大門剛明のレビュー一覧
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単純な事件に思えたものが、後半次々隠されていた事実が出てきて、細かい伏線も回収される。なかなかのでき。人間ドラマとしても、人格高潔、頭脳明晰な登場人物が多数いる中で、俗物で打算的な穂積が最後、かつて愛した女性の敵を打つため、打算なく頑張る姿がかっこいい。
ただ、少し違和感があったのは、真犯人に無罪判決を出した判事が、皆、反省したり、後悔したりしてること。裁判というものは、たとえ判事の心証として「こいつやってるな」と思っても、証拠から間違いなく有罪と見なせない限り、無罪にするのがルール。だから彼らの判決も、真犯人を有罪にできなくても、誤判とは言えない。こんなことで法律家が悩むなか、という気はする。 -
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昭和18年4月20日、戦時中に行われた伊勢神宮の20年に1回の遷宮の最中に宇治山田で起きた一家3人殺人事件。
犯人とされた谷口喜助は無実を訴えるが聞き入れられず、死刑判決が確定する。
谷口の8歳の娘波子は、当日父娘が遷宮の川曳の見物で内宮にいたという。
波子とのふとした縁から谷口の弁護を引き受けた吾妻太一は、再審請求のため友人の弁護士花田勢太郎とともに事件を調べ始める。
新たな証拠が出るたびに裁判所の再審決定は得られるものの、法的安定性を盾にとる検察の厚い壁にはね返され続け、最中に谷口の死刑も執行され、気がつけば事件から83年、ついに父親の無実が認められた時が来たと思われた波子の前に明らかにされた真実は、実に意外なものだった。
拷問死した父乙吉の無念を晴らすため、埋葬された父の遺体から掘り起こした頭部を名古屋帝大まで運んだ伊藤捨次郎。
父のために戦った吾妻を襲って弁護士となり、谷口の再審に身を捧げた捨次郎は真実を悟っていたのか。
捨次郎が本郷辰治に語った岡麟太郎真犯人説にも別の意図が隠されていたか。
波子への一途な思慕から谷口の冤罪を晴らすためだけに司法試験に合格し、検事となった本郷。
真実を知らずに非業の死を遂げた本郷の生涯は、しかし、決して虚しくはなかった。
波子のために葬儀場に安置された遺体から奥歯を抜くまでした愛娘凪沙に励まされ、真実を追求する捨次郎の不肖の次男太一。
エリート弁護士の兄、エリート裁判官の妻を持つ太一だったが、一連の事件と一族の縺れた歴史を正すために兄にもできなかった決断をする。
いろいろな糸がもつれ合い、まさに禍福は糾える縄の如く浮き沈みの激しい展開は、息をもつかせない。
本郷たちが追いかけた岡家の闇はまさかの傍筋だった。
人生の敗者から立ち直りながらも劣等感を抱える太一が下した選択は、周囲の人々にどんな影響を与えるのだろうか。 -
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ネタバレドラマや映画を一本見終えたような満足感があった。
特に印象に残ったのは、千紗と陶子の対比の部分。後半になるにつれ、どんどん辛くなっていった。置かれた立場や運命によって人生は大きく変わってしまう。その描かれ方がとても虚しかった。
読んでいて感じたのは、どんな立場であっても公平で正しい判断をすることは難しい、ということである。犯罪を犯してしまう人にも、その後深く自分を責める人にも、それぞれの性格やこれまで育ってきた環境が影響している。もし自分が何かを判断する立場に立ったなら、自分の感情は抜きにして、相手と真剣に向き合い、その背景まで考えなければならないと思った。
今は全くできていないけど、そうできる人が人間性がある、といえるんだと思う。
また、裁判員制度についても改めて考えさせられた。実際に自分が裁判員に選ばれたら、とても重い責任を感じるだろう。だからこそ、日頃から自分の判断に責任を持ち、多くの本を読んだり、さまざまな人と向き合ったりしながら視野を広げていきたい。
犯罪を扱った作品としては、薬丸岳さんの作品の方が恐ろしく、重くて読み応えがあるように思う。本作は物語のまとまり方や登場人物の魅力が特に凄くて、最後まで引き込まれながら読むことができた。
この作家の作品はこれまであまり読んだことがなかったので、他の作品も読んでみようと思う。 -
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ネタバレ法廷ものは独特の緊張感と重厚さがあるし、「人が人を裁くということ」といったテーマもあるので面白い。冤罪であるのなら、なぜ凶器に被告の指紋がついていたのかをメインの謎に据えておきながら、鑑定ミスだったというのは、普通の推理小説ならアウト。しかし法廷もので、指紋鑑定のやり方から詳しく説明されると納得できる。それに、そこに表れている考え方は優れて推理小説的だと思う。同一の指紋だと認定する方法は、一致点が十あろうが十二あろうが、結局、他人ならそれほど一致するわけがない、という常識的な判断でしかない。しかし明確な相違点が一ヶ所でもあれば、それは別人の指紋だと直接的に証明できるというのは、なるほどと思う。その場所にいなかったという証明は難しいので、他の場所にいたことを示し、その場所にいなかったことの証明とするアリバイの考え方に似てると思う。
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賑やかな関西弁の場面から入り、物語に入りやすい。テンポよく進む話は数十年の歴史を描く。
人情や各人の個性が繊細に表現され、多方面から筋の通った冤罪というテーマを掘り下げていく。
ボリュームはあるものの飽きずに読み進められる冤罪ミステリー。
また、モチーフとなった事件が存在するのも興味深い。
法律は人権や基本的な営みを道徳の観点から守ってくれるものと理解しているが、ひとたび頭のいい人がそれを保身や武器に使おうと試みるなら、法律ほど残酷なものはないと思った。また、法律は不備や欠陥があると危険なものだと、改めて思う。
ぜひ最後まで読んでほしい。
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ネタバレ「結局被害者遺族にとって犯人ってのは道端に落ちた泥まみれのパン切れみたいなもんだ」
「汚ねえパンなんぞ普通は食べねえが、飢えていたら食うしかねえ。がつがつとな。その状態が被害者遺族の状態なんだと。犯人を死刑にしても空腹は埋まらない。一時の飢餓状態から脱するだけでかえって腹を壊すかもしれない。お前にはそんなパンの一切れもない。
だがそれを嘆くな、決して死にはしない。飢えに耐えてもっといい食い物を探すんだって言っていた」
完全無罪 が好きで読んだ大門剛明2作目
完全無罪と同じテーマの冤罪事件と死刑制度の2軸のストーリー
冤罪で死刑になった息子の助けるために奔走する父と被害者の妹、それぞれの目線で事件とそのなりゆきが書かれている
全編を通して死刑制度を廃止するか存続するかがキャラクターごとに主張されていてエンタメ性に加えて読者に考えさせる本だった。
印象的だったのは、被害者遺族の苦しみと死刑制度を現行は簡単に結びついてるのではないか という問いかけ。 確かにこれまで自分は家族が殺されたらと想像すると犯人には死刑になって欲しいと考えるのは当然としていたけれど、万が一、時間があって家族を失った苦しみが癒えることができたら、その時犯人を死刑にしてほしいと考えてるか といえばそうとも言えないかなあと思った。
けど、それでもずっと苦しみが癒えず、犯人がのうのうと生き続けるということに絶望してその先の人生を生きていくことをやめる遺族も生まれる可能性も否定できないな、、とも思った。
結局、どっちの道になっても全員が納得する方法はないと思うけど、自分としては存続派かなと思う。
死刑囚になった人たちを見ていて、彼らが生きていて、自分の家族や友達が殺されたその先の人生はとても納得できないものだと思うから。