大門剛明のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ただただ凄かった。こんなに心揺さぶられる小説はいつ以来だろう?
世の中には冤罪が蔓延っていて、きっとそのまま罪を認めざるを得なかった人や、死刑になった人もいると思う。
この小説は、そんな冤罪と戦う弁護士たちの物語だ。
物語は、あるおばあちゃんの語りで始まる。おばあちゃんの名前は波子。昭和18年4月20日。長い物語の幕開けとなる。
波子は伊勢神宮で行われる遷宮という祭りを父親と見に行っていた。翌日は木曳をする父親。そんな父親の出番を楽しみに待っていた。
しかし、父親が木曳をするのを見ることは叶わなかった。なぜなら一家3人強盗殺人事件の犯人として捕まったからだ。
ここから、弁護士たちの長い戦いが始まる。
吾妻太一から伊藤捨次郎へ、そして本郷辰治、伊藤乙彦、伊藤太一兄弟へとバトンが渡される。
ラスト、驚きの真相が現れた時、太一の決断に心が震えた。
弁護士たちはみんな素晴らしい人たちばかりだったが、私はダントツで本郷辰治が好きだ。
いやぁ、素晴らしかった!
174回直木賞候補に挙がり、残念ながら受賞作にならなかった今作。これを抑えて受賞作となった『カフェーの帰り道』は絶対に読まなきゃいけないな。 -
Posted by ブクログ
mariさんの本棚から。
ありがとうございます。
500ページもありました。
分厚い。
この夏文庫本を変な持ち方して読んでいたせいで左手の小指を痛めております。
1カ月も引きずっております。
だから500ページの単行本を読むのに難儀しました。
持ちにくくて。
でもね、そんなのどうでもいいくらい(よくない)引き込まれてしまって。
章が変わるたびに“えっっっっ”となった。
うそ…って。
それにしてもなぁ。
ラストの真犯人が衝撃的すぎて。
うそやん…状態で呆けてます。
刑が執行された後の再審請求からの無罪判決って…なんかもう…何も戻ってこないじゃない。
戻ってきたのは名誉だけじゃない。
辛。
辛いなんて言葉で片付けられないくらい辛…
気分を変えよう!
このお話の舞台は三重県なのですが、私には三重県在住のお友達ができまして。
生きていると面白いこともあるもんです。
同じ三重ということでオススメしてみよう。
楽しい話じゃないけどいい本だからオススメしてみよう。
そう思って少し気分を楽しくして寝よう。 -
Posted by ブクログ
チャオさんのレビューをきっかけに、この本を手に取りました。ありがとうございます。
冤罪により死刑判決を受けた人物の無罪を訴え続けた、約80年にわたる物語です。再審制度について深く考えさせられると同時に、小説としても非常に楽しめる一冊でした。
まず驚いたのは、再審制度のハードルの高さです。やっとの思いで再審請求が認められても、検察の即時抗告によって覆されてしまう。「裁判できちんと白黒つければいいのでは」と、何度も思いました。
近年、再審制度は見直されつつあるようですが、まだ十分とは言えない現状があるようです。人が人を裁くことの恐ろしさを改めて感じるとともに、司法に携わる方々にはどうか謙虚であってほしいと強く思いました。
小説としての面白さも特筆すべき点です。物語は昭和から令和へと時代を移しながら進み、中心人物も世代とともに移り変わっていきます。それだけの歳月が、冤罪を晴らすためには必要だったということが伝わってきます。また、真犯人についても描かれており、これは小説だからこそ描ける部分だと感じました。
読み応えのある、すごい物語でした。 -
Posted by ブクログ
戦争中1943年(昭和18年)に始まり、1957年(昭和32年)、1985年(昭和60年)、2004年(平成16年)、そして2022年(令和4年)と5つの時を経て、80年前に父・谷口喜介を殺人犯として冤罪で捕らわれた一人娘・8歳の波子を主な語り手として、彼女を助けた弁護士・吾妻太一、その友人・花田勢太郎から始まる冤罪事件の再審を求める大長編ドラマ。その時に少年だった伊藤捨次郎も父・乙吉の拷問死の真相解明のため協力するが…。そしてその捨次郎が弁護士に、次に捨次郎弁護士の時代に不良少年だった本郷辰治が検事に、更に捨次郎の2人の息子・乙彦、(伊藤)太一が弁護士に、彼らの成長とともに時代を替えて、80歳を超えた波子と共に再審請求を続けていく壮大な物語り。最終段階では(伊藤)太一の娘・凪沙までが大きな役割を果たす。死刑囚の再審請求という現代の大きな社会問題にも視線を向けさせてくれる。素晴らしい感動のヒストリーだった!
-
Posted by ブクログ
昭和18年の殺人事件から死刑判決を受け昭和34年の死刑執行後も冤罪と戦い続けた人々の80年にわたる物語
冤罪を晴らそうと正義と信念に基づいて行動する元検察官の弁護士
戦時中という特殊な状況下、全ての事実は国の非常事態という大義名分のもとで有耶無耶にされていく
事実を隠蔽する体制派への挑戦
事実を事実だと声を上げることの難しい社会
それでも消えない人々の良心や正義が時代と世代を越えて継承されていく展開に人間への信頼感が高まり暖かい気持ちになった
一方で
「正義」という言葉がずっと頭から離れない
自分の正義って何だろう
どこにあるんだろう
正しさの軸足を踏み違えないように
憤りを感じた時にその矛先を誤らないように
「正義」って実は凄く危ういってことにも
気がついてしまった
-
Posted by ブクログ
《過去は変えられなくても、未来は変えられる》
レビューを拝読して読みたくなった作品。
世代を超えて受け継がれていく冤罪との闘いと、そこに関わった人々の人生を描くリーガルミステリー。
こちら「百年の時効」が好きな方は好きだと思う!♡
私はこちらの方が好みでした- ̗̀ ෆ( ˶'ᵕ'˶)ෆ ̖́
結構な分厚さでしたが、合間の語りの内容がとにかく気になって、グイグイ読み進めてしまいました!
事件そのものだけじゃなくて、戦中から戦後へと社会そのものが大きく変わっていく中で、人々の暮らしや価値観、言葉遣い、司法のあり方まで変化していく様が描かれていたことが印象的だった。
戦争という大きな出来事が、事件とは別のところで人の人生を変えてしまう。
その時代を生きた人たちの選択や苦しみが、何十年も後の世代にまで繋がっていく。
戦争の影響の大きさに驚かされ、改めて戦争の怖さを感じた。
冤罪についても重みや怖さ、決して単純な話ではないということを改めて感じたし、冤罪についての波子のある言葉が胸に突き刺さった。
一つの事件が人を動かして、人と人が繋がって、その繋がりがまた別の人の人生を動かしていくところがこの作品の一つの読みどころでもあり、胸熱ポイントでもあると思うのですが、彼らが抱いていた想いって結局はそういうことだったのだろうな。
とても大事なことですよね。
世代を超えても受け継がれていくもの。
時代とともに変わっていくもの。
自分たちで力を合わせて変えていくもの。
現実の司法の重みを感じさせながらも、心地よい余韻を残す作品だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ冤罪で息子を死刑された父親や被害者遺族、弁護士などの視点で死刑制度の是非や冤罪についての考えがストーリーと絡められていた。
学校で単純に習っただけの被害者感情や死刑制度の是非などが具体的かつ読みながら体感できるように描かれていて読んでいてとても考えさせられる。
死刑廃止を目指す者たちでも、その手段が人や立場で異なったのも印象的で、事件を起こして国民に決定的に意識を変えさせる者、目的のために当事者の真実を歪曲させて報道する者、冤罪被害者でありながらも冤罪と死刑制度を切り離して考える者と、具体的な例とそうなったストーリーを示されることで私自身の死刑の是非についての議論の理解が大きく深まった。
描かれているテーマも大きいが、ミステリーとしても犯人が全く予想できず、私自身が初めて社会派ミステリーを読むというのもあるが非常に満足の一冊だった。
-
Posted by ブクログ
初めての作家さん。
直木賞候補とのことで。
冒頭、時代や方言で読みにくいなと思ったのも束の間、どんどん引き込まれ、第一部と第三部、時代と共に文体も違ったテイストで、500ページ程の分厚さも、存分に楽しめた。
途方もなく長い年月。。当事者がどんどん亡くなる中、最後の最後まで、どこに終着するのか、ハラハラした。うーーん。まさか。。
何年もかけて追ううちに、真実よりも都合の良い結末を求めてしまったのだろうか。ここまで執着する意味とか、気付きながら引き返せなくなるほどに取り憑かれたように。
結果的に、全ての冤罪事件に関わる人たちの苦労が、泡になってしまうような結末、しかも、それはもっと前から隠されてきたことであり、誰かがどこかで断ち切らなきゃいけなかった。苦しい判断に、何が正解なのかと悶々となる読後感だった。
-
Posted by ブクログ
またしても激しく心揺さぶられる物語との出合いに感謝です。深い感動の後は、暫しその余韻に浸るべく言葉を上手く紡げません。冤罪をテーマとした重厚・骨太・壮絶な物語は、それほど価値ある読書体験となりました。
物語の舞台は、神が鎮座する「神都」と称される宇治山田市(現三重県伊勢市)。戦時中に、この聖地に似つかわしくない一家惨殺事件が起きます。当時8歳の少女の父が、逮捕・死刑判決を受けるも冤罪でした。少女は差別や偏見に負けず父を想い続け、熱意ある弁護士と出会って物語が動き出します。
昭和から令和にかけて、約80年にわたる冤罪との闘いです。司法の深い闇に、ただ一つの正義を求めて代替わりしながら挑み続ける弁護士たちの、執念の群像劇でした。法廷ミステリーというより壮大な人間ドラマの色が濃く、惹きつけられます。
戦時下で民衆の人権が無視され、国や司法の安定とメンツを守りたいが故に非道を行った検察側。時代に翻弄された理不尽すぎる運命は、家族にも社会的な死をもたらします。冤罪の恐ろしさと根深さをどこまでも突き付けられ、正義とは?と自問させられます。
伊勢神宮20年に一度の神事「お木曳き」の高揚感を効果的に挟みながら、人間の身勝手さや想いの深さ、命の儚さや愛おしさなど、奪われてはいけない尊いはずの人生を考えずにはいられませんでした。
こんな世の中ですが、諦めずに根気強く正していくのもまた人間なんですよね…。
折しも再審制度改正案が、法施行(1949)以来初の見直しで先月衆議院を通過しました。この改正案は、検察側による証拠の開示義務化や、再審開始決定に対する検察官の抗告の原則禁止などが柱で、果たして救済の実効性に確実につながるか、参議院での審議を見届けましょう。
昨年は、昭和100年・戦後80年に当たる年でした。相次いで発表された『神都の証人』(6.30発売)、『百年の時効』(8.20発売)、『デモクラシーのいろは』(10.2発売)は皆筆力ある傑作で、今読まれるべき作品揃いだと感じました。 -
Posted by ブクログ
良かったデス。面白い作品でした。
ちょうど少し前に、「袴田さんの」
袴田さんとお姉さんのドキュメンタリーを
テレビで見ていた頃でした。
この本は胸が苦しくなる作品でした。
あまりにも長い年月、しかも戻って来ない貴重な年月の物語です。
どこへぶつけて良いのかわからない憤りや、不条理に悶々としました。
これは物語であって、フィクションなのですが、
現実に起きている事件もあるので、戦慄しています。
冤罪が無実になって良かった良かった?だけでは終わらない物語になっていると思います。
その先の問題提起も孕ませていると思います。
いったいなぜこんなことが起こるのか?
いまも起きるのは何故なのか?
あの時どうすれば良かったのか?
この先の未来はどうすればよいのか?
それを阻むものの正体は何なのか?
作者の慟哭が聞こえるような気がしました。
今まさに国会でも審理中のニュースをよく目にします。
まもなく、法律は改正されるでしょう?