどってきて、
珈琲屋の片隅で 凛として 珈琲を飲んでいる。
実に、いろんな想いがこめられているからこそ、
悩みを持っている人は、自分の想いを すべて 行介に語る。
悩みがあっても、実に、おおらかで、あからさまだ。
それは、人を殺したごつごつした手にたいする
不思議な安心感なんだね。
アイロンと包丁 元子は 浮気した夫が許せなかった。
和菓子屋なのに、団子しかうれない店の手伝いしている省子は、
父親が 自殺しようか、自己破産しようか悩んでいることを聞き、
自分は 冷たい女だと思って、身体を売ろうとする。
その元締めの高校生に、行介は なにが大切なのかを説く。
介護している妻に、はやく死んでほしいと願う 杉良太郎に似ている夫。
レイプされた智子のボーイフレンドだった保彦は、智子の記憶をなくすために、
行介と格闘することを約束するが、保彦の父親が意外な面を見せる。
行介の同級生島木の店で働いている千果。不倫を清算し手切れ金をもらおうとする。
自分は、計算高い女なのかもしれないと思う。
行介に殺されたオトコの妻は、行介に好意を寄せるが。
ふーむ。それぞれの人の抱えているもの。
それを がっしり受け止める 行介。
何よりも、主役なのが 淹れ立ての熱いコーヒーだった。