司馬遼太郎のレビュー一覧
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村田蔵六という人物像を際立たせるかのように、周辺の人物の動きが描かれていました。幕末のことをよく分かっていないので、勉強になります。
朴訥で地味だけれど、自分の信念を曲げず突き進んでいく蔵六。いいなあと思いました。
でも、イネと蔵六の再会の場面では、女心に気づかない蔵六の態度がもどかしかった。
本当は気づいていても、態度で示さないと分からないよー( ̄^ ̄)
蔵六の立場や性格を考えればしょうがなかったのかな、それにしても・・・
イネが病理学の講義を蔵六にした5日間は、2人にとって、生涯忘れえぬキラキラした時間であったと想像します。
桂小五郎の人を見抜く目があったことにより、蔵六は表舞台にた -
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主人公の村田蔵六(のちの大村益次郎)について、この小説を読むまで全く知りませんでした。
緒方洪庵の門生であった村田蔵六。はじめは医者となり、蘭学を教えるは、軍艦をつくることにも携わるは、目まぐるしく変わる人生と、高い能力に驚きました。
上巻で1番心に残ったのは、シーボルトの落とし子イネとの数奇な出逢いと、その後の関係性でした。蔵六はイネに蘭学を教授します。
イネと蔵六の、男女の情愛や師弟愛を超えたもっと深いものを描こうとする司馬遼太郎さんの筆致は秀逸で、胸に迫るものがありました。イネさんの気持ちを思うと、辛すぎました。
蔵六は、吉田松陰の埋葬日に桂小五郎に見出されます。その現場で蔵六は -
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疾風怒濤のごとく戦乱を駆け抜け、自分を信じ続けることができた類いまれな精神。師である吉田松陰への尊敬だけにとどまらず、具現化することができた高杉晋作。
そんな晋作とは真逆な一面(妾の“おうの”とのやりとりや、実母や妻に頭が上がらない)も、4巻では見られました。晋作の、丸ごとの人間性が感じとれました。
本作品を読み始めたときは、名前しか知らなかった吉田松陰や高杉晋作、幕末のドタバタ劇(?)が少しずつ分かってきてとても楽しかったです。歴史に残る事件が小説になっていると、こんなにも面白いのかと思いました。
しかし、晋作が、27年と8ヶ月の生涯を終える最終章を読んでいるときは、感動以外の何もあり -
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過激な戦略論を持ち、即実行に移す高杉晋作。吉田松陰の遺志を受け継ぎながらも、師を大きく乗り越えていく、すごみがあります。
長州藩の内部状況が、めまぐるしく変化する記述を読んでいると、自分もその中に身を置いているような切迫した気分になりました。
蛤御門の変、四カ国連合艦隊の来襲時、晋作は獄中にいたという事実。長州、薩摩、会津藩の関係性等、小説を読むことで少しずつ理解出来てきたこと嬉しかったです。
晋作は、ちょっとやそっとでへこたれない人であり恐ろしいほどタフ。時勢の波にひょいひょい乗って駆け抜けています。実は時勢の波が、晋作を迎えにいっているのかも知れない。 -
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松下村塾の存続期間が3年だけとういうこと、そのうち高杉晋作がいた期間はたった1年であること、驚きでした。
獄中の松陰と晋作の書簡でのやりとりに、師弟の強い結びつきを感じました。
松陰が死罪になった後の描写が圧巻でした。
「この日、江戸はみごとな晴天で、富士がよくみえた」
どんな苦難も明るく乗り越えていく強靭な強さを持った、松陰の生前の姿を彷彿とさせる一文であると思いました。
主人公は、松陰から晋作へバトンタッチです。
晋作が、自分の生き方に悩んでいるときの胸の内を記したフレーズ
「真の強者の道は自分の天命を知り、みずからの運命に満足することであるかもしれない」
心に響きました。
熱血 -
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・時代が必要とした人物
・受動的 革命家
・聖(ひじり)
が早雲に対する印象である。
出自が不明であり、司馬遼太郎の空想も含まれるが、神格的印象が強い。
社会制度が形骸化した時代だからこそ、早雲のような人材を歴史が求めたと言える。
武家貴族が衰退し、足利家を含め上級武家が私闘に明け暮れる中、生産能力の向上により力を持った農民階級が現場を熟知した衆導者を求めた理想像に早雲があると感じた。
滅私の傾向が非常に顕著な人物。
時代が100年早ければ、おそらく馬の鞍作りとして生涯を終えていたと思われる。
・(敵に対して)村を焼き払うな。こちらも焼かぬ。
・(関東管領 扇谷上杉に対して)早雲は憤りもせず -
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全4巻中、1巻は吉田松蔭(吉田寅次郎)が主人公。
松陰は、5歳から骨の髄まで染み渡る教育を施されており、9歳のときには講義をするまでになっていたこと、恐るべしでした。
松陰さん、国防のことを考えながら日本全国を、てくてく歩きます。
日本史の資料集で見た松陰さんは、キツネ目でちょっと気難しそう。その印象は読み進めるにつれ変わりました。師である佐久間象山に、堂々と自説を力説するところ、かっこいいです。
フットワークのいい松陰さん、先見の明があり生真面目な信念の人、うぶで可愛い面もプラスされて描かれ、ファンになりそうです。
1巻の最後で、金子重之助さんと出会い、意気投合してすぐ弟子にします -
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全巻読み終えるのにかなり時間を要してしまった。
改めてこの本を通じ、私個人の維新後や政府の成り立ちについて深く理解が進んだ。
また主題である西郷隆盛について、これまでイメージとして持っていた偉人というぼんやりしたものから周辺の人間関係や思想などをもとに解像度が上がった。ただ著者が記しているようにどこまでいっても西郷隆盛の虚像であり、空を掴むような感覚はあった。
その点、大久保利通や川路らを理解することが結果として西郷隆盛やその時代の空気感を理解させてくれたと感じる。
まだ若い私が読んでも感じ得る部分は限られているのであると思うため、改めてどこかで読み直したいと思った。 -
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▼割と近畿です。
【洛北諸道】要するに京都の北らへんです。
【郡上・白川街道と越中諸道】京都から富山にかけてのあたりです。
【丹波篠山街道】つまり兵庫の北部あたりです
【堺・紀州街道】大阪府から和歌山県です
【北国街道とその脇街道】滋賀県から福井県あたりです。
▼だからなのか、天皇さんについての話が多かった印象。
・南北朝正統論。南朝が正統である、と、決めた明治帝は北朝の子孫。その裏話。
・南北朝から応仁の乱、天皇家の貧しさ、困窮。一方で「足軽」という新しい勢力の台頭。
(このあたりは、正規雇用というシステム?が壊れつつある2020年代にも通じるのかもなあとも思いました)
・古代。継 -
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本能寺の変で、信長という重しを取っ払い、身軽となった秀吉は知略、軍略をフル回転。織田政権内での上位の者たち、明智光秀、滝川一益、丹羽長秀、柴田勝家といった面々を次々と追い抜いていく様は、高い木を駆け上る猿のようだ。
そして、そのテッペンには徳川家康。秀吉の駆け上がるスピードはやや滞るも、それも一瞬。小牧・長久手の戦いで家康に負かされたはずの秀吉だが、いつの間にか、家康に頭を下げさせてしまう。
天下統一へ突き進む秀吉のさえ渡る才能の爆発。
が、晩年の秀吉はその才能を枯らしてしまい、老いに悩まされる。という史実を作者は描きたくなかったのだろう。家康を配下に組み入れたところで、太閤記は結末。 -
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ネタバレ乃木・伊地知ペアには読んでてもちろん最大級にイライラした。
でも、最大の責任は藩閥政治に拘って乃木を押した山縣有朋にあるのでは?とも思う。それに、Wikipediaによれば、乃木軍への命令系統は曖昧で、混乱が生じたとも。
能力が足りなかった、頭が硬すぎた等確かに一理あるんだろうなと理解したけど、その状態を理解しつつも変えられなかった、そもそもその状態にした組織にも大きな問題があったのでは?
乃木希典は戦争で息子2人亡くし、「国民に申し訳が立つ」みたいなことを言ったらしい。明治帝にも愛されていた。人柄は尊敬される人だったんだろうなと、パパっとググって知り得た少ない情報でも、思う。
でも確かに、 -
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豊臣家ゆかりの人物にスポットを当てた短編集。
司馬遼太郎さんが、豊臣家に潜入、密着取材してきたかのようで、とにかく面白かったです。秀吉の弟妹、妻妾、実子、養子など、一人ひとりの人物像がリアルに迫ってきました。豊臣家の内情がよく分かりました。
司馬遼太郎さんの小説を読む前は、戦国の世は男性中心と決め込んでいました。北ノ政所、淀殿、2人の女性抜きにしては豊臣家は語れないとあらためて思いました。北ノ政所は、秀吉にとっても家康にとってもキーパーソンでした。
政治的理由での結婚、離婚。人が外交上のやりとりとして物のようにあつかわれている悲しさ。戦国の世の悲哀が、じわりじわりと伝わる濃密な一冊でした。