ヨハン・テオリンの作品一覧
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ユーザーレビュー
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エールランド島4部作もいよいよ3作目。長い冬を終え、春に突入…とはいえ、あったかポカポカ気持ち良い弛緩といかないところが、ヨハン・テオリンの作品。
本作の主人公は2人、元ポルノ映画製作者、現在認知症を患う父と重篤なガン患者の娘を持つ、若干冴えない男ペール。
もう一人は、元エールランド島の住人で、強
...続きを読む圧的な夫に振りまわされて心が疲れている婦人ヴェンデラ。
二人がエールランド島、シリーズ通しての主人公イェルロフ(83歳になり死に場所を求めて老人ホームを自発的に退所する)の近所に越してきたところから物語がギシギシと動き出す。氷河が溶けだして河口へ向かうように、ジワジワとでも確実に。
今回も全2作と同様、過去の描写と北欧らしい伝説が並走する。トロールやエルフが出てきたり、1950年代のスウェーデン情勢が記されていたり、そういった寄り道に見える事が、後半に収束していく様は見事…といっても、伏線回収だけじゃない、謎解きとは違う、物語のふくらみとか奥行という部分を構築しているのが、寄り道なのである。読んでる最中はつかめてなくても、最後まで読むとその奥行とか深みがジーンと伝わってくる。
これが楽しいシリーズなのである。
残すところあと1作。イェルロフじいさん…まさかとは思うが…次回作でも元気に謎解きしてほしいなぁ。ボトルシップ製作シーンも次作では再開してほしいぞ。
Posted by ブクログ
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なんとも、地っ味ぃ~な話(笑)
もちろん誉め言葉。それも最大限!
北欧ミステリーは前に何冊か読んだけど、どれもイマイチで。
読んでる時はそこそこ面白いんだけど、読み終わった途端「あぁー、つまんなかった」と、なぜか口から出ちゃう昨今のハリウッド映画みたいだなーと、すっかり敬遠していたのだが、これは逆
...続きを読む転満塁ホームランだった。
とにかく地っ味ぃ~に、少しずつ少しずつ話が進んでいくところがよかったんだろうなぁー。
最期の「なんだよ、それ?」的な明後日の方から飛んでくるような変化球が全然気にならないくらい、というより世の中の事件なんてまぁそんなもんだよなぁーと思えるのは、やっぱり地味なストーリーの一つ一つが少しずつ少しずつ積み重なった展開なればこそなんだろう。
話の舞台であるウナギ岬の屋敷を買ったヨアキム、コソ泥のヘンリク、警察官のティルダと大叔父のイェルロフと、もはや誰が主人公だかわからない3つのパートがゆっくりゆっくり進みつつ、間にウナギ岬で起こった過去の話が語られていく。
ヨアキムの奥さんの死体が見つかることで物語が動くかと思いきや、それでもペースは変わらない。
たぶん、2/3くらいが進んだ辺りだったか?
ティルダがヨアキムに昔のウナギ岬を知るイェルロフを紹介し、ヘンリクとコソ泥仲間の関係が不穏さを見せた辺りから、話は少しずつ加速していく(むしろ、そこから先の方が長く感じるのは面白いところw)。
「過雪」という暴風雪がやってくる気配漂う中、ティルダはヘンリクたちコソ泥の手がかりをつかみ、イェルロフはヨアキムの奥さんの死の真相を推理、ヘンリクとコソ泥仲間は決裂。
一方、ウナギ岬の家で不可思議なことを体験していたヨアキムは、そこである物とあることを見つけたことで、かつて起こった姉の死に疑問を抱くようになる。
ついにやってきた「過雪」。3つのパートがウナギ岬に集まって……
大体こんな感じか?
書ききれなかったが、それぞれのパートに大なり小なり怪談めいた出来事が絡んでくるのが面白いところ。
その怪談めいた出来事が話を展開させ、登場人物に真相を気づかせていく、その辺りのさじ加減は絶妙。
でもって、その怪談の怪談っぽさのさじ加減がまたいいんだよなぁー。
どこぞの国のミステリー小説に出てくる「怪談」、または「実話怪談」と称する作り話のような、オドロオドロ話じゃないところが。
怖がらせるための作為がないから、ソレはさり気ないんだけど、そのさり気なさゆえソレの冷たさが伝わってくる…、みたいなところがある。
難を言えば、その「過雪」の極寒っぷりがイマイチ伝わってこなかったかなぁ…。
登場人物たちがそれほど防寒着を着ている風でもないのに、何だかずいぶん長い時間外にいたように感じた。
あと、「ウナギ岬」と「過雪」は、現地の通称にした方がよかった気がする。日本語にしたことで、逆にイメージしずらい(違うイメージになっちゃう?)気がした。
(日本人からみて)不思議だったのは、ヨアキム夫妻とミカエル夫妻が親しい友人であること。
スウェーデン=超福祉国家くらいで、経済事情とか市民の暮らしとかはよくわからない。
でも、夫妻とも教師であるヨアキム一家と別荘とモータークルーザーを所有するミカエル夫妻って、日本でいえば地方公務員(学校の先生)とそれなりの会社経営者となると思うのだが、その二つが家族ぐるみで親しく付きあっているって、日本だと普通ないけどなぁ…。
それが、いわゆる北欧の高福祉高税金で成り立つのなら、日本人もいろいろ考えた方がいいと思うんだけど…。
ただまぁ日本は税金ガッポリ取ったら、取っただけガッポリ使っちゃう(ていうか、ぽっぽしちゃう?w)国だから、まずそこを変えないと無理だろうな(爆)
Posted by ブクログ
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スウェーデンの新鋭のデビュー作。
哀切という言葉が似合う傑作です。
20数年前、霧深いエーランド島の平原で、イェンスという5歳の男の子が行方不明になった。
母のユリアは立ち直れないまま。
少年の祖父イェルロフは元船長だが80歳を過ぎ、老人ホームに入っている。
その父からユリアに電話があり、イェンス
...続きを読むが当時履いていたらしいサンダルが送りつけられてきたという。
今頃、誰が何のために‥?
あれ以来、ユリアは父と疎遠になり、父さんと呼ぶこともなくなっていた。
だが父が気になっている手がかりを追って、二人は島で聞き込みを始める。
疑いをかけられた一人のニルス・カントは、事件当時既に死んでいるはずだった‥!?
エーランド島はスウェーデン南東のバルト海に浮かぶ島で、夏はリゾート地だが、通年暮らしている村人は少ない。
その地で、資産家のカント家の息子ニルスは甘やかされ、時折深刻な事件を起こしていた。
ニルスの人生が所々にはさまれ、鮮烈な印象です。荘重な悲劇を読むよう。
短絡的で凶暴ともいえる逃亡者なのに、母とは思いあうのも切ない。
老いた父イェルロフが不自由な身体で事態に立ち向かうのも読み応えがあり、ユリアの再生と父娘の心の通い合いに胸打たれます。
予想外の結末で、感心しました。
題材からベリンダ・バウアーの「ブラックランズ」や、アイスランドの作家アーナルデュル・インドリダソンの「湿地」を連想させる雰囲気ですが、この作品が一番いいんじゃないかなあ。
作者は1963年生まれのジャーナリスト。
この作品からスタートした四部作は幼い頃から毎夏すごしていたエーランド島が舞台。
2007年、この作品でデビュー。
スウェーデン推理作家アカデミーの最優秀新人賞を受賞しただけでなく、イギリスのCWA賞の最優秀新人賞も外国作家で初の受賞。
次の作品では北欧四5ヵ国が対象の「ガラスの鍵賞」も受賞、CWAのインターナショナルダガー賞も受賞しています。
Posted by ブクログ
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エーランド島シリーズ第3弾。『冬の灯台が語るとき』の存在を忘れていて飛ばして読んでしまったけど、独立したストーリーなので問題なし。
病気の娘と、放蕩を尽した末、年老いた父親というふたつの悩みを抱えた男と、横暴な夫を持つ女という二つのストーリーが絡む展開。
事件そのものは少々とっちらかった印象だが
...続きを読む、背景に漂う諦観と微かな喜びが物語に深みを与えていて、とてもよかった。
Posted by ブクログ
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北欧ミステリの、これは傑作と呼んでいいのではなかろうか。派手なアクションもないし、大いなる陰謀もなく、かっこいい刑事も美人助手も出て来ない。事件にかかわった人びとの人生を丁寧に、哀切に描いて行く。ミステリのくくりで終わってしまうのはちょっと勿体ないくらい。おじいちゃんのイェロフがかっこよすぎです。
Posted by ブクログ
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