あらすじ
公教育を問う衝撃のルポ
『ごんぎつね』の葬儀では、死体を煮ていた!? 物語を読み解けない子どもが増えている。公教育で子どもたちは言葉を取り戻せるのか。
単行本 2022年7月 文藝春秋刊
文庫版 2025年7月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
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Posted by ブクログ
『言葉を失った子供達』というワードにインパクトが強く、様々な事例に触れながら家庭や学校での教育によってここまで国語力に差が出るのか、、とゆとり世代としても恐怖を覚えました
Posted by ブクログ
「国語力を育てることって成果主義とは真逆で、目に見えないものなんです。」(p.129)
ここで言う国語力とは、言語力、思考力、判断力、想像力、表現力、調整力…という学問(教科)以前の、学ぶための力で、いわゆる教科としての国語力はその先のにあるものだと私には思われる。
学校では教科を教えることがメインで行われているが、それ以前の学習するための力をつける活動が意識されることは、よほど開明的な教師でもなければまずない。
やらなければいけないことを終わらせるだけで精一杯だからだ。全体のテストの点数が低かったらその学習は失敗なのだ。
今井むつみ著『学力喪失』では、遊びや体験の中で正しいスキーマを身に付けさせ、言葉が生きた力にならないと、学ぶ力は発揮できないことを学んだ。
国語力=学ぶための力とは、テストの点数を取らせることを目的とした教育だけでは身に付かないということだ。
根本からひっくり返さなければならないということじゃないか。ぼやぼやしてたら100年はかかる。
Posted by ブクログ
危機感。この本を読み進めて行って最初に思い浮かんだ感情だ。そしてそれは最後の方まで続く。だからこそ文章量は多いが読み進めなければいけないという想いに駆られ、思いのほかすらすら読める。
危機感の正体は、(世界の情勢はよく知らないが)日本はこのままどうなってしまうのだろうか、という思いだろう。SNSによる短絡的なコミュニケーションによって、要らぬ対立ばかりが起きて、益々世界が分断される。不幸の量が多くなる。子育て世代としてこの本を読んで本当に良かった。世界を良くしていくために教育はとても重要な要素であり、もしかしたら唯一の解決策なのかもしれない。先進的なAI技術でも無く、人はやはり人なのだから、根本的なコミュニケーション能力、つまり他人を理解する努力、他人と協力しようとする努力、忍耐力、様々な根源的な能力こそが最も大事である。いつかGACKTがツイートしてしたコミュニケーションについての文章を思い出した。あれはとても本質的なことを言っていたな。大人になってもずっと国語力を鍛えていかなければいけないと思った。それは自分の人生、周りの家族の幸福に繋がっていく。皆がそれをやれば世界だってよくなるのではないだろうか。そんなことを思った。
取りあえず、子どもは私立に行かせたくなった。国の偉い人たち、どうか教育にお金を使ってくれ。
Posted by ブクログ
リアル本にて。
センセーショナルなタイトルだが、決して釣りではなく、今世の中で起こっている危機を適切に表現していると、読み終わった今、思う。
本書では「国語力」という言葉を、「単純に情報として文章を読める能力」ではなく、「1つの物事の前に立ってじっくりと向き合い、そこから何かを感じ取ったり背景を想像したりして、自分の思考を磨き上げていく力」としている。
その「国語力」が低下したことによって、子供たちが国語の授業で、文脈に対して驚くような誤解をしてしまっているケースが、複数紹介されている。その誤解の内容は、あまりにも衝撃的で、子供がいる身としては、とても悲痛な気持ちになった。
私自身、2003年に高校を卒業したため、本書によると、国語力が下がり始めている世代に合致する。学生の6年間塾講師をしていたため、すくなくとも当時はすぐ下の世代とのやり取りは比較的あったと思うが、そのような危機意識はまったくもっていなかった。定量的に測れるものではないため、自分とギャップがあって初めて気付けるものであり、近い世代を見ても気付けないのであろう。
家庭・教育現場・政治、どこかひとつだけで解決できる話ではないし、個々人にできることは限られているかもしれない。でも少なくとも自分は自分の子供に対して本書で語られているような家庭の問題が生じないようにしたいし、これらの問題の対策に積極的に動いてくださる教育機関・政治家を選択することで、間接的にでも解決に貢献していきたいと思った。
子供がいる人、子供・若い人と関わることがある人、いや、全人類に読んでほしい。
Posted by ブクログ
本の読み方に関する書籍にて紹介されていたので読んでみました。
国語(言葉)を取り巻く状況と、その重要性を改めて考えさせられる。もっと若くからこのような本に出会っていたら、物事への向き方も変わっていたのでは?と思う。今は子供と向き合う際に、言葉の大事さを一緒に考えてます。
Posted by ブクログ
自分の感情を言語化することの重要性を身に染みて感じることができた。
犯罪を犯したり、いじめしたりする人たちのことを哀れに思う自分がいたが、これまで生きてきた環境がその行動に与える影響が大きいことを実感した。
そのような人を見下して自分は立派だと考えたこともあったが、ただ自分が生きてきた環境が恵まれていただけなんだと思う。何も誇れることではないのかもしれない。
悪い家庭環境を作る両親もどうかと思うが、彼らにもそうする理由があるわけで、その悪い循環を絶ちきるためにも子供たちへの教育が重要であると感じた。
自分は教育に携わる立場にはならないだろうけど、子供ができたときにはこの本を思い返してたくさん話を聞いてあげて、色々な経験をさせてあげたいと思う。
Posted by ブクログ
言葉を使うことが不得手であることが、社会で生きていくことに圧倒的に不利な状況を生むことと、それを克服する実践が紹介されている読み応えのあるルポ。
Posted by ブクログ
「ヤバい」という言葉で全て済まそうとする若者が増えていると感じる。語彙力がなければ、表現できることも少なく、能力を伸ばすことも難しいだろう。そのことを、多くの取材から示してくれる。また、その多くの取材から、解決策も模索している点でこの本は優れているいる。
Posted by ブクログ
言葉を読み取るというのは自分はできていると思い込んでいるからこそ、他人はできていないと思ってしまう。学校教育の中や社会での国語力をどう考えるかという点がとても興味深かった。国語力の低下について色々な要因が挙げられていたが、一朝一夕に解決できるものではなく、難しいものだと感じた。
Posted by ブクログ
うちの子も家ではずっとスマホで動画やゲームばかり、語彙が少なく言葉がなかなか出てこない。
読書を勧めようと思ったこともあったが、それにどれ程の効果があるのか自分でも分からなかったので結局そのままにしてきた。
もっと早くにこの本に出会っていれば、きっと子供と一緒に本を読んだろうな。
これからでも遅くないと信じて、子供の国語力を育てていきたいと思った。
Posted by ブクログ
読書苦手な私でも読みやすかった
私はゲーム大好きなので、ゲームとネット依存の話が印象深かった
確かに簡単な日本語や略語しか使わないかも…
ゲーム好きだからこそ、現実の言葉の大切さを忘れないよう気をつけたい
そして、どちらかというと私も国語力あるとは思えないけど、考える力と言葉を取り戻せる様、大人がこの事実を知り、意識を変えることが必要なのかな?と感じました
Posted by ブクログ
何気なく学んでいた言語。普段から発する言葉。日常生活に切っても切り離せない国語でもあるが、少し楽観視していた様にも思える作品でした。
なにより、冒頭で「えっ、本気?」と空いた口が塞がりませんでした。
子供を持つ親におすすめの作品です。
Posted by ブクログ
因果関係が100%確定したものではないけど、国語力の影響がここまで甚大だとは想像していなかった。言語化するためには、聞いて意味を咀嚼して周囲の状況も加味した上で表現しなければならない。そりゃ練習しないとできないよな。
「国語力とは、社会という荒波に向かって漕ぎだすのに必要な「心の船」だ」とは我が意を得た表現で、そういう土台となるものがなければ何も積み上がらない。
また、つまみ食いのようなプログラミング指導なんか、おそらく数年後には陳腐な技術でしかなくなっているだろう。技術の進歩スピードをナメるなと言いたい。
Posted by ブクログ
非常に興味深い本だと思う。国語力の低下というキーワードから出発し、その原因を社会格差、教育格差、SNSに見出し、丁寧な取材を通じて掘り下げている。特に最後の二章では、小学校や中学校での具体的な取り組みを紹介し、今後の教育のあり方を考える手がかりを示している。
一方で、学術的な研究書ではないため、論証の面では疑問が残る。極端な事例を列挙しているのではないか、そもそも国語力の定義が本書の事例に限定されていないか、などの懸念もある。その意味で、本書をきっかけに、まさに著者が紹介しているような「哲学的対話」を行うことこそ、本書の読み方としてふさわしいだろう。