大塚英志のレビュー一覧

  • 柳田国男 山人論集成

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    「柳田国男の「山人論」とは、日本の山中には先住民族の末裔が今も生存しており、その先住民族の姿を山人や山姥・天狗などと見誤って成立したものだという仮説である。」(大塚英志のあとがき)

    編者の大塚英志は「明治国家は抗争史の勝者としての天皇家の人々を軸に記紀に倣って歴史を描こうとしたが(略)柳田の山人論は「敗者」あるいはマイノリティーの側の視点を持った」ものだったという。「山人論は多文化民俗学という側面を持っていた」という評価もできるらしい。その評価に、私も同意する。

    とは言え、大塚さんの柳田傾倒・柳田礼賛には、少し引いてしまう面もある。例えば、せっかく一章を設けて、柳田国男・南方熊楠往復書簡を

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    2023年05月30日
  • 北神伝綺 上

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    小説版がリリースされたので漫画版を読み返し。学生時代はあまり内容は理解していなかったな。森美夏の画がカッコよすぎて。日本統治時代の台湾で大規模な抗日運動があり、日本人と和装をしていた台湾人が100人以上犠牲になっていたというのは恥ずかしながらすっぽり記憶から抜けていた。その報復として更なる原住民の犠牲者がいたことも。このへんきちんと勉強しないとなぁ。

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    2023年05月01日
  • 東大・角川レクチャーシリーズ 00 『ロードス島戦記』とその時代 黎明期角川メディアミックス証言集

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    2014年に東大で行われたメディアミックスについて行われたセミナー/インタビュー集。ロードス島戦記を通じて角川のメディアミックスを分析している。ロードスだけでなく、メディアミックスの方法論の評伝としても資料的価値は高い。

     なお、私はロードス島の小説、コンパニオン直撃世代であり、その視点からの評となることを了承いただきたい。

     本書の特筆すべき点としては、安田均、水野良やその編集者らの、ロードス島コンテンツ立ち上げメンバーの生の声が入っている点にある。そもそもTRPGから発したコンテンツであるが、ゲームとしての側面だけでなく、閲覧されるコンテンツとして関係者がどのように、楽しんでもらうもの

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    2023年04月07日
  • 「暮し」のファシズム ――戦争は「新しい生活様式」の顔をしてやってきた

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    戦争は必ず大衆への洗脳から始まる。現在議論されている「専守防衛」や「防衛力強化」にしてもしかり。人に流されて問題の本質を見誤ると道を間違う。

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    2022年12月18日
  • 神隠し・隠れ里 柳田国男傑作選

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    旧字体は基本改められているが、全体を通して難しかった。明治生まれの人の文書はやはり気合がいる、かも。
    しかしその中で柳田國男の発見したこと、考察したことを理解することが民俗学の中の気づきにもなる。

    ・多くの神秘談は老衰してもう山で稼げなくなった者が、経験を子弟に伝えようとするついでに言い残すのが普通であること。そうでなく面白げに話すのは受け売りの誇張の多い話しと見てよいということ。 遠野物語にも出てくる、不思議で時に恐ろしい話は、老衰してもう長くないと悟ったものがやっと口を開く、経験談なのだということが印象深かった。

    ・小児に「けさ」という名を与える例が全国的にあること。災難よけの意味があ

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    2022年10月27日
  • 黒鷺死体宅配便 1巻

    無料版購入済み

    一話完結で読みやすい。グロさは多少ありますが、そこまで嫌悪感はないです。オカルト的な部分がうまく溶け込んでて楽しい。

    #ダーク

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    2022年06月26日
  • ロリータ℃の素敵な冒険

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    20年ぶりくらいにサイコ関連の書籍を読み直している。ゼロ年代文学的な文章が肌にあってするする読めてしまうのでそのことがちょっと怖い。
    大江公彦が「彼」をモデルにしていることに、この話でようやく気がついた。

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    2022年06月18日
  • まんが訳 酒呑童子絵巻

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    絵巻の新しい読み方が実に新鮮で素晴らしい。
    内容は、『酒呑童子絵巻』『道成寺縁起』『土蜘蛛草紙』の三点。
    いずれも有名どころで筋は知っていたけれど、カニバってたり下巻があったりなんてのは知らなかったので有難い。
    続刊の『稲生物怪録』はすでに読み終えているので、『信貴山縁起絵巻』など、同時代の縁起物を続けて出してほしい。

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    2022年05月06日
  • まんが訳 稲生物怪録

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    江戸時代の絵巻物『稲生物怪録』を、絵巻そのままコマ割りを斬新に配置して現代語訳した、手に取りやすい一冊。
    知っているつもりでも抜けていた個所もあり、というか、山本五郎左衛門とのやり取りが全く思い違いをしていたり、改めの発見があって面白かった。

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    2022年03月10日
  • まんがでわかるまんがの歴史

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    考察が深くて楽しい。かなりボリューミーだが、これでも話を手塚に絞ったことでこの程度に収まった感じで、全然語り尽くされてはいない。
    個人的には、「桃太郎海の神兵」における動物たちの無個性化を指摘した箇所ににハッとさせられた。

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    2021年12月07日
  • 冬の教室

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    世界が冬に閉じ込められた世界で、夏が見たいと少女は言う。
    独特な閉塞感と静寂感に包まれた物語は、別の物語と繋がっているようだが、それとは関係なく胸の奥に潜むものを刺激する。
    世界へと足を踏み出す17歳の為の物語。胸の奥で17歳が足掻いている。

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    2021年09月12日
  • 「暮し」のファシズム ――戦争は「新しい生活様式」の顔をしてやってきた

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    あとがきの最後に
    ー戦争はかつて「日常」や「生活」の顔をしてやって来たのである

    この一言は 今のこのコロナ禍であるからこそ
    真に迫ってくる
    何もしらないことは罪である

    そんな今だからこそ
    自分の耳で聴いて
    自分の目で見て
    自分の頭で考えて
    自分の言葉で語ること
    の 当り前さ、大切さを
    改めて思う

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    2021年06月09日
  • まんが訳 酒呑童子絵巻

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    なかなか良い本だと思いました。漫画仕立てにして絵巻の鑑賞の仕方も自然に身につく。作るほうは大変だったのではないかと思いましたが、日本の絵巻をすべてこのような形でシリーズ化して進めてほしい。そう強く読後に思いました。

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    2020年11月28日
  • 黒鷺死体宅配便 1巻

    ネタバレ

    因果応報を死体から知る

    因果応報という言葉がふさわしい、そんな作品です。描写は少しグロテスクな部分もあるので、苦手な人にはオススメしませんが、話はよく出来ていると思います。死体なんて普通は見るだけで嫌ですが、これは続きが気になって読んでしまいます。

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    2020年07月18日
  • ミュシャから少女まんがへ 幻の画家・一条成美と明治のアール・ヌーヴォー

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    ネタバレ

    序章、終章を先に読む選択肢も

    P8 『信貴山縁起絵巻』、『鳥獣人物戯画』=まんが表現の起源が俗説。
    P72 "肩あげ"? このあたりに注釈無しというハードルの高さ。近代の文なんてすらすら読めません。
    P212 「第二軍」?と思ったら、軍隊の編成でした。有名なのは、乃木将軍の第三軍かと。
    P224 浅草パノラマ館 調べたら、結構本格的なものでした。確かに、死ぬことはないので、所詮は見世物ですけど。なので、いい例えでした。
    P268 今までの一条推しは?
    P305 絵における言文一致?と思ったら、P311で否定。
    P342 『少女まんが史』の引用が、男が少女まんがを読めない理

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    2020年02月10日
  • 夏の教室

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    夏の、冬の、海辺の、という教室3部作だがやはり圧倒的に冬がいい。時期ももっとも早く書かれており作者の思い入れも一際のように思える。夏の描写も悪くないのだが、冬に閉じ込められた街と嶝崎人魚のイメージはやはり圧倒的である。これにハマるとは未だに厨二病?

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    2018年10月15日
  • まんがでわかるまんがの歴史

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    まんが原作者・評論家による日本まんがの歴史を、まんが家がまんが化したもの。
    いわば、まんがを学ぶための「学習まんが」である。
    現著者がネコのキャラクターと一緒に講義する形式で、取っ付きやすく敷居は下げてあるが、骨格となるのはかなり骨太な評論であり、核となる視点がいくつかある。
    まんが化されているために、百聞は一見に如かず的にわかりやすいのが美点である。

    最初に「キャラクター」について論じた後、江戸期・明治期をざっとおさらいし、大正アヴァンギャルドを経て、昭和へと進む。
    まずは、ミッキーをはじめとするディズニーのキャラクターが「パーツ」で構成されていることに着目する。戦中・戦後の漫画家はこうし

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    2018年03月16日
  • まんがでわかるまんがの歴史

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    最初は鳥獣戯画~手塚~現代程度のことが書いているのだろうと思い軽く詠んでみたけど、全然本格的に漫画の歴史がかかれている。漫画における時代背景、戦時中のプロパガンダ、ファシズム下の思想、歴史の中で漫画がどういう役割を持ちどうやって表現を広げてきたかが詳しく書いている。手塚漫画が好きな人、漫画が好きな人は是非読んで欲しい。現代における漫画はどう時代に流れて行くのか30年後に見たときどうなるのか考えが深くなる本でした。

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    2018年01月08日
  • 八雲百怪(4)

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    3巻と4巻の刊行ペースが今までと違い過ぎてびっくり。また、しばらく空くのかな?雑誌連載では読んでいないので、どんなペースなのかは把握できないので、本屋さん行ってびっくりなわけです。

    八甲田山でコロボックル捜索と、甲賀三郎と松岡の前日譚。
    急激に富国強兵を目指し近代化を推し進める明治の日本。その流れの中、宗教・信仰の分野での近代化を進める松岡の若かりし頃の話。
    近代化=神殺しとなる理由がよくわからないですが、理論で説明できないものを解明し系統立てる、という意味が神殺しというのであれば、理解可能かなと。
    それを30年でやるというのは無理がある話ですが。

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    2018年01月04日
  • 感情化する社会

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    天皇のお気持ちに、正直自分は心を動かされた。しかし動かされたのが個人の心レベルにとどまらず政治にまで達すると確かに話は簡単ではない。ましてや「感情天皇制論」なる論理で問題を煽ってくると、なんとなく天皇機関説や226事件を思い出す。退位問題をあまく見過ぎていた。

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    2017年07月17日