小谷賢のレビュー一覧
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加藤陽子著『それでも、日本人は戦争を選んだ』で紹介されていた書籍。
政策サイドから情報の要求を出し、情報サイドに情報を収集、分析させる情報運用"インテリジェンス・サイクル"。
陸海軍情報部はアメリカやイギリスに謙遜ない情報収集・分析活動を行っていながらも、政策サイドがその情報を合理的且つ適切に運用することができず、インテリジェンス・サイクルの停滞を招いた。
その結果がガダルカナルやインパール作戦、ミッドウェーやレイテ沖海戦への失敗へと繋がっていく。
情報部の地位の低さや組織のセクショナリズム、防諜の不徹底など、インテリジェンス・サイクルにおける構造上の問題を今も解決できないでいる日本に危うさを覚える。
過去の戦争をインテリジェンスの観点から見たことがなかったため、興味深い内容だった。 -
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現在戦争を継続するロシアとイスラエル、二つの国家のインテリジェンスに関する対談を収録した本。イヴァン四世のオプリチニキ、ロマノフ王朝の皇帝官房第三部などにしても、ロシアの機関は、諜報機関というよりは内部を抑圧、弾圧する傾向があると指摘される。また、戦時下の日本で、参謀本部ロシア課長林三郎は、ソ連の侵攻を予測していたことやロシアの対外政策や盗聴技術など面白いネタが盛り上がる。後半ではイスラエルについて語り合い、他人を信用しない、自分たちの力しかあてにしない、先制攻撃を躊躇しないなど、イスラエルという国家の思想がわかる。イスラエルは中東において最大の戦力を有するサウジアラビア、実戦経験豊富のエジプト、そして核開発のイラン、これらの国々を念頭に戦略を立てている。最後に日本にも言及し、内閣情報調査室は情報を集める目と耳で、NSSは政策をつくる頭脳とわかりやすく例えたり、情報を武器するという視点が欠けているなど、日本の諜報機関の利点、改善点などさまざまな情報を読者に伝える。
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「陰謀論」、「陰謀論者」とうい言葉がいつの間にか一般的にも広く浸透しており、しかしながら陰謀論についてどう捉えるべきか迷っていたところで手に取った一冊。
【本書から感じた特徴】
・サイバーセキュリティやインテリジェンスに関する国内では高度な有識者3名の共著であり、それなりに確からしいと言える解説書となっている
・陰謀論についての各種定義を紐解き、陰謀論の矮小化を避けている(陰謀論を単なるオカルティズムや奇妙なものという捉え方をしない)
・対策の方法論として事実の発信強化、ファクトチェック、公共の教育などを挙げているが、これに加えて、陰謀論が拡散する土壌を抑えること(社会的不安、経済的不安など、民衆が不確実性、不安感を感じる環境を抑えること)についても言及している。
・陰謀論そのものを否定したいわけではなく、他国からの干渉や情報操作を防ぐことを目的としている。
【感想】
陰謀論や認知戦を考えるために必要な要素が、比較的簡潔に整理されていると感じた。(以下の内容など)
・陰謀論の定義の仕方としては認識的権威(学者、裁判所、議会)の示す認識と矛盾し、原因を陰謀とする説を陰謀論と捉えながら本書では陰謀論の事例などを多数挙げられている。
・各国の陰謀論の事例や、国内の発信者と海外機関の連携/共鳴による陰謀論の発信など。
・情報戦、サイバー戦、認知戦などの区分、分類の解説。
・人の認知処理フローや、陰謀論を信じやすい脳の状態についてなど。
一部の人からは挙げられた事例を陰謀論と扱うことに抵抗感を感じる事例もあるかもしれない。
陰謀論自体が悪いというわけではなく、思想の自由や言論空間の多様性は守るべきということは筆者も記載していたし、とても共感した。
そもそも、SNSというサイバー空間での陰謀論だけが認知戦でもなく、古来から嘘やディスインフレーションの流布というのはあらゆる手段にて行われていたとも思う。
認識的権威自体にアプローチする手法もあっただろう。(このほうが陰謀論より怖い)
またSNS以外のメディアも必ずしも完全な真実を公開しているのかも不確かさがある。
テレビなど、特にニュースなのかなんなのか分からない情報ばかりの発信が一日の大半を占めている。
陰謀論自体は対策を講じるために注意深く検討をする必要があるが、国家を守るために大切なことは、本書でも記載のとおり、「他国からの干渉や情報操作を防ぎ、我々自身で意思決定する環境を取り戻す」ことをベースに考えることである。
陰謀論又は陰謀論らしきものの完全排除は不可能だし、むしろやるべきでもない。
他国などからの意図的な戦略としての干渉を排除することを軸に検討をしていくべきだ。 -
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世界各国のスパイ、諜報機関のエピソードを学べる。『孫子』でスパイ活動について言及されているが、そのノウハウは当時画期的であったという。なぜなら、古代ギリシャやペルシャにしても、占いで情勢判断をしたためである。本書でカエサル、ワシントン、ナポレオンなど歴史上の人物を取り上げているが、いずれも諜報の重要性を認識しており、そのおかげで戦争に勝利できたという。もちろん、本書でも日本の諜報に言及しており、その能力は決して低くはなく、むしろ近代以前から優れていることがわかる。著者によると、日本で今後、諜報組織の改革をしたいのであれば、世論が関心を持てるように努力しなければならないという。
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ネタバレ「全史」銘打つだけあって、第二次大戦の終わりからのイスラエルxパレスチナの攻防の流れを逐次追って書かれている。上巻はインティファーダを経てオスロ合意、パレスチナ自治政府樹立までを扱う。
正直、イスラエル内部の予想外のカオスっぷりに頭が痛くなり、酔いそうになった。イスラエル人とはもっと合理的な人々ではなかったのか? ヨーロッパ出身の教育があり、お金もある層がイスラエルという国の運営を行っており、先進的で洗練された圧政を敷いているイメージがあったが、これでは法治国家とは言えないようだ。
暗殺の手際がお粗末で失敗続きでも継続したり、私的なこだわりから効果の薄いターゲットに力を費やしたり、他国の法も自国の法も犯しまくり、無関係の人間多数が死んでも気にしない、とか、とか。
国を持たず軍隊を持たないPLOは1970年代に大々的な国際テロをやっていた。が、そこで報復に燃えたイスラエルもやっぱり同じレベルで過激なテロリストになったのだった。(それ以前ももちろんテロは常時あったし、ギャングの抗争みたいな殺しあいもやっていたけれども)
1972年、ミュンヘンオリンピックで選手たちが殺される事件ののち、内閣はターゲットが友好国にいる場合でもその国の当局に通告することなく攻撃を承認する権限をメイア首相に与えた。
それがヨーロッパの先進国でも、殺人をやる。国際問題のリスクより暗殺優先を決意した。
テロ、報復の暗殺、報復のテロ、報復の暗殺……作戦のしかけも人数も増え、大掛かりになっていく。
一応あれの報復がこれ、みたいな呼吸はあるものの、こぼれたツケがどんどん積み上がって恨み100倍1000倍となる歴史である。
シンベト(シャバック):主にイスラエル国内と撤退後のガザを含めたイスラエル国防軍占領地区で治安維持活動や防諜活動に従事している。諜報特務庁(モサド)や政治調査センター(ママッド)、参謀本部諜報局(アマン)などと共にイスラエル情報コミュニティーのメンバーであるーーWikipediaより
上記以外にも、イスラエルにはいったいいくつ怖い組織があるんですか という複雑さだが、それぞれ過激な人間が率いて好き勝手に動いていたり。ある意味、ひどい独裁者が統治する国よりも超過激に傾きやすいのではないだろうか。
イスラエルは他国にバレるとまずいことを数多くやらかしているのだが、いろいろなメディアに本人が告白してしまっていたり、興味を持った記者に調べ上げられてしまっていたり、極秘といいつつ脇が甘いようだ。自分の所業を語りたがる人物が多いのかとも思う。本書は著者の調査以外に過去に明らかになった事実の蓄積なしには成り立たなかっただろう。
個人的には、コワモテのイスラエル人の心境に興味があった。
1956年、パレスチナゲリラに殺されたキブツ警護の中尉への、参謀総長モシェ・ダヤンの追悼文。ーー今日は殺人者を責めないでおこう。われわれに彼らの強い憎しみを否定する権利はないはずだ。ガザの難民キャンプから八年間出られないままでいる彼らの眼の前で、彼らやその祖先が住んでいた土地や村をわれわれの財産へと変えているのだから。ーーー
アラブ人から侵入者と憎まれることと向き合う。安全と民族の存続を最優先にして踏みとどまる。そのために報復攻撃をする所存である。殊勝なようだが自分たちの生存のためなら遠慮なく殺すと言っているのだ。アラブ人に憎まれることは理解してやってるとは意外な気がした。
しかし、インティファーダ前夜まで、一般のパレスチナ人は訳なくコントロールできている、とイスラエルの国の幹部たちは考えていたらしい。民衆がPLOの指導なく自分たちで立ち上がるとは、思いもよらなかったという。それが本当なら、その時点では、アラブ人の憎しみにまったく向き合っていなかったと言える。
まるで、いじめっ子が「そんなに嫌がってるとは思いませんでした」と言うのと似ていないか。
ーー情報機関の幹部のほとんどが、力ずくでは占領問題は解決しないことをよく認識していた。ーーパレスチナ問題に関してはリベラルで左派的な見解を抱き、パレスチナ国家の独立を認めて和解する政治的解決策を支持していた。だが、それを堂々と口にするものは誰もいなかった。ーー
これは驚き。パレスチナ人をいくらでも殺していいと思っているかのような暴力的な人物までも、このような見解を抱いていたとは。
オスロ合意、パレスチナ自治政府樹立。あれは幻ではなかったんだなあと不思議に思う。一方で、容赦なくテロや暗殺をしてきた人間たちだから、やはり過激な指導者がいれば引っ張られてしまうだろうとも思う。 -
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インテリジェンスそのものとはなにか、国内外のインテリジェンスの歴史と実態、そして将来に向けてインテリジェンス組織はどうすべきかなど、本書はインテリジェンスの基本書と優れている。
インテリジェンスといえば情報を収集する者すなわちスパイを思い浮かべるが、実は職業としてのスパイは古代から実在した。具体的な例を挙げると、古代エジプトとヒッタイトのカデシュの戦いは人類の記録上最古のスパイの記述がある。メソポタミアも同様にスパイの記述が残っていることから、スパイによる情報収集活動が古くから存在することがわかる。日本においても崇神天皇に同じような記述がある。古代中国では孫子が、古代インドでは『実理論』とスパイの重要性が説かれる。アッバース朝に関しては、暗号解読の技法が進んでいたという。このように歴史をさかのぼるとスパイは昔からいたと理解できる。
近代以降、特に20世紀以降は各国でインテリジェンス組織が発展する。これらの組織は、その国の政治制度や文化で異なっており、それぞれの独自の問題を抱えている。本書のp50に書いてあるように、どの国のインテリジェンス組織も多くの妥協の産物で成り立っているので、完璧な状態で組織運営している国はない。それを踏まえた上で組織の改善を適宜行っている。 -
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冷戦時代におけるCIAの活動として、ソ連および衛星国の秘密情報を盗み取る、偽情報を流す、心理作戦を仕掛けた。ところが、ソ連崩壊以降、諜報活動は減少して、それに伴いCIAの予算も削減された。そんな最中、21世紀初めに9.11同時多発テロが起きた。これをきっかけに、CIAは大統領行政命令以降控えていた秘密戦争を再開した。加えて暗殺ドローンを導入したことで、CIAは人間狩りすなわち特定個人に向けてのインテリジェンス活動が本格化する。かつて20世紀前半、戦車と航空機が世界大戦を左右したように、また20世紀後半、核弾頭と大陸弾道弾が世界情勢の均衡に影響を与えたように、暗殺ドローンの導入によって、これまで以上に戦争の敷居が低くなり、対外戦争がやりやすい体制となった。ブッシュ以降、CTCが活発化して外国の活動が本格化した。しかし、人間狩りを中心にした諜報活動においては、外国の情報機関に依然せざるをえない状況となった。また、パキスタンのドローン戦争やイラク、アフガニスタンの軍事支援など一貫した計画がある一方で、ソマリアのようにその国の中央政府と協力関係ではないことから、その国に関して精通する人が少なく、それゆえに秘密戦争の実行が難しい国もある。
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少数精鋭が特徴的なモサド。モサドは1963年になって与えられた略称で、「情報特務工作機関」を意味するヘブライ語の「ハ-モサッド・レ-モディイン・ウ-レ-タフキディム・メユハディム」を指す。モサド長官は基本的に2期8年までとなっており、首相に直結した関係である。イスラエルの情報コミュニティの一つで官僚的な組織であるが、不思議なことにモサドは法律で規定されていない。つまり法的には存在しない組織と見なされる。
そんなモサドだが、その元となっている組織は、1915年ニリー(NILI)と呼ばれる、中東における英軍の作戦を支えるための情報組織と1929年に設立されたパレスチナのユダヤ機関の組織、政治局情報部の二つである。
モサド長官には様々な経歴を持つ人が就任してきたが、モサドの影響力を拡大させたという点で、初代長官のシロアッフ、2代目のハルエル、3代目のアミットの3名はとりわけ重要であろう。また本書を読むと、イスラエルとアメリカの関係がよくわかる。当時のイスラエルはマパイ(のちの労働党)が政権を掌握しており、またキブツ(農業共同体)と呼ばれる共産主義的な計画をイスラエルが進めていたことから、表面上アメリカとの外交関係を持つのは難しいと思われた。しかし、イスラエルという国家を存続させるにはアメリカの力が必要だと判断したため、モサドは秘密裡にCIAと関係を結んだ。 -
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日本におけるインテリジェンスの歴史を戦前から遡って見ていく。敗戦直後、旧日本軍は、暗号等の秘密事項を隠滅するために処分した。そうした中で、ある日本人女性のちょっとした会話によって、米兵にその存在がばれてしまう。その状況下で、有末精三、服部卓四郎といった一部将校たちが、インテリジェンス組織を創設しようと目論んでいた。ところが、1951年、GHQが日本を去ったことで、旧日本軍の構想がなしとなる。その一方、これらの動向をうかがったCIAは、吉田茂、緒方竹虎、村井順と、時の政府の中枢に介入する。そこから、インテリジェンス機関の創設を検討する。しかし、緒方の死去や吉田の政治的求心力の低下で、結局のところ、実現には至らなかった。このように、日本の諜報機関は空回りし、防衛庁と警察官僚らが、その代わりを担う。
その後、中曽根康弘と後藤田正晴の二人が、インテリジェンスに向けていろいろと着手するものの、抜本的な改革は実行できなかった。冷戦期は、日米同盟の関係上、アメリカの下請け扱いであった。時を経て、第2次安倍政権になると、防諜として、法案を通し、以前のような縦割り状態から、徐々に変わりつつある。今後の課題としては、サイバー対策が重要らしい。 -
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ネタバレ太平洋戦争に至った経緯をイギリス視点、且つ諜報の点から考察した一冊。
日本国内での開戦経緯については学生時代に触れる機会があったが、海外からの視点は然程触れなかったので新鮮だった。
わかってはいたが、めちゃくちゃ暗号が漏れてて笑った(もちろん当時の日本にとっても笑い事ではない)
本文中でも触れられていたが、日本国内から各国大使館等への連絡の内容が漠然としており、日本政府の確定的な意思ではないのにも関わらず、盗聴していたイギリスにはあたかも日本政府の意思であるように思われるなど、このあたりのすれ違いが無ければ、もう少し別の結果があったのかもしれないと思った。(とは言っても根本のところで落とし所をつけられなかったのであれば、結局開戦は避けられなかったかもしれないが、、)
以下おまけ
読んでいる最中にイギリスがTPPに加盟した(私は安全保障の観点からかな〜と勝手に思っている)が、そのニュースを聞いて、「この国立ち回りが上手いな」としみじみ感じ入ってしまった。その立ち回りの上手さに情報の収集と検討があるんだろうな、、と現在にも通じるイギリスの強かさへの理解が本書を通して深まった。 -
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ネタバレ日本の政治、安全保障、行政、インテリジェンスのいずれかに興味があれば読んだほうが良い一冊。単純に勉強になる。戦後の政治、インテリジェンスコミュニティのあり方から、冷戦や日米同盟の変化の影響を受けながら、国内外のあらゆる事件や事象も受けて、ゆっくりではあるがある意味で成長して、今の日本のインテリジェンスコミュニティがある。まだ課題も多いが、これまでのストーリーを振り返ることは有意義だ。アナロジカルにあらゆる政治や行政の課題にも連想できる気もする。そして、インテリジェンスコミュニティ自体の未来への努力の方向性も見えてくる気もする書籍である。
戦後旧陸海軍のインテリジェンス経験者が情報活動の復権を夢見るが失敗。
共産党の監視は必要であり、旧内務省が警察や公安調査庁に形を変えて存続。
冷戦期を迎えてインテリジェンスコミュニティの原型ができてくるが、中核組織を欠いており、軍の隙間は警察が埋める。
日米同盟の中で日本のインテリジェンスは米国の下請け化していた。
冷戦終結、オウム、北朝鮮ミサイル、等の事象の影響を受けてインテリジェンス体制の改革を意識。
ときの政治家の後押しもあり改革が進む。
第二次安倍内閣により特定秘密保護法や国際テロ情報ユニット設置が実現。
内閣情報調査室も機能し始める。
今後は、
サイバー、ディスインフォメーションなどへの対応が課題。 -
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我が国のインテリジェンス活動とは。
保守派の人たちは、日本はスパイ天国でやられ放題、盗まれ放題だと憂いている。
左派の人たちは、日本の官憲が諜報活動で市民のプライバシーを脅かしていると警戒している。
本書はいずれにも汲みさず、冷静かつ詳細な分析で日本のインテリジェンス活動をフェアに論じている。
米国による占領で始まり、完全に解体された日本のインテリジェンス活動が冷戦期から現代に至る地政学的緊張の中でどのように発展してきたか。
そして、各国のインテリジェンス活動はこの東アジアでどのように跳梁跋扈しているか。
たしかに予算も組織もなく、米国の言いなりでソ連には簡単に侵入を許す、そんな体たらくであったこともある程度事実だったのだろうが、さまざまな工夫の中で、我が国も少しずつ組織の体裁やスパイ防止法に代表される法的枠組みを整えてきている事実がわかる。
左右のイデオロギーを離れれば、平和に暮らす上で周囲で何が起きているかについてアンテナを張り巡らせ分析を怠らないことは独立国として当然の責務であろう。同時に、そうした活動に携わる組織に対して、(機密管理と上手に両立しつつ)国民の監視を怠ってはならないこともまた当然であろう。
007的なスペクタクルとは異なるが、今の我が国周辺のきな臭さを考えれば大いに参考になる本。 -
Posted by ブクログ
内閣情報調査室(内調)、公安調査庁、外務省国際情報統括官組織、防衛省情報本部、警察庁外事情報部など、国家の政策決定や危機管理のための情報を扱う行政組織・機関であるインテリジェンス・コミュニティの戦後日本における変遷を辿り、①なぜ日本では戦後、インテリジェンス・コミュニティが拡大せず、他国並みに発展しなかったのか、②果たして戦前の極端な縦割りの情報運用がそのまま受け継がれたのか、もしくはそれが改善されたのかを考察。
戦後日本のインテリジェンス・コミュニティの歴史については知らないことが多く、勉強になった。縦割りでそれぞれ権限も弱かった状態から、内閣情報調査室を中心に各機関の情報の統合・共有が進み、政策決定や危機管理に資するというインテリジェンス本来の役割が果たせるようになってきた流れを理解することができた。
戦後日本のスパイ事案や情報漏洩事件などの事例も豊富に紹介されており、興味深かった。日本はスパイ天国だとの言説には触れたことはあったが、1964年の東京五輪の選手団や役員として大量の工作員が入ってきていたということなど、実際にこんなにも事案が発生していたのかと吃驚した。