小谷賢のレビュー一覧
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レビューを書く前にもう一度読書の内容を考える時間が自分には大切で。しかし、この“まとめ“の時間が主観的な解釈を許し勝手なストーリーを作り出す。水が流れやすい方向に引き寄せられるように、社会は複雑な真実よりも、より印象的で単純化された物語に吸い寄せられる。
因果関係の解明こそ科学だとすれば、生け贄を焼き続けていたら雨が降ったという事象を安易に結びつけるのが信仰だ。カーゴカルトなんかもそうだ。テロリズムや地震、外国人の日本流入さえも、何かに結びつけて解釈する。その背後に巨悪がある、と考えたくなるのは本能的なものでもあるのだろう。
この“巨“というのがミソで、自分の力が及ばない悲観的な何か。巨大 -
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ネタバレ超伝奇モノとかちょっとアレな警察モノを読んできたならば、内調というコトバの響きに青春の輝きを思い出すんではなかろうか。
現実はお寒いもので、戦後70年かけてようやく諜報組織の形が整ってきたというところらしい。仕方あるまい。建前上、軍隊を持たない日本では組織の取り付けも困難であろう。
安倍元首相はある筋にめっぽう恨まれ、暗殺の直後から年をまたいでもねちこくその死を祝福されてきた。安倍政権で日本のインテリジェンス組織が一皮むけたことを知れば、ここにも理由があったかと首肯するしかない。
ある読書体験から外務省()と思うようになったが、本書でその思いは強化された。
本書は2022年刊行である。当時 -
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防衛関連の研究家であり、危機管理の専門家である著者による日本の「インテリジェンス・コミュニティ」の変遷について書かれた本。
「インテリジェンス」とは国家の政策決定のために行われる情報分析や防諜活動を指す。普段表に出てくることは少ないが公安や外交、防衛を担う「国家の知性」である。
このインテリジェンスを司る日本の組織が、WW2の敗戦後の解体・再組織されてからどのようにして現代に至ってきたかについてコンパクトにまとめられている。
元々インテリジェンスについて関心があったわけではないが、サイバー攻撃や激変する国際情勢を受けて情報収集能力・解析能力の重要性は加速的に高まっている。その中で、なかなか -
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戦後日本の情報収集活動について。
戦後、日本は独自の安全保障外交方針を策定する必要がなかったこと、戦前の省庁縦割りを引き継いだことから、統合されたインテリジェンスコミュニティと呼べるような体制が形成されてこなかった。軍へのアレルギーから、情報収集体制を埋めてきたのは主に警察である。
しかし、冷戦後の環境変化などから、徐々に機能強化が図られていった。第二次安倍政権で、秘密保護法制や国家安全保障会議が整備され、他国と同じスタートラインに立てる体制が整えられた。
安倍政権は、成長戦略については無策だったと批判されるが、やはり安全保障の分野では一定の地歩を築いたのだと改めて感じた。 -
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やっとここまで来たけど、ほんともう間に合わないんじゃ無いのかと思う。
リベラル、自由はいいんだが、日本の場合は、それを神聖視し過ぎて、まさにやりたい放題です、誰でも入ってきてください、何を持って行っても何を持ち込んで来てもいですよって通ってきた。
冷戦体制で、米国がいたから、さほどの危険に面していなかったから。
その間に、浸透してきた物の害は大きいんだと思う。なんせ、日本が壊れたって構わないし、むしろ、壊したいという人たちが同じ顔をしているんだから。
それにしても近視眼だよなあ、須く。
日本という国を対局から俯瞰する目が全くない。去年の7月にほぼ壊滅した。
間に合いますかね。
薄い本だが -
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ネタバレWW2の時にいかにして苦境にあった英国が対日戦回避策から米国の参戦を引き出すための外交努力を行ったかについての本。日本人から見るとWW2は対米戦、というイメージが強いけど、日英戦を避けるための時間稼ぎから、日米交渉を不調に至らしめるための干渉など「前面に出ない」英国の方針の巧妙さは「これは太平洋戦争も英国が起こしたといっても過言ではないのでは…?」と言う気になるには十分かも。いずれにせよ相手の状況の無理解や、理解するための諜報活動がかえって穏便にすませるための正式文書の軽視を招き、疑念と不信からそこになかったはずの危機を顕在化させた側面もあるかもな、などと思ったわけです。
後世から見れば英国の -
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日本における諜報の変遷を、アメリカの立場で検証している一冊。
現在アメリカにとっての極東地域同盟国の一つ日本ですが、戦前戦中のアジアでは全ての白人国家と渡り合える唯一の黄色人国家でした。
それには諜報・防諜の技術が必要であり、日本でも活用されてきました。
本書の焦点は戦後の日本に当てられています。
戦後日本の情報の扱い方がどのようなものか、詳細に解説されています。
どうしても難いものとなりますが最近の総理大臣や拉致問題など記憶に新しい話題も絡んできますので、多くの日本人が関心を持てる内容であると思います。
情報を得て未来を予測し要領良く行動する術は個人でも重要ですが、国家規模となれば必要です。 -
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1948年に建国されたイスラエルという若い国家の存続のために活動する情報機関モサド。そのモサドの歴史を淡々とまとめている。モサドは組織を規定する根拠法を有していないが、自らを律して存続している。ユダヤ人の国家として、ナチス関係者の逮捕は最重要ミッションでとのことで、アイヒマン捕獲作戦が有名。
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第一章 創設の時代 (初代長官 シロアッフ)
第二章 飛躍の時代 (ハルエル、アミット)
○ フルシチョフによるスターリン批判演説の内容を入手し、暴露
○ アイヒマン捕獲作戦に成功
○ ソ連の戦闘機ミグ21奪取に成功
第三章 試練の時代 (ザミール)
○ ミュンヘンオリンピックで起こったテロ事 -
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○情報・データをインテリジェンスに加工する専門組織が必要
○インテリジェンスがあっても、計画に活かされない。
インテリジェンスに基づかない計画は失敗する。
✖️情報畑以外の人間が情報分析・評価を行うと間違う
・三国同盟、外務省・陸軍・海軍の全てが雰囲気だけで調印
・ドイツの軍事力と工業力を過大評価
・下調べもせずに突き進む
・イタリアの国力も。
・独ソが険悪な状況にあるという情報も無視
・チャーチルの傾向も無視
✖️主観的情勢判断
・既定路線に合う生情報を入手しては都合の良い情勢判断
・作戦部門や政策決定者の分析判断は間違う
・過去の成功体験に基づく判断
◯情報部 情報の断片から有効な -
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ネタバレ911のテロ以降、情勢を収集・分析し提供する組織から、暗殺リストを基にドローンでアメリカの敵を消す軍事組織に変貌を遂げるCIAを描いたノンフィクション。
時系列ではなく、現場の工作員から大統領まで登場人物が多く読みづらい。
しかし、軍隊を持つ国防総省と情報収集・分析から軍隊を持とうとするCIAの役所間の権力闘争は見どころ。本来のヒューミントを中心とした情報収集能力の低下もしかり。
テロリストを擁護するつもりはないが、相手国家への主権侵害が恐ろし過ぎる。
著者の暗殺に対する批判的な姿勢は、アメリカ人の良心が生きていると感じることができるのが唯一の救い。
ティム・ワイナーの名作「CIA秘録」 -