大森望のレビュー一覧

  • 犬は勘定に入れません(上) あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎

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    SFで題名がコレというので確実にコメディと敬遠していた自分が馬鹿らしい。何故か執事役やってる未来人のフィンチが完璧にジーヴスだし、思った通りジェロームのボートの三人男だし!犬は勘定にいれませんし!キャラクターが生き生きして、大笑いしながら、ヴィクトリア朝風に自分でもあれこれ仰々しい引用を思い浮かべながら読むとさらにベター。

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    2012年10月06日
  • ドゥームズデイ・ブック(下)

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    ネタバレ

    タイムトラベルが歴史研究目的で行われるようになった21世紀中盤。
    オックスフォード大学史学部の学生、キヴリンは14世紀の農村に実習で赴いた。しかし、到着直後、彼女は病に倒れてしまう。一方21世紀でも謎のウイルスが蔓延し始めた。二つの時代を席捲する病。キヴリンもまた、「ドゥームズデイ」(世界の終わり)というべき悲劇に直面する……

    「犬は勘定に入れません」のほうを先に知っていて、この本に興味を持ち読みました。すばらしい物語でした。
     
    この物語のタイムトラベルシステム、「ネット」はタイムパラドックスを許容しません。歴史家たちは個々の人間に関わることはできても、歴史の大きな流れを変えることはできません。この物語を読んでいるうちに、自分もまた、14世紀の人々と紙という「ネット」を介しているのだと思いました。懸命に生きた。けれども物語の結末は変えられない。それがこの物語を読んで感じる悲しみなのではないか、と思いました。

    "Requiem aeternam dona eis,et lux perpetura luceat eis."
    (下巻、483ページより引用)

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    2012年09月06日
  • 犬は勘定に入れません(上) あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎

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    出だしは設定がわかりづらくて本当に読みにくいが、テンポがよくてよしもと新喜劇みてるような可笑しさがある。

    舞台はタイムトラベルが可能となった未来からタイムトラベルした第二次大戦のさなかやヴィクトリア時代の過去。話の随所に出て来る英文学の古典がドタバタ加減にいっそうの可笑しさを醸し出している。そちらの知識があったらもっと面白かったのに。

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    2012年10月13日
  • アジャストメント ディック短篇傑作選

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    ディック好きなら迷わず買うべし。内容は既に他の短編集におさめられたものもあるが、小品「さよなら、ヴィンセント」や、講演の原稿でありかなりヤバい内容の「人間とアンドロイドと機械」など、ファンとしては押さえておきたいものが収録されている。「人間とアンドロイドと機械」はディックが「アンドロイド」をどんな視点で見ていたのか分かる一方、彼自身を少しずつ蝕みつつある狂気も垣間見えて興味深い。

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    2012年05月04日
  • アジャストメント ディック短篇傑作選

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    近未来・異世界の描き方ではディックは随一である。キングとディックで描かれる歪んだ、変節した日常以外に他の作家はいったいどれだけのオリジナリティを発揮できるのか。

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    2012年04月29日
  • 犬は勘定に入れません(下) あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎

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    上巻に引き続きタイムトラベルしまくりの下巻である。主人公達の思惑通りにはことが進まずにあわや歴史は変わってしまうのか?と思いきやそんなことは無くきっちり丸く収まり“主教の鳥株”は見つかる。結局時間の流れは変化を嫌い、自ら修正しようともするわけである。作中で述べられている通りの職業の人物が犯人か?と思いきや実は意外な人物が犯人でしたというパターンでミステリとしても秀逸。タイムトラベルSFであり、歴史小説であり、ミステリであり、恋愛小説であり、コメディであり、あらゆる要素を含んだエンタメ大作である。登場人物(犬1匹と猫1匹含む)も皆愛着の持てるコミカルな造形で魅力的である。上巻前半の読みにくい部分(主人公がタイムトラベルのしすぎで意識が朦朧としているのが原因)を突破すればその先はただただ楽しんで読むだけである。ぜひともあらゆる人々に薦めたい作品だ。

    本作にみられるようなタイムトラベルものは世の中に数多く存在し、どれも工夫に富んだものである。同じ時間軸でタイムトラベルするものもあれば多世界を移動するものもある。純粋にSFとしての作品もあれば、ミステリやその他のジャンルと融合したものもある。人間は今のところ時間の流れに逆らうことはできず現実を見つめ現在を生き未来に進むしかない。自分の過去にたいして全く後悔していない人間などおそらく皆無だろうし、誰しも「あの時こうすればよかった」と思うことがあるはずだ。ゆえにタイムトラベルものは書かれ続けるだろう。少なくとも皆、時空間移動に対して興味をもっているはずだ。国民的アニメであるドラえもんでもタイムマシンは人気の秘密道具であり続けている。

    ところで実際にはタイムトラベルは実現可能かというと科学者達(キップソンら)は少なくとも我々が生きている時代には実現不可能だと述べている。結局夢物語でしかないのかと思いきやつい先日ニュートリノが光速を超えたとの報告があった。もしこれが事実ならばアインシュタインの予測をくつがえし、極端な話、タイムトラベルが可能になるかもしれない。もちろんそんなことはやっぱり難しいのだろうがしかしそんなエキサイティングな時代に我々は生きていることに感謝したい。SF作家はタイムトラベルものを書き続けてほしいし、物理学者には時空学を研究し続けてほしい。そして願わくば時間旅行が可能になる日を拝みたいものである。

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    2011年11月13日
  • 犬は勘定に入れません(上) あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎

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    時は2057年。いくつか制約があるもののタイムトラベルが可能となった時代。オックスフォード大学はコヴェントリー大聖堂の復建に協力している。同大学史学部の院生である主人公のネッドは復建に必要な”主教の鳥株”をみつけるように命じられ過去と現在を行ったり来たりするのだが疲労困憊で倒れてしまった。ちょっとした休暇をとるために19世紀ヴィクトリア朝に軽い任務とともに派遣されたものの任務を忘れたままで行動していたら時空連続体の存亡をかけて奮闘することに……。

    主軸はタイムトラベルSFであるがミステリであり恋愛小説であり歴史小説でありユーモア小説でもある。下巻のレビューで改めて感想を述べます。

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    2011年10月18日
  • 犬は勘定に入れません(下) あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎

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    タイムトラベルものにパラドックスはつきものだが、それがこの物語では必要不可欠で一番の魅力。なんだかバタバタと不親切極まりないスタートで無事に読み終えれるか不安であったが上巻途中から目が離せなくなって、下巻に至っては一気読み。イングランドの歴史や文学をもっと知ってたらもっと楽しめたんだろうな。

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    2011年10月08日
  • アジャストメント ディック短篇傑作選

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     今回この短編集を購入したのは表題作である「アジャストメント」を読むためではなく(同作ももちろん面白いのですが)、巻末に収録されたディックの講演原稿「人間とアンドロイドと機械」を読むためです。
    「人間とアンドロイドと機械」は、遺作となったヴァリス三部作の執筆中にディックがイギリスで行う予定だった講演の原稿に加筆したもの。体調不良のためディックが渡英を中止したためこの原稿が残された唯一のものとなりました。
     ディックが終生作品のテーマとして持ち続けた「アンドロイド」という概念が一体何を意味しているのか。またディックの作品に共通してみられる記憶の改変、真実の隠蔽といったモチーフについてもディック自身の言葉で語られており、少しでも彼の作品を面白いと思ったことのある方なら必読です。
     後半、ディックの語り口はかなりオカルトめいてきます。デュオニュソス、エッセネ派、死海文書、転生、夢といった言葉が、まるでカルト宗教の教祖が語るような口調で綴られており、これを読まれた方は「果たしてディックは正気だったのだろうか?」と感じるかもしれません。当時のディックは友人の死やドラッグ中毒などでかなり精神的においつめられており、その表れと受け取る方がいても不思議はありません。
     しかし、私はこの部分に晩年のニーチェが書いたものとの強い関連を感じます。「私はインドにいた頃は仏陀でしたし、ギリシアではデュオニュソスでした」というあれです。ディックはユングに深く傾倒していたことで知られていますが、おそらくユングを通してニーチェを知り、それを引用した可能性が高いのではないでしょうか。ニーチェ、またその影響を受けたルドルフ・シュタイナーらの著作をフィルターとして読むとオカルト的要素の出所がはっきりしてきます。
     ニーチェの晩年とディックが死の直前に置かれた状況はある意味よく似ています。ディックがニーチェに同一化しつつ、意識的にこの原稿を書いたということは十分に考えられると思います。

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    2011年07月25日
  • ドゥームズデイ・ブック(上)

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    ネタバレ

    ダンワージー教授シリーズにはシリアスとコメディがあって
    コメディには『犬は勘定に入れません』があり、
    シリアスではこれ! らしいです。
    でも上巻は割と『犬は~』のノリで読めちゃう。

    携帯電話とウォシュレットの無い世界は
    斯くも過酷であった。

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    2011年06月29日
  • ドゥームズデイ・ブック(下)

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    ネタバレ

    ページを閉じて逃避したくなるほどの死ぬ死ぬラッシュ…
    しかし読み終わったときにはやはり読んでよかった、と。

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    2011年06月29日
  • ドゥームズデイ・ブック(下)

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    壮絶で胸を打つ展開。コニー・ウィリスを知らなかったって、なんてもったいないことしてたんだろ。英語で読みたいと思った作品。

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    2011年05月01日
  • NOVA1【完全版】

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    一切のハズレなし。
    田中哲弥から飛浩隆までの、特に牧野修から飛浩隆までのニューウェーブSFの並びは単なるアンソロジーとも言い難い、奇妙な連帯感があって面白い。購入目的だった円城塔も、独立した本であれば「外道的ジャンル」として楽しめてしまう彼独特のエンタメ性が仇となった感が強く、霞んでいたが、一連のまとまりの中に放ると一気に底上げされて見える。言い換えれば単体だけだとつまらないってことですけど…はりきり過ぎてすっ転んだ後ろ姿を見ているような、ファンとしては悲しい気持ち。

    短いながらも微妙な後味が尾を引く北野勇作「社員たち」、キッチュな雰囲気むんむんのタイトルに反して密なグロ描写がこれでもかと続く牧野修「黎明コンビニ血祭り実話SP」、読みにくい作りながらも目の離せない、静かな昂揚感が何時の間にか確かな昂奮に変わっている飛浩隆「自生の夢」が個人的にはツボだった。

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    2011年04月03日
  • ドゥームズデイ・ブック(下)

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    最後までちゃんと読み終えてよかった! 何度涙ぐみそうになったことか…。
    昨年の新型インフルエンザ騒ぎの前に読むか、後に読むかで、だいぶ没入感が違うのではなかろうか。

    しかし後半の展開はすごい。痛い胸を抱え、呆然として読み終わった。

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    2010年05月31日
  • ドゥームズデイ・ブック(上)

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    まず、一言。
    ハヤカワさん、この表紙は手に取りにくいです(汗)
    少女マンガ?

    コニー・ウィリスの仕掛けるタイムパラドクスシリーズの第一弾、
    今作ですが、プロットといい、ストーリー展開といい、
    作品の裏に流れる思想といい、
    あらゆる点で秀逸の作品です。

    時は未来。
    その時代、考古学の研究は、
    時間をさかのぼり、その時代に実際に赴き、
    現場で調査をする方法へと進化しています。

    オックスフォード大学の女学生キブリンは、
    中世のイギリスへと調査に出るのですが、
    その直後、エンジニアが高熱に倒れ、
    キブリン自身も到着した中世の世界で、
    高熱に倒れます。
    果たして彼女は、現代へと帰ってこれるのか!

    という、タイムパラドクスでありがちな始まりなんですが、
    いやいや、それがそんなに浅くないんです。
    「なにが浅くないのか」を言ってしまうと、
    ほぼネタバレとなってしまうので、
    気になった方は、読んでみることをお勧めします。
    決して損はさせません。

    芯が強く、決してあきらめないキブリンも魅力的なんですが、
    キブリンを現代に戻す手立てを必死に探しまわるダンワージー教授も、
    とても魅力的な人物です。
    コニー・ウィリス自身は、ダンワージーは、
    ハリソン・フォードを思い描きながら書いたと言ってましたが、
    そうやって想像して読むと、またこれがうまくはまるんです(笑)

    ぜひぜひ一読を。

    それにしても、当たり前のことですが、
    中世イギリスで話されていた英語と、
    現代の英語はまったく違うんですねぇ。

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    2009年12月20日
  • ドゥームズデイ・ブック(上)

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    時間旅行が可能になった未来。
    大学の研究者で、中世に遡る実習をするヒロイン。
    ところが、時間軸がずれ、ペストが流行する時代についてしまう。
    しかも、未来でも問題が起こり…
    迫力があります。

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    2009年10月11日
  • 犬は勘定に入れません(上) あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎

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    タイムトラベルが可能になっている未来から、19世紀へ。
    犬と猫を連れてのてんやわんやのテムズ川の旅。
    若い二人の研究者のロマンス。
    「ボートの三人男」へのオマージュも。

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    2009年10月11日
  • 犬は勘定に入れません(上) あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎

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    この本が2冊以上の別の本を読むきっかけを作ってくれたことに感謝したい。
    →ボートの3人男
    →スターファイター
    →コニー・ウィリスの別の本
    ヴィクトリアンなお友達がたいへんかわいらしい。
    詩も読もうかな。

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    2009年10月04日
  • ドゥームズデイ・ブック(下)

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    内容(「BOOK」データベースより)
    21世紀のオックスフォードから14世紀へと時をさかのぼっていった女子学生キヴリン。だが、彼女が無事に目的地にたどりついたかどうか確認する前に、時間遡行を担当した技術者が正体不明のウイルスに感染し、人事不省の重体に陥ってしまった。彼女の非公式の指導教授ジェイムズ・ダンワージーは、キヴリンのために、新たな技術者を探そうと東奔西走するが!?英語圏SFの三大タイトルを独占したコニー・ウィリスの作。

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    2009年10月04日
  • ドゥームズデイ・ブック(上)

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    内容(「BOOK」データベースより)
    歴史研究者の長年の夢がついに実現した。過去への時間旅行が可能となり、研究者は専門とする時代を直接観察することができるようになったのだ。オックスフォード大学史学部の女子学生キヴリンは、実習の一環として前人未踏の14世紀に送られた。だが、彼女は中世に到着すると同時に病に倒れてしまった…はたして彼女は未来に無事に帰還できるのか?ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞を受賞した、タイムトラベルSF。

    読後感は物凄い。

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    2009年10月04日