伊坂幸太郎のレビュー一覧
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カットバック形式、叙述トリックってやつにまんまと騙されたな。違和感あるなと思いつつも種明かしされるまで見当がつかなかった。
序盤は物語の歩みが遅く、どこか噛み合わない感覚にウズウズしながら読み進めていたが、終盤になって一気に加速し、気づけばページをめくる手が止まらなくなっていた。
本作は、軽やかな会話とコミカルな空気感の裏で、取り返しのつかない現実が静かに進行していく物語。読み進めるほどに、過去と現在がどこか噛み合わない違和感が積もっていき、最後になってそれが「出来事の誤解」ではなく、「自分自身の見方の誤り」だったことに気づかされる。
主人公は被害者でありながら、同時に目撃者であり、知らぬ間 -
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ネタバレなぜ音楽なんだろうと思った。
終わりとしてはきれいだけど、でもなんで、という疑問が残っていた。
でも他の人が書いていた「動物がたくさん出てくるのが印象的」という感想を見かけた時、ふと頭に浮かんだことがあった。
それは、なぜ桜は人を殺すことを認められているのかという疑問の答えにも通じる気がした。
音楽は人間だからこそ楽しめる芸術だからかもしれない。絵もある、読書もある。残るは音楽。
優午は話せるけど案山子だから、音楽を知らない。楽しむこともできない。
それに、この島に音楽が持ち込まれるためには優午は殺されないといけない。
桜が人を殺しているのはきっと自然だからだ。実際は桜になりたがって -
Posted by ブクログ
上下巻読み終えての感想を一言。壮大なるファンタジーだったかなと。
5年前の惨事、播磨崎中学校銃乱射事件。
その事件で奇跡の英雄と評された永嶋丈は、
今や国会議員として権力を手中にしていた。
もう一つの検索ワードを追う渡辺拓海は安藤商会の始祖とされる
安藤潤也に辿り着くが、事件との繋がりを見出せないまま追い詰められていく。
大きなシステムに覆われた社会で渡辺は自身の生き方を選び取れるのか。
上巻から更に加速して血生臭い展開が続いていく。
降りかかる悲劇に目を背けたくなる描写も多数。
その辺の緊迫感を含め、恐怖は最大限に煽られていくが
辿り着いた真相含め、壮大すぎたなという印象。
とは言え、 -
Posted by ブクログ
恐妻家のシステムエンジニア・渡辺拓海はあるサイトの仕様変更を引き継ぐ。
プログラムの一部は暗号化されていて、前任者の先輩は失踪中。
解析を進めていた後輩や上司を次々と不幸が襲う。
彼らは皆、ある特定のキーワードを同時に検索していたのだった。
時代設定は21世紀半ばという近未来。
著者の別作品『魔王』の50年後の世界を描いているらしく、
『魔王』が未読だったので、それがどこまで影響しているのかわからず。
上巻はとりあえず謎を散りばめ、芽が出てきたとこで終わる。
これがどう花開くのか、下巻に期待したい。
伊坂作品特有のキャラクターの良さが今作も光っている。
作者・伊坂幸太郎自身をもじった小説家 -
Posted by ブクログ
ネタバレ正直に言うと、最初の方はあまり合わないな…と思いながら読んでいた。どこか力の抜けた現代パートと、不穏な過去パートが交互に進むも、とても読みやすい。
なんとなくそうなのかなと疑いながら読んでいたのでそれ自体にはそこまで驚きはしなかったものの、本がなくなった理由など、細かい伏線は見落としていたので納得感があった。さりげなく新聞を読ませるのは(彼も、これを考えた伊坂先生も)上手いな〜と鮮やかさにため息が出た。過去と現代が繋がってからはとても面白く引き込まれた。
彼は自首したのか、帰省から戻った椎名はどんな選択をするのか。彼らの道がもう一度交差することはないのだろう、という寂しさと乾いた爽やかさが