荻上チキのレビュー一覧
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ニュー・メディア批判や、お笑い番組における芸能人の「キャラ見せ」についての分析を通して、新しいメディアの登場によって私たちの社会的な身体のありようにもたらされる変容について考察した本です。
大部分は具体的な社会現象にそくした考察が展開されていますが、本書の中ほどに置かれている「ノート「情報思想」の更新のために」という論考では、ある程度まとまった形で著者の社会的身体論の概要が示されています。著者は、近代の「大きな物語」が有効性を失い、「小さな物語」が群生する状況に入ったといったような社会学的言説に対して距離を取っています。そして、旧来の社会的価値観を共有する者にとってはこれまでのモデルが通用し -
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著者自らが、出会い喫茶や出会い系サイトを通して、100人を超える"ワリキリ”女性への取材を基に構成されている。個人売春の実態を「統計的」と言える量まで収集・分析した筆者の取材力が凄い。しかも個々人の人格まで類推できる形で。
本調査から浮かび上がってきたものは貧困や虐待、孤独といった世代間・個人内での”負の連鎖”だ。売春という金銭獲得手段が目的になり目的が必然になり、自分を傷つけていくスパイラルからますます抜け出せなくなってしまっている。
「ワリキリ」とは買う側の視点であり、彼女たち側の視点では「アキラメ」や「オリアイ」と言ったほうが正しいかもしれない。インタビューで何人かが語るホ -
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ワリキリと呼ばれる売春を行う女性たちを追ったルポタージュ。知らなかった世界にいる女性たちの人生の生々しさに圧倒させられる。社会から排斥されてきてしまった女性たちに、残された選択はそう多くはなかった。
でも今回のインタビューに答えられた人は、まだワリキリの最中で、どん底まで落ちている人たちではないのではないか。年齢がいって、もしくは精神的にやられて、もしくは病気になって、ワリキリさえできなくなった女性たちは案外と多いのではないか。今後はそういった女性たちもぜひとも追ってほしい。
ただ、ワリキリをしている若い女性たちの問題を丁寧に浮き彫りにした素晴らしいルポだと思う。 -
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出会い系喫茶や出会い系サイトで売春を行う女性たちへの、主にインタビューによるフィールドワーク。本書のテーマは、「出会い系」という場に彼女たちが吸い寄せられる「引力」と同時に、彼女たちをそこに追いやる「斥力」を見出そうとする試みだ。読んで思うのは、女性は、個人の問題を社会問題へ拡大化することによって解決しようとはせず、もっぱら自分で抱え込むのだな、ということ。たとえば昨今の貧困問題は、男性に起こったことだから初めて社会問題になったのであり、女性の貧困問題はそれまでにもずっと存在していた、という本書の指摘に端的にあらわれている。著者の狙いは、売春が社会問題というのであれば、「売春の当事者でないから
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○ライターの荻上チキ氏の著作。
○”ワリキリ”を行う女性へのインタビューを通じて、なぜワリキリをしているのか、いつからしているのか、など、その理由や背景事情をまとめ、分析したもの。
○女性が”ワリキリ”を行う理由は様々であるが、「社会からの排斥」と「消極的選択(貧困)」というのが、一つの大きなテーマではないかと感じた。
○本書中にも批判的に書かれているが、私も、「好きでやっているんだから」と思っていた面も多いので、その実態を知り、衝撃的であった。絶対的な貧困がこれほど近くにあるということも。
○サイトはもちろんのこと、出会い喫茶という“場”が提供されるということは、その需要も供給もあるというこ -
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稼働店舗と1店舗あたりの在席女性の数から、日本全国の
風俗嬢の人数を30万人と推測。
風俗嬢の平均月収は49万円、首都圏と地方のワリキリの
平均金額の違いなど、まあ、風俗関連の数字について
よくぞここまで仮説を立てたと、好きな人には面白い夜の経済学。
ただ、ただのエロ経済の話ではなく、光ったのが後半部分の
貧困・生活保護に関わる考察。
それなりの所得を得ている人たちは、生活保護を受けている
人たちに対して厳しい評価を下している、これはすなわち
”貧困を想像できていない”という指摘。数字が物語っているだけに
間違いなく事実。
(別のことでも触れて、著者は”自分にやや厳しく、他人には
超厳しい -
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ネタバレ出会い喫茶や出会い系サイトを利用しての非管理買春である「ワリキリ」を行う女性たちについてのフィールドワークをまとめた本
虐待やネグレクト、貧困、DV、精神疾患や依存症、身体障害、母子家庭・・・読んでいて胸が痛む境遇がほとんどで,どうしたらいいのかと考え込まざるを得ない。
というわけで、非常に有益な本なのだが、欠点が2つ
1 文章。冷静な描写や分析が続くのに、各章の最後が突如ポエム的になるので面食らった。
2 専門用語(?)の説明がなくて不親切。「セクキャバ」「バンギャ」等の用語にについて、巻末に五十音順の解説がほしかった。
特に印象に残った点
・ 最近の「貧困問題」は男性も貧困に陥ったの -
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本書は興味本位で(半ばネタとして笑)買ったのですが、あまり馴染みの無いテーマだったこともあり、新鮮でした。
統計学と経済学の手法を使って、所謂フーゾク産業を分析しているのですが、読むと日本の問題が見えてきます。
「『売春相場の地域差』は、印象だけのものではない。価格の平均値・最頻値に加え、『経済状態』を表す変数として、完全失業率、有効求人倍率を用いて回帰分析も行ったのだが、いずれの場合でも『経済状態が悪い地域では売春価格は安い』という結果が得られた。そう、『売春は経済問題』なのである。」(p.81)
そういうお店を利用して、極端に値段が低かったら、その地域は経済状態が悪い、景気が悪い、とい -
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人は自ら欲望し、また、社会からの「このようにコミュニケーションしろ」という要請に応じて、つど新しいメディアを取り入れ身体機能を拡張する。社会における身体のありかたを「社会的身体」とし、その観点から「メディアとは何か」を観察・考察していく。新しいメディアが登場すると、必ずそのデメリットが取りざたされバッシングを受けるのは何故か、現在のお笑いがリアクションまでも内包しながら成立するようになるまでの変遷、ゲーム性を帯びたネット世論の構造などの指摘に興味が尽きない。コミュニケーションへの究極の欲望が、「相手が思っていることがすべて自分にわかる」なら、メディアはまだまだこの先進化していくのだなあ、と思っ