朝倉かすみのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ本作は、人生の“平場”に立ち尽くす人々の静かな息遣いを、驚くほど繊細にすくい上げた物語である。劇的な事件も、華やかな成功もない。ただ、歳月を重ねた男女が再会し、慎重に、ぎこちなく、しかし確かに心を近づけていく。その過程がこれほどまでに豊かで、これほどまでに胸を打つものになるとは思わなかった。
若さゆえの衝動ではなく、経験を経たからこその逡巡。相手の人生を思い、自分の立場を思い、踏み出しかけては立ち止まる。そのためらいは弱さではない。むしろ、人生を真摯に生きてきた者だけが持つ誠実さの証であるように感じられる。本作は、その慎重さを否定せず、焦らせず、静かに肯定する。
タイトルにある「平場」 -
Posted by ブクログ
ネタバレ映画化ということで手にした山本周五郎賞受賞作。「恋愛ものはもういい」という敬遠を、鮮やかに裏切られた傑作。
50代の男女が苗字で呼び合う距離感や、金銭・家庭環境の生々しさは、まさに私たちが生きる「平場(ひらば)」のリアリティ。金銭事情や家族関係、地方都市の閉塞感。50代という年齢の「若くはないが、老い切ってもいない」微妙な立ち位置の描写がリアルすぎて、ヒリヒリする。
特筆すべきは、構成の見事さ。冒頭の須藤の死には最初何も感じなかったが、彼女の生い立ちや、中2の頃から「青砥」が初恋の人だったと知った後に読み返すと、光景が一変して涙が溢れた。
病に蝕まれる過程もドラマチックすぎず、淡々と、けれど確 -