石井光太のレビュー一覧
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石井光太の本は毎度のことながらぐいぐいと読ませる。それもそのはずな、ある意味のあざとさを感じさせるんだけど、取り上げる題材とか紹介されているエピソードとかが私の興味とわりと合うみたい。この浮浪児もしかり。
この本の題材「浮浪児」は戦後すぐからの上野(野上(のがみ)と俗称していたのだとか)あたりを根城にしていた子どもたちが中心。東京大空襲とかの戦災孤児のことかと思いきや変遷があって、当初はそういった子どもたちが多くを占めていたのが、だんだんと地方からの家出少年とかが増えていったのだとか。そこにヤミ市ができたりそれが発展してアメ横になっていったり、そこで暗躍したテキ屋やヤクザ、愚連隊とか、まあ生命力あふれる世界が描かれる。そこにはよこしまな考えが混じりつつも、日陰者どうしの助け合いや大人が子どもの面倒をみるといった世界があったよう。最たるものは「愛児の家」を立ち上げた石綿さたよとか、公以外にも私財を投げうって支援をした人がいたってこと。人々が情や責任感をもっていた時代だったのだろう。むしろ現代のほうがよほど気の毒な子どもたちがいるんじゃないかと思ったり。
著者はかつての浮浪児たちにインタビューもしている。皆さん、老人というべき年齢なんだけど、紹介されている人たちの限りでは、平凡な幸せを得た人が少ない感じがした。 -
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裏表紙に書いてある物語の概要を見て、妻がこういったもの好きかなと購入。軽い気持ちで読み始めた本作。
ハンセン病を題材にして描かれているフィクションということだが、作中の事実があったかのような描かれ方であり、ノンフィクションのように感じた。物語のどこにも読み手である自分を見つけることができなかったからかもしれないかな。
ただ、プロローグとエピローグで話が纏められていたので、読み終わりはとてもスッキリしていたなと感じる。
内容としては、[とても勉強になった]と言えば薄っぺらく感じるかもしれないが、やはり勉強になったと言わざるを得ない。
ハンセン病や、それに纏わるその当時の日本。今の日本から考えると嫌悪感しか沸いてこないし、蓋をしたくなるような事柄ばかりだった。適した言葉が分からないが、人が分別されていたように思う。
何よりも当時から70年も経ってないという事に驚かされる。戦争もそうだけど。
日本は急激に豊かになって、水洗トイレのように汚いものから目を背けるようになったのかもしれない。
だから、こういった歴史も知らなければ、昔を知ろうとする人も多くない。自分の生まれ育った地域の歴史すら知らない人も少なくないと思う。しっかりと日本人として学ばなきゃいけないな。
ハンセン病を通じて、少し前の日本を垣間見れる良著。
多くの人に見てもらいたい。 -
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ネタバレちくまプリマ―新書であるため、高校生・大学生向けに書かれているが、大人が読んでも心に留めておきたい部分がいくつも見つかった。
海外へ行くことは、「本人がその気になりさえすれば、あらゆるものが自分の肥やしとなりえる」。私自身は今海外に住んでいる。ただ、日々の忙しさに追われて、様々な文化の違いにあまり目を留めず何気なく過ごすことも多い。だが、よく考えれば看板一つをとっても、スーパーで並んでいる野菜一つをとっても、発見が多くあるはずだ。それをもっと活かそうと思った。
また、高校生・大学生の間にどんな考えを身につければ良いのか、また具体的に何をしたら良いのかという部分は、大人として彼らに伝える時に参考になるといえる。例えば、専門の勉強だけでなく、幅広い勉強をすることの意義が書かれた部分などは必読。 -
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パキスタン、マレーシア、フィリピン、タイ、イラン、スリランカ……、それぞれの地でアフガン難民の父子の確執に触れたり、エイズ禍に沸いた頃の都市伝説を検証したり、イラク難民の夫婦とともによくない筋に感化されイラクに戻ったと思われる息子の足跡を探したり、孤児たちの明るいもてなしを受けたりといった具合に、貧しさや戦争の惨禍などなどに取り巻かれ混沌としたアジアの街でアジアの人と出会ったエピソードが綴られる。
読みながら思ったのは、「この人(著者)、自分と似ている」ということ。どこが似てるって、体験が身にならないタイプだという点が。なかなか得難い体験をしているはずなのに、どこかさらっとしていてありがちな話になっている。話題自体は重たいものもあるのに、ガツンとくるものがない。残念……というか、エピソードの主たちがお気の毒。 -
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自らも被災者である関係者たちが、大震災で犠牲となった余りに多くの遺体に戸惑い、悲しみを飲み込み、それでいて尊厳をもって接する姿とその心の内に、尊敬と感謝するばかりであった。
耳に入る身内の遺体を前に慟哭する声を一心に手を動かし耐える姿に、その苦しさが強く胸を打ち涙がこぼれた。
大災害の際は生存者を如何に保護し支援するかに焦点が奪われがちになるが、犠牲者とその親族の対応について国や自治体だけでなくボランティアも含めて備えておかなければならないと強く感じた。
また、僅か1~2キロ先の津波の情報が地域全体に伝わりきっていなかったことにも驚いた。
本書は、3.11を伝えるノンフィクションとして貴重な一冊であると感じたが、一方で小説風のプロローグと下手な情景描写がリアリティーを失わせていた。
似たテーマを扱った作品として日航123便事故を題材とした「墜落遺体」を読んだが、当時の担当刑事の飾らない文章がよりリアルであった。
東日本大震災からの早い復興を祈願するとともに、犠牲となられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。 -
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日本は先進国の中で3番めの貧困大国だという。1日1.25ドル以下で暮らす「絶対貧困」に対して、相対的に可処分所得が少ない層「相対貧困」が日本の貧困の正体だ。
絶対貧困と相対貧困、それぞれの状態を、住居、教育、結婚、食事などの面から比較してみる、という試み。絶対貧困では住居が特定の場所に集まる(スラム)に対して、日本では同じ地域に貧困が混在してくる。絶対貧困者にはセーフティネットの種類が少ないが、逆に強固なセーフティネットがある。日本のセーフティネットは、一度その網から落ちてしまうと這い上がるのが困難だ。グレーを許容することで吸収している社会と、シロクロハッキリさせることで、大抵の貧困はクロに行かざるをえない日本社会。絶対貧困の決定的な貧しさは凄惨でありながら、日本にはないコミュニティが救いにもなっている。総じて日本の貧困は絶対的ではないものの、やさしさのかけらもないようだ。とはいえ、貧困がすすめば教育も消え、話し合う、理解する、ということ自体ができなくなる、とも。さて、日本は本当に恵まれているか? 話し合いや理解ができているか? 不安です。不安ですよ。