池永陽のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
池永陽『珈琲屋の人々 心もよう』双葉文庫。
シリーズ第5弾。連作形式で綴られる物語。
とある理由で犯した殺人の罪で服役した過去を持つ喫茶店『珈琲屋』の主人である宗田行介と、かつて行介恋人だった冬子の恋の行方を軸に描かれる人間模様。
何故か行介の店には様々な問題を抱えた人たちばかりが集うようだ。今回は、かなり殺伐とした事件ばかりが描かれ、読んでいると人間不信に陥ってしまう。
確かに今の世の中には心の寄り所が少ないのだろう。だからと言って、過去に殺人事件を起こした行介を頼るのにも少々無理が出て来たようにも思う。
行介を兄貴と慕う刑務所で一緒だった山路順平、商店街に開店したおでん屋の女将・江島理央子の謎に包まれた心の闇を抱える二人が『珈琲屋』に通うようになると、大波瀾が起きる。
うおぉぉっ。順平はどうなったんだ。
本体価格750円
★★★★ -
Posted by ブクログ
前にドラマでこの話を見たことがあった。この原作の雰囲気を壊さない、いい出来栄えだったなと原作を読み終えて思った。
刑務所を出所した前科者が生きていくことは、日本社会ではなかなか難しい。さらに殺人犯ともなれば、周囲からの風当たりもいっそう強い。『珈琲屋』のマスター宗田行介はそんな現実を隠したり、逃げたりすることなく、出所後も自分の罪を背負いながら生きているのだなと感じた。
そんなマスターだからこそ、話せることがあり、相談できることがある。自分の中の隠したい、どろどろした気持ちをここでなら話せるかもしれない、そして答えをもらえるのかもしれないと思うのだろう。
7つの話があるが、どの話も読みやすく入り込みやすい。印象に残ったのは『妻の報復』。林田君がかわいそうだった。 -
Posted by ブクログ
『珈琲屋』の店主・宗田行介(そうだ こうすけ)は、義憤に駆られて人を殺め、服役していたことがある。
彼の「人を殺した手」を見に来る物好きな人々は決まって、屈折したものを抱えているのである。
人間は弱い生き物で、そこいらじゅうに罪の誘惑が転がっている気がする。
警察のお世話になるような大きなものから、自分の心の中に沈むだけの小さなものまで。
罪を抱えたままでは、何を手に入れても幸せにはなれないのだ。
どこで行動に線を引くか、どこで怒りを収めるか・・・
自分で決められないから珈琲屋を訪れるのだろうか?
重厚な作りのレトロな喫茶店。
高い窓から注ぐ光、十字架を背負った店主。
その前で懺悔する人々・・・
なんだか『珈琲屋』は教会のようで、行介のストイックな佇まいは、僧侶を思い起こさせる。
『ひとり』
犬だけが家族だった。
河川敷に暮らす老人の凄まじい孤独。
『女子高生の顔』
女の人生は顔で決まるのか。
良くても不幸、悪くても不幸。
それでも彼女は整形したい。
『どん底の女神』
やりきれない。
この世の不幸を全部肩代わりしてしまったかのような、ついてない人生の男。この後、どうなってしまったのか・・・
『甘える男』
明るいニートを続けるカッコつけの息子のために、母は歯を食いしばる。
『妻の報復』
本人たちはめでたしめでたしかもしれないが、浮気の道具に使われた男の子の気持ちはどうなるのか?という疑問が残る。
『最終家族』
仕事ばかりで家族を顧みなかった編集者が癌になる。
不仲だった妻の反応とは。
長年、妻の代わりに心の支えを務めてきたおでん屋の女将の決断が立派。
男はどこまでも甘ったれで自分本位、と思ってしまう。
『ふたり』
この本一冊を通してのヒロイン(?)黒木舞がしてきたことと、やっと出した答え。
米倉と犬の絆。
ーーーーーーーーーーーーー
主人公・宗田行介の幼馴染で、刑務所から出所してきた時にも、昔と変わらぬ態度で接してくれた、島木と冬子だが・・・
すみません、島木がうっとうしい。
今でもこういう人種はいるのか?
ちょっと綺麗な女性を見ると、たちまち目の色を変えて、歯の浮くようなセリフを恥ずかしげもなく並べ立てる。
昭和のプレイボーイ(死語)それも、バブル夜明け前の。
現代では、島木の行動と発言は、セクハラのイエローカード、それも限りなく赤に近い。
でも、島木がいなかったら、この物語はもっとずっしりと、暗く重くなってしまうのだろう。 -
Posted by ブクログ
池永陽『珈琲屋の人々 どん底の女神』双葉文庫。
シリーズ第4弾。殺人事件を犯して服役した過去を持つ喫茶店の主人・宗田行介とかつての恋人・冬子の恋の行方を軸に様々な人間模様を描く連作短編集。
未だに自分を許すことの出来ない行介、河川敷に犬と暮らす男、パパ活に走る女子高生、コンビニで働く訳ありの女性、母親と二人暮らしのニート、夫への仕返しで不倫に走る妻、癌であることを告げられた浮気な男、医学部を目指して勉強中という闇を抱えた若い女性……様々な人びとが悩みながら幸せを夢見る……
『ひとり』『女子高生の顔』『どん底の女神』『甘える男』『妻の報復』『最終家族』『ふたり』の7編を収録。
本体価格690円
★★★★