あらすじ
「導かなければ民は滅びる」。聖書の一句を基に、敵に囲まれたユダヤ国家を陰で支える情報機関の実像とは? 新章を増補した決定版! 解説収録/佐藤優
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少数精鋭が特徴的なモサド。モサドは1963年になって与えられた略称で、「情報特務工作機関」を意味するヘブライ語の「ハ-モサッド・レ-モディイン・ウ-レ-タフキディム・メユハディム」を指す。モサド長官は基本的に2期8年までとなっており、首相に直結した関係である。イスラエルの情報コミュニティの一つで官僚的な組織であるが、不思議なことにモサドは法律で規定されていない。つまり法的には存在しない組織と見なされる。
そんなモサドだが、その元となっている組織は、1915年ニリー(NILI)と呼ばれる、中東における英軍の作戦を支えるための情報組織と1929年に設立されたパレスチナのユダヤ機関の組織、政治局情報部の二つである。
モサド長官には様々な経歴を持つ人が就任してきたが、モサドの影響力を拡大させたという点で、初代長官のシロアッフ、2代目のハルエル、3代目のアミットの3名はとりわけ重要であろう。また本書を読むと、イスラエルとアメリカの関係がよくわかる。当時のイスラエルはマパイ(のちの労働党)が政権を掌握しており、またキブツ(農業共同体)と呼ばれる共産主義的な計画をイスラエルが進めていたことから、表面上アメリカとの外交関係を持つのは難しいと思われた。しかし、イスラエルという国家を存続させるにはアメリカの力が必要だと判断したため、モサドは秘密裡にCIAと関係を結んだ。
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イスラエルという国家と分かちがたく結びついたモサド。
その成り立ちから今日までの歩みが並べられたのが本書。
最初は慣れない固有名詞のオンパレードに面食らってしまうが、読み進めるためにはそれを頭の中に入れておくことが望ましい。
漠然と「最強の諜報部隊」「非合法活動も厭わない」というイメージのみが先行していたため、その栄枯盛衰の一端を垣間見ることができたのは新鮮だった。
これほどの組織であっても人間の心の動きが綻びを生む。その点が自分にとってはもっとも有用な学びだった。
Posted by ブクログ
1948年に建国されたイスラエルという若い国家の存続のために活動する情報機関モサド。そのモサドの歴史を淡々とまとめている。モサドは組織を規定する根拠法を有していないが、自らを律して存続している。ユダヤ人の国家として、ナチス関係者の逮捕は最重要ミッションでとのことで、アイヒマン捕獲作戦が有名。
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第一章 創設の時代 (初代長官 シロアッフ)
第二章 飛躍の時代 (ハルエル、アミット)
○ フルシチョフによるスターリン批判演説の内容を入手し、暴露
○ アイヒマン捕獲作戦に成功
○ ソ連の戦闘機ミグ21奪取に成功
第三章 試練の時代 (ザミール)
○ ミュンヘンオリンピックで起こったテロ事件への報復作戦「神の怒り作戦」を実施。
第四章 活躍の時代 (ホフィ)
○ モーセ作戦 (エチオピアにいるユダヤ人の大規模救出作戦)を実施。
第五章 失敗とスキャンダルの時代 (アドモニ、シャヴィト、ヤトム、ハレヴィ、ダガン)
○ イスラエルの核開発を暴露したヴァヌヌをローマで拉致したヴァヌヌ事件
第六章 イランとの暗闘 (パルドー、コーヘン)
○ コンピュータウィルス「スタックスネット」によるシーメンスソフトウェアをハック。ヒューミントとシギントの融合、ヒュギント戦略。