大森望のレビュー一覧
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もう記憶が定かではなくなっていたが、解説を見ると、本書はバリントン・ベイリーの初翻訳長編だったようで、『禅銃』なども翻訳はこのあと。ワイドスクリーンバロックなどといって、なんだあ大したことないじゃないかと思ったのは、短銃で恒星を破壊してしまうような『禅銃』の突拍子なさと比べると、『カエアンの聖衣』のアイディアはちょっとスケールが小さい気がしたのだ。
服を着ることによってその人の潜在能力が開化して別人のように力を発揮できるようになるというアイディア。そしてそのような服飾文明を発展させたカエアン人。物語はカエアン星系と対立するザイオード人の視点から描かれる。原題は「カエアンのガーメント」。ガー -
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没後6年を経て伊藤計劃の名声はいや増しに高まっている。生きていれば駄作を書くかも知れないのに、もう絶対に駄作を書くことのない彼は不滅だ。
でも読者はもっと彼の作品を読みたい。『屍者の帝国』。プロローグだけが書かれた第4長編。1878年、ヴィクター・フランケンシュタインの先駆的研究から100年、屍者に疑似霊素を注入することでロボットのように使役できるように蘇生させる技術が一般化していた。わたし、医学生のジョン・H・ワトソン、すなわち後のシャーロック・ホームズの記録作家は女王陛下の諜報機関にスカウトされ、グレート・ゲーム(中央アジアでの大英帝国とロシア帝国の覇権争い)のプレイヤーとして乗り出す -
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気が向いたときだけ買っている『NOVA』である。
1970年代、「SF」といったら「SM」に間違えられて、という自虐ネタがよくあった。
では、SFとは何か、というのも昔から問われてきた難問である。村上春樹からしてSF的設定で小説を書き、それがベストセラーとなっている昨今、かつての筒井康隆会長の日本SF大会のテーマ「SFの浸透と拡散」はすでに現実のものとなった。ところが逆にコアなSF短編の発表舞台が乏しくなったと考えた大森望が、アメリカでは昔からあるが、日本にはさっぱりないオリジナルSFアンソロジーを編んだのが本書『NOVA1』。10まで続くらしい。
北野勇作「社員たち」、田中哲弥「 -
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このオックスフォード大学史学部シリーズ、タイム・パラドックスを起こす可能性がある時点には時間旅行できないという設定で、面倒くさいパラドックスは回避されている。それゆえ、過去から帰れなくなってしまったというほかは延々と戦時の生活が描かれるのだが、物語も最終局面に向かって、時間旅行の問題が前景化してくる。
1940年に閉じ込められた(本巻では41年に年が開ける)、マイク、アイリーンことメロピー、ポリーの3人は、2060年のオックスフォードにメッセージを送ろうと偽装した広告記事を新聞にのせたり、様々な努力をするのだが、そうした帰還のための努力が効を奏しているなら、すでに回収チームが来ているはず -
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2060年のオックスフォード大学史学部、タイムマシンを使って、学生が過去の時代に旅行してフィールドワークをしているという設定のシリーズ、『ブラックアウト』の続編であるが、長くなってしまったのでひとつの長編を『ブラックアウト』『オールクリア』、すなわち第二次大戦中のロンドンの灯火管制とその解除をタイトルに2分冊にしたもの。日本語訳ではさらに『オールクリア』も2分冊になってしまった。
評者も最近、フランケンシュタイン産業のロンドン、裏ロンドン、クラーケン神のロンドンなど結構ロンドンに行っているのだが、オックスフォードの航時史学生もたくさんロンドンに行っている。第二次大戦下のロンドンに。
そ -
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第二次世界大戦中の日本の様子については、書物やドラマなどでそこそこに知っていると思うのだが、はて、イギリスがどうだったかなど、とんと知らぬ、本書を読むまでは。
すなわち、ロンドンはナチスによる空襲にあって、灯火管制が敷かれていた。灯火管制、英語ではブラックアウト。
2060年のオックスフォード大学史学部では、タイムマシンを使って、学生が過去の時代に旅行してフィールドワークをしているという設定のシリーズだが、私は初めて読む。時間旅行は過去へのみ可能で、ネットといわれる装置で「降下点」を開いて学生を過去に送り出す。「降下点」が開くのを現地人、いや現時人に見られる可能性があったり、そこに「降 -
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ヒューゴー賞とローカス賞のダブル受賞を果たした本書は、コニー・ウィリスの人気シリーズ<史学部シリーズ>の第2弾。
いったいこのシリーズだけでどれだけの賞を受賞したのか気になるところです。
全2巻。シリアス路線だった前作「ドゥームズデイ・ブック」と異なり、今作はどたばたコメディ。抱腹絶倒もの。
そして単なるどたばたコメディではなく、SF、ミステリー、そしてラブロマンスも兼ねそろえた充実ぶり。こういうと、ごちゃまぜな感がありますが、うまくバランスが保たれているのは、著者の技量によるものか。
ウィリスのシリアスな作品も好きですが、どちらかというと「まれびとこぞりて」のような作品が好きな自分にとって -
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空襲警報は解除され(オールクリア)、全ての謎が明らかになる。
第二次世界大戦下のロンドンで、それぞれの学問的課題を研究するために2060年のオックスフォードからやってきた3人の史学生。ポリー、アイリーン(メロピー)、マイク。
過去へのタイムトラベル。それは絶対に安全なはずであり、もしも危険なことが起こりそうになったら、または歴史を改ざんしてしまいそうになったら、すぐに2060年の世界へ戻されるはずだった。
だがしかし、何度も命を失いかねない危険な目に遭い、本当なら死んでいたのかもしれない人々の命を多数救ってしまう彼ら。
だからなのか?
2060年へ繋がるはずの降下点はどこもここも使用不可能 -
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3冊合わせて1745ページ。ポケット判で750ページ以上もある「ブラックアウト」を読んだ時には、「これ、普通の作家なら200ページぐらいで書き終えるのでは」などと思ったが、全部読み終えてしまったら、タイムトラベルものの常でまたすぐに最初から読み直したくなる。
実際に読み返さなくても、あれはどうだったか、ここはどうなっていたかとページをめくって確認してしまうこと必定だ。それほど登場人物たちに魅せられ、この長い物語から離れたくなくなってしまう。大空襲下のロンドンに閉じ込められるポリー、アイリーン、マイクの史学生3人をはじめ、いたずらが過ぎて手に負えないビニーとアルフのホドビン姉弟、勝利を信じ -
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結構面白かった。メタフィクションが多いのは時代の流れか。以下作品毎に記す。
『社員たち』
世紀末ものと寓話を掛け合わせて現代への風刺…てな感じでなんとでも言える。感激はしない。
『忘却の侵略』
全く新しいタイプの侵略者に対して主人公の武器は…というのは非常に楽しく、それが現実的であるか否かという発想はエンタメに対して失礼というものだろう。
『エンゼルフレンチ』
一歩間違えばサブカルに振り切りそうな物語を、ただミスドという一点で支えきったかのような作品。
『七歩跳んだ男』
まあ、西澤保彦の『七回死んだ男』のもじりだろうか。トリックに関してはなんかごちゃごちゃ言ってるぞという感じで、間に挟まるいつ -
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オックスフォード大学史学部シリーズの長編第2作。まるでシェイクスピア悲劇のようだった前作からうって変わって、今度はヴィクトリア朝を舞台としたてんやわんやのラブコメディが描かれている。
「彼と彼女がくっつかないと未来が大変なことに!」という某名作映画を彷彿とさせるストーリーはもちろん、主人公とヒロインの距離加減もまた読んでいて楽しい。ウィムジー卿に憧れる女の子なんて素敵。
そしてある意味主役の犬と猫! たかがペットと侮るなかれ、驚くほどキャラが立っている彼(&彼女)は始終物語を引っ掻き回すがどうにも憎めない。人間だけじゃなく動物も魅力的な本作は、一見の価値ありです。