Posted by ブクログ
2016年08月31日
淹れ立ての熱いコーヒー。
それが ごつごつした手で出される。
なぜか、そのヒーヒーのあったかさが、手を通じて伝わる。
口の中にはいり、身体も 『ほっと』する。
この珈琲屋に来る人は、何らかの悩みを持っている。
それぞれが 善良で、善良であるが故に悩み、
想いもつかないことを考えてしまう。
この珈琲...続きを読む屋のマスターは、行介。
インターハイにでたことがあるが、地上げ屋のヤクザの
横暴に 我慢できず、殺してしまった。
服役して もどってきたのだ。それで、オヤジのあとを継いで
珈琲屋をやっている。
幼なじみの冬子が、離婚して、もどってきて、
珈琲屋の片隅で 凛として 珈琲を飲んでいる。
実に、いろんな想いがこめられているからこそ、
悩みを持っている人は、自分の想いを すべて 行介に語る。
悩みがあっても、実に、おおらかで、あからさまだ。
それは、人を殺したごつごつした手にたいする
不思議な安心感なんだね。
アイロンと包丁 元子は 浮気した夫が許せなかった。
和菓子屋なのに、団子しかうれない店の手伝いしている省子は、
父親が 自殺しようか、自己破産しようか悩んでいることを聞き、
自分は 冷たい女だと思って、身体を売ろうとする。
その元締めの高校生に、行介は なにが大切なのかを説く。
介護している妻に、はやく死んでほしいと願う 杉良太郎に似ている夫。
レイプされた智子のボーイフレンドだった保彦は、智子の記憶をなくすために、
行介と格闘することを約束するが、保彦の父親が意外な面を見せる。
行介の同級生島木の店で働いている千果。不倫を清算し手切れ金をもらおうとする。
自分は、計算高い女なのかもしれないと思う。
行介に殺されたオトコの妻は、行介に好意を寄せるが。
ふーむ。それぞれの人の抱えているもの。
それを がっしり受け止める 行介。
何よりも、主役なのが 淹れ立ての熱いコーヒーだった。