大門剛明のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
大門剛明『不協和音3 刑事の信念、検事の矜持』PHP文芸文庫。
シリーズ第3弾。文庫書き下ろしの連作ミステリー。
これでシリーズは完結なのだろうか。ついに31年前に刑事だった父親が関係した冤罪事件の真相が明らかになる。面白かったが、取って付けたような最終盤の『不協和音』のくだりは不要だったように思う。兄弟の織り成す『不協和音』でも十分に納得できた。
別々に育てられた兄弟。刑事となった兄の祐介と検事になった弟の真佐人の二人が刑事だった父親の31年前の冤罪事件の真相に迫る。水と油の如く反目し合いながらも、どこかでお互いを認め、様々な事件の真相を突き止める祐介と真佐人。
本体価格780円
★★★★ -
Posted by ブクログ
「正義の天秤」の続編。
前作同様、章ごとに主人公を変えて描く連作短編集と言う形を取りながら、鷹野の恋人が殺された事件の真相に少しずつ迫っていく。
創業者の娘・佐伯芽依、元裁判官の桐生、ニートだった杉村、元刑事の梅津。
鷹野に「ブレーメンの音楽隊」と言われたメンバーだが、それぞれの個性を活かし、各々が裁判に臨む姿が端的に描かれる。
鷹野の登場シーンがほとんどないのが、この作品の凄いところ。でも的確なアドバイスはそれぞれの胸に響き、信頼関係が徐々に築かれていく様子もよく分かる。
そして、最終章の「正義の心臓」では鷹野の恋人が殺された事件の真実が15年ぶりに明らかになる。
リーガルミステリーでありながら、難しい用語はそれほど使わず、裁判のシーンも極力抑えめで、裁判に至るまでの被告人との人間関係を大切に描いている印象が強い。
ドラマ化をきっかけに読んでみたが、読んでよかったと思える作品だった。 -
Posted by ブクログ
1.著者;大門氏は、小説家・推理作家で、代表作は「雪冤」「罪火」「確信犯」等です。氏が追求するのはリアリティですが、死刑などの現場を見るのは困難です。リアリティの弱さを経験で補う為に、電車での押し屋アルバイト、新聞配達、派遣労働者・・・を体験したと言います。本書にこれらの経験が生かされ、作品に現実味を持たせています。「色んな事に興味を持ち、人がやらない事にチャレンジ」をモットーにしているそうです。
2.本書;8章構成(序章;あおぞら合唱団~終章;歌声)で、死刑制度と冤罪という2つの重い問題を考えさせる社会派ミステリー小説です。概要は、京都で二人の男女が殺されるという、残虐な事件が発生。容疑者として逮捕された主人公の父親が冤罪を信じて活動したものの、死刑確定。事件の真実に向けて、ストーリーは緊迫感を増し、驚きの結末を迎えます。ちなみに、本書は横溝正史ミステリー大賞とテレビ東京賞をダブル受賞しました。
3.私の個別感想(気に留めた記述を3点に絞り込み、感想と共に記述);
(1)『第一章;父と息子』より、「人は痛みがわからなければ相手を思いやる事はできません。苦しんでいるいるわけでないのに信仰心だけあるという方がおかしいんです。・・・本当に苦しんでいる人の為に役割を果たせなくては宗教の意味がありません(牧師)」
●感想⇒私も“神様”にお祈りすることがあります。しかし、“神様”の存在は分かりません。誰にも精神的に弱い面があります。人間は「何かに縋りたい、救ってもらいたい」と思うものです。縋るものは“神様”だけではなくて、語弊を覚悟して言えば、自分が信じるもであれば、なんでもよいと考えます。もちろん宗教でも良いのですが、親族、友人、知人、書物・・・色々あります。私は人に相談できずに困った時、苦しんだ時には、ある作家の本を読んで勇気付けられ、問題解決の糸口を自問自答します。上手くいかない時もありますが、こうして切抜けてきました。死んだら、この愛書を私の棺に一緒に入れてもらうように家族に頼もうと思っています。
(2)『第五章;一億三千万の仇』より、「人が人を殺していい理屈は何か―国民一人一人がこの問いにどう答えるか? これが死刑制度を議論する上で一番大切なのです。私は正当防衛的状況にしか求める事はできない(主人公の父親)」
●感想⇒死刑制度の是非は大変難しいテーマです。一般的には、“被害者側は死刑賛成、加害者側は死刑反対”でしょう。特に、冤罪での死刑は心情的にも悔しい限りです。裁判員制度を以てしても、事件の適正な判断は困難と思います。“疑わしきは罰せず”の真偽も定かでありません。現代は、誰もがこうした問題に直面する可能性があります。当事者になれば、重圧に押しつぶされるような難題で、簡単には答を出せません。
(3)『終章;歌声』より、「雪冤(無実の罪を晴らす事)⇒漢字にすればたった二文字のその言葉。だがそこには人々の色々な思いが重なり合っている。命に代えても冤罪を晴らそうとする者、それによって傷つく者、軽々しく使える言葉でないことだけは確かだ」
●感想⇒世の中には、雪冤と向合っている人々がいると思います。私達なら、どのように処すればいいのでしょうか。真実が見えない限り、やり場のない無念さで悩むでしょう。冤罪は身近でも起こり得ます。私には「問題意識と自分としての熟慮した考えを持つ事」という言葉しか見つかりません。
4.まとめ;本書は先にも触れたように、日本の死刑制度を考えさせる作品です。前半は少し回りくどい感じがしました。後半になると結末を知りたくて、早く読みたいという衝動にかられます。結末を読んだ感想は、期待したよりもあっさりで、もうひとひねりあると良かったと思いました。また、作中の人物が色々な考えを主張していますが、混乱します。人物と主張を再整理し、筋道だった展開を望みます。読者に考えさせるというフィクションの限界かもしれません。
さて、裁判員制度が2009年5月から始まり、私達も裁判員として選ばれ、刑事裁判に参加しなければならなくなりました。裁判員に選ばれたら、死刑制度にも、係る事もあります。本書はこのような重圧なテーマに接するキッカケになるでしょう。最後に、解説を執筆した山田氏の言葉で締めます。「日本社会に死刑制度がある限り、その賛否に拘わらず、我々は思考を止めてはならない。勇気をもって考え続ける義務があるのだ」。 ( 以 上 ) -
Posted by ブクログ
前作「完全無罪」に続く2作目。本作でも裁判員裁判が焦点となっている。
前作では法廷ミステリーではあるが、法廷を舞台にした記載が少なかったが、本作はいかにも法廷といった流れ。まさかの結論が待っていて、思わず「え?」となったが、法廷での緊張感などは伝わってきて、個人的には前作より楽しんで読めた。
本作は、裁判員裁判で死刑評決を受けた犯行当時19歳の少年の死刑が執行されたことを発端として、その時死刑評決を支持した裁判員が容疑者となる殺人事件が発生。その弁護をヒロイン松岡千紗が行うというストーリー。
人が人を裁くことの難しさもさることながら、裁かれない悪もあることが浮き彫りになる。むしろ、そちらのほうが悪いことも多々ある。ある意味、司法の限界点なのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ社会に上手く馴染むことが出来ない生活困窮者「負け組」達が社会不適合者という定義を作りそれをゴミとする産まれ持っての「勝ち組」の娘を狙う「誘拐事件」。身代金は「四百円」。
主犯の男はメンバーに一千万を渡す約束をし、手伝いを頼む。彼の内に秘めたる想いとは。
そしてそれを受け継いだのか否か一人残った男は何を感じ何を考え、どう動き出すのか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私にとって「趣味」が生活の中心でありそれをする為の「仕事」だ。どちらかに全ベットする事は出来ない。恐らく良い意味では無い「マイウェイですよねぇ」なんてセリフはこの人生で100万回言われてきた(産まれてから1日1回言われていたとして私の推定年齢2739歳)
自分とは違う人生を送る人間を否定し、陥れ、敵とみなして攻撃をする行為は見ていて気持ちの良い物では無い。仕事一途 それもまた人生。
自由と自堕落が紙一重な日々 それもまた人生。
ただ、「自分一人の世界」ではないので周りの人間のことを考え、尊重し、それを踏まえた行動であればわざわざ否定する必要は無いと思っている。
自分の行動に自信を無くし、他者を羨み、それを怒りの感情に変換してしまうのはとても勿体無い事ではないのだろうか。
作品説明から感じ取れる通りエンタメ性の強い構築だ。軽く読みながらスムーズに後半戦に突入し、フィナーレ目前の姿勢を整える前に誘拐劇にピリオドを打たれる。ここからがこの作品の見所だ。
沖田の信念と「誘拐犯」に身を落とすも消して失わなかった彼の心が、彼の意志を継いだ柳瀬の行動により勝ち組の権力に埋もれる事無く世に露呈される。
「周りなんて気にする必要ない」が大きく取り上げられている現代だが、言わせる側 言う側 この二組は相反する組織としてでは無く、共存する事は不可能なのかなぁ。傍観者としてでは無く、しかしこれからも静かに、好きな事をし、人を妬まず生きていきたいものだなぁ。 -
Posted by ブクログ
久しぶりに活字を読む時間ができたので。主人公が自分と同じ働く女子なので、感情移入はできました。田島のことを信じたいのに信じられない揺らぐ気持ち、窓を開けるか開けないかの決断する時の狂いそうなくらいの悩みが想像にたやすく、せりなちゃんと一緒に頭を抱えていました。
大どんでん返し!!ってわけではなかったけど、最後にたどりついた答えと、最後の田島さんの自白は真犯人の胸を思って涙が出るほど悲しかった。
出だしから田島側!って思ってましたか、飄々とした掴みどころのない最強検事滝川とイケメン秀才深町弁護士のバトルもっと見たい。
とても面白かったです。 -
Posted by ブクログ
正義とは何か?
ある者は『真実』と言い、ある者は『思考停止』と言い、そしてある者は『人を幸せにすること』と言う。
果たして、本当の正義とは?
大門剛明氏の短編集。全6話。
名門・師団坂法律事務所。
創設者を喪い、経営が傾く中、創設者の娘・芽依は、元医者でやり手の弁護士・鷹野和也を海外から招聘する。
しかし、彼は結果が全てと、大幅なリストラを敢行する。反発する者も多い中、着実にその実力を見せる。果たして、彼を突き動かすものは、何なのか?
それぞれの話を、リストラから残ったメンバーが1話ずつ主役となって弁護に当たる。
各話とも、次第に明らかとなる驚愕の真実とは?
そして正義とは?
いろいろ考えさせられます。
続編に期待。