三角和代のレビュー一覧
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スチュアート・タートンのデビュー作。
主人公はイングランドの大きな敷地で目覚める。
女性が殺される現場におり、自分の記憶は無くしていた。
ブラックヒース館と呼ばれる大きな屋敷に彷徨いやってくる。ブラックヒース館では今、多くの人々が招かれていた。
ブラックヒース館を所有するハードカースル家の長女であるイヴリン嬢がフランスから帰国したことで仮面舞踏会が開かれていたのだ。
主人公は黒死病のマスクを被った人物から、これからブラックヒース館で起こる殺人事件の解決を命じられる。
事件を解決すれば繰り返されるブラックヒース館からの脱出が約束されるが、脱出出来るのは1人だけである。このループされるブラックヒース館には他にも事件解決を命じられた人物がおり、その人物よりも早く犯人を見つけ出さないといけない。
主人公は人物、人格を転移しながら事件が起きる一日をタイムループし続ける。
というもの。
日本で言う特殊設定ミステリーで、正直設定やあらすじも目にしないで読み始めたほうがより楽しめる作品ではあると思う(知っていたとしても早い段階で設定は明かされるので、別段問題ないのだが)
自分はミステリー自体をそもそもそんなに読まない。特殊設定ミステリーというジャンルがあることは知っていたが、触れるのは初めてかもしれない。
なのでこの特殊な設定モリモリな物語を読み始めて、最初は大分苦戦してしまった。
80ページくらいまで読んで、人物の多さと話が頭に入ってこなさすぎて一度止めようかと思ったくらい。その後最初からまた読み直して、何とか話に入っていけたけど。
設定は大分複雑で、これどうなってるの? って瞬間は結構ある。
ただ大分ヘンテコな設定ではあるが、何でこんなことに? っていうのが物語を読み勧める牽引力にもなっている。
それらも一応解決されるし、大分力技な解決ではあるが、なるほどねーと自分は関心した。 -
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死の霧により人類が滅びた世界。
最後に残された人々が暮らすユートピアで、
起こってはならない殺人事件。
犯人を見つけられなければ、
今度こそ「本当の終わり」がやってくる。
『世界の終わりの最後の殺人』スチュアート・タートン
いや、もう……この設定が強すぎる。
「黒い霧」によって世界は滅亡し、
生き残ったわずかな人々は〈世界の終わりの島〉で暮らす。
彼らを導くのは、旧世界を生き延びた3人の科学者「長老」達。
島では争いも私欲もなく、
人々は互いを尊重しつつ「奉仕」をしながら
自給自足の穏やかな生活を送っている。
一見すると、理想郷そのもの。
けれどある日、殺人事件が起きてしまう。
それをきっかけに、
死の霧から島を守っていたバリアが解除される。
霧が島に到達するまで、残された時間はおよそ二日。
それまでに真犯人を突き止めなければならない。
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ディストピアとユートピアが背中合わせになった世界観。
「起きてはいけない殺人」が起こるという特殊設定。
こういうミステリ、好きな人にはたまらないはず…!
さらに面白いのは、
村人たちの体に〈エービイ〉と呼ばれる
AIが埋め込まれている点。
彼らは日々、都合の悪い記憶を消されて生きている。
だから事件が起きても、前日の記憶は誰にもない。
それなのに身体には傷があり、服には誰かの血が付いている…
この違和感が、とにかく不気味で引きが強い。
「長老」を絶対視する従順な村人たち。
60歳になると必ず死ななければならないという掟。
小さな歪みが少しずつ輪郭を持ち始めたところで、
衝撃の事実が姿を現す。
✧
探偵役となるエモリーの存在が良い。
他人を決して疑うことを知らない村人たちの中で、
ただ一人、この体制に疑問を抱く女性。
外からやって来る探偵ではなく、
内側から世界を崩していく構図がとても好みだった!
そして語り手が、まさかのAI〈エービイ〉。
記憶を消す存在を一人称に据えるなんて……
この語りは本当に信じていいのか?
と、最後まで疑いながら読むことになる。
特殊設定×ミステリが好きな人には、
ぜひ手に取ってほしい一冊です。 -
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特殊設定ミステリーって万能ですね。設定を明確に開示すれば、どんな不可解な状況下でもミステリーは成立する。
「人を殺す謎の霧」が突然現れて世界滅亡、科学者がそれを防ぐバリアを開発、最後の人類がバリアの下で細々生きている(すごい設定)。
科学者は不死化し、村人から崇められている。その一人が殺され、犯人を特定しなければバリアが解除され人類が滅亡する。(なんで?)
しかも、登場人物が都合よく(この場合悪く?)記憶喪失になる。
これだけ、荒唐無稽でご都合主義な設定を盛り込んでもミステリーとしてきちんと機能する。どんなに設定が複雑でも、読者である人間に理解可能な真実が提示されればそれで充分ミステリーなんだろう。
とはいえ、設定を活かした意地悪なギミックが随所に仕掛けられている。語り手となる三人称はいったい誰なのか?それを理解することで「穏やかな村」の真実が徐々に開示されていく。
世界設定に対し人物関係は案外、簡単。科学者は3人だし、主要人物のほとんどが家族、読みやすいし心情に理解は優しい。 -
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終わり方が最高!
様々な思惑のある乗客、乗員を乗せた船舶内で起こる事件の数々…伏線が巧妙な本確ミステリー。まるで、マダミスのようでワクワクする。
傲慢かつ残酷な権力者の所業は、現代社会に通じるものがあり、(いもしない)悪魔の存在に恐れ、憎しみを募らせる人々の様子は、現代の排外主義を描写しているようで面白い。
また、女性が賢くイキイキと描かれていつつも、それは許されないという時代背景など…。謎解きだけじゃなくて、描かれているキャラクターや、プロット、巻き起こる出来事が社会派作品としても魅力的で飽きずに楽しめた。
そして最後の真相は………これは予想しなかった!
思いっきり騙されて、そして結末が個人的に最高すぎて、やばい。
このキャラクターたちの続編ほしいけど、作者さん的に多分そういうタイプの方ではないだろうな〜。
17世紀西洋の知識欠落しているせいで、病者とか、彼らの服装とか諸々…想像しきれなかったところも所々あるので、どうかアレント・ヘイズをドウェイン・ジョンソンに演じてもらってハリウッド実写化してほしい。 -
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ネタバレ霧に橋を架ける
「スパー」
「水の名前」
「シュレディンガーの娼館」
「変化後のノース・パークで犬たちが進化させるトリックスターの物語」
「陳亭、死者の国」
「ポニー」
「26モンキーズ、そして時の裂け目」
「蜜蜂の川の流れる先で」
「噛みつき猫」
「ストーリー・キット」
「霧に橋を架ける」
ショートショートから、表題作の中編まで、様々な長さ、味わいの短編集。
いくつかの物語に共通しているキーワードは、犬や猫への愛とコミュニケーションの難しさ。
表題作は危険な霧の川に橋をかける技術者の物語ですが、プロジェクトリーダーの孤独や工学を極めるものの迷いなどがうまく描かれていたと思います。
「蜜蜂の・・・」は、蜜蜂の川の源流を辿るロードストーリーですが最後が幻想的で良かったです。「変化後の・・・」は犬が話せて考えられるようになった変化後の物語ですが、犬好きにはなかなか厳しいお話しでした。
思索、ユーモア、皮肉、ストーリーテリングと一流の作家かと思います。
SF、幻想小説もいいな、もっと読みたい!と思える一冊でした。
竹蔵 -
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ネタバレ・あらすじ
スウェーデン エーランド島が舞台
約20年前の少年失踪事件を解決しようとする母親と祖父
事件を調査する内に30年程前に死んだ男が実は生きていた…?
調査パートと死んだ男の過去パートが交互に書かれ真相が判明するタイプのミステリー。
・感想
息子が行方不明になってから立ち直れないままのユリアと、老人ホームに入り手足も満足に動かせないイェルロフが探偵役。
舞台となる場所(霧深い閑村)や季節(秋冬)、登場人物も老人ばかりなので展開も遅め。
終始物静かで寒々しい印象があるけどエピローグでは事件解決とともに囚われていた彼らの苦しみが昇華されて、それが季節が春になり霧が晴れる事で描写されていい読後感だった。
ハッピーエンドではなくニルスがクソ野郎であることには変わり無いけど…。
娘と父親、息子と母親で対比され母親(故郷)の元へ帰りたかったニルスと事件後目を背けていた故郷、父親との確執を解消するユリアとの対比も良かった。
犯人はそうかも…?いややっぱり違うかなーそうであってほしくないなって人がそうでちょっと悲しかった -
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ネタバレ・あらすじ
エーランド島シリーズ2作目。
エーランド島東北部、ウナギ岬にある19世紀に建てられた灯台守の屋敷が舞台。
屋敷に越してきたヴェスティン一家に起こった事件とそこで暮らしてきた人々の歴史、幽霊話と追悼と思い出話が本筋。
そこに空き巣三人組とエーランド島に赴任してきた新人女性警官の3組のエピソードが交錯し後半で収束していく。
・感想
ミステリー要素はメインではなく、厳しい環境の中人々の営みを支え続けてきた屋敷とその土地で過去生きていた人々、そして現在生きている人々の苦悩や自然への畏怖が描かれてた。
屋敷に刻まれた悲しみの記憶とそこに生きていた人々に想いを馳せ、そして連綿と続き交差してきた様々なものの途中に自分はいっときぽつんと立っているんだな、とふと考える。
基本的には諸行無常盛者必衰の精神で生きてるけど、だからといって人々の歴史、大切にしてきたものを軽んじることは違うし、その塩梅やせめぎあいってどこでも難しいねと思った。 -
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海賊に拉致された料理人の運命は?
波乱万丈で泥臭くドラマチックで、どっちへ転ぶかわからない、珍しい雰囲気の作品です。
1819年のイギリス。
貴族に仕える料理人ウェッジウッドは、突如別荘に乗り込んで来た海賊団に雇い主を殺され、ついでに拉致されてしまった。
迫力ある美人の女海賊マボットから、週に一度、マボットのためだけの本格的な料理を作るように命じられる、「命が惜しければ」と。
優雅な暮らしで繊細なテクニックを身につけてきたウェッジウッドだが、海賊船にはろくな材料も器具もない。
既に中年で妻を亡くして気落ちしていた彼は、荒くれ男たちの中に放り込まれて絶望しかけていたが‥
運命を呪いながらも、必死でましな物を作るうちに、しだいに信頼関係が芽生えていく。
めちゃくちゃに見えたマボットも、ある目的を抱いて行動していることがわかり、感動するウェッジウッド。やがて‥?
命の危機にも何度も見舞われながら、情熱的に進んでいく物語。映画にしても良さそうです。
面白かった! -
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ネタバレエーランド島4部作の3作目。
高齢者施設で過ごす元船長でシリーズ主人公のイェルロフが、友人の死をきっかけに自身の死期も遠くないことを正面から受け止め、施設を退所し、かつての自分のコテージで余生を過ごす決意をするところに始まる。
コテージの周辺は、いまや春、夏の暖かい季節だけ都会から人が訪れる別荘村の様相となっており、定住する者はほとんどいない。
数少ない定住者の一人がかつての仕事仲間ヨン・ハーグマン。
そこに加わる、新たな都会からの隣人達。
ペールは、イェルロフのかつての友人で石工のエルンストの甥にあたり、石切り場の縁に立つコテージを相続し、この春は別れた妻との間の双子の息子、娘達と余暇を楽しむつもりだったが、娘の方が重病にかかり手術を待つ状態と、思っていたようには行っていない。
ヴェンデラは夫で目立ちたがり屋の元精神科医マックスを影で支える(ゴーストライターしたり)マックスの元患者。
ヴェンデラもかつてこの地域に暮らしていたが、その日々は過酷なものだった。
唯一の拠り所はこの地方に伝わるエルフの伝承物語。
エルフに会いたいが一心でこの地に戻ってきた。
物語は主にこの隣人達の物語で展開される。
主となる事件は、ペールの父、ジェリーが巻き込まれた放火事件。
サイドストーリー的にヴェンデラの過去とエルフの物語。
なかなか込み入った展開で、どこに物語の中心があるのかがなかなか、判然としない。
シリーズの主人公であるイェルロフはというと、特に大立ち回りするわけでもなく終始アンカーのように登場する。
もう他の作品はほとんど憶えていないのだけれど、なんとなく毎回こんな感じの出演だったような気もして、これがエーランド島四部作の味なのかなとも思った。
話の筋としてはシリーズの中では一番とっちらかっていたように思う。
それはやはり、超自然的なエルフの伝承物語とそれに取り憑かれたヴァンデラ、ヴァンデラの周囲で起きた偶然とは思えない奇跡という足場の弱いエピソードに、何の実体(現実的な解)も与えられないまま物語が進んでいくため、何となくふわふわした感じが収まらないからであろう。
次第に輪郭がはっきりとしてくるジェリーの事件の進展の中、各々の人生が皮肉にも交錯するところは読みどころであったが、真相に辿り着くまでの壁があまりなく、意外とあっさりだったかなという印象。
本筋への感想とは異なるが、本作を象徴するスポットの一つでもあり、海外作品では時折出てくるワード、石切場。
あまり馴染みがないが、なんとなくのイメージで読み進めていたが、読後に何となくググってみたら意外とそこそこの近場にもちらほら。
しかも凄く興味深い風景が広がっている。
夏休みに行ってみようかなと思ったり。
4作目は既読なので、これで4部作完読なのだが、読む順番間違えてなんか消化不良。
ヨハン・テオリンはこのあとはアンソロジーに出てくるくらいで長編は出ていないので残念。