【感想・ネタバレ】彼女たちの売春(ワリキリ)のレビュー

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Posted by ブクログ 2014年04月05日

出会い喫茶を介した個人売春(ワリキリ)の実態を著者のフィールドワークを通して明らかにした本。

実際に出会い喫茶に来た女性を毎年100人にインタビューをして、彼女たちの属性を調べる。こういった風俗は移り変わりも激しいので貴重な情報だ。インタビューをした女性の中から選んだひとりの女性に女性ならではの調...続きを読む査も依頼した情報も貴重だ。出会い喫茶に来た男性側の情報も集められている。男性と女性が互いに批判している様は悲しく滑稽だ。また、出会い喫茶というシステムを「発明」したという福田氏へのインタビューも印象的だ。

著者は、女性が個人売春を行う構図について、引力と斥力という言葉によって一面的な説明を避けることが必要だと説く。「社会的な引力と社会的な斥力のさまざまな絡み合い、つまりは引っ張る力と斥ける力の関係を見ることはとても重要だ。ワリキリをする女性の多くには、「ワリキリ」に引っ張られるのと同時に、「ワリキリ以外の稼ぎ方」に斥けられたという面があるのだから。」というときに、この「社会的な斥力」を分析することに力を注ぐ。そして同時に、個人に働く力の多様性も認識し、特定の事例の一般化を強く忌避する。そのために著者が取った手法がデータ調査という手法と言えるだろう。

例えば、実際に100人中30人が精神疾患の病歴(実際に通院し、疾患名を付けられた数)があるという。原因と結果がどのように関連しているのかはここからは分からない。その割合が突出して高いのは確かだろう。また、シングルマザーの割合も多い。これらも含めて(精神病の罹患もシングルマザーも直接的に経済問題を発生させる)、個々人の経済問題も厳然としてある。売春の問題は道徳の問題ではなく、貧困問題だと。少なくとも一面においては、特に女性の側から見ては、そう言える。

「n個の社会問題の数だけn個の処方箋、n個の刃所の数だけn個の包摂を。買春男に彼女たちを抱かせることをやめたいのなら、社会で彼女たちを抱きしめてやれ。そうすれば事態は幾分、マシになる。彼女たちの売春、それは僕たちの問題でもあるのだ。」

この本の読み方にもn個の読み方がある。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2013年09月20日

読んでいて非常に辛い内容。
ここまでの調査を行った著者に敬服する。

貧困や精神疾患などによって、ワリキリという名の売春をしなければならない女性たちがいる。この本はそんな女性たちへのインタビューをまとめたものである。

ただ、留意が必要なのは、ワリキリを行う女性たちは、必ずしも困窮している人ではない...続きを読むとも著者が記していることである。実際に、それ以外の女性のインタビューも本文中に登場する。

一方で、ワリキリに頼らざるをえない女性たちも相当数存在する。
そんな状況は過去のものだという言説は全くの間違いであることを本書は指摘する。

本書の中で印象的だったのは、女性たちのエピソードもさることながら、出会い喫茶の創設者へのインタビューである。どこまで本音を話しているのかは疑う必要があるであろうが、この創設者は出会い喫茶を行き場がなくなった人々の生きていく場であると答えている。本文中にもそれを示すように必要悪という言葉が何度も登場する。
合法な世界で生きていくことが困難になった人々は、グレーな世界に足を踏み入れる。そのグレーな世界がつぶされれば、また別のグレーな世界が生まれ、そこに人が集まる。
そのグレーな世界を批判するのであれば、人々がそこに足を踏み入れなくてもいいような社会設計をしなければならない。それが著者の言う、「売春男に彼女たちを抱かせることをやめたいなら、社会が彼女たちを抱きしめてやれ」(p313)という言葉である。

余談だが、この本と『AV女優の社会学』との関係が気になった。『AV女優の社会学』では、女性たちがAV女優になる理由は非常にありふれた理由であり、著者はその点に関してはあまり関心がないことを記している。
そのありふれた理由がどういったものだったのかということが気になった。
それははたしてこの本(『彼女たちの売春』)で書かれたような理由と強い相関性があるのか、はたまたそれは単なるこちらの勝手な想像なのか。そういったテーマで書かれた本があれば読んでみたい。

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Posted by ブクログ 2013年04月17日

宮台真司なんかが盛り上げてしまった「性的自己決定」vs「女性に対する暴力」論からここ20年、売春に関する議論は、ひどく不毛な状況が続いてきた。「被害者」への同情論か、フェミニズムをまったく理解してない風俗ライターばっかりの中で、実態調査にもとづいて現実的提言をおこなう、たいへんにまっとうな本。はっき...続きを読むりいって、自分の業績のために体裁をととのえ適当な分析を披露してみせるそこらの学者の本よりは、よっぽど役に立ちます。
 出会い喫茶やテレクラを利用する100人以上の「ワリキリ」女性とのインタビュー調査からうかびあがってくるのは、貧困、精神疾患、暴力被害、自己尊重感や安定感の欠如・・・正直、読んでいて辛くなることもあった。
 しかし著者は、売春を彼女たちの「心の問題」や社会の病理に還元したり、救済されるべき被害者扱いすることを慎重に避け、かわりに、いわゆるまっとうな社会の側が彼女たちを排斥する要因と、売春の世界が彼女たちをひきこむ要因とを注意深くとりだし、かつ、そうした個々の要因のくみあわせのなかで選択をおこなう女性たちの主体性を決して軽視しない。
 売春という「社会問題」に大ナタをふるうのでなく、「n個の排除の数だけ、n個の包摂を。買春男に彼女たちを抱かせることをやめさせたいなら、社会で彼女たちを抱きしめてやれ」という提言は、まったく、ほんとに、まっとうだ。売買春を一発で解決する魔法の弾丸なんか存在しない。ていねいに、自分たちの問題としてかんがえていくしかないのだ。

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Posted by ブクログ 2013年02月02日

これは、現代の日本社会にとってかなり有意義な本やと思う。
荻上チキさんが数年前から全国の売春、「ワリキリ」をおこなっている女性に取材し、その内容をまとめた本。
まず、内容が厚くて、データ量が半端じゃない。筆者の信念と覚悟がうかがえる。
往々にして批判されがちな売春をする女性。しかし彼女たちには彼女た...続きを読むちの論理がある。
それは「今よりマシ」になるための行いであるから、もっとよいかたちで、「もっとマシ」になるための社会を提示することが大切である。
売春という引力だけではなく、そこには社会からの斥力も同時に働いているのではないか、と筆者は問いかける。
そういうのを踏まえて、このタイトルも秀逸です。社会からの斥力、出会い系の引力。荻上さん、好きになりました。

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Posted by ブクログ 2019年06月05日

社会調査のような雰囲気で、同様のテーマを扱っている鈴木大介氏との風合いの違いが気になっていた。が、あとがきを読んで納得。

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Posted by ブクログ 2015年05月18日

著者自らが、出会い喫茶や出会い系サイトを通して、100人を超える"ワリキリ”女性への取材を基に構成されている。個人売春の実態を「統計的」と言える量まで収集・分析した筆者の取材力が凄い。しかも個々人の人格まで類推できる形で。

本調査から浮かび上がってきたものは貧困や虐待、孤独といった世代間...続きを読む・個人内での”負の連鎖”だ。売春という金銭獲得手段が目的になり目的が必然になり、自分を傷つけていくスパイラルからますます抜け出せなくなってしまっている。

「ワリキリ」とは買う側の視点であり、彼女たち側の視点では「アキラメ」や「オリアイ」と言ったほうが正しいかもしれない。インタビューで何人かが語るホストクラブに通う理由が、ホストのためではなくそこに居場所があるから、という発言は何とも物悲しく彼女たちの精神状態を端的に表しているように感じる。

”ワリキリ”は慢性的貧困や親の虐待など根深い社会問題を多分に含んでおり、解決まで一筋縄ではいかない問題ではあるが、本書はまず実態を知るうえでの道しるべとなりえよう。

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Posted by ブクログ 2015年02月22日

ワリキリと呼ばれる売春を行う女性たちを追ったルポタージュ。知らなかった世界にいる女性たちの人生の生々しさに圧倒させられる。社会から排斥されてきてしまった女性たちに、残された選択はそう多くはなかった。

でも今回のインタビューに答えられた人は、まだワリキリの最中で、どん底まで落ちている人たちではないの...続きを読むではないか。年齢がいって、もしくは精神的にやられて、もしくは病気になって、ワリキリさえできなくなった女性たちは案外と多いのではないか。今後はそういった女性たちもぜひとも追ってほしい。

ただ、ワリキリをしている若い女性たちの問題を丁寧に浮き彫りにした素晴らしいルポだと思う。

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Posted by ブクログ 2014年08月31日

出会い系喫茶や出会い系サイトで売春を行う女性たちへの、主にインタビューによるフィールドワーク。本書のテーマは、「出会い系」という場に彼女たちが吸い寄せられる「引力」と同時に、彼女たちをそこに追いやる「斥力」を見出そうとする試みだ。読んで思うのは、女性は、個人の問題を社会問題へ拡大化することによって解...続きを読む決しようとはせず、もっぱら自分で抱え込むのだな、ということ。たとえば昨今の貧困問題は、男性に起こったことだから初めて社会問題になったのであり、女性の貧困問題はそれまでにもずっと存在していた、という本書の指摘に端的にあらわれている。著者の狙いは、売春が社会問題というのであれば、「売春の当事者でないからといって社会問題の当事者でない」とは言えないというところにある。

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Posted by ブクログ 2014年03月29日

全国の売春をする女性にインタビューし考察を加えたもの。売春をする女性に精神科系の病歴を持つ者が多いこと、出会い喫茶という存在が珍しいものではないことに衝撃を受けた。取材数が多く信頼できる。社会で疎外され、そこにしか生きる道を見出せない女性たちに、私たちの社会は何らかの手立てを考える必要性を感じた。

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Posted by ブクログ 2014年03月10日

○ライターの荻上チキ氏の著作。
○”ワリキリ”を行う女性へのインタビューを通じて、なぜワリキリをしているのか、いつからしているのか、など、その理由や背景事情をまとめ、分析したもの。
○女性が”ワリキリ”を行う理由は様々であるが、「社会からの排斥」と「消極的選択(貧困)」というのが、一つの大きなテーマ...続きを読むではないかと感じた。
○本書中にも批判的に書かれているが、私も、「好きでやっているんだから」と思っていた面も多いので、その実態を知り、衝撃的であった。絶対的な貧困がこれほど近くにあるということも。
○サイトはもちろんのこと、出会い喫茶という“場”が提供されるということは、その需要も供給もあるということなのだろう。不思議な感じ。
○チキさんの調査・分析が大変リアルで面白い。ぜひ他の作品も読みたい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2013年10月26日

出会い喫茶や出会い系サイトを利用しての非管理買春である「ワリキリ」を行う女性たちについてのフィールドワークをまとめた本

虐待やネグレクト、貧困、DV、精神疾患や依存症、身体障害、母子家庭・・・読んでいて胸が痛む境遇がほとんどで,どうしたらいいのかと考え込まざるを得ない。

というわけで、非常に有益...続きを読むな本なのだが、欠点が2つ
1 文章。冷静な描写や分析が続くのに、各章の最後が突如ポエム的になるので面食らった。
2 専門用語(?)の説明がなくて不親切。「セクキャバ」「バンギャ」等の用語にについて、巻末に五十音順の解説がほしかった。

特に印象に残った点
・ 最近の「貧困問題」は男性も貧困に陥ったので慌てて騒ぎ出した側面がある、との指摘
・ 「ワリキリ」は「風俗」等に比べて搾取が少ない、という事実

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Posted by ブクログ 2013年10月18日

 風俗ではない,個人で行なう現代日本の売春の実態。よく調べて書かれてる。デカフェや出会い系サイトから多くの当事者女性に取材して,売る側の事情,買う側の論理,それを生み出す社会の構図を考察。全く知らない世界だけれど,その一端が垣間見えた気がした。

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Posted by ブクログ 2013年05月09日

そうそう「個人問題を社会問題する力」が大切なのに「社会問題を個人問題化」する力がここずーっとこの国は強いのだ。

チキさんの湛然な聞き取りから彼女たちの顔が見えたり、見えなかったりした。若い男性っていうポディディションだからこその記録というのはあるだろうな。

でもどおしても自分に引き付けて考えてし...続きを読むまうことだから後でまたゆっくり書きます。 


てか男性より女性の貧困のほうがずっと昔から大変でそんなこととっくに分かってたんだけど、この本を読んで改めてそうだよってがつんってされた。

なのにおかしい。見えないから。ホームレスさんとかある意味分かりやすく見えるし、日常の風景に溶け込んでしまってる男性の貧困。でも女性は「女性の貧困は深刻だ」と言われて、言われ続けているけれど、二の次でいやもっと後ろかもなんだけど、最後には女性は体を売ればいいからなーとか言われる始末。

おいおいおい。

あと割と「気持ち悪い」、「つらい」って言ってる割り切り女子が多いのに驚いた。

臭いのとかはもちろん嫌なんだけど、気持ちいいってのは別に好きは関係ない。向こうが穴と思って利用しているのと同じで、棒。まーバイブとかと変わんないと思う。

男の性欲は穴を求めるもの、恋愛感情とは違うところで本能なんだから仕方ないって開き直ってそれが通念になってるけど、女性はまだまだ開き直りきれない。

開き直ったやつらからいやいやいやと責めらめる。

買う側の男たちがワリキリの彼女たちにそういうことを言ってくるのが普通っていうこの状況のほうが冗談としか思えない。

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Posted by ブクログ 2013年01月26日

「ワリキリ」という行為に、著者自身が100人を超えるインタビュー取材を敢行し切り込む。
個人の道徳、倫理観として捉えられがちな問題を、真摯で穏やかな対話と様々なデータを元に読み解いていく。
印象として、女性個々の生活歴、現状に違いはあるが共通項として精神疾患
を持ち合わせている女性が多い。
しかし、...続きを読むその原因は単なる個人的な要因以上に、周囲の無理解や不当な悪意、定まらない社会構造など、環境による要因が大きいと思わされる。

不安定な社会情勢の中で、自分とは違う世界の出来事では無いと認識させてくれる良書。

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Posted by ブクログ 2014年12月17日

売春が「フツー」になってきた現状に驚く。。
そんだけ病んだ人間も多いってことっすね・・・。
( 一一)

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Posted by ブクログ 2014年08月21日

出会い喫茶や出会い系サイトのフィールドワーク。そこに出入りする女性たちの貴重なナラティブであり、直接採集されたデータとしての価値は高い。

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Posted by ブクログ 2013年12月06日

売春を貧困の文脈でちゃんと捉えるのは大事ですね。あまりに、「心の闇」みたいなぼやっとした感じで語られがちなことなので。

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Posted by ブクログ 2013年10月20日

出会い喫茶をベースにしたワリキリ(売春)のインタビューとデータ。社会からの斥力、出会い系の引力、というサブタイトルがついているが、どうも引力のほうが強いように感じる。ただ、社会からの斥力という言葉にはドキッとする何かがあり、それを確かめるように読む、のだけど、カジュアルな下半身の話にもみ消されてしま...続きを読むうかのようで…いろんな「彼女たち」が出てくる。同情したくなる人やら、怒りたくなるような人やら。読み手の修行が足りませんな、こりゃ。

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Posted by ブクログ 2013年04月02日

昔、好きだった人が簡単に自分の身体を売っていることを知って、
その時は全く彼女の考えというものが理解できなかった。

その人とはそれ以来疎遠になって、
今では連絡を取り合うこともないけれど、
未だに頭の片隅にこびり付いて離れない記憶を少しでも整理できればと思い、

彼女のことを理解しようと思ってこの...続きを読む本を手に取りました。

売春を取り巻く現状は様々だけど、
貧困からしょうがなくという例を見る度に
他人事とは思えず、
何か自分の身近に起こっていることとして認識できない、
あくまでこれは日本の何処かにいる女性の話であり、これから自分が生きていく上では出会うことや関わる事はないだろうと、
半ば強引に目を背けました。

今まで僕らが教わってきた道徳という絵空事のせいで、
こんな現実も直視できない自分が不安です、、

なんだか上手く言葉にできませんが、
売春を知る入り口には最適だと思います。

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Posted by ブクログ 2013年01月09日

「重く」はないのだけれど、彼女たちと自分に共通点があるからか、ひしひしとくるものがあってなかなか読み終わらない。

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