司馬遼太郎のレビュー一覧
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合理性を追い求めた米露に対して、偏ったこだわり(見た目の美しさ、ディーゼルエンジン)で戦えない戦車を作らせた旧陸軍。
目的の達成のための理性的な判断よりも思想的・抽象的な考え方を好んだ軍司令部。
それらは今の社会にも連綿と受け継がれているという気がする。
無駄な資料、無駄な会議、狭いこだわり、属人化した仕事。
けれど一方で、合理性を追い求めるだけでは物足りないのもまた事実。目的を達成するための合理的判断と、付加価値としてのこだわりや理想の境を明確にし、本当に捨てられないもの(それは魂に通ずるかもしれない)の立場を明確にすることこそ必要なのではないか。
戦時中、軍の無茶な作戦に不満を漏らす者はい -
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「翔ぶが如く」第1巻は、明治維新を詳細に描いた全10巻シリーズです。この第1巻では、川路と桐野、西郷隆盛の偉大さとその離反の理由、征韓論、島津久光、薩摩隼人等がテーマとなっています。
まず、川路と桐野の対立が描かれています。謹厳実直な川路と豪放磊落な桐野の対照的な性格が興味深く、彼らの行動は相手との間合いを保つことで偶発的な戦闘を避ける姿勢を学ばせてくれます。
次に、西郷隆盛の偉大さとその離反の理由についてです。西郷は部下や敵対した藩に対しても尊大な態度を取らず、その謙虚さから庄内藩に西郷遺訓が残りました。しかし、黒田や川路はヨーロッパを見た後、西郷の魅力が薄れたと感じました。新政府の腐敗 -
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ネタバレ著者が「坂の上の雲」を書き始めていたころ、「大阪の料理屋にこの作品に登場するひとびと(正岡子規・秋山好古・真之)のお子さんたち(と言っても54歳~72歳)に集まってもらった。このことは取材というものではなく私としてはかぼそいながらも儀礼のつもりでいた。見も知らない人間が自分の父について書くというのは、気味悪さがあるだろうと思い、せめて作者の顔を知っておいてもらいたいと思ったのである」
その後、そのメンバーのうちの正岡律(子規の妹)の養子となった正岡忠三郎氏夫妻と、彼の旧制二高時代の親友であった「タカジ」(詩人:ぬやまひろし=本名:西沢隆二)らとの交友を描く物語である。
恐らくこの本を読んだ -
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誰よりも早く洋式を取り入れた継之助。
一方、志や思考・思想は誰よりも武士だった継之助。特にこの下巻ではその色が濃くなる。
継之助は完璧主義でもなければ適当主義でもない人なのだろうと思う。あえていうなら最適主義といった人物。
複数の方が書いているが、幕末や明治維新の時代、学校の勉強ベースや歴史の書籍ベースだと、殆どといってよいほど、倒幕側の目線、あるいは幕府側の目線で書かれている。それがこの『峠』では長岡がとった『中立の立場』として描かれており、同じ時代でも全く違った世界を知ることが出来る。
峠の主人公である河合継之助、同じ時代を生きた坂本竜馬、うつけと言われた信長、皆若い頃は総じて周囲か -
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全8巻を読み終わっての感想
竜馬の凄いところは、この時代にあって世界という大局観を持っていたことに尽きると思う。まだこの本を読まず、何となく坂本龍馬のことを知っていた時は「薩長同盟の立役者」「北辰一刀流の達人」「昔はアホだった」位の認識しかなかった。もちろん小説だということを認識した上で、英仏が日本を狙ってることを認知し、幕府の体制は既に腐敗し限界だったことを説き、尊皇攘夷でも佐幕でもなく近代化への絵図を諸藩の英雄に認めさせ、仲間を増やして討幕に至る。この流れが非常にスリリングであった。竜馬には多くの人生の師匠が登場する。乙女姉さんを始め、千葉貞吉、勝海舟、松平春獄などなど。特に勝海舟から受 -
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天によって登場させられた人物
馴染みのない単語や厄介な言葉の羅列しかない今作だが、これほどまでに面白さがあるのは、やはり司馬遼太郎その人のおかげである。
徳川慶喜を歴史の授業で習ったのは小学生の頃。当時は坂本龍馬、西郷隆盛、勝海舟の物語に魅せられ、徳川慶喜など敗者くらいにしか考えていなかった。
しかし、今作を読んで別の一面があると思った。
それは"宮廷史劇"ぽいところである。
このやりすぎなくらいの物語が現実で実際に起き、他の人物と照合しても辻褄の合う面白さに興奮を隠せない。
理解者のいない苦悩とそれをものともしない胆力。
羨ましくもあり悲しい慶喜の人生に初めて魅せ -
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【30年ぶりに読む「坂の上の雲」】
最終第八巻は「敵艦見ゆ」「運命の海」「雨の坂」など。
「敵艦見ユトノ警報ニ接シ、聯合艦隊ハ直ニ出動、之ヲ撃滅セントス。本日天気晴朗ナレドモ浪高シ(p35)」
有名な日本海海戦開戦前の電文はやはり心動かされる。思い立って30年ぶりに全八巻という“一大叙事詩”を読み終えた感想としては、明治日本の若さと日本人の勤勉さ真面目さが眩しい!どうしても成熟した令和日本と比べてしまうが、どちらが良い悪いというものでもない。真之が作文した「聯合艦隊解散ノ辞」の結びの言葉である“勝って兜の緒を締めよ”は日露戦争やジャパン・アズ・ナンバーワン後の日本がもっと意識すべきだったな。