司馬遼太郎のレビュー一覧

  • 項羽と劉邦(下)

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    物語の終わりが項羽の最期、壮絶だったけれど、締めくくりには良かった。覇王別姫のシーンも読むことが出来ました.人間味のある魅力的な人物が多く描かれていて引き込まれる。印象に残るシーンが多いです。
    劉邦に仕える韓信の強さが際立っていて、独立心があれば「項羽と劉邦と韓信」もあったのでは、と想像してしまう。

    人間の魅力とはなにか、この長編を読みながら終始考えさせられました。

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    2025年08月07日
  • 花神(中)

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    村田蔵六という人物像を際立たせるかのように、周辺の人物の動きが描かれていました。幕末のことをよく分かっていないので、勉強になります。

    朴訥で地味だけれど、自分の信念を曲げず突き進んでいく蔵六。いいなあと思いました。

    でも、イネと蔵六の再会の場面では、女心に気づかない蔵六の態度がもどかしかった。
    本当は気づいていても、態度で示さないと分からないよー( ̄^ ̄)
    蔵六の立場や性格を考えればしょうがなかったのかな、それにしても・・・
    イネが病理学の講義を蔵六にした5日間は、2人にとって、生涯忘れえぬキラキラした時間であったと想像します。

    桂小五郎の人を見抜く目があったことにより、蔵六は表舞台にた

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    2025年08月06日
  • 花神(上)

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    主人公の村田蔵六(のちの大村益次郎)について、この小説を読むまで全く知りませんでした。

    緒方洪庵の門生であった村田蔵六。はじめは医者となり、蘭学を教えるは、軍艦をつくることにも携わるは、目まぐるしく変わる人生と、高い能力に驚きました。

    上巻で1番心に残ったのは、シーボルトの落とし子イネとの数奇な出逢いと、その後の関係性でした。蔵六はイネに蘭学を教授します。

    イネと蔵六の、男女の情愛や師弟愛を超えたもっと深いものを描こうとする司馬遼太郎さんの筆致は秀逸で、胸に迫るものがありました。イネさんの気持ちを思うと、辛すぎました。

    蔵六は、吉田松陰の埋葬日に桂小五郎に見出されます。その現場で蔵六は

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    2025年08月05日
  • 世に棲む日日(四)

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    疾風怒濤のごとく戦乱を駆け抜け、自分を信じ続けることができた類いまれな精神。師である吉田松陰への尊敬だけにとどまらず、具現化することができた高杉晋作。

    そんな晋作とは真逆な一面(妾の“おうの”とのやりとりや、実母や妻に頭が上がらない)も、4巻では見られました。晋作の、丸ごとの人間性が感じとれました。

    本作品を読み始めたときは、名前しか知らなかった吉田松陰や高杉晋作、幕末のドタバタ劇(?)が少しずつ分かってきてとても楽しかったです。歴史に残る事件が小説になっていると、こんなにも面白いのかと思いました。

    しかし、晋作が、27年と8ヶ月の生涯を終える最終章を読んでいるときは、感動以外の何もあり

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    2025年08月03日
  • 世に棲む日日(三)

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    過激な戦略論を持ち、即実行に移す高杉晋作。吉田松陰の遺志を受け継ぎながらも、師を大きく乗り越えていく、すごみがあります。

    長州藩の内部状況が、めまぐるしく変化する記述を読んでいると、自分もその中に身を置いているような切迫した気分になりました。

    蛤御門の変、四カ国連合艦隊の来襲時、晋作は獄中にいたという事実。長州、薩摩、会津藩の関係性等、小説を読むことで少しずつ理解出来てきたこと嬉しかったです。

    晋作は、ちょっとやそっとでへこたれない人であり恐ろしいほどタフ。時勢の波にひょいひょい乗って駆け抜けています。実は時勢の波が、晋作を迎えにいっているのかも知れない。

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    2025年08月02日
  • 世に棲む日日(二)

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    松下村塾の存続期間が3年だけとういうこと、そのうち高杉晋作がいた期間はたった1年であること、驚きでした。

    獄中の松陰と晋作の書簡でのやりとりに、師弟の強い結びつきを感じました。

    松陰が死罪になった後の描写が圧巻でした。
    「この日、江戸はみごとな晴天で、富士がよくみえた」
    どんな苦難も明るく乗り越えていく強靭な強さを持った、松陰の生前の姿を彷彿とさせる一文であると思いました。

    主人公は、松陰から晋作へバトンタッチです。

    晋作が、自分の生き方に悩んでいるときの胸の内を記したフレーズ
    「真の強者の道は自分の天命を知り、みずからの運命に満足することであるかもしれない」
    心に響きました。

    熱血

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    2025年08月01日
  • 新装版 箱根の坂(下)

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    ・時代が必要とした人物
    ・受動的 革命家
    ・聖(ひじり)
    が早雲に対する印象である。
    出自が不明であり、司馬遼太郎の空想も含まれるが、神格的印象が強い。
    社会制度が形骸化した時代だからこそ、早雲のような人材を歴史が求めたと言える。
    武家貴族が衰退し、足利家を含め上級武家が私闘に明け暮れる中、生産能力の向上により力を持った農民階級が現場を熟知した衆導者を求めた理想像に早雲があると感じた。
    滅私の傾向が非常に顕著な人物。
    時代が100年早ければ、おそらく馬の鞍作りとして生涯を終えていたと思われる。

    ・(敵に対して)村を焼き払うな。こちらも焼かぬ。
    ・(関東管領 扇谷上杉に対して)早雲は憤りもせず

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    2025年08月01日
  • 世に棲む日日(一)

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    全4巻中、1巻は吉田松蔭(吉田寅次郎)が主人公。

    松陰は、5歳から骨の髄まで染み渡る教育を施されており、9歳のときには講義をするまでになっていたこと、恐るべしでした。

    松陰さん、国防のことを考えながら日本全国を、てくてく歩きます。

    日本史の資料集で見た松陰さんは、キツネ目でちょっと気難しそう。その印象は読み進めるにつれ変わりました。師である佐久間象山に、堂々と自説を力説するところ、かっこいいです。

    フットワークのいい松陰さん、先見の明があり生真面目な信念の人、うぶで可愛い面もプラスされて描かれ、ファンになりそうです。

    1巻の最後で、金子重之助さんと出会い、意気投合してすぐ弟子にします

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    2025年07月31日
  • 風神の門(下)

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    いやーホントに面白かった。司馬遼太郎さんの名著を読むたびに感動する。忍者ものが好きな私には、特にこの作品は刺さった。
    ざっくり本音で分けると
    【好き】才蔵(主人公)、佐助、後藤又兵衛、真田幸村
    【嫌い】大野治長、秀頼、淀、淀のヘタレ側近供
    言われてみればそうなんだけど、最後にしっくりきた才蔵の言葉がある。
    「徳川が勝ち、豊臣が滅びるのも天命であろう。腐れきった豊臣家が、もし戦いに勝って天下の主となれば、どのように愚かしい政道が行われぬともかぎらぬ。亡びるものは、亡ぶべくしてほろびる。」
    腑に落ちた。

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    2025年07月29日
  • 翔ぶが如く(十)

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    全巻読み終えるのにかなり時間を要してしまった。

    改めてこの本を通じ、私個人の維新後や政府の成り立ちについて深く理解が進んだ。
    また主題である西郷隆盛について、これまでイメージとして持っていた偉人というぼんやりしたものから周辺の人間関係や思想などをもとに解像度が上がった。ただ著者が記しているようにどこまでいっても西郷隆盛の虚像であり、空を掴むような感覚はあった。
    その点、大久保利通や川路らを理解することが結果として西郷隆盛やその時代の空気感を理解させてくれたと感じる。

    まだ若い私が読んでも感じ得る部分は限られているのであると思うため、改めてどこかで読み直したいと思った。

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    2025年07月21日
  • 街道をゆく 4

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    ▼割と近畿です。

    【洛北諸道】要するに京都の北らへんです。
    【郡上・白川街道と越中諸道】京都から富山にかけてのあたりです。
    【丹波篠山街道】つまり兵庫の北部あたりです
    【堺・紀州街道】大阪府から和歌山県です
    【北国街道とその脇街道】滋賀県から福井県あたりです。

    ▼だからなのか、天皇さんについての話が多かった印象。

    ・南北朝正統論。南朝が正統である、と、決めた明治帝は北朝の子孫。その裏話。

    ・南北朝から応仁の乱、天皇家の貧しさ、困窮。一方で「足軽」という新しい勢力の台頭。
    (このあたりは、正規雇用というシステム?が壊れつつある2020年代にも通じるのかもなあとも思いました)

    ・古代。継

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    2025年07月18日
  • 風神の門(上)

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    才蔵と佐助のやりとりがいいですねー。ちょっとクスッとしてしまうところもありました。真田幸村はやっぱなぁ、男が惚れるのもわかる気がする。懐が深いというかね。器が違うなって。下巻が楽しみ。

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    2025年07月11日
  • 世に棲む日日(二)

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    吉田松陰と高杉晋作。性格の違う二人の生き様がそれぞれ凄い。吉田松陰は、抱いていたイメージと違って、真面目で不器用で正直でなんだかかわいらしい人だなぁと。
    その最後が呆気なくて残念でした。
    高杉晋作の戦争によって世を変えようとする考え。戦争は避けるべきだと思いますが、人や社会を変えるにはある程度のショック療法が必要だとは思います。
    難しい問題。次巻が楽しみです。

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    2025年07月10日
  • 世に棲む日日(一)

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    イメージしていた吉田松陰さんよりも、かなり不器用で
    なんだか可愛い人柄が描かれていて驚きました。
    武士の世界は厳しいですね。幼少期から、あんな厳しい教育…。真面目で学ぶことが大好きな吉田松陰さん。最後がどうなるかわかっているだけに辛いですが、読み進めていきます。

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    2025年07月03日
  • 街道をゆく 9

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    名文、名フレーズの宝庫。
    古代、上代から近世、近現代と歴史上の時代をあちらこちらと飛躍して土地土地のロマンに浸らせていただく。至高の読書体験

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    2025年06月29日
  • 燃えよ剣

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    喧嘩師、幕末に思想や主義主張ではなくいっぱしの喧嘩師として生きた土方歳三という視点での燃える小説。

    燃える場面には事書かないが、近藤勇との決別のシーンは本当に優しく柔らかく、固い意志も感じられて、文豪としての作者の筆力に打ち倒される思いだった。

    新選組や幕末に興味のある人だったら必読の書だと思う。是非読んで貰いたい。

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    2025年06月26日
  • 新史 太閤記(下)

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    本能寺の変で、信長という重しを取っ払い、身軽となった秀吉は知略、軍略をフル回転。織田政権内での上位の者たち、明智光秀、滝川一益、丹羽長秀、柴田勝家といった面々を次々と追い抜いていく様は、高い木を駆け上る猿のようだ。

    そして、そのテッペンには徳川家康。秀吉の駆け上がるスピードはやや滞るも、それも一瞬。小牧・長久手の戦いで家康に負かされたはずの秀吉だが、いつの間にか、家康に頭を下げさせてしまう。

    天下統一へ突き進む秀吉のさえ渡る才能の爆発。

    が、晩年の秀吉はその才能を枯らしてしまい、老いに悩まされる。という史実を作者は描きたくなかったのだろう。家康を配下に組み入れたところで、太閤記は結末。

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    2025年06月25日
  • 坂の上の雲(四)

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    ネタバレ

    乃木・伊地知ペアには読んでてもちろん最大級にイライラした。
    でも、最大の責任は藩閥政治に拘って乃木を押した山縣有朋にあるのでは?とも思う。それに、Wikipediaによれば、乃木軍への命令系統は曖昧で、混乱が生じたとも。
    能力が足りなかった、頭が硬すぎた等確かに一理あるんだろうなと理解したけど、その状態を理解しつつも変えられなかった、そもそもその状態にした組織にも大きな問題があったのでは?

    乃木希典は戦争で息子2人亡くし、「国民に申し訳が立つ」みたいなことを言ったらしい。明治帝にも愛されていた。人柄は尊敬される人だったんだろうなと、パパっとググって知り得た少ない情報でも、思う。
    でも確かに、

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    2025年06月23日
  • 新史 太閤記(上)

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    戦国時代の庶民なんて、虫ケラに過ぎない。どこへ行こうが、どこで死のうが、誰も気に留めない。そんな境遇に生まれた猿顔の醜男は愛嬌と思い切りの良さだけで、自らの人生を切り開こうとする。

    そして、彼はカネの力を知る。

    武力、腕力がもてはやされる時代で「猿」と呼ばれる男は、マネーゲームの信者となり、そのルールを使って成り上がっていく。彼に言わせれば、武力も、腕力も、人材も、女もカネでどうにでもなる。

    そんな作者独特の秀吉像が確立された上巻。絶対的権力者の織田信長の配下として台頭し、理想的家臣の黒田官兵衛を配下に組み入れたところで、下巻へ。

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    2025年06月22日
  • 豊臣家の人々 新装版

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    豊臣家ゆかりの人物にスポットを当てた短編集。
    司馬遼太郎さんが、豊臣家に潜入、密着取材してきたかのようで、とにかく面白かったです。秀吉の弟妹、妻妾、実子、養子など、一人ひとりの人物像がリアルに迫ってきました。豊臣家の内情がよく分かりました。

    司馬遼太郎さんの小説を読む前は、戦国の世は男性中心と決め込んでいました。北ノ政所、淀殿、2人の女性抜きにしては豊臣家は語れないとあらためて思いました。北ノ政所は、秀吉にとっても家康にとってもキーパーソンでした。

    政治的理由での結婚、離婚。人が外交上のやりとりとして物のようにあつかわれている悲しさ。戦国の世の悲哀が、じわりじわりと伝わる濃密な一冊でした。

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    2025年06月19日