【感想・ネタバレ】SNS時代の戦略兵器 陰謀論 民主主義をむしばむ認知戦の脅威のレビュー

あらすじ

米大統領選でトランプが語った陰謀論を徹底解説! 陰謀論という兵器がネット空間を飛び交う乱世への処方箋
戦争、新型コロナ、そしてアメリカ大統領選挙……今日もネット空間では、様々なテーマの荒唐無稽な陰謀論が飛び交っている。そして2021年のアメリカ議事堂襲撃事件に代表されるように、今や陰謀論は「一部の物好きな人々による趣味」という枠を越え、日本を含む民主主義国家の政治、社会、そして安全保障にまで、大きな影響を及ぼすようになった。
そして中国などの権威主義国家は、陰謀論を「兵器」として活用し、民主主義国家のSNSなどネット空間に送り込み、社会の分断を加速させるための「認知戦」を展開するようになった。
この混迷の時代に、私たちはどう陰謀論に向き合うべきなのか。偽情報や情報戦の専門家3名が、陰謀論に安全保障の視点から切り込み、その全体像に迫る!

[目次]
はじめに―長迫智子
第1章 陰謀論に揺れたアメリカ大統領選挙―長迫智子
第2章 認知領域の戦いにおける陰謀論の脅威―長迫智子
第3章 ロシアと中国の認知戦戦略―小谷 賢
第4章 戦場となる日本の情報空間―大澤 淳
おわりに―長迫智子


この電子書籍は株式会社ウェッジが刊行した『SNS時代の戦略兵器 陰謀論 民主主義をむしばむ認知戦の脅威』(2025年1月24日 第1刷)に基づいて制作されました。
※この電子書籍の全部または一部を無断で複製、転載、改竄、公衆送信すること、および有償無償にかかわらず、本データを第三者に譲渡することを禁じます。

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Posted by ブクログ

 普段あまり触れることがない話題だったためかなり難解で読みにくかったが、ここで解説されている陰謀論、認知戦、他国の干渉による国民の行動の操作など、決して誇張ではない現実の脅威を深く認識させられた。

 『情報戦や認知戦は、平時から始まっている。
 そして、我々一人ひとりが攻撃対象となる認知
 戦においては、インターネットに接続し得るす
 べての人間がその戦場に立っている (p.220)』

このような自覚の元で、情報ソースやファクトチェック情報を確かめるリテラシーを養い、不明確な情報を拡散しない、誤って拡散してしまったら速やかに削除訂正をするというのは、各人に課せられた責務だと思う。

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2025年06月23日

Posted by ブクログ

「情報戦や認知戦は、平時から始まっている 」あとがきより。
「陰謀論」は昔のように楽しむものではなく、中露が武器化しているナラティブであり、指先一つのクリックで、自国の体制を弱体化させてしまう恐ろしい入口であると認識を新たにした。
ああ、昔のようにネタとして楽しんでいる場合ではないのである。もはや、安全保障の専門家が取り扱わねばならないテーマなのである<陰謀論

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2025年04月12日

Posted by ブクログ

「陰謀論」、「陰謀論者」とうい言葉がいつの間にか一般的にも広く浸透しており、しかしながら陰謀論についてどう捉えるべきか迷っていたところで手に取った一冊。

【本書から感じた特徴】
・サイバーセキュリティやインテリジェンスに関する国内では高度な有識者3名の共著であり、それなりに確からしいと言える解説書となっている
・陰謀論についての各種定義を紐解き、陰謀論の矮小化を避けている(陰謀論を単なるオカルティズムや奇妙なものという捉え方をしない)
・対策の方法論として事実の発信強化、ファクトチェック、公共の教育などを挙げているが、これに加えて、陰謀論が拡散する土壌を抑えること(社会的不安、経済的不安など、民衆が不確実性、不安感を感じる環境を抑えること)についても言及している。
・陰謀論そのものを否定したいわけではなく、他国からの干渉や情報操作を防ぐことを目的としている。

【感想】
陰謀論や認知戦を考えるために必要な要素が、比較的簡潔に整理されていると感じた。(以下の内容など)
・陰謀論の定義の仕方としては認識的権威(学者、裁判所、議会)の示す認識と矛盾し、原因を陰謀とする説を陰謀論と捉えながら本書では陰謀論の事例などを多数挙げられている。
・各国の陰謀論の事例や、国内の発信者と海外機関の連携/共鳴による陰謀論の発信など。
・情報戦、サイバー戦、認知戦などの区分、分類の解説。
・人の認知処理フローや、陰謀論を信じやすい脳の状態についてなど。

一部の人からは挙げられた事例を陰謀論と扱うことに抵抗感を感じる事例もあるかもしれない。
陰謀論自体が悪いというわけではなく、思想の自由や言論空間の多様性は守るべきということは筆者も記載していたし、とても共感した。
そもそも、SNSというサイバー空間での陰謀論だけが認知戦でもなく、古来から嘘やディスインフレーションの流布というのはあらゆる手段にて行われていたとも思う。
認識的権威自体にアプローチする手法もあっただろう。(このほうが陰謀論より怖い)
またSNS以外のメディアも必ずしも完全な真実を公開しているのかも不確かさがある。
テレビなど、特にニュースなのかなんなのか分からない情報ばかりの発信が一日の大半を占めている。

陰謀論自体は対策を講じるために注意深く検討をする必要があるが、国家を守るために大切なことは、本書でも記載のとおり、「他国からの干渉や情報操作を防ぎ、我々自身で意思決定する環境を取り戻す」ことをベースに考えることである。
陰謀論又は陰謀論らしきものの完全排除は不可能だし、むしろやるべきでもない。
他国などからの意図的な戦略としての干渉を排除することを軸に検討をしていくべきだ。

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2025年09月22日

Posted by ブクログ

レビューを書く前にもう一度読書の内容を考える時間が自分には大切で。しかし、この“まとめ“の時間が主観的な解釈を許し勝手なストーリーを作り出す。水が流れやすい方向に引き寄せられるように、社会は複雑な真実よりも、より印象的で単純化された物語に吸い寄せられる。

因果関係の解明こそ科学だとすれば、生け贄を焼き続けていたら雨が降ったという事象を安易に結びつけるのが信仰だ。カーゴカルトなんかもそうだ。テロリズムや地震、外国人の日本流入さえも、何かに結びつけて解釈する。その背後に巨悪がある、と考えたくなるのは本能的なものでもあるのだろう。

この“巨“というのがミソで、自分の力が及ばない悲観的な何か。巨大な力は、神であり秘密結社であり国であり富豪、時に宇宙人にもなる。神や宗教のファストフードみたいな切り売りが陰謀論だとも言える。

AIが普及してから日本語でその罠にはめようとする言論が出始めている。気をつけたいのは“断言・断定“的な表現。見てきた訳でもないのに、巨大な力は絶対なので、そうした発言は自信に満ちている。ゆえに聞く耳は持たないし、似たもの同士で群れて強化学習が進んでいく。

ー ワシントン北西部にあるピザレストラン「コメット・ピンポン」が、ヒラリー・クリントン候補率いる児童虐待組織の一員として、幼い子供たちを性奴隷としてかくまっているという記事が拡散されていた。この陰謀論をじたノースカロライナ州在住の28歳の男は、このピザ屋に押し入り、店内でAR15型ライフルを発砲した。

ー 陰謀論の世界観に陥りやすい人は、連言錯誤(一般的な状況よりも特殊な状況の方が蓋然性が高いと誤判断すること)や意図性バイアス(他人の行動が偶然や無意識ではなく意図的であると推測して結果に固執してしまうこと)、分析的思考の久如といった認知的特性があるとされる。

かなりの確率で「あ、この人はソレだ」というのが外側からはわかる。ソノ人たちは例外なく必死だからだ。こうした意味でも、陰謀論は、信仰の難しさや怖さを知る機会にもなる。人間は操作されやすく、危うい。その線の中と外で、◯◯国、◯◯人、◯◯教、◯◯社、◯◯党、というチーム名をつけて、争い合う生物なのだ。

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2025年11月22日

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