あらすじ
国家の政策決定のために、情報分析や防諜活動を行うインテリジェンス。公安や外交、防衛を担う「国家の知性」である。戦後日本では、軍情報部の復活構想が潰えたのち、冷戦期に警察と内閣調査室を軸に再興。公安調査庁や自衛隊・外務省の情報機関と、共産主義陣営に相対した。冷戦後はより強力な組織を目指し、NSC(国家安全保障会議)創設に至る。CIA事案やソ連スパイ事件など豊富な事例を交え、戦後75年の秘史を描く。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
焼け野原から縦割りの復興、緒方竹虎の野望と死去。
冷戦中の米国の下請けとしての個別の発展。
それらを全て塗り替えて、諸外国並みにインテリジェンスコミュニティを引き揚げた安倍晋三(第二次政権)
政治的には、安倍晋三一人でインテリジェンスコミュニティを適正化したようなもんだ。これだけで国葬に値する国家への貢献。
つうか、居なくなるのが早すぎだよ・・・
しかし、国際テロ情報収集ユニット(CTU-J)が戦後日本発の対外情報機関とは思わなかった。過小評価してた。
Posted by ブクログ
戦後から現代までのインテリジェンスに関する歴史が内調主点で書かれています。参考文献も多く、有用なレビューかと。今後も参照する機会が多そうな一冊です。
Posted by ブクログ
戦後日本のインテリジェンスの歴史を辿れる希少な一冊。
政治などの時代背景とともに日本のインテリジェンス機関の変遷が網羅されている。
「そもそもインテリジェンスとは何か」という点から解説されており理解のハードルは高くない。本書を通じて、過去に一度は目にしたであろう数々のニュースの裏にもインテリジェンス機関の存在があったことを知れば、今後の視野が大きく広がるだろう。
日本のインテリジェンス機関の活躍といえば、大韓航空機撃墜事件(1983年)程度しか知らなかった。しかし本書によると、それすらもソ連を追及したい米国に利用された形であり、さらにはその情報自体も優越していたのは音質だけだったそうだ。
情報に限らず、収集・蓄積は日本の得意とする分野のイメージがある。実際、私が知らなかっただけで上記の他にも日本のインテリジェンス機関が情報を掴んでいたシーンは多くあったそうだ。ただし、分析・活用となると途端に苦手となる。
何故なのだろうか?
本書から私が得た答えは「“収集意図”が明確でないから」だということだ。指示通りにデータを収集・蓄積し続ける。真面目で受動的な傾向の日本人には向いていそうな作業だ。対して、それを指示した人間に明確な意図がなければ、それらのデータが分析・活用されることはない。もっと言えば、何のために集めたのかもわからないゴミの山と化してしまう。
なにも日本を支える人々がそんなレベルだと言いたいわけではない。私にはそんな経験がいくつもあったというだけだ。
さらに、NSC/NSSの設置により“情報要求”まで行われるようになった現在の日本のインテリジェンス・コミュニティにそんな心配は杞憂だろう。頼もしさすら感じる。
本書のお陰で、少しづつでも日本のインテリジェンス・コミュニティは前進しており、それを支える優秀な政治家、官僚の存在も改めて認識できた。日本のインテリジェンスの歴史を学ぶだけでなく、日本が成長していることを知り、これからへの希望も見出だせた良書であった。
Posted by ブクログ
【本書の問いは主に二つの点にある。①なぜ日本では戦後、インテリジェンス・コミュニティが拡大せず、他国並みに発展しなかったのか、②果たして戦前の極端な縦割りの情報運用がそのまま受け継がれたのか、もしくはそれが改善されたのか、というものだ】(文中より引用)
戦後日本のインテリジェンス・コミュニティや組織の変遷を、公開情報を基に丹念に追った一冊。日本人の手による戦後日本のインテリジェンス通史として、現時点で読める中ではもっとも客観的かつまとまった内容に仕上がっていると思いました。著者は、日本大学危機管理学部で教授を務める小谷賢。
やっぱり公開情報をつなげていくだけでも結構な骨格は明らかになるもんだなと☆5つ
Posted by ブクログ
戦後の日本の諜報史である。USAや中国に関しては全くふれておらず、ソ連にやけに詳しい。しかしこの手の本が今まで新書で書かれることがなかったので基本書となるであろう。
Posted by ブクログ
日本の政治、安全保障、行政、インテリジェンスのいずれかに興味があれば読んだほうが良い一冊。単純に勉強になる。戦後の政治、インテリジェンスコミュニティのあり方から、冷戦や日米同盟の変化の影響を受けながら、国内外のあらゆる事件や事象も受けて、ゆっくりではあるがある意味で成長して、今の日本のインテリジェンスコミュニティがある。まだ課題も多いが、これまでのストーリーを振り返ることは有意義だ。アナロジカルにあらゆる政治や行政の課題にも連想できる気もする。そして、インテリジェンスコミュニティ自体の未来への努力の方向性も見えてくる気もする書籍である。
戦後旧陸海軍のインテリジェンス経験者が情報活動の復権を夢見るが失敗。
共産党の監視は必要であり、旧内務省が警察や公安調査庁に形を変えて存続。
冷戦期を迎えてインテリジェンスコミュニティの原型ができてくるが、中核組織を欠いており、軍の隙間は警察が埋める。
日米同盟の中で日本のインテリジェンスは米国の下請け化していた。
冷戦終結、オウム、北朝鮮ミサイル、等の事象の影響を受けてインテリジェンス体制の改革を意識。
ときの政治家の後押しもあり改革が進む。
第二次安倍内閣により特定秘密保護法や国際テロ情報ユニット設置が実現。
内閣情報調査室も機能し始める。
今後は、
サイバー、ディスインフォメーションなどへの対応が課題。
Posted by ブクログ
内閣情報調査室(内調)、公安調査庁、外務省国際情報統括官組織、防衛省情報本部、警察庁外事情報部など、国家の政策決定や危機管理のための情報を扱う行政組織・機関であるインテリジェンス・コミュニティの戦後日本における変遷を辿り、①なぜ日本では戦後、インテリジェンス・コミュニティが拡大せず、他国並みに発展しなかったのか、②果たして戦前の極端な縦割りの情報運用がそのまま受け継がれたのか、もしくはそれが改善されたのかを考察。
戦後日本のインテリジェンス・コミュニティの歴史については知らないことが多く、勉強になった。縦割りでそれぞれ権限も弱かった状態から、内閣情報調査室を中心に各機関の情報の統合・共有が進み、政策決定や危機管理に資するというインテリジェンス本来の役割が果たせるようになってきた流れを理解することができた。
戦後日本のスパイ事案や情報漏洩事件などの事例も豊富に紹介されており、興味深かった。日本はスパイ天国だとの言説には触れたことはあったが、1964年の東京五輪の選手団や役員として大量の工作員が入ってきていたということなど、実際にこんなにも事案が発生していたのかと吃驚した。
Posted by ブクログ
戦後日本の縦割りICの姿を描く。
G2の支援を受けた旧日本軍諜報機関は軍復活を悟られ失敗。吉田茂/CIAの庇護下で外事公安警察と公安調査庁が対共産党/治安維持機関として分立する。
緒方竹虎/村井順により内閣調査室が作られるが、外務省の横槍や不祥事で分立したままICは船出を迎える。その中心は警察だった。自衛隊も別班/別室を作り、内調指揮下で電波情報収集にあたるが、IC各部門はバラバラに対応しており、しかもそれぞれでソ連に情報が流出しており杜撰な有様だった。それでも警察の出向者中心に何とかまとまりがあった。秘密保護法制は整備されず、情報は「回らず、上がらず、漏れる」
公調→破防法対象機関の監視
警察→中心。治安維持(左右翼/中ソ北)
外務省→海外情報の入手
内調→情報集約(警察の下)
自衛隊→軍事情報、電波傍受(内調の下)
冷戦後、公調は政治家の支援を受けられず対外進出を図るが、厳しい状態となった。テロ対策や北朝鮮の脅威が課題となる中、外務省はIAS、自衛隊は情報本部(後藤田正晴)、内閣は衛星情報センター(野中広務)、中央情報機構改革(町村信孝)を通じて組織改革や情報共有策がなされた。その本丸は秘密保護法制であり、特定秘密保護法や国際テロ情報収集ユニット(安倍晋三、北村滋)で結実した。さらに国家安全保障会議と事務局の整備で政策と情報の分離も実践。首相ブリーフィングを行う内閣情報官の下ICが再編された。
今後の課題として筆者はサイバー情報(対中)、公開偽情報対策(対露)、経済安全保障、ファイブアイズ加盟のための法整備、民主的統制を挙げる。
インテリジェンスの入門書は読んでいたので理論と実践の関わりが感じられてよかった。教科書通りのIC改革が行われていた。今後は、より強力な法整備による組織強化が必要だろうが、それには民主的統制も含め国民の広範な賛意が必要だろう。一般的なインテリジェンスのイメージを払拭することが不可欠だと感じる。また、今の対中インテリジェンスはどうなっているのか気になった。多分機密事項なので教えてくれないだろうが、台湾有事が近づいている今、民間の情報漏洩を含めた議論がないのは気になった。
Posted by ブクログ
●インテリジェンスほど、国家作用に激烈な影響を及ぼすものはない。一切れの紙切れに記載された情報が、重大な国策の決定を左右し、それに基づいて、大規模な部隊の運用や行政の執行がなされるからである。
●日本の予算におけるインテリジェンス関連費用は防衛費の3-4%
●主要国はインテル機関に多くの例外を認めており、この方向で進んでいる
Posted by ブクログ
日本におけるインテリジェンスの歴史を戦前から遡って見ていく。敗戦直後、旧日本軍は、暗号等の秘密事項を隠滅するために処分した。そうした中で、ある日本人女性のちょっとした会話によって、米兵にその存在がばれてしまう。その状況下で、有末精三、服部卓四郎といった一部将校たちが、インテリジェンス組織を創設しようと目論んでいた。ところが、1951年、GHQが日本を去ったことで、旧日本軍の構想がなしとなる。その一方、これらの動向をうかがったCIAは、吉田茂、緒方竹虎、村井順と、時の政府の中枢に介入する。そこから、インテリジェンス機関の創設を検討する。しかし、緒方の死去や吉田の政治的求心力の低下で、結局のところ、実現には至らなかった。このように、日本の諜報機関は空回りし、防衛庁と警察官僚らが、その代わりを担う。
その後、中曽根康弘と後藤田正晴の二人が、インテリジェンスに向けていろいろと着手するものの、抜本的な改革は実行できなかった。冷戦期は、日米同盟の関係上、アメリカの下請け扱いであった。時を経て、第2次安倍政権になると、防諜として、法案を通し、以前のような縦割り状態から、徐々に変わりつつある。今後の課題としては、サイバー対策が重要らしい。
Posted by ブクログ
戦前は軍のインテリジェンスが強かったが、戦後は縦割りで強い中央情報機構がない状態が続く。1984年にはスパイ防止法案が廃案に。冷戦後は防衛省情報本部の創設や内調の格上げ、CTUーJの創設など改革が進んだ。
・大森「湾岸戦争により内調の仕事は変化し、政策のベースとなる情報を官邸に上げるように」
・日本の弱さは分析能力であり簡潔な報告書に落とし込む必要あり
Posted by ブクログ
我が国のインテリジェンス活動とは。
保守派の人たちは、日本はスパイ天国でやられ放題、盗まれ放題だと憂いている。
左派の人たちは、日本の官憲が諜報活動で市民のプライバシーを脅かしていると警戒している。
本書はいずれにも汲みさず、冷静かつ詳細な分析で日本のインテリジェンス活動をフェアに論じている。
米国による占領で始まり、完全に解体された日本のインテリジェンス活動が冷戦期から現代に至る地政学的緊張の中でどのように発展してきたか。
そして、各国のインテリジェンス活動はこの東アジアでどのように跳梁跋扈しているか。
たしかに予算も組織もなく、米国の言いなりでソ連には簡単に侵入を許す、そんな体たらくであったこともある程度事実だったのだろうが、さまざまな工夫の中で、我が国も少しずつ組織の体裁やスパイ防止法に代表される法的枠組みを整えてきている事実がわかる。
左右のイデオロギーを離れれば、平和に暮らす上で周囲で何が起きているかについてアンテナを張り巡らせ分析を怠らないことは独立国として当然の責務であろう。同時に、そうした活動に携わる組織に対して、(機密管理と上手に両立しつつ)国民の監視を怠ってはならないこともまた当然であろう。
007的なスペクタクルとは異なるが、今の我が国周辺のきな臭さを考えれば大いに参考になる本。
Posted by ブクログ
戦後日本の情報収集活動について。
戦後、日本は独自の安全保障外交方針を策定する必要がなかったこと、戦前の省庁縦割りを引き継いだことから、統合されたインテリジェンスコミュニティと呼べるような体制が形成されてこなかった。軍へのアレルギーから、情報収集体制を埋めてきたのは主に警察である。
しかし、冷戦後の環境変化などから、徐々に機能強化が図られていった。第二次安倍政権で、秘密保護法制や国家安全保障会議が整備され、他国と同じスタートラインに立てる体制が整えられた。
安倍政権は、成長戦略については無策だったと批判されるが、やはり安全保障の分野では一定の地歩を築いたのだと改めて感じた。
Posted by ブクログ
やっとここまで来たけど、ほんともう間に合わないんじゃ無いのかと思う。
リベラル、自由はいいんだが、日本の場合は、それを神聖視し過ぎて、まさにやりたい放題です、誰でも入ってきてください、何を持って行っても何を持ち込んで来てもいですよって通ってきた。
冷戦体制で、米国がいたから、さほどの危険に面していなかったから。
その間に、浸透してきた物の害は大きいんだと思う。なんせ、日本が壊れたって構わないし、むしろ、壊したいという人たちが同じ顔をしているんだから。
それにしても近視眼だよなあ、須く。
日本という国を対局から俯瞰する目が全くない。去年の7月にほぼ壊滅した。
間に合いますかね。
薄い本だが、価値あり。ここからスタート。
Posted by ブクログ
超伝奇モノとかちょっとアレな警察モノを読んできたならば、内調というコトバの響きに青春の輝きを思い出すんではなかろうか。
現実はお寒いもので、戦後70年かけてようやく諜報組織の形が整ってきたというところらしい。仕方あるまい。建前上、軍隊を持たない日本では組織の取り付けも困難であろう。
安倍元首相はある筋にめっぽう恨まれ、暗殺の直後から年をまたいでもねちこくその死を祝福されてきた。安倍政権で日本のインテリジェンス組織が一皮むけたことを知れば、ここにも理由があったかと首肯するしかない。
ある読書体験から外務省()と思うようになったが、本書でその思いは強化された。
本書は2022年刊行である。当時、2025年現在の日本の状況を見通していたか。否であろう。現在の日本の姿からは、少なくとも、本書に記されているようなインテリジェンスが働いている気配は感じられない。警察はLUUPに甘いし。エコビジネスの太陽光パネルはアンタッチャブルだし。外国人を生活保護することを与党が正当化するし。不法滞在者がそれ以外の犯罪を犯しても不起訴だし。
Posted by ブクログ
防衛関連の研究家であり、危機管理の専門家である著者による日本の「インテリジェンス・コミュニティ」の変遷について書かれた本。
「インテリジェンス」とは国家の政策決定のために行われる情報分析や防諜活動を指す。普段表に出てくることは少ないが公安や外交、防衛を担う「国家の知性」である。
このインテリジェンスを司る日本の組織が、WW2の敗戦後の解体・再組織されてからどのようにして現代に至ってきたかについてコンパクトにまとめられている。
元々インテリジェンスについて関心があったわけではないが、サイバー攻撃や激変する国際情勢を受けて情報収集能力・解析能力の重要性は加速的に高まっている。その中で、なかなか目にする機会の少ないインテリジェンスについて知っておくことは不可欠だと思い本書を手に取った。
決して読むのがめちゃくちゃ楽しい本ではないが、日本のインテリジェンスの今後の課題にも触れられており、有用であると感じた。
日本のインテリジェンス・コミュニティについての基礎知識を得るには最適な本だろう。