【感想・ネタバレ】鑑識課警察犬係 闇夜に吠ゆのレビュー

あらすじ

『正義の天秤』(亀梨和也主演)『婚活探偵』(向井理主演)『不協和音』(田中圭主演)など原作が数多く映像化されている大門剛明氏、文春文庫初登場の警察犬小説です。

主人公は鑑識課警察犬係に配属されたばかりの岡本都花沙。念願かなって警察犬係に配属となった岡本は、ベテランの警察犬アクセル号とコンビを組んで、捜査をすることに。岡本の「バディ」となるのは、通称「第二」と呼ばれている民間警察犬訓練施設の訓練士・野見山。野見山は元警察官で、名警察犬レニーとコンビを組んでいました。しかし、あることがきっかけになって辞職。いまは民間の立場から捜査の協力をしています。

本書は五章構成になっています。第一章は、岡本が赴任する前日譚で、主人公は野見山です。レニーに向けられた疑惑の真相と、野見山の決断を描きます。第二章から第五章は、岡本を主人公にして、野見山や先輩刑事の桐谷(第一章では新人犬係として出てきます)など魅力的な脇役を配置しつつ、日々の捜査を描きます。全て読切の短編として読めますが、全体を通じて大きな謎が隠されています。

実際、警察犬の出動依頼が多いのは、行方不明者の捜査で、近年は認知症高齢者の失踪に駆り出されることが多いそうです。当然、そこには認知症を抱える家族の辛さなどもあり、そういう「日常レベル」の捜査を扱うことで、他の警察小説とは違った人間ドラマを描けていると思います。そして捜査官と警察犬が苦労の末に「心を通わせる」ことができた瞬間のなんと愛おしいことでしょうか。

第一章「手綱を引く」は第75回日本推理作家協会賞(短編部門)の候補作になりました。
今後シリーズ化も予定しています。

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Posted by ブクログ

警察犬訓練所で働く凄腕ハンドラー野見山と鑑識課警察犬係に配属された新人の都花沙。
都花沙の相棒は老犬だが様々な事件を解決に導いたアクセル。
最初のうちは都花沙を鼻であしらい相手にしなかったアクセルだが徐々に都花沙を相棒と認め始めていく。
大先輩の野見山は不正の疑いで警察を去り、民間の犬舎へ移ってしまうがその真相は....
時には厳しく時には優しく犬と一緒に一人前のハンドラーになっていく都花沙の過程を描いた作品だ。
難事件を解決に導く犬。
感銘を受けた。

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2025年10月01日

Posted by ブクログ

大門剛明『鑑識課警察犬係 闇夜に吠ゆ』文春文庫。

連作短編形式の警察犬小説。

警察犬をテーマにした小説では、樋口明雄の『K-9シリーズ』が有名であるが、『K-9シリーズ』は主に山岳救助を描いているのに対して、本書は純粋に警察捜査を描いている点で興味深い。

警察犬の活躍と事件の背後にある人間模様が巧みに織り込まれており、非常に面白い。結末からして、シリーズ化されそうな感じがする。

『第一章 手綱を引く』。既読作。恐らく警察小説のアンソロジーで読んだのだろう。幾重にも謎が織り込まれた、非常に面白いストーリーである。第75回日本推理作家協会賞短編部門の候補作になったというのも頷ける。主人公の野見山は名警察犬レニーと共に様々な事件を解決していた。そんな野見山に二年前に起きた地下鉄爆弾事件の犯人選別に関して疑惑の眼が向けられる。★★★★★

『第二章 首輪をつける』。いよいよ本編の主人公である鑑識課警察犬係に配属されたばかりの岡本都花沙が登場する。念願かなって警察犬係に配属となった岡本はベテランの警察犬アクセル号とコンビを組んで捜査をすることになる。アクセル号との意志疎通に悩む岡本の前に現れたのは、民間警察犬訓練施設の訓練士である野見山だった。★★★★

『第三章 塀を越える』。岡本都花沙とアクセルが初出動で初手柄を上げる。物言わぬ犬の考えを感じ取るのもハンドラーの役目だが、なかなか難しそうだ。少年院からの脱走者がコンビニ強盗を働き、逃走する。行方を追う都花沙とアクセル。野見山とプリッツも捜査に加わるが……★★★★★

『第四章 ほじくり返す』。物語全体を通しての大きな謎の一端が少し見えて来る。最終話で地下鉄爆弾事件と野見山の因縁とが明らかにされるのだろうか。認知症の老女が行方不明になり、都花沙とアクセルに出動要請が来る。しかし、老女を発見したのは民間の警察犬だった。★★★★★

『第五章 闇夜に吠ゆ』。表題作にして最終話。短編の中に盛り込まれた謎と二転三転の展開にヒリヒリする。相棒のアクセルが亡くなり、都花沙は子犬のレニーを警察犬に育てようとする。爆弾犯として誤認逮捕された手嶋尚也。野見山は今もレニーが間違えたのか疑問を感じていた。そんな野見山の前にフリーライターを名乗る手嶋尚也とそっくりの稲山将太が現れる。地下鉄爆弾事件の真相は……★★★★★

本体価格770円
★★★★★

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2023年01月11日

Posted by ブクログ

警察犬とハンドラーの厳しい訓練、活躍、そして絆に胸打たれる。出動要請に備え、また、現場で気が逸れないように1日6回と排便訓練まで受けていることに驚く。行方不明者、爆弾はわかるけど遺体を見つける特別な訓練を受けてる犬もいるとは。近所にシェパードが飼われているが本当に身体も鳴き声も大きく警戒心が強い。警察犬になれる素質、向き不向きはあるけどどの子も一生懸命に頑張っているのを読むだけで涙が出てしまう。ひき逃げ、行方不明者捜索、色んな事件が絡むミステリなのでそちらも楽しめる。爆弾魔事件解決への続編はあるのか期待。

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2024年10月29日

Posted by ブクログ

警察犬とその担当ハンドラーとの物語。

・手綱を引く
・首輪をつける
・堀を超える
・ほじくり返す
・闇夜に吠ゆ

念願叶い鑑識課警察犬係に配属された岡本都花沙。そこでベテランのアクセル号と組むことに。
元警察官で今は民間の警察犬訓練所で働く凄腕の野見山の協力も得て、様々な事件捜査に奔走する。

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2023年12月24日

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警察犬とその係が主人公の警察小説。
警察犬とハンドラーが主人公というと『南アルプス山岳救助隊K-9』という人気シリーズがあるが、こちらもシリーズになるのだろうか。
5話からなる短編集で、それぞれに趣向が凝らしてあるが、文芸誌に掲載された第1章「手綱を引く」が、主人公の矜持が書き込まれていて読み応えがある。
第1章以外は、文庫のために書き下ろされた作品だとか。
それゆえか、1章の主人公は鑑識課警察犬係の野見山俊二だが、2章以降は警察犬係に新たに配属された岡本都花沙となっており、スピンオフ小説かのよう。

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2023年09月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

警察犬担当者から刑事になれるんだと言う事が分かったw連作で読み進んでいって・・・あれ?解決してない!と気づく、続き出すよね?納得してないからw警察犬に関わるエピソードも目新しいし、ひとつひとつの事件が過去の因縁・人間模様からなるべくしてなったと納得できる作者の物語を生み出す能力に拍手を送りたい(´・ω・`)

因みに、主人公は岡本♀一作目と違うのだが、大きな謎は一作目の野見山♂に関わることなので、シリーズ化をして解決に向かうとするならば・・・二人が付き合うのもいいな(年齢は倍以上ありそう)

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2023年08月21日

Posted by ブクログ

連作短編集5篇
警察犬とハドラーの絆を軸に行方不明者の捜査や脱獄犯の追跡、死体遺棄現場の発見などを解決していく。もと警察官の野見山の爆発犯で不起訴になった手嶋との確執は終わっていないので、続きが読めると期待している。面白いのでシリーズ化してほしい。

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2023年05月09日

Posted by ブクログ

フォローしている方のレビューに惹かれて買ってきた。

5つの話からなるが、第一話はベテランハンドラーの野見山が主人公。愛犬に向けられた疑惑とそれに対する彼の決断がかなり苦い話からスタート。
それを前日譚にして、第二話からは、念願がかなって鑑識課警察犬係に配属された岡本都花沙を主人公に、新米ハンドラーの彼女が愛犬とともに行方不明者の捜索やひき逃げ犯、少年院からの脱走者の捜査に奔走する日々が描かれる。
終わったかと思ったところからもう一捻りある各話の展開と、それらが第一話とつながっていく構成は、なかなかに面白く読めた。
ただ、警察犬が臭いを追う捜査は、雨が降れば捜査を切り上げなければならなかったり臭気選別だけでは犯人逮捕の決め手にならなかったりするところがやや地味かなあ。

全てが解決はしていない終わり方だが、作品紹介に『シリーズ化も予定しています』とあるので、続きがあるのね。

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2023年11月26日

Posted by ブクログ

警察犬。事件の犯人を追跡したり、行方不明者を捜索したり、シェパードなどの大型犬が多かったり、と、何となくのイメージはあるが、そういえばあまり詳しいことは知らない。
本作は警察犬を中心に据えた警察小説。この設定はなかなか珍しいのではないか。
シリーズタイトルにもなっている鑑識課警察犬係に配属となった警察官がハンドラーとなり、警察犬の指導や管理にあたる。犬とハンドラーの息が合うことが非常に大切で、ハンドラーは日々、犬の面倒を見ながら訓練を積み重ねる。
但し、組織には異動がつきもの。警察犬係も例外ではない。せっかくある程度職務に慣れても、人の側は出入りがある。犬がベテランであっても、ペアが変われば訓練は一からとなり、ある程度の訓練を積まなければ現場には出られない。
正規の直轄警察犬のほかに、民間から協力を求める嘱託犬という制度もある。この場合は民間で飼育・訓練されている犬のうち、警察の審査に合格したものが選ばれる。直轄犬は犬種が7種に指定されているが、民間の場合はこれ以外でもよく、チワワやトイプードルなどの小型犬が選ばれた例もある。
警察犬の活動としては、逃走犯人の臭いを元にした足跡追及、遺留品の臭いと犯人の臭いを結びつける臭気選別、犯人や行方不明者の臭いや気配を察知し見つける地域捜索などがある。基本的には、犬の優れた嗅覚を利用した活動となる。

本書は5章構成。
第1章、「手綱を引く」は、異例に長く警察犬係に所属しているベテラン野見山が主人公。相棒のレニーとは何度も手柄を上げている。野見山とレニーはある爆弾事件の容疑者を突き止めていた。だが容疑者はかたくなに犯行を否定する。果たして真相は。第75回日本推理作家協会賞短編部門候補作。
第2章、「首輪をつける」以降の主人公は若い女性警官、岡本都花沙(つかさ)。犬が好きで、警察犬係への配属を願い続け、ようやく配属されて期待に満ちている。パートナーはベテラン犬のアクセルに決まるが、新人か、と犬に舐められ、苦戦。そんな中、轢き逃げの捜査に関わることになり・・・。
実は第1章で野見山は警察を去り、民間の警察犬訓練所で犬の訓練にあたっている。ベテラン野見山には、警察が助言や協力を求めることもしばしばあり、都花沙も野見山とかかわっていくことになる。都花沙が警察犬係を志望したのは過去の経験が大きな理由であり、その理由も連作の中で徐々に明らかになっていく。
第3章「塀を越える」は少年院から脱走した非行少年を追う。第4章「ほじくり返す」では、認知症の老人の捜索に、嘱託犬のフレンチブルドッグが絡む。第5章で表題作の「闇夜に吠ゆ」は行方不明の遺体を探す。
各章はそれぞれ完結した形で読めるが、背景に第1章の爆発物事件が尾を引いており、最終的にはこの事件は未解決のままである。続編が構想されているのではないかと思われる。

警察犬に向いている犬・いない犬、爆発物の匂いは浮遊性である等、ちょっとしたトリビアが興味深い。
各事件の構成は巧みではあるが、いささか苦すぎたり、警察官の行動が組織倫理を逸脱しすぎているように見える部分があったり、というあたりが若干気になる。

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2023年06月05日

Posted by ブクログ

小粒で変化球の警察小説。警察犬とハンドラーと呼ばれるパートナーとの絆を描く物語。短編集ながら連作ものとなっており、物語的には地続き。やはり日本推理作家協会賞の短編部門にノミネートされた、最初の1編「手綱を引く」が良い。主役となる野見山が何を大切にしているかが分かり、物言わぬレニーがカッコイイ。警察小説では「矜持」という文言がスポットをあびるのだが、それに違わぬ作品だったと思う。

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2023年03月30日

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