小谷賢のレビュー一覧
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[Infoのその先]日本においては80年代頃から議論が活発化し、今日においては一般的にも知られるようになった「インテリジェンス」。国家が必要とするそれを歴史・組織・統制などの多様な観点から概説した作品です。著者は、国際政治学者として活躍し、本著の他にもインテリジェンスに関する作品を世に送り出している小谷賢。
「そもそもインテリジェンスって何?」、「インテリジェンスがなぜ必要なの?」という基礎的な問いに答えるところから筆が起こされているため、幅広い方にオススメできる一冊です。インテリジェンスにまつわる歴史的エピソードや出来事もあわせて解説されているため、興味を絶やすことなく読み進められるのも -
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本書は多くの参考文献や一次資料を参照して書かれており、為になる本だった
インテリジェンスを学ぶ教材として日本軍はのそれは適している。我々日本人にとって身近に感じられるし、敗戦によって全容が明らかになっているからだ。ところが日本は情報戦いに負けたというイメージから日本軍のインテリジェンスが劣ったものであっかのようにおもわれている。たしかに米英ののうに莫大な予算と機材を投じることはできなかった、いや職員たちは安い予算で活動に従事していたといえる。しかしなかなかどうして日本軍のインテリジェンス組織は健闘し数々の成果を挙げていたのだ。
しかしながら陸海軍全体からみればインテリジェンス部門は軽視されて -
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ネタバレ戦前日本のインテリジェンスを知ることは、今後の教訓を得るためにも、重要だ。この本は、「戦前日本のインテリジェンスに関してその具体像を描き、日本のインテリジェンスの特色について考察してい」(P.6)る。
日本のインテリジェンスは、決してそれぞれの技術や能力が低かったのではない(「戦前日本の通信情報能力の高さが部分的にうかがえる。」P.23)。「インテリジェンスを扱う上で特有の問題が存在していた。それらは主に、組織における情報機関の立場の低さ、情報集約の問題、近視眼的な情報運用、そして政治家や政策決定者の情報に対する無関心など、であった。」(P.194)
具体的には、
(1)組織化されない -
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日本軍は、太平洋戦争で情報戦において、英米に大きく負けていた、とする定説とは、ちょっとことなる事実を提示してくれる一冊です。
確かに、日本軍という組織としてみれば諜報を軽んじていたようですが、情報を扱う部署では、職人技ともいえる暗号解読や情報収集を行っていたようで、陸軍などはアメリカの暗号もおよそ解読していたのではないか、とのことです。
ただ、軍部エリートの集う作戦立案の部署からは軽んじられ、実際的にはあまり役に立てられなかったそうで、ここにも日本に今昔問わず見受けられるセクショナリズムの弊害が健在だなあ、と感じました。
それにしても、驚くべきは、日本軍が育てた情報戦エリート達は、194 -
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新たな視点を得られた良書。
日本軍の情報戦略的な失敗は常識化しているが、それはインテリジェンスとしての情報を全く持っていなかったという事では決して無かったのだ。感心の低さからくる人員等の配分こそ他国に明確に劣っていたが、インテリジェンスを獲得する能力自体は、特に陸軍においては決して引けを取らなかったようだ。
結局、組織的な構造、関心の低さ、戦略の欠如等がインテリジェンスを無駄にしてしまうという事になった。作戦部の優越性などからも、いかに情報部が軽視され、無意味な組織構造をもたらしてしまったかが窺い知れる。
現状の日本においても、ここから学ぶべき事が多いように感じる。むしろ、その体質は基本的に変 -
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第二次大戦直前のイギリス外交が、インテリジェンスをいかに利用し外交政策に反映させていたかが良く分かる良書。著者の博士論文が下敷きになっているだけに完成度が高い。
情報の入手過程よりも分析・評価・政策決定の描写に重点が置かれていたのが良かったと思う。政策決定者の視点の偏りによって獲得された情報の評価が大きく変わるというのが興味深かったが、情報が政策を決定するのでもなく、政策決定者が恣意的に情報を取捨選択するのでもないということ(どっちが先かという問題ではなく相互に影響しあっている)を忘れてはならない。
また、政府上層部での情報共有のあり方についても示唆的だった。重要な情報であればあるほど -
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加藤陽子著『それでも、日本人は戦争を選んだ』で紹介されていた書籍。
政策サイドから情報の要求を出し、情報サイドに情報を収集、分析させる情報運用"インテリジェンス・サイクル"。
陸海軍情報部はアメリカやイギリスに謙遜ない情報収集・分析活動を行っていながらも、政策サイドがその情報を合理的且つ適切に運用することができず、インテリジェンス・サイクルの停滞を招いた。
その結果がガダルカナルやインパール作戦、ミッドウェーやレイテ沖海戦への失敗へと繋がっていく。
情報部の地位の低さや組織のセクショナリズム、防諜の不徹底など、インテリジェンス・サイクルにおける構造上の問題を今も解決できな -
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現在戦争を継続するロシアとイスラエル、二つの国家のインテリジェンスに関する対談を収録した本。イヴァン四世のオプリチニキ、ロマノフ王朝の皇帝官房第三部などにしても、ロシアの機関は、諜報機関というよりは内部を抑圧、弾圧する傾向があると指摘される。また、戦時下の日本で、参謀本部ロシア課長林三郎は、ソ連の侵攻を予測していたことやロシアの対外政策や盗聴技術など面白いネタが盛り上がる。後半ではイスラエルについて語り合い、他人を信用しない、自分たちの力しかあてにしない、先制攻撃を躊躇しないなど、イスラエルという国家の思想がわかる。イスラエルは中東において最大の戦力を有するサウジアラビア、実戦経験豊富のエジプ
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「陰謀論」、「陰謀論者」とうい言葉がいつの間にか一般的にも広く浸透しており、しかしながら陰謀論についてどう捉えるべきか迷っていたところで手に取った一冊。
【本書から感じた特徴】
・サイバーセキュリティやインテリジェンスに関する国内では高度な有識者3名の共著であり、それなりに確からしいと言える解説書となっている
・陰謀論についての各種定義を紐解き、陰謀論の矮小化を避けている(陰謀論を単なるオカルティズムや奇妙なものという捉え方をしない)
・対策の方法論として事実の発信強化、ファクトチェック、公共の教育などを挙げているが、これに加えて、陰謀論が拡散する土壌を抑えること(社会的不安、経済的不安など