前の巻から1年半も間隔が開いて、もしかして打ち切り?なんてちょっと心配になったシリーズ第4巻。作者が「狼と香辛料VR」を作っていたからだそうなので一安心です。作者のシリーズに対する熱意や思い入れは大事です。
ていうか、帯に「コミカライズ始動」ってありますがマジですか。打ち切りどころではないじゃありませんか。もしかして再度アニメ化されたりして(さすがにないか)。楽しみにしておきます。
待たされた分、貪るようにラストまで読み進みました。
この巻で化けたのはコルです。
ダメンズだったコル坊は成長しました。世界の3/4が見えていないことを正直に認め、恥ずかしい二つ名が一人歩きしていることすら利用しながらも、自分の正義は曲げないコルなりの強さをミューリにも、そしてエーブ・ボランおばさまにも見せ付けています。
ボランおばさまに翻弄されつつ、その切り札を見破る鋭さは義父(候補)のロレンスに肩を並べることができたかもしれません。
一方ミューリは、今回は荒事担当でした。
照れてしまって「兄様」呼びを変えられないまま(母の「のう、ぬしよ」呼びはは偉大です。「ねえ、あなた」はミューリには20年早そうですし)、コルには見えない世界の残り3/4を見通し、兄さまの剣となり盾となって活躍します。
…ただ、ミューリの可愛いところが今回少ないのです。ハイランドやらエーブ・ボランに焼き餅焼いているか、狼になっているかのどちらかです。1巻の頃の「銀色のモフモフが飛び跳ねている」ようなところをもっと増やして欲しいかな。
そして今回のゲスト(ゲストなのかな?もしかしたら今後物語に深くかかわってきそうな感じもありますが…)、エーブ・ボラン。
上のほうでおばさま呼ばわりをしてしまいましたが、もともと持っていた危うさはそのままに、金の力で妖艶さを加えて魅力に磨きをかけています。今回は、王を脅しつつ商人を取りまとめて全員で教会を裏切り、さらに取りまとめているはずの商人を裏切って切り捨てる算段までした上に裏切っているはずの教会の司教を脱出させる準備までしているという底知れなさは相変わらずです。
今回あっさり青二才のコルに出し抜かれたのは、もしかしたら過去の思い出とコルが手元に欲しい思いが邪魔をしたのか、それとも意図的に手抜きをしたのかもしれません。金以外に信用できるものとしてコルを欲し、人ならざるものたちの真実を知る彼女は、今後もしコルたちが新大陸を目指す展開になるのであれば金主になるのかもしれません。
さて、宗教改革の炎が上がり、コルの後ろ盾になっているハイランドの本拠地であるウインフィール王国。コルとミューリはいよいよその国の第二の都市に上陸しました。
この後、王都で王に謁見することになれば、宗教改革に関する話はクライマックスを迎えることになるのでしょうけれど、第二の都市から王都までは(距離的には)目と鼻の先です。
旅という視点からは、もう目的地に着いちゃった、あんまり旅してないなあ、呆気ないなあという感じがあります。
今のところ「香辛料」シリーズと並行して4冊ずつ刊行されていますが、仮に同じ労力を「羊皮紙」だけを出すことに使っていれば今の2倍の8巻が出ている(乱暴な仮定ですが)勘定です。これは物語中盤としてふさわしい冊数のはずです。「香辛料」の8巻ではまさにそのボランと裏のかきあいと大立ち回りをやって盛り上がっていた頃。「羊皮紙」は半分のボリュームで同じところまで来ちゃったのかなと物足りなく思います。もう少し、いえ、もっともっと、旅を続けて欲しい。
そして、気になるのが今後の展開です。
新大陸と月を狩る熊の話が繰り返し出てきて、本当にミューリとコルの二人、もしかしたらホロとロレンスを含めた4人で新大陸に渡る展開があるかもと期待してしまっています。前にも書きましたが、プロテスタントの神父は結婚できるようなので、ミューリの懸念も解消します。
そんな中、意外だったのは「月を狩る熊」の足跡が海底にあるという話。大きさやその強さなど、もしかしたら「熊」は何かの例えや象徴(未来の科学技術とか、環境の大変化とか)かもしれないと思っていたのですが、海底に足跡があるのであればやはり人ならざるものなんでしょうか。なぜ他の人ならざるものを滅ぼしたのか、新大陸に渡って何をしているのか、そしてそんなところまでこの物語が語り継がれるのか。
ぜひ、次の巻は半年くらいのインターバルで出してください。お願いします。