大門剛明のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ評価は4.
内容(BOOKデーターベース)
刑事だった父は、本当に冤罪を生んだのか―。京都府警捜査一課の川上祐介は、妻を殺したと自白しながら、黙秘に転じた被疑者に手を焼いていた。そこへ、京都地検から「不起訴」の連絡が届く。それを決めた担当検事は、父が違法捜査を疑われて失職した際に別の家の養子となった弟の真佐人だった。不起訴に怒る祐介に、真佐人は意外な一言を返す。刑事と検事の信念がぶつかる連作ミステリー。文庫書き下ろし。
この一冊では結局お父さんが冤罪を出したのかどうか分からぬままでモヤモヤ。この先が読みたくなる内容であった。
刑事と検事の絡みは興味深い。なかなか面白かったがこれはシリーズ -
Posted by ブクログ
大門剛明『優しき共犯者』角川文庫。
プロローグで既に主人公のどろ焼き屋の店主・鳴川が死体遺棄の犯人と解り、この先、どのように事件が展開していくのか非常に興味深かった。また、少しずつ明らかになる鳴川の優しさに満ちあふれた人物像に物語に引き込まれていった。
かつて鳴川が働いていた製鎖工場の女社長の翔子は倒産した製鉄所の連帯保証債務を押し付けられ、自己破産に追い込まれる。翔子に密かな思いを抱く鳴川は金策に奔走するが、そんな中、債権者の長山が翔子の製鎖工場で殺害される。一計を案じた鳴川は長山の死体を運び、自殺に見せ掛けるのだが…
大門剛明の小説は『雪冤』以来読んでいるが、常に高いレベルにある一連 -
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花火大会の夜、ひとりの少女が殺害される。
殺人犯である若宮と、被害者の母・理絵。
何故若宮は少女を殺害したのか。
若宮の心情を丁寧に描いていくことで、物語はより深いものになっているように思う。
事件の真相はいったいどこにあるのか。
すべてを知る若宮は、けっしてそのことを明かそうとはしない。
けれど、徐々に真実へと近づいていく理絵。
そして、若宮を取り巻く人間関係。
修復的司法という言葉を初めて知った。
加害者と被害者が対話をすることで、本当に被害者の痛みが和らぐのかはわからない。
どの程度有効だと思われているのかも、実際にはわからない。
けれど、この物語ではこの修復的司法というものが大きな -
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なかなか面白い構成の連作短編集。
序章で消防士の内畠拓也は、広川まどかという女性から作家の世良耕平の妻が失踪したらしく、確かめて欲しいと相談を受ける。世良の家を訪れた内畠は、世良から執筆中の原稿を読んで欲しいと言われ…
ここから、日本各地に伝わる怪談をテーマにした短編が5編続き、最後の『ぞろりん がったん』で全ての真相が明かされる。
なるほど。最初に短編を描き、序章と終章の『ぞろりん がったん』を書き下ろしで追加し、再構成して、ひと味違う作品として仕上げたのか。
短編の『座敷わらし』『言うな地蔵』『河童の雨乞い』『吉作落とし』『チロリン橋』のいずれも、怪談をテーマにしながら、ひねりの効 -
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ネタバレ「VOM」という言葉は時々雑誌等で見かけた事がある。偽善的な行為ではないか、と思わなくもない。読み始めた当初は特にそう感じた。被害者のためといいつつ、結局は加害者側と仲介者の自己満足の行為でしかないのではないか。
<ネタバレ>
「罪火」を読み進めていくうち、いつしか加害者が自分の罪への反省を深めていく姿に、徐々にではあるが、この罪人が「ひと」らしい姿に映っていく。そしてラストは...。読んでいる側すら救われる様な思いだった。加害者が自分の罪を真に自覚し、後悔するのは、自分に未来があると心の底から思った時であった。加害者に罪を償わせるという行為がなければ、加害者自身も救われないし、自暴自棄な状 -
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ネタバレ弁護士であり、子供の頃誘拐事件に巻き込まれたことのある松岡さんが、自分のトラウマである誘拐事件の容疑者と向き合い、21年前の真相に迫るお話。
事件を起こしたであろう一人を野放しにして、これから起こり得るかもしれない重大事件を考慮しないのもどうかと思うが、過剰にそれを信じ込むと冤罪(罪なき人を傷つける)可能性があることを知り、刑事の被疑者に対する向き合い方の難しさを感じた。
冤罪であった人が無罪と分かるが、大事な家族を殺されたことを根に持ち、復讐を実行する気持ちはとても理解できるが、その人に救いがあまりないのが悲しく感じた。また、犯人が意外な人で、内心……
とても作り込まれた素晴らしい作品