石井光太のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
異国に住むせつなさとしたたかさ。生身の人間の息づかいを感じる。
ニッポンに住む外国人たちの、通常はスポットライトが当たらない部分に目を向けたルポ。
死後の遺体搬送、宗教、売春、病気の治療などに焦点を当て、外国人たちのナマの姿を浮き彫りにしていく。
多くの事例が紹介されているが、いずれの話も、へぇ、そうなんだと驚くとともに、ああそうなんだろうなと納得がいく。
特に興味深かったのは、韓国系新興宗教のホームレス支援。やむにやまれずいつの間にか宣教師になっている例もあるのだろう。
タイ人の占い師の家が売春をしているタイ女性の一種のコミュニティになっているという話もなるほどと思わされる。
イスラム教では土葬が基本であるが、日本の病院にはその事実があまり浸透していない。イスラム女性が、早産した赤ん坊を祖国に送って埋葬してやれなかったのを悲しむくだりには胸が痛む。
留学生などを除き、異国「ニッポン」の周辺部で暮らす外国人には、往々にして、それぞれの「国へ帰れぬ事情」がある。せつなさを抱えつつ、だが弱者として打ちひしがれるばかりではなく、したたかに生き抜いていく強さもまた持っている。
著者が言うとおり、社会のグローバル化はそうしたところから生じていく面もあるのかもしれない。
驚くのは、なかなか気がつかないような切り口で、社会の周辺部に目を向け、そこへ実際に飛び込んでいく、著者の姿勢だ。彼を突き動かしている「原動力」は何なのだろう。取材した相手と決して同化するわけではないのに、興味を抱かずにはいられない。その大元には「何か」があるのだと思うのだが。
対象の懐に飛び込んでいく行動力と、人々に向ける視線の温かさ。
不思議な魅力のある人である。
*この著者の本を読むのは『遺体』に続き、2冊目。
*コラムとして挟み込まれる軽めの読み物、「ガイジンに聞け」もおもしろい。インド人がいないインド料理屋の話が秀逸。うちの近所には、看板はネパール料理だけれど、ナンやカレーが主になっている店があるよ、そういえば。 -
Posted by ブクログ
ここ数年、日本国内の閉塞感の裏返しなのか、嫌韓・嫌中を始めとするナショナリスティックな風潮が強くなっているので、この本もそんな内容だったら嫌だなぁ・・・と心配しつつ読んでみたら、全くそうではないので安心した。
著者の在日外国人へのまなざしは、あとがきでの「日本に根付く異文化を見ることは日本の一側面を直視することだし、在日外国人を支えるものは、きっと日本人自身をも支えるものとなるはずだ。私たちはそれを歓迎すべきものとして受け入れ、日本のグローバル化をより豊かで輝かしいものとしていく必要があるのだろう」との一文に顕著である。
著者は1977年生まれ。年齢で一概に人を判断することは出来ないが、まだ30代でありながら、骨太で読み応えのあるルポルタージュ。他の著作も読んでみようと思う。
強いて言えば、サブタイトルの「在日外国人のカネ・性愛・死」が、ちょっと下世話な印象を与えるのが残念。もう少しいいのはなかったのかしら。 -
Posted by ブクログ
世界の飢餓について、貧しい国の現状について、ただ統計の数字ではなく実態をひとつづつ紹介するもの。
普段私たちの目に入らない情報がたくさんわかりやすく書いてあります。
飢餓であってもそれですぐ死に至るという話しではなく、それは彼ら、彼女らには日常で、その状況の中で生きなければならない。
本書の中にNGOや政府の支援の行き違いについて記述されている部分もありましたが、それでもこうした現状を目の前にした時に、私たちはただかわいそうで終わらせるだけではなく、何かできることをする必要があるのではないか。と考えさせられる一冊でした。
少しでも世界の貧困の問題に興味のある方にはお勧めします。 -
Posted by ブクログ
直視するのがつらい、現実の一面。
社会の底辺で生きる人々のルポルタージュ。
日本の生活からは程遠い、けれど地球のある場所では日常になっている、せかい。
最初の「物乞い」の章が衝撃的で、怖くてページをめくることが出来なくなった。
現実にはもっと悲惨な出来事もあるのだろう。
けれど、本と写真が強制的に一番強いところを見せる方法は、現実にはない衝撃がある。
実世界であれば、遠めに察知して、近づくにつれ心の準備が出来ていくこともある。
だが、本は否応なく強い部分を濃縮して提示する。
結局は、私のような心構えの出来ていない人間は目を背けてしまうこともあるのだ。
事実の感情を、ありのまま撮ろうとした著者。
その姿勢に私は感嘆する。
必ず知っておきたい現実を、提供してくれたからだ。
彼らと私の間にある違いは、生まれた環境のみだ。
それが逆なら私も彼らのように暮らしたろうし、この年まで生きてもいないかもしれない。
貧困の一面を見た。 -
Posted by ブクログ
仏教圏内の最貧民、物乞、障害者にスポットを当てたノンフィクション。イスラム圏内の方も壮絶だけど、こっちもひどい。
私自身の気持ちが引っ張られて鬱に何度なったことか。
でも、これが事実。それから目を逸らしちゃいけない。(イスラムの方でも書いた気がするけど。)そう思わせる、ぐろい本。読み終わっても「これ本当に事実?」て気持ちが消えないもの。平和ボケとか言われるの仕方ないかも。
この本を読もうと思ったきっかけは宗教と経済、国家というものが複雑に絡み合いつつもそして理想を語りながら決してなぜか理想の形にならないのが不思議だったから。
結果、ますます混乱するだけ、だったため、正直いまは宗教というものに疑問しかないけども、何億とも言われる人が信仰するには理由が必ずあるはず。それが少しでもわかるようになりたい。
まぁ、頭の中で理解しようとしてる時点でまだまだだめなんだろうけど。 -
Posted by ブクログ
『飢餓に瀕して、骨と皮だけになった栄養失調の子供たち。
外国の貧困地域の象徴としてメディアに描かれている彼らも、
ただ死を待っているわけではなく、日々を生き延びている。
お腹が膨れた状態でサッカーをしたり、化粧をしたりしているのだ。
ストリートチルドレンや子供兵だって恋愛をするし、結婚するし、子供を産む。
「餓死現場」にも人間としての日常生活はある。
世界各国のスラムで彼らと寝食を共にした著者が、
その体験をもとに、見過ごされてきた現実を克明に綴る。』(表紙より)
--------------------
この世に生をうける前から栄養失調であるという現実。
彼らは母親のお腹の中にいる頃から飢餓と戦っている。
運よく、命かながら生まれてきたとしても、
そこに待ちうけているのは希望の見えない現実。
飢餓、児童結婚、児童労働、子供兵、売春、HIV...。
明日生きていることさえ分からない、
ただ、毎日を必死に生きる彼らのことを、
僕は見て見ぬふりをすることしかできないのだろうか。
日本に生まれ、日本で育った僕にとって、
あまりにも非現実的な餓死現場で
彼らは確かに生きている。