あらすじ
時は江戸、寛延2年。備後国三次の武家の子息で、16歳の稲生平太郎は、肝試しのため比熊山に入った。その山にある「天狗杉」に触れると、物怪の祟りがあるという。果たして山を下りた平太郎の住む屋敷を、一カ月にわたって様々な怪異が襲う──。じわりと怖い、でもどこかユーモラス。江戸時代に実話として流布し、泉鏡花や水木しげるも愛した怪談「稲生物怪録(いのうもののけろく)」を、まんがで楽しむ。
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Posted by ブクログ
ふと手に取ってふと読んでみたら、とっても興味をそそられた学術的漫画。
稲生物怪録は、1749年に現在の広島県三次市(みよし)に実在した稲生平太郎が16歳の7月から1ヶ月に渡って体験した怪異物語。
今で言う、ほんとにあったコワイ話である。
それが当時から江戸時代から現代に至るまで、冊子体や絵巻物、2次創作などあらゆる形で流布していくのがこの作品の人気を表すところ。
水木しげるや京極夏彦、わたしの大大大好きなぬ〜べ〜でも取り上げられていたなんて。知らなかった。
本作はその中でも、稲生家妖怪傳巻物という絵巻(文字が一切載っていない)の原本を、まさかのそのまま使用してコマ割りして漫画風にアレンジして読ませるというもので、なんて斬新かつ効果的な手法なんだと感心した。
全11話。(後半の解説を読む限り、どうも所在不明だけど上巻が存在してそう。)
平太郎の家に毎日起こる奇怪に対して、迷惑だなぁと腹立てながら朝ごはん食べたり、うわ面倒そうだと思って早々に寝てしまったり、割と順応している平太郎がシュールである。自宅で読んだのでしっかり大笑いした。
タイトルと、多くて4枚程度の絵しかないと、何が起こっているか結末が最初から分かってしまう(真横に妖怪がいたり、起こる怪異が同時に描かれているため)が、コマ割りを工夫することで時間の流れやその場の緊張感を作品に新しく吹き込むことができる。
顔の一部や余白など、非常に工夫が多く、巻物を横に広げて読むと一段と楽しいだろう。
ということで巻物を検索したら
国際日本文化研究センターのHPで原本が全部見れた。サイズまで分かって感動。
あとがきで監修の大塚英志さんが書いていたけど、
絵巻を漫画化する手法は今でいうところのWEB漫画の縦スクロールに当てはめるようなもので、とても汎用性が高い。
古典に対して好奇心がわく良い手法だと驚いた。