荻上チキのレビュー一覧
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読もうとおもったきっかけは「ウワサの保護者会」で校則をテーマとして取り上げられていたのを見て。その時も著者の荻上チキさんが出演されていました。
校則の問題といえば昭和世代に中学・高校時代を過ごした人なら「私たちの頃は確かに厳しかった。スカートの長さとかいちいちチェックされていたけど、今ってその頃に比べたらマシでしょ」と思う人が少なくないようで。私もそうでした。
ところが著者が調査会社を通じて男女2000人およびツイッターのハッシュタグに投稿された事例を集めてみると、昭和並かヘタをすると昭和以上の厳しさと理不尽さが横行していたことが分かったとのこと。
本書の第一部は代表的な校則とその現状についてが書かれていました。中には「校則で決まっているのがわかっててあえて違反のものを着てくるのは確信犯でしょ」というのもありましたが、ギリギリビミョーなところでひっかかって、髪を無理やり染められた、濡らされた、下着を脱ぐことを強要されノーブラで過ごさせられたなど、そこまでしないといけないんだろうかと思うような理不尽な指導を受けた体験談が出るわ出るわ。
なにより驚き、腹が立ったのが、校則に対し疑問に思ったことを先生にぶつけてものらりくらりとした返答しかされず、校則改正のために動こうとしても話し合いの場さえ設定してもらえない、挙句の果てには行動を起こそうとした生徒が生徒会に立候補することを妨害するということが実際に起こっていたこと。まるで宮部みゆきさんの「ソロモンの偽証」みたい。
第二部は各専門家から多角的に見た校則の問題点について触れられていました。司法の観点からや校則によって経済的に負担を強いていること、校則によるセクハラや過剰な指導により不登校を招いた事例についてなど。
暗い話が続きましたが第三部ではブラック校則をなくすにはどうしたらいいかについては校則の本来の意味に立ち返って考察したものや、保護者も動いて校則が変わったケースなどが紹介されていました。
おかしな校則を変えていく為にできることは何か、その答えが完全に整理されて提言されているわけではないですが、ヒントになることが本書のあちこちに散らばっているように思えました。まず、保護者の立場としてできることは子どもたちが「こんなんおかしい」と言ったことに耳を傾けることと、本当に子どもたちの言い分が納得できれば子どもたち自身で校則を買えることをサポートすることだろうと思いますが、内申書という人質がある分、簡単ではないだろうと思います。
そういえばたまたま仕事で調べものをして知りましたが奈良市の複数の中学校では私服登校が認められているそうです。どんな経緯でそうなったのか、興味があります。 -
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ちょうど昨日の産経新聞の阿比留瑠比の極限御免という記事で「朝日は自社の慰安婦問題直視を」という記事が載っていました。本書は新聞同士の言及を検索によってカウントしていて産経の朝日への言及数は中央5紙の相互言及の中で飛ぶ抜けていて、それを「産経はかまってちゃん」「産経をスルーする朝日」と表現しています。まさに新聞はまったくキャラの違う人間同士のリアリティショー。お互いに反目は止めてフェイクニュースに立ち向かうのである、という主張もありますが、本書は「みんな違ってそれでいい」という金子みすずモードかな?つまりメディアにフェイクの反対のトゥルースがある、という思い込みが危険で、みんなそれぞれに「偏って」いてそれをわかって付き合う、というレベルの高い向き合い方を提案している、と思います。そこはちょっと目鱗で、フェイクVSファクトという構図自身がメディアを痛めつけている、という指摘に思えました。でもそれは著者や池上彰みたいな高いメディアリテラシーを育むことが前提になるよな、とため息気分にもなります。各新聞社はそれぞれNIE(ニュースインエデュケーション)運動を推進していますが、それは本当に大切な教育だと改めて思いました。最終章の20のポジ出しはシンプルかつ大切な提言だと思いました。(ちょっとこれ新聞社の仕事?みたいに思った項目もありますが…)デジタル時代の新聞社のキーワードは「中立性」じゃなくて「透明性」と「応答性」。新聞拡販戦争戦争によってこじれ切った新聞社たちがこれを一緒にやるのか?それぞれにやるのか?それともまったくやれないのか?部数がどんどん減っていく新聞の明日はどっちだ?
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偏っていることは悪いことという思い込みや前提があるわけですが、逆に偏ってないということがありうるのか、そう問われると確かに自分自身も自信がないことに気付かされました。自分は偏ってない、自分はフラットな判断ができていると思う人ほど、この本を読んでみることをお薦めします。
新聞は読み比べる必要があるというのは以前から耳にします。実際読み比べてみると同じ事件がまるで別物のように感じることがしばしばあります。読み比べる以前に一面で取り上げられるトップニュースが全く違うことが多くて愕然とします。トップニュースが違うと、今、世の中で何が起きているのか認識が全然変わってしまうからです。
この本は、そういう偏りを、感覚的にではなく、データとして我々に見せてくれます。例えば、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部改正」が閣議決定された際の社説で、各社がどういう見出しの記事を書いたかが分かります。あるいは各社がどういう有識者を選ぶかも特徴があります。いわゆる有識者も右から左までいろいろなスタンスがありますので、自社に合う意見を言ってくれる有識者を選ぶわけです。
新聞がテーマになっていますが、ネットニュースなどでも同じような状況があることは言うまでもありません。私たちは何かを判断する前に、どうやって情報を収集するか、それが重要な問題です。 -
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最近日本会議を中心とする保守の活動が活発になり新聞界ではいわゆる左右を代表する新聞同士の戦いをの様相を見せている。では実際に5大新聞が取り扱う記事にはどのような違いがあるのか。それを新聞記事のリサーチにより数値で表し違いを明確にした本である。
荻上チキ氏はデータを駆使した社会分析が得意であり実際この本でも多くのデータを取り扱っている。どちらか一方の立場でカウンターとなって批判を展開するのではなく、冷静な第三者としての視点で分析を進めるので、どちらの側からも納得のいく結果になっていると思うのであるが、いかがであろうか。
ちなみに私は朝日新聞擁護、産経新聞に対しては批判的な立場で読ませていただいた。 -
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奇しくも熊本地震が起こった時に読んでいたのがこの本。
東日本大震災が発生したときに巻き起こった流言・デマの類いをTwitterを中心に分析、類型別にまとめた本です。
関東大震災や阪神大震災のときに起こった流言・デマも参考にし、混乱時に出やすいものを提示していますが、今回の熊本地震でもやはり同様の流言飛語が出回っていました。
人間は成長しないというか、混乱時には不安な心理などからそうなってしまうものなのでしょうね。
この本は、情報リテラシーの相対的向上を狙ったもので、一人でも多くの方がこの本を手に取り、「この情報は流言かな?」と考えられる環境が整えばと思います。 -
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ラジオSession22でパーソナリティとしての著者は知っていたが、著作を読むのは初めて。
とても冷静に論理的な視点から、社会問題への考え方、関わり方などを教えてくれる。ここまでバランスを保ちながら鋭い切り口の文章をかける人はなかなか居ないのではないか。
ラジオでは、パーソナリティに徹してそこまで自分の主張を全面に押し出さない印象であったが、かなり熱い人であることが判明した。
制度を議論するときには、社会全体の中にその制度がきちんと組み込まれているかという「構造要因」、その制度の設計が適切になされているかという「制度要因」、制度がうまく行くかどうかは景気にも大きく左右される「景気要因」、これら3つの要因を複合的に考えないといけないのである。 -
彼女たちの売春(ワリキリ)
- カート
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試し読み
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出会い喫茶を介した個人売春(ワリキリ)の実態を著者のフィールドワークを通して明らかにした本。
実際に出会い喫茶に来た女性を毎年100人にインタビューをして、彼女たちの属性を調べる。こういった風俗は移り変わりも激しいので貴重な情報だ。インタビューをした女性の中から選んだひとりの女性に女性ならではの調査も依頼した情報も貴重だ。出会い喫茶に来た男性側の情報も集められている。男性と女性が互いに批判している様は悲しく滑稽だ。また、出会い喫茶というシステムを「発明」したという福田氏へのインタビューも印象的だ。
著者は、女性が個人売春を行う構図について、引力と斥力という言葉によって一面的な説明を避けることが必要だと説く。「社会的な引力と社会的な斥力のさまざまな絡み合い、つまりは引っ張る力と斥ける力の関係を見ることはとても重要だ。ワリキリをする女性の多くには、「ワリキリ」に引っ張られるのと同時に、「ワリキリ以外の稼ぎ方」に斥けられたという面があるのだから。」というときに、この「社会的な斥力」を分析することに力を注ぐ。そして同時に、個人に働く力の多様性も認識し、特定の事例の一般化を強く忌避する。そのために著者が取った手法がデータ調査という手法と言えるだろう。
例えば、実際に100人中30人が精神疾患の病歴(実際に通院し、疾患名を付けられた数)があるという。原因と結果がどのように関連しているのかはここからは分からない。その割合が突出して高いのは確かだろう。また、シングルマザーの割合も多い。これらも含めて(精神病の罹患もシングルマザーも直接的に経済問題を発生させる)、個々人の経済問題も厳然としてある。売春の問題は道徳の問題ではなく、貧困問題だと。少なくとも一面においては、特に女性の側から見ては、そう言える。
「n個の社会問題の数だけn個の処方箋、n個の刃所の数だけn個の包摂を。買春男に彼女たちを抱かせることをやめたいのなら、社会で彼女たちを抱きしめてやれ。そうすれば事態は幾分、マシになる。彼女たちの売春、それは僕たちの問題でもあるのだ。」
この本の読み方にもn個の読み方がある。 -
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この手の本としてはかなりのヒット。
本文にも書いてあるとおり Inspired by 「ヤバい経済学」で、公式統計がない風俗などの分野について、なんとかして統計データを作った上でクロス統計で分析を行う、というのを読みやすくまとめてある。人々はなんで風俗産業で働いているのか、とかね。
「ヤバい経済学」を読んだ時と、知的興奮という意味ではやっぱり非常に近いんだけど、出てくる分析がフィールドが日本だけあって、特に階層社会の現状については全く他人事ではない頭が痛い分析がバンバン飛び交うので、読後感はちょっと重い。「ヤバい経済学」も重い話題は多いんだけど、やっぱりアメリカの話題だから微妙な対岸の火事的な感覚で読めちゃうしね。特に風俗とワリキリでの参加者の階層や意識の違いのくだりは、現代日本社会の参加者なら誰でもかなりグサッと来るんじゃないか。 -
彼女たちの売春(ワリキリ)
- カート
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試し読み
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ネタバレ読んでいて非常に辛い内容。
ここまでの調査を行った著者に敬服する。
貧困や精神疾患などによって、ワリキリという名の売春をしなければならない女性たちがいる。この本はそんな女性たちへのインタビューをまとめたものである。
ただ、留意が必要なのは、ワリキリを行う女性たちは、必ずしも困窮している人ではないとも著者が記していることである。実際に、それ以外の女性のインタビューも本文中に登場する。
一方で、ワリキリに頼らざるをえない女性たちも相当数存在する。
そんな状況は過去のものだという言説は全くの間違いであることを本書は指摘する。
本書の中で印象的だったのは、女性たちのエピソードもさることながら、出会い喫茶の創設者へのインタビューである。どこまで本音を話しているのかは疑う必要があるであろうが、この創設者は出会い喫茶を行き場がなくなった人々の生きていく場であると答えている。本文中にもそれを示すように必要悪という言葉が何度も登場する。
合法な世界で生きていくことが困難になった人々は、グレーな世界に足を踏み入れる。そのグレーな世界がつぶされれば、また別のグレーな世界が生まれ、そこに人が集まる。
そのグレーな世界を批判するのであれば、人々がそこに足を踏み入れなくてもいいような社会設計をしなければならない。それが著者の言う、「売春男に彼女たちを抱かせることをやめたいなら、社会が彼女たちを抱きしめてやれ」(p313)という言葉である。
余談だが、この本と『AV女優の社会学』との関係が気になった。『AV女優の社会学』では、女性たちがAV女優になる理由は非常にありふれた理由であり、著者はその点に関してはあまり関心がないことを記している。
そのありふれた理由がどういったものだったのかということが気になった。
それははたしてこの本(『彼女たちの売春』)で書かれたような理由と強い相関性があるのか、はたまたそれは単なるこちらの勝手な想像なのか。そういったテーマで書かれた本があれば読んでみたい。