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Posted by ブクログ
北欧スウェーデン、エーランド島の四季四部作の三作目。
エーランド島に春が来る。
やっぱり家がいいと老人ホームから戻って来たイェルロフ。
シングルファザーファミリーのペール・メルネルと双子たち。
共依存夫婦のヴェンデラ・ラーションとマックス・ラーション。
物語はシングルファザー、ペールにセックス産業を生業としていたペールの父から「迎えに来てくれ」と電話が来ることから動き出す。
前作の冬はオカルト(死者・霊)で寂とした気持ちの悪い雰囲気だったのだが、今作はエルフやトロール、ヴァルプルギスの夜が幻想的かつ神秘的で、エーランド島の春の訪れを見ることができる。
そして「性に奔放な国スウェーデン」のイメージは、決して元来のものではなく、カネを求めた輩のヤラセで築き上げられたものであり、それが今に至っているという知見を得た。
賢者イェルロフが渋くて素敵。
小さいことも見逃さず、動かず(動けず)、多くを語らずして導く。その重厚感にうっとりしてしまう。
若者なんぞ足元にも及ばず、ペのペッペーだ。
Posted by ブクログ
エーランド島四部作「春」を読む。
「春」は「過去に残したもの」
石切場の小屋を相続したペール。彼が「過去から確執のあった父親の周りで起こる事件」を追うのが、今回の主要線。その他に「現在抱えるペールの家族の問題」「新たな隣人ヴェンデルの過去」「イェスロフの妻の残した日記」の四つの物語が程よい章分けで淡々と語られる。
「春」になり、荒涼とした石灰台地にも草木や花が色めき、鳥は朗らかに囀る。
人々は外に出て楽しみ、冬は次第に影を潜めていく。
ただ……春霞に覆われて焦点の定まらないアンニュイな状態は、どことなく不安を募らせる。
新緑の中の不思議な場所とエルフの気配
誰もいなくなった白い石切場とトロールの気配
「この世界のなにもかもを知る必要はない」
人の営みのはかなさと泰然とした自然の有り様が、他のミステリとは一味違う趣を味わうことができるシリーズ。
さて、次は最終章「夏」・・・夏に読みます。
Posted by ブクログ
エーランド島シリーズ三作目。「黄昏に眠る秋」も「冬の灯台が語るとき」もとても良かったが、これもしみじみ味わい深く、北欧の香気たっぷりのミステリだ。
結構派手な展開をするところもあるのに、全体の印象はとても静かで、モノトーンの世界を見るようだ。登場人物は皆、何かを諦めているような雰囲気を漂わせている。翻訳者あとがきで「無常の感覚がつきまとっている」と評されていて、ああ、本当にそうだなあと思った。
荒涼とした長く厳しい冬の後、ゆっくりと島に訪れる春の気配がとても美しく描かれている。エルフとトロールが人びとの生活の中に息づいていた、今や失われた暮らしへの哀惜の念が底を流れていると感じた。
Posted by ブクログ
(No.13-25) スウェーデン・ミステリです。シリーズ3作目。
内容紹介を、表紙裏から転載します。
『エーランド島の石切り場のそばのコテージに暮らしはじめたペール・メルテル。ある日彼のもとに、疎遠にしていた派手で傲慢な父ジェリーから、迎えに来るように求める電話が入る。渋々父の別荘に赴くと、そこに待っていたのは謎の刺し傷を負った父だった。そして直後に別荘は全焼する。なぜこんな事件が起きたのか?娘の病気などの悩みを抱えながらも、ペールは父の暗い過去を探りはじめる・・・。
エルフとトロールの伝説が息づく島で、人々の切ない記憶と過去が交錯する。』
今回の主人公ペールは、シリーズを通して登場する老人イェルロフ・ダーヴィッドソンの隣人となります。イェルロフの友人だったエルンストが亡くなり、親戚のペールがコテージを相続したので。ペールの母がエルンストのいとこで、ペールは子供の頃はよく遊びに来ていました。
エーランド島は、かつては漁で栄えていましたが今は寂れています。けれど暖かい季節だけ過ごすための別荘地として近年人気が高まり、イェルロフの家の近くでも新しく立派なコテージが建設され、都会の人が引っ越してきました。通年を通してここで生活している人達とは、微妙な関係が感じられます。それはそうです、ここを別荘にしている人は、こんなところで冬を過ごすなんてとんでもないと思っているわけで、そう考えていることは住民にも分かるんですから。
ペールは以前の主人公たちと同じく、たくさんの苦労を抱え、でも誠実に生きようとしています。
派手好きであまり自慢できない職業で儲け、ペールのことは気にかけてくれなかった父。それなのに認知症気味になってからは、ペールを頼ってくる。
妻とはうまく行かず離婚し子供は普段妻のもとにいるけれど、休暇の時には引き取って一緒に過ごすのを楽しみにしていました。でも思春期の息子とはあまり話が出来ず、娘は何か重大な病気になってしまいます。
親と子供、両方とも大変な状態で、ペールが潰れてしまわないかと気の毒でなりませんでした。
ちょっと救いなのが、妻は再婚していてその夫は裕福で娘の治療費を惜しまない人だということ。彼が妻の連れ子を可愛がってくれるということは、ペールには引け目になっているけれどその反対よりはずっと良かったと思う。
ペールが父の過去を調べている一方で、やはり過去に縛られもがいている女性が出てきます。新しいコテージの住人ヴェンデラです。夫マックスとの関係は緊張をはらんでいて異常に感じられます。ヴェンデラの過去は、ここエーランド島にありました。
ペールが掘り起こした父の過去。ヴェンデラの過去。そしてイェルロフが・・・。
今回もラストが心地良かったです。
杖を突いて何とか家の中を動ける程度のイェルロフが、どうやって一人で暮らすんだろうと心配しましたが。
在宅ケアサービスの人が一日二回食事を届けてくれます。生存確認も兼ねているのだろうとイェルロフは思っていますが、そうなんでしょうね。
不定期に(週一回くらい)医師が現れ、体調チェック。薬を飲んでいるかどうか確かめたりするということは、薬も出しているのでしょう。
ケアサービスの人や医師に会う事をイェルロフはとても楽しみにしている様子。
掃除や洗濯はどうしてるんだろう?娘のユリアがやってる気配はないし、ストーリーと関係ないけれどそういうことも書いてくれてたらいいのに、とちょっと残念。
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