大門剛明のレビュー一覧
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ネタバレドラマや映画を一本見終えたような満足感があった。
特に印象に残ったのは、千紗と陶子の対比の部分。後半になるにつれ、どんどん辛くなっていった。置かれた立場や運命によって人生は大きく変わってしまう。その描かれ方がとても虚しかった。
読んでいて感じたのは、どんな立場であっても公平で正しい判断をすることは難しい、ということである。犯罪を犯してしまう人にも、その後深く自分を責める人にも、それぞれの性格やこれまで育ってきた環境が影響している。もし自分が何かを判断する立場に立ったなら、自分の感情は抜きにして、相手と真剣に向き合い、その背景まで考えなければならないと思った。
今は全くできていないけど、そうできる人が人間性がある、といえるんだと思う。
また、裁判員制度についても改めて考えさせられた。実際に自分が裁判員に選ばれたら、とても重い責任を感じるだろう。だからこそ、日頃から自分の判断に責任を持ち、多くの本を読んだり、さまざまな人と向き合ったりしながら視野を広げていきたい。
犯罪を扱った作品としては、薬丸岳さんの作品の方が恐ろしく、重くて読み応えがあるように思う。本作は物語のまとまり方や登場人物の魅力が特に凄くて、最後まで引き込まれながら読むことができた。
この作家の作品はこれまであまり読んだことがなかったので、他の作品も読んでみようと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ法廷ものは独特の緊張感と重厚さがあるし、「人が人を裁くということ」といったテーマもあるので面白い。冤罪であるのなら、なぜ凶器に被告の指紋がついていたのかをメインの謎に据えておきながら、鑑定ミスだったというのは、普通の推理小説ならアウト。しかし法廷もので、指紋鑑定のやり方から詳しく説明されると納得できる。それに、そこに表れている考え方は優れて推理小説的だと思う。同一の指紋だと認定する方法は、一致点が十あろうが十二あろうが、結局、他人ならそれほど一致するわけがない、という常識的な判断でしかない。しかし明確な相違点が一ヶ所でもあれば、それは別人の指紋だと直接的に証明できるというのは、なるほどと思う。その場所にいなかったという証明は難しいので、他の場所にいたことを示し、その場所にいなかったことの証明とするアリバイの考え方に似てると思う。
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Posted by ブクログ
賑やかな関西弁の場面から入り、物語に入りやすい。テンポよく進む話は数十年の歴史を描く。
人情や各人の個性が繊細に表現され、多方面から筋の通った冤罪というテーマを掘り下げていく。
ボリュームはあるものの飽きずに読み進められる冤罪ミステリー。
また、モチーフとなった事件が存在するのも興味深い。
法律は人権や基本的な営みを道徳の観点から守ってくれるものと理解しているが、ひとたび頭のいい人がそれを保身や武器に使おうと試みるなら、法律ほど残酷なものはないと思った。また、法律は不備や欠陥があると危険なものだと、改めて思う。
ぜひ最後まで読んでほしい。
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ネタバレ「結局被害者遺族にとって犯人ってのは道端に落ちた泥まみれのパン切れみたいなもんだ」
「汚ねえパンなんぞ普通は食べねえが、飢えていたら食うしかねえ。がつがつとな。その状態が被害者遺族の状態なんだと。犯人を死刑にしても空腹は埋まらない。一時の飢餓状態から脱するだけでかえって腹を壊すかもしれない。お前にはそんなパンの一切れもない。
だがそれを嘆くな、決して死にはしない。飢えに耐えてもっといい食い物を探すんだって言っていた」
完全無罪 が好きで読んだ大門剛明2作目
完全無罪と同じテーマの冤罪事件と死刑制度の2軸のストーリー
冤罪で死刑になった息子の助けるために奔走する父と被害者の妹、それぞれの目線で事件とそのなりゆきが書かれている
全編を通して死刑制度を廃止するか存続するかがキャラクターごとに主張されていてエンタメ性に加えて読者に考えさせる本だった。
印象的だったのは、被害者遺族の苦しみと死刑制度を現行は簡単に結びついてるのではないか という問いかけ。 確かにこれまで自分は家族が殺されたらと想像すると犯人には死刑になって欲しいと考えるのは当然としていたけれど、万が一、時間があって家族を失った苦しみが癒えることができたら、その時犯人を死刑にしてほしいと考えてるか といえばそうとも言えないかなあと思った。
けど、それでもずっと苦しみが癒えず、犯人がのうのうと生き続けるということに絶望してその先の人生を生きていくことをやめる遺族も生まれる可能性も否定できないな、、とも思った。
結局、どっちの道になっても全員が納得する方法はないと思うけど、自分としては存続派かなと思う。
死刑囚になった人たちを見ていて、彼らが生きていて、自分の家族や友達が殺されたその先の人生はとても納得できないものだと思うから。 -
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ネタバレ「正義ってやつが一番悪だよな」
大門剛明一作目
状況証拠と捏造で自白させた事件の再審請求のストーリー
リーガルものなのに読みやすい文体でサクサク読めた
有森達が勝手に決めつけた結論ありきの捜査で冤罪事件が生まれてしまい、改めて偏見から生まれる結論の恐ろしさを感じた。
自分が正義だと信じるもののためなら暴力や証拠の捏造、加害者家族を追い込むことすらする作中で表現された「怪物」を全編を通して読むことができた。
有森にも被害遺族のサポートをしている面もあり、嫌いになれないがそんな人でも主観ですべてを推し進めた独善的な行為はやはり許せないという感情がある。
終章での真山の本音というか抱えている想いというのを知りたいと思わせられた。 -
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昭和18年、三重県伊勢市で一家三人が殺害される殺人が発生。事件当時、谷口喜介は娘の波子とお木曳を見に行ってたのにも関わらず逮捕され、死刑判決を受ける。弁護士の吾妻太一は谷口喜介の冤罪を証明するために奔走するが…
大河小説が好きだ。
Wikipediaによると、大河小説とは“一個人の生涯、あるいは一族の数世代にわたる歴史を、社会的・時代的背景とともに広範囲に描いた長編小説“。時代の移り変わりと共に、登場人物達が成長しつつ世代交代していく人間ドラマに魅了される。既読の大河小説では、『赤朽葉家の伝説』、『檜垣澤家の炎上』、『百年の時効』が非常に面白かった。私の本棚で“大河小説”でタグ付けしているので、興味のある方は是非。ちなみに大河映画だと『ゴッドファーザー』シリーズも好き。
話がそれたが、本書は「冤罪」をテーマとしたリーガルミステリかつ大河小説。冤罪を疑い真実を追い求めて奔走する検事や弁護士らが、時代を紡ぎながら信念を受け継いでいく。およそ80年の時を経て、事件はどう着地するのか。若干作為的な展開が目につくが、読みやすくて読み応えも充分。登場人物の中では本郷辰治が好漢。「法的安定性」について語るくだりが印象に残った。
「なあなあ、あんた」から始まる伊勢弁の語り口も情緒があって良い。私自身、三重県には少しだけ住んだことがあって、本書に登場する伊勢弁「〜やに」とか「ケッタ」とかなつかしかった。伊勢神宮にはまだ行ったことが無い。“神都“と呼ばれる三重県伊勢市山田。いつか行ってみたくなった。
山田風太郎賞 授賞