三角和代のレビュー一覧
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ガレス・L・パウエルの最新作。前作『ガンメタル・ゴースト』に比べると、僕は断然こちのほうが好きだ。
宇宙での生活がごく当たり前となった未来。
人間同士の大きな宇宙大戦が終了し、宇宙は表面上は平穏を保っている。
この世界で、元軍艦であるAIのシップは現在は人命救助用の艦船として働いている。
この物語は非常に斬新で面白い。
宇宙戦艦自体がAIにより人格を与えられ、自ら行動する。もちろん船には艦長が乗っているが、艦長の役目は船のAIに直接命令し、責任を取ることである。
本書で繰り広げられるAI艦同士の戦闘(もちろん宇宙船同士の戦いなので格闘するわけではなく、ミサイルやレーザーを撃ちまくっ -
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ネタバレエールランド島4部作もいよいよ3作目。長い冬を終え、春に突入…とはいえ、あったかポカポカ気持ち良い弛緩といかないところが、ヨハン・テオリンの作品。
本作の主人公は2人、元ポルノ映画製作者、現在認知症を患う父と重篤なガン患者の娘を持つ、若干冴えない男ペール。
もう一人は、元エールランド島の住人で、強圧的な夫に振りまわされて心が疲れている婦人ヴェンデラ。
二人がエールランド島、シリーズ通しての主人公イェルロフ(83歳になり死に場所を求めて老人ホームを自発的に退所する)の近所に越してきたところから物語がギシギシと動き出す。氷河が溶けだして河口へ向かうように、ジワジワとでも確実に。
今回も全2作 -
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ネタバレなんとも、地っ味ぃ~な話(笑)
もちろん誉め言葉。それも最大限!
北欧ミステリーは前に何冊か読んだけど、どれもイマイチで。
読んでる時はそこそこ面白いんだけど、読み終わった途端「あぁー、つまんなかった」と、なぜか口から出ちゃう昨今のハリウッド映画みたいだなーと、すっかり敬遠していたのだが、これは逆転満塁ホームランだった。
とにかく地っ味ぃ~に、少しずつ少しずつ話が進んでいくところがよかったんだろうなぁー。
最期の「なんだよ、それ?」的な明後日の方から飛んでくるような変化球が全然気にならないくらい、というより世の中の事件なんてまぁそんなもんだよなぁーと思えるのは、やっぱり地味なストーリーの一つ -
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本屋でカバー買い.ヒューゴー賞,ネビュラ賞,世界幻想文学大賞受賞,というカバーの文句は伊達ではなく,とても良い本に巡り会えたと思う.
SFと思って読むと間違いで,むしろ,南米の作家の書く小説の,奇妙な風合いに似たところがあって,変な設定を舞台にしているところは確かにSFといえるのかもしれないのだが,その設定を「そういうものである」という前提で物語が紡がれており,何か解決や注釈が与えられることはない.
その舞台に登場する人物達が,その設定に巻き込まれる(決して右往左往する訳ではないが.何しろ,元からそういう世界で,急にそこに放り込まれた訳ではないのでなので)様が描かれている. -
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1980年代に一つの事件があり、ある少女が犯人として罪に問われた。
2000年代に、事件現場の再調査を行った結果、少女以外の遺伝子が検出された。
主人公は元警官の探偵。
かつて少女だった被疑者の無罪の証拠を見つけるため、イギリスのとある地方都市に行く。
探偵の調査が進む現在と、事件の起きた過去が交互に進み、隠されていた真実が明らかに……。
と、あらすじだけ説明すると、あまり面白くなさそうだが、最初の10ページまで行く前に分かる。コレ面白い本だと。
しかしながら欠点もある、過去と現在で登場人物がたくさん出てくるので、あれ難しい?ってなる。
でも大丈夫。分からないまま読み進めて -
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ネタバレ今回はカーソンが街を離れ、田舎で休暇を送ることになるが、またもや凄惨な殺人事件に遭遇して、という設定。
地元警察のチェリー、FBI、そして何より今回は兄であり逃亡犯でもあるジェレミーがフル参戦。
ジオキャッシングを利用した殺人事件と言うのが比較的新し目。
動機が分からない殺人事件、兄との葛藤、縦横無尽に張られた伏線、毎度のことながらジャック・カーリィの世界を堪能できる。とにかくこの人は無駄な文章が無く、的確でエッジが効いた比喩や暗喩が多いので本当に読んでいて面白い。しかもしれが主人公ジェレミーの一人称で語られるときどことなくユーモラスなゆえに、悲惨な事件やその背後の暗い人間関係がありながらも読 -
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スウェーデンの新鋭のデビュー作。
哀切という言葉が似合う傑作です。
20数年前、霧深いエーランド島の平原で、イェンスという5歳の男の子が行方不明になった。
母のユリアは立ち直れないまま。
少年の祖父イェルロフは元船長だが80歳を過ぎ、老人ホームに入っている。
その父からユリアに電話があり、イェンスが当時履いていたらしいサンダルが送りつけられてきたという。
今頃、誰が何のために‥?
あれ以来、ユリアは父と疎遠になり、父さんと呼ぶこともなくなっていた。
だが父が気になっている手がかりを追って、二人は島で聞き込みを始める。
疑いをかけられた一人のニルス・カントは、事件当時既に死んでいるはずだった‥ -
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終わり方が最高!
様々な思惑のある乗客、乗員を乗せた船舶内で起こる事件の数々…伏線が巧妙な本確ミステリー。まるで、マダミスのようでワクワクする。
傲慢かつ残酷な権力者の所業は、現代社会に通じるものがあり、(いもしない)悪魔の存在に恐れ、憎しみを募らせる人々の様子は、現代の排外主義を描写しているようで面白い。
また、女性が賢くイキイキと描かれていつつも、それは許されないという時代背景など…。謎解きだけじゃなくて、描かれているキャラクターや、プロット、巻き起こる出来事が社会派作品としても魅力的で飽きずに楽しめた。
そして最後の真相は………これは予想しなかった!
思いっきり騙されて、そして結末が