ヨハン・テオリンのレビュー一覧

  • 夏に凍える舟

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    北欧スウェーデン、エーランド島の四季四部作の四作目。最終巻。
    夏のエーランド島はスウェーデン各地から避暑客が訪れ、リゾート地と化す。
    夏のエーランド島に君臨する、リゾートホテルを経営するクロス一族と、様々な想いと因縁を抱いてエーランド島に集う人々。

    照りつける陽光の中に、厳寒の旧ソビエト連邦の話が入り組む。
    スターリンの粛清の恐ろしさに震えた後の真夏のエーランド島。
    心の気温変化が激しいのよ・・・。

    これまでの三作と違って伝説の生物や幻想的な某が出ては来ないが、これでもっての最終巻!
    しめくくりに相応しい傑作だった。

    ああ、終わっちゃった・・・読みおわっちゃった・・・
    このシリーズ、おもしろかったな・・・

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    2025年03月14日
  • 赤く微笑む春

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    北欧スウェーデン、エーランド島の四季四部作の三作目。
    エーランド島に春が来る。
    やっぱり家がいいと老人ホームから戻って来たイェルロフ。
    シングルファザーファミリーのペール・メルネルと双子たち。
    共依存夫婦のヴェンデラ・ラーションとマックス・ラーション。

    物語はシングルファザー、ペールにセックス産業を生業としていたペールの父から「迎えに来てくれ」と電話が来ることから動き出す。
    前作の冬はオカルト(死者・霊)で寂とした気持ちの悪い雰囲気だったのだが、今作はエルフやトロール、ヴァルプルギスの夜が幻想的かつ神秘的で、エーランド島の春の訪れを見ることができる。

    そして「性に奔放な国スウェーデン」のイメージは、決して元来のものではなく、カネを求めた輩のヤラセで築き上げられたものであり、それが今に至っているという知見を得た。

    賢者イェルロフが渋くて素敵。
    小さいことも見逃さず、動かず(動けず)、多くを語らずして導く。その重厚感にうっとりしてしまう。
    若者なんぞ足元にも及ばず、ペのペッペーだ。

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    2025年01月27日
  • 赤く微笑む春

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    ネタバレ

    エールランド島4部作もいよいよ3作目。長い冬を終え、春に突入…とはいえ、あったかポカポカ気持ち良い弛緩といかないところが、ヨハン・テオリンの作品。

    本作の主人公は2人、元ポルノ映画製作者、現在認知症を患う父と重篤なガン患者の娘を持つ、若干冴えない男ペール。
    もう一人は、元エールランド島の住人で、強圧的な夫に振りまわされて心が疲れている婦人ヴェンデラ。

    二人がエールランド島、シリーズ通しての主人公イェルロフ(83歳になり死に場所を求めて老人ホームを自発的に退所する)の近所に越してきたところから物語がギシギシと動き出す。氷河が溶けだして河口へ向かうように、ジワジワとでも確実に。

    今回も全2作と同様、過去の描写と北欧らしい伝説が並走する。トロールやエルフが出てきたり、1950年代のスウェーデン情勢が記されていたり、そういった寄り道に見える事が、後半に収束していく様は見事…といっても、伏線回収だけじゃない、謎解きとは違う、物語のふくらみとか奥行という部分を構築しているのが、寄り道なのである。読んでる最中はつかめてなくても、最後まで読むとその奥行とか深みがジーンと伝わってくる。
    これが楽しいシリーズなのである。

    残すところあと1作。イェルロフじいさん…まさかとは思うが…次回作でも元気に謎解きしてほしいなぁ。ボトルシップ製作シーンも次作では再開してほしいぞ。

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    2020年03月21日
  • 冬の灯台が語るとき

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    ネタバレ

    なんとも、地っ味ぃ~な話(笑)
    もちろん誉め言葉。それも最大限!

    北欧ミステリーは前に何冊か読んだけど、どれもイマイチで。
    読んでる時はそこそこ面白いんだけど、読み終わった途端「あぁー、つまんなかった」と、なぜか口から出ちゃう昨今のハリウッド映画みたいだなーと、すっかり敬遠していたのだが、これは逆転満塁ホームランだった。
    とにかく地っ味ぃ~に、少しずつ少しずつ話が進んでいくところがよかったんだろうなぁー。
    最期の「なんだよ、それ?」的な明後日の方から飛んでくるような変化球が全然気にならないくらい、というより世の中の事件なんてまぁそんなもんだよなぁーと思えるのは、やっぱり地味なストーリーの一つ一つが少しずつ少しずつ積み重なった展開なればこそなんだろう。

    話の舞台であるウナギ岬の屋敷を買ったヨアキム、コソ泥のヘンリク、警察官のティルダと大叔父のイェルロフと、もはや誰が主人公だかわからない3つのパートがゆっくりゆっくり進みつつ、間にウナギ岬で起こった過去の話が語られていく。
    ヨアキムの奥さんの死体が見つかることで物語が動くかと思いきや、それでもペースは変わらない。
    たぶん、2/3くらいが進んだ辺りだったか?
    ティルダがヨアキムに昔のウナギ岬を知るイェルロフを紹介し、ヘンリクとコソ泥仲間の関係が不穏さを見せた辺りから、話は少しずつ加速していく(むしろ、そこから先の方が長く感じるのは面白いところw)。
    「過雪」という暴風雪がやってくる気配漂う中、ティルダはヘンリクたちコソ泥の手がかりをつかみ、イェルロフはヨアキムの奥さんの死の真相を推理、ヘンリクとコソ泥仲間は決裂。
    一方、ウナギ岬の家で不可思議なことを体験していたヨアキムは、そこである物とあることを見つけたことで、かつて起こった姉の死に疑問を抱くようになる。
    ついにやってきた「過雪」。3つのパートがウナギ岬に集まって……
    大体こんな感じか?
    書ききれなかったが、それぞれのパートに大なり小なり怪談めいた出来事が絡んでくるのが面白いところ。
    その怪談めいた出来事が話を展開させ、登場人物に真相を気づかせていく、その辺りのさじ加減は絶妙。
    でもって、その怪談の怪談っぽさのさじ加減がまたいいんだよなぁー。
    どこぞの国のミステリー小説に出てくる「怪談」、または「実話怪談」と称する作り話のような、オドロオドロ話じゃないところが。
    怖がらせるための作為がないから、ソレはさり気ないんだけど、そのさり気なさゆえソレの冷たさが伝わってくる…、みたいなところがある。

    難を言えば、その「過雪」の極寒っぷりがイマイチ伝わってこなかったかなぁ…。
    登場人物たちがそれほど防寒着を着ている風でもないのに、何だかずいぶん長い時間外にいたように感じた。
    あと、「ウナギ岬」と「過雪」は、現地の通称にした方がよかった気がする。日本語にしたことで、逆にイメージしずらい(違うイメージになっちゃう?)気がした。

    (日本人からみて)不思議だったのは、ヨアキム夫妻とミカエル夫妻が親しい友人であること。
    スウェーデン=超福祉国家くらいで、経済事情とか市民の暮らしとかはよくわからない。
    でも、夫妻とも教師であるヨアキム一家と別荘とモータークルーザーを所有するミカエル夫妻って、日本でいえば地方公務員(学校の先生)とそれなりの会社経営者となると思うのだが、その二つが家族ぐるみで親しく付きあっているって、日本だと普通ないけどなぁ…。
    それが、いわゆる北欧の高福祉高税金で成り立つのなら、日本人もいろいろ考えた方がいいと思うんだけど…。
    ただまぁ日本は税金ガッポリ取ったら、取っただけガッポリ使っちゃう(ていうか、ぽっぽしちゃう?w)国だから、まずそこを変えないと無理だろうな(爆)

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    2019年04月28日
  • 黄昏に眠る秋

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    スウェーデンの新鋭のデビュー作。
    哀切という言葉が似合う傑作です。

    20数年前、霧深いエーランド島の平原で、イェンスという5歳の男の子が行方不明になった。
    母のユリアは立ち直れないまま。
    少年の祖父イェルロフは元船長だが80歳を過ぎ、老人ホームに入っている。
    その父からユリアに電話があり、イェンスが当時履いていたらしいサンダルが送りつけられてきたという。
    今頃、誰が何のために‥?
    あれ以来、ユリアは父と疎遠になり、父さんと呼ぶこともなくなっていた。
    だが父が気になっている手がかりを追って、二人は島で聞き込みを始める。
    疑いをかけられた一人のニルス・カントは、事件当時既に死んでいるはずだった‥!?

    エーランド島はスウェーデン南東のバルト海に浮かぶ島で、夏はリゾート地だが、通年暮らしている村人は少ない。
    その地で、資産家のカント家の息子ニルスは甘やかされ、時折深刻な事件を起こしていた。
    ニルスの人生が所々にはさまれ、鮮烈な印象です。荘重な悲劇を読むよう。
    短絡的で凶暴ともいえる逃亡者なのに、母とは思いあうのも切ない。

    老いた父イェルロフが不自由な身体で事態に立ち向かうのも読み応えがあり、ユリアの再生と父娘の心の通い合いに胸打たれます。
    予想外の結末で、感心しました。
    題材からベリンダ・バウアーの「ブラックランズ」や、アイスランドの作家アーナルデュル・インドリダソンの「湿地」を連想させる雰囲気ですが、この作品が一番いいんじゃないかなあ。

    作者は1963年生まれのジャーナリスト。
    この作品からスタートした四部作は幼い頃から毎夏すごしていたエーランド島が舞台。
    2007年、この作品でデビュー。
    スウェーデン推理作家アカデミーの最優秀新人賞を受賞しただけでなく、イギリスのCWA賞の最優秀新人賞も外国作家で初の受賞。
    次の作品では北欧四5ヵ国が対象の「ガラスの鍵賞」も受賞、CWAのインターナショナルダガー賞も受賞しています。

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    2015年01月24日
  • 赤く微笑む春

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    エーランド島シリーズ第3弾。『冬の灯台が語るとき』の存在を忘れていて飛ばして読んでしまったけど、独立したストーリーなので問題なし。

    病気の娘と、放蕩を尽した末、年老いた父親というふたつの悩みを抱えた男と、横暴な夫を持つ女という二つのストーリーが絡む展開。

    事件そのものは少々とっちらかった印象だが、背景に漂う諦観と微かな喜びが物語に深みを与えていて、とてもよかった。

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    2013年08月30日
  • 黄昏に眠る秋

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    北欧ミステリの、これは傑作と呼んでいいのではなかろうか。派手なアクションもないし、大いなる陰謀もなく、かっこいい刑事も美人助手も出て来ない。事件にかかわった人びとの人生を丁寧に、哀切に描いて行く。ミステリのくくりで終わってしまうのはちょっと勿体ないくらい。おじいちゃんのイェロフがかっこよすぎです。

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    2013年07月21日
  • 黄昏に眠る秋

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    カリブ海の島で子供がいなくなった。20年後に靴が入った小さな郵便が届く。
    新人賞受賞のスウェーデンの作家。読み始めは文体に馴染めないで中々進まなかった。

    カリブ海側のエーランド島で起きた子供の誘拐事件。
    祖母は昼寝をしている間に、一人で散歩に出た孫のことを悔やんで死んだ。
    母親や祖父母は、事件から立ち直れていなくて、夫婦は離婚、 事件から20年、80歳になった祖父のイェルロフは、動きもままならない状態で、介護施設にいる。

    祖父は、孫息子がいなくなったことを考え続けている。
    そこに、小さな靴が郵便で届く。

    母のユリヤはそれがいなくなった息子の靴だという。

    島は昔の海運業も寂れ、住む人もまばらになっている。夏の間は避暑に来る人で一時別荘地帯はにぎわうが、それも短い夏が過ぎると人影も見えなくなる。

    島の北部に広大な土地を持っているカント家にはニルス・カントという問題児がいて、島では鼻つまみ者だった。
    暴行罪で捕まったとき、警官を護送中に射殺して、海外に逃げてしまっていた。

    イェルロフの推理と、昔馴染みの島の人たちの係わり合いは、孫の靴が届いた時から動き出す。
    彼は歴史の中で生きてきたが、まだ体は動く。

    ニルス・カントの逃亡生活や島に残った人たちの暮らし方も、丁寧に記述され、二重三重のストーリーになって厚みがある。

    戦後、変ってしまった島の中で細々と生きる人たちを不自由な体で尋ねて歩くイェルロフは、ついに命がけで真相にたどり着く。

    半ば過ぎから急にテンポが良くなり、
    書きたいけれど 書けない、思いがけない展開が、非常に面白かった。
    お

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    2026年03月01日
  • 黄昏に眠る秋

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    ネタバレ

    ・あらすじ
    スウェーデン エーランド島が舞台
    約20年前の少年失踪事件を解決しようとする母親と祖父
    事件を調査する内に30年程前に死んだ男が実は生きていた…?
    調査パートと死んだ男の過去パートが交互に書かれ真相が判明するタイプのミステリー。

    ・感想
    息子が行方不明になってから立ち直れないままのユリアと、老人ホームに入り手足も満足に動かせないイェルロフが探偵役。
    舞台となる場所(霧深い閑村)や季節(秋冬)、登場人物も老人ばかりなので展開も遅め。
    終始物静かで寒々しい印象があるけどエピローグでは事件解決とともに囚われていた彼らの苦しみが昇華されて、それが季節が春になり霧が晴れる事で描写されていい読後感だった。
    ハッピーエンドではなくニルスがクソ野郎であることには変わり無いけど…。
    娘と父親、息子と母親で対比され母親(故郷)の元へ帰りたかったニルスと事件後目を背けていた故郷、父親との確執を解消するユリアとの対比も良かった。
    犯人はそうかも…?いややっぱり違うかなーそうであってほしくないなって人がそうでちょっと悲しかった

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    2024年03月02日
  • 冬の灯台が語るとき

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    ネタバレ

    ・あらすじ
    エーランド島シリーズ2作目。
    エーランド島東北部、ウナギ岬にある19世紀に建てられた灯台守の屋敷が舞台。
    屋敷に越してきたヴェスティン一家に起こった事件とそこで暮らしてきた人々の歴史、幽霊話と追悼と思い出話が本筋。
    そこに空き巣三人組とエーランド島に赴任してきた新人女性警官の3組のエピソードが交錯し後半で収束していく。

    ・感想
    ミステリー要素はメインではなく、厳しい環境の中人々の営みを支え続けてきた屋敷とその土地で過去生きていた人々、そして現在生きている人々の苦悩や自然への畏怖が描かれてた。
    屋敷に刻まれた悲しみの記憶とそこに生きていた人々に想いを馳せ、そして連綿と続き交差してきた様々なものの途中に自分はいっときぽつんと立っているんだな、とふと考える。

    基本的には諸行無常盛者必衰の精神で生きてるけど、だからといって人々の歴史、大切にしてきたものを軽んじることは違うし、その塩梅やせめぎあいってどこでも難しいねと思った。

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    2024年02月23日
  • 赤く微笑む春

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    ネタバレ

    エーランド島4部作の3作目。

    高齢者施設で過ごす元船長でシリーズ主人公のイェルロフが、友人の死をきっかけに自身の死期も遠くないことを正面から受け止め、施設を退所し、かつての自分のコテージで余生を過ごす決意をするところに始まる。
    コテージの周辺は、いまや春、夏の暖かい季節だけ都会から人が訪れる別荘村の様相となっており、定住する者はほとんどいない。

    数少ない定住者の一人がかつての仕事仲間ヨン・ハーグマン。
    そこに加わる、新たな都会からの隣人達。
    ペールは、イェルロフのかつての友人で石工のエルンストの甥にあたり、石切り場の縁に立つコテージを相続し、この春は別れた妻との間の双子の息子、娘達と余暇を楽しむつもりだったが、娘の方が重病にかかり手術を待つ状態と、思っていたようには行っていない。
    ヴェンデラは夫で目立ちたがり屋の元精神科医マックスを影で支える(ゴーストライターしたり)マックスの元患者。
    ヴェンデラもかつてこの地域に暮らしていたが、その日々は過酷なものだった。
    唯一の拠り所はこの地方に伝わるエルフの伝承物語。
    エルフに会いたいが一心でこの地に戻ってきた。

    物語は主にこの隣人達の物語で展開される。
    主となる事件は、ペールの父、ジェリーが巻き込まれた放火事件。
    サイドストーリー的にヴェンデラの過去とエルフの物語。
    なかなか込み入った展開で、どこに物語の中心があるのかがなかなか、判然としない。

    シリーズの主人公であるイェルロフはというと、特に大立ち回りするわけでもなく終始アンカーのように登場する。
    もう他の作品はほとんど憶えていないのだけれど、なんとなく毎回こんな感じの出演だったような気もして、これがエーランド島四部作の味なのかなとも思った。

    話の筋としてはシリーズの中では一番とっちらかっていたように思う。
    それはやはり、超自然的なエルフの伝承物語とそれに取り憑かれたヴァンデラ、ヴァンデラの周囲で起きた偶然とは思えない奇跡という足場の弱いエピソードに、何の実体(現実的な解)も与えられないまま物語が進んでいくため、何となくふわふわした感じが収まらないからであろう。

    次第に輪郭がはっきりとしてくるジェリーの事件の進展の中、各々の人生が皮肉にも交錯するところは読みどころであったが、真相に辿り着くまでの壁があまりなく、意外とあっさりだったかなという印象。

    本筋への感想とは異なるが、本作を象徴するスポットの一つでもあり、海外作品では時折出てくるワード、石切場。
    あまり馴染みがないが、なんとなくのイメージで読み進めていたが、読後に何となくググってみたら意外とそこそこの近場にもちらほら。
    しかも凄く興味深い風景が広がっている。
    夏休みに行ってみようかなと思ったり。

    4作目は既読なので、これで4部作完読なのだが、読む順番間違えてなんか消化不良。
    ヨハン・テオリンはこのあとはアンソロジーに出てくるくらいで長編は出ていないので残念。

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    2023年07月22日
  • 黄昏に眠る秋

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    スウェーデンの作家「ヨハン・テオリン」の長篇ミステリ作品『黄昏に眠る秋(原題:Skumtimmen、英題:Echoes from the Dead (The Oland Quartet))』を読みました。

    「ヨナス・ヨナソン」、「ミカエル・ヨート」と「ハンス・ローセンフェルト」の共著に続き、スウェーデン作家の作品です… 北欧ミステリが続いています。

    -----story-------------
    行方不明の少年を探す母がたどりついた真相とは。
    北欧の新鋭による傑作感動ミステリ!

    霧深いスウェーデンのエーランド島で、幼い少年が消えた。
    母「ユリア」をはじめ、残された家族は自分を責めながら生きてきたが、二十数年後の秋、すべてが一変する。
    少年が事件当時に履いていたはずのサンダルが、祖父の元船長「イェルロフ」のもとに突然送られてきたのだ。
    病魔に苦しみながらも、明晰な頭脳を持つ「イェルロフ」は、この手がかりをもとに推理を進める。
    一方、急遽帰郷した「ユリア」は、疎遠だった「イェルロフ」とぶつかりながらも、愛しい子の行方をともに追う。
    長年の悲しみに正面から向き合おうと決めた父娘を待つ真実とは?

    スウェーデン推理作家アカデミー賞最優秀新人賞、英国推理作家協会(CWA)賞最優秀新人賞受賞作。
    スウェーデンの民話や幽霊譚をもりこんだ、北欧の新鋭にして実力派による傑作ミステリ。
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    2007年(平成19年)に発表された《エーランド島シリーズ》の第1作… 探偵役の「イェルロフ・ダーヴィッドソン」が外出もままならない老人というこもあり、謎が解けるスピードは遅々としていますが、関係者を訪ね歩き、幾度かの危機をくぐり抜けて、20数年前の衝撃的な真相が明らかになる展開が愉しめる佳作でしたね、、、

    「イェルロフ」と「ユリア」を中心に真相を探る現在の物語と、「ニルス・カント」の人生を辿る1936年(昭和11年)~1972年(昭和47年)の物語がパラレルに進行して、終盤、ひとつの接点に向かう描き方も良かったですね… むっちゃ好みの作品でした。


    1972年(昭和47年)9月、エーランド島北部のステンヴィーク村で、「イェンス・ダーヴィッドソン」という5歳の少年が忽然と姿を消した… この島では珍しい濃霧の中での出来事だった、、、

    それ以降、「イェンス」の母「ユリア」は傷心から立ち直れぬまま島をあとにして苦悩に満ちた日々を送るようになった… 「イェンス」の父とは別れ、姉「レナ」の夫婦や島に残った父「イェルロフ」ともしっくりしない関係になっていた、、、

    事件から20数年後、高齢者ホームで暮らす「イェルロフ」のもとに、「イェンス」が行方不明になった時に履いていたサンダルを何者かが送ってきた… 「イェルロフ」からその報せを受けた「ユリア」は久しぶりに帰郷する。

    長年疎遠になっていたせいで、「イェルロフ」と「ユリア」の会話はぎこちないものに… しかも、かつて船長だった「イェルロフ」は持病のせいで今や思うように動けない身体となっていた、、、

    だが彼らはサンダルの件を契機にわだかまりを乗り越え、過去と再び向かい合うことを決意し、「イェンス」の身に何が起こったかを追求しようとする。

    このメイン・ストーリーに、時々、挟み込まれるカタチで描かれるのが、島北部の広大な土地を所有する資産家の息子として生まれた「ニルス・カント」の人生… 彼は10歳にして海で溺れた弟を見殺しにし、成長とともに数々の悪事を重ねてきたため、村ではあらゆる犯罪や事故が彼のせいということになっている、、、

    既にいないはずの彼の姿が、事件の影から浮かび上がってくるのは何故なのか… 「ニルス」の数奇な運命と「イェンス」との接点は!?

    自己中心的で浅はかな性格、そして若い頃の悪行の数々… 「ニルス」は同情の余地のない人物なのですが、ある人物に利用され、「イェンス」の失踪事件に巻き込まれてしまう終盤の展開には一抹の憐れみを感じましたね、、、

    もっと悪い奴がいたんですからねぇ… それにしても、真相は衝撃的で、深い余韻のある結末でしたね。


    《エーランド島シリーズ》の残り3作品も読んでみたいな。



    以下、主な登場人物です。

    「ユリア・ダーヴィッドソン」
     看護師

    「イェンス」
     ユリアの息子

    「イェルロフ」
     元船長。ユリアの父

    「レナ」
     ユリアの姉

    「リカルド」
     レナの夫

    「エルンスト・アドルフソン」
     彫刻師、元石工

    「ヨン・ハーグマン」
     元船長

    「アンデシュ」
     ヨンの息子

    「ベングト・ニーベリ」
     《エーランド・ポステン》記者

    「レナルト・ヘンリクソン」
     警察官

    「アストリッド・リンデル」
     元医師

    「グンナル・ユンイェル」
     ホテル・オーナー

    「マルティン・マルム」
     マルム貨物の創業者

    「エースタ・エングストレム」
     元船長

    「マルギット」
     エースタの妻

    「ロベルト・ブロムベリ」
     車修理工場のオーナー

    「ヴェラ・カント」
     ステンヴィークの資産家

    「ニルス・カント」
     ヴェラの息子

    「フリティオフ・アンデション」
     ヴェラの使い

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    2023年04月07日
  • 夏に凍える舟

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    エ-ランド島に行って見たくなります。
    情景描写が緻密で、作品の中に入り込んでしまいました。

    話は独立しているけれど、1作目から読むのをお勧めしますよ。

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    2023年03月14日
  • 夏に凍える舟

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    エーランド島最終章。
    犯人は20世紀初頭、義父と真天地を求めてソビエトに発った老人だ。極寒のシベリアや暗いKGB時代と、夏の賑わいをみせるリゾート地での出来事が交互に語られる。イエルロフの鋭くも愛のある眼差しが、事件を少しずつ紐解いてゆく。

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    2022年05月05日
  • 黄昏に眠る秋

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    スウェーデン、エーランド島で霧の深いある日、少年が行方不明となる。祖父である元船長のイェルロフが事件の謎を解く。高齢の祖父のゆったりとした時間の流れとエーランド島の自然がマッチし、物語が丁寧に進められて行く。終盤は悲しい結末へと向かうが、イェルロフの覚悟と落ち着きと共に、静かに受容できる境地となる。

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    2022年03月08日
  • 夏に凍える舟

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    何か読んだことがあると思ったら、シリーズ作で2作品を読んでいた。ミステリー度もあるが、かつての北欧が関わった歴史をよくしることが出来たし、年老いた人間の心情にも深く触れた。スターリンの恐怖政治、知ることが出来た。

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    2021年09月29日
  • 夏に凍える舟

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    エーランド島ミステリー四部作の最終話「夏」

    シリーズ中最も賑やかなエーランド島で、舞台となるリゾート地もにぎやか。

    対照的に描かれるのは、20世紀に出現した「ソビエト連邦」という国の内情。
    希望と絶望の果てにひたすら「帰る」ことを夢見てきた一人の男の物語は、シリーズ中最も重い。
    あんなに強大だったのに既に歴史地図にしか載らない「過去の国」。
    でも、そこで行われた史実は、関わった人の記憶と共に生きている。

    人にとって「帰るべき所」とはなんだろう。
    終盤で、エーランド島から離れる船を前に娘は「父さん帰ろう」と言う。父にとっては「帰ってきた」場所から再び離れることになるのに……。

    ラスト、イェルロフの乗る舟をエーランド島に「帰す」風とカモメたちが、彼を絶望から救い出す……あのまま終わらずによかったです。

    これで春夏秋冬に合わせて全編終了しました。
    変わらないこの島の自然や不思議な出来事を背景に登場人物の心の旅を描く、とても印象に残るシリーズでした。

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    2021年08月23日
  • 赤く微笑む春

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    エーランド島四部作「春」を読む。

    「春」は「過去に残したもの」

    石切場の小屋を相続したペール。彼が「過去から確執のあった父親の周りで起こる事件」を追うのが、今回の主要線。その他に「現在抱えるペールの家族の問題」「新たな隣人ヴェンデルの過去」「イェスロフの妻の残した日記」の四つの物語が程よい章分けで淡々と語られる。

    「春」になり、荒涼とした石灰台地にも草木や花が色めき、鳥は朗らかに囀る。
    人々は外に出て楽しみ、冬は次第に影を潜めていく。
    ただ……春霞に覆われて焦点の定まらないアンニュイな状態は、どことなく不安を募らせる。

    新緑の中の不思議な場所とエルフの気配
    誰もいなくなった白い石切場とトロールの気配

    「この世界のなにもかもを知る必要はない」

    人の営みのはかなさと泰然とした自然の有り様が、他のミステリとは一味違う趣を味わうことができるシリーズ。

    さて、次は最終章「夏」・・・夏に読みます。

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    2021年04月22日
  • 夏に凍える舟

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    ネタバレ

    エーランド島四部作完結編(うっかり三作目を飛ばしてしまった。。)。

    老齢探偵イェルロフの遠い昔、少年時代の恐怖体験に始まり、現代の少年の幽霊船との遭遇、意味深な男のきなくさい帰郷。
    序盤は物語がどこへ向かっているのかわからず、遅々とした展開。

    次第に動き出す物語にいつしか引き込まれている自分に気づく。スウェーデンとロシアの関係性、大戦中の悲劇を重低音として現代で繰り広げられる復讐劇。
    帰郷した男アーロンの人生を時間をかけて振り返り、人物像を積み上げていく過程が肝と感じた。

    ちょっと地味だけど、どこか没入させられる静かな典型的な北欧ミステリ。
    嫌いじゃないです。

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    2020年11月01日
  • 赤く微笑む春

    Posted by ブクログ

    エーランド島シリーズの3作目。
    季節は春になりつつあるが、北欧の寒くて寂しい雰囲気は健在。
    この舞台設定とトロールやエルフの言い伝えが非常に合っていて良い!本を読んだだけでその国の空気感を味わえるのは楽しい。
    イェルロフおじいちゃんが強い。

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    2019年01月24日