あらすじ
星間紛争中のある重大事件にかかわり、心に傷を負った重巡洋艦のAI〈トラブル・ドッグ〉は、終戦後にみずから軍を辞した。その後艦の武装を下ろして人命救助団体に加わり、新たな艦長サリーらと共にレスキュー活動に勤しんでいた彼女は、あるとき遭難信号を受信する。すべての惑星がオブジェのように加工されている謎の星系・ギャラリーで、民間船が何者かに撃墜されたというのだ。急ぎ駆けつけた〈ドッグ〉は、銀河の命運を賭けた戦いに巻きこまれる。はたして14歳のAIは銀河を救えるか? 英国SF協会賞長編部門受賞の傑作宇宙SF。
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Posted by ブクログ
ガレス・L・パウエルの最新作。前作『ガンメタル・ゴースト』に比べると、僕は断然こちのほうが好きだ。
宇宙での生活がごく当たり前となった未来。
人間同士の大きな宇宙大戦が終了し、宇宙は表面上は平穏を保っている。
この世界で、元軍艦であるAIのシップは現在は人命救助用の艦船として働いている。
この物語は非常に斬新で面白い。
宇宙戦艦自体がAIにより人格を与えられ、自ら行動する。もちろん船には艦長が乗っているが、艦長の役目は船のAIに直接命令し、責任を取ることである。
本書で繰り広げられるAI艦同士の戦闘(もちろん宇宙船同士の戦いなので格闘するわけではなく、ミサイルやレーザーを撃ちまくって戦う)が秀逸。船に乗っているクルーたちは、自分でやることは全くなく、自分の乗っている船が相手に勝つように祈るだけだ。
非常にシュールな戦いである。
本作は3部作の第一部ということなので、続巻を首を長くして待つ。
Posted by ブクログ
全3巻らしい。重巡洋艦AI〈トラブル・ドッグ〉とコンスタンツ艦長、クルーたち。トラブルドッグは過去の虐殺について、艦長は戦争を止めるため相手艦の艦長を撃つ命令をしたことについての後悔。役者あとがきで時間はもっと艦長が苦しむらしく…えぇ、ラストで精神的に苦しんでたのに。艦長は立ち直れるのかなぁ、続きも読みたい。
Posted by ブクログ
「ぼくたちは負け犬なんだもの」p.294。
【トラブル・ドッグ】戦争に嫌気が差して退役した元軍艦。アバターは少女。一人称は「ぼく」。【サリー】トラブル・ドッグ艦長。【再生の家】人や艦を再生し救助隊とする組織。トラブル・ドッグが所属している。【ペラパターン】かつて大虐殺があった惑星。【オナ】有名詩人。本名でも有名人。【アシュトン】集塊派スパイ。外向派スパイのラウラと仲がいい?【ギャラリー】惑星自体が何者かによって彫刻作品にされている星系で係争地帯。オナの乗った定期船が撃墜された。【集塊派】資本主義、保守的、価値観の押し付け、トランプ大統領的思考。【外向派】自由主義、開放的、国民皆保険、資本やインフラの共有。【表紙カバー絵】「NieA_7」の安倍吉俊さんだったので手に取りました。【手法】主要登場人物数人の視点から描く。ひとつひとつの章は短いので読みやすい。
■再生の家についての簡単な単語集
【アシュトン・チャイルド】惑星チチョルに駐在中の集塊派の男。元警官。オナ・スダクの消息を調べろと命を受けた。そのためにトラブル・ドッグに乗せてもらう際の騒動で負傷しパワードスーツで動くしかなくなった。
【アダム】オナ・スダクの若い恋人。ダムで生まれ育った18歳半。
【アダルウルフ】トラブル・ドッグの同型艦。長男格のようだ。
【アネリダ・ディール】集塊派のシミター(三日月刀)艦〈正義の憤怒〉艦長。「ペラパターンの虐殺者」と呼ばれる。逃亡して消息不明。
【アルマン・マルチ】チチョルの移民町のCEO。サリーにここから逃れたい住民たちを艦に乗せて連れ出してくれと交渉しに来た。
【アルヴァ・クレイ】→クレイ
【オナ・スダク】うっかり有名になってしまった詩人。ギャラリー星系で何者かの魚雷攻撃を受けた。どうやら何者かに狙われているようだ。《つまるところ、なぜ自分が殺されるのかという理由は重要度が低い。それは殺しをおこなう者たちのみにとって、大切なこと。》p.151。
【カーニヴォール】トラブル・ドッグはカーニヴォール型の戦艦。プレストンは骨董品と呼んだがまだまだ現役。
【外向派】アウトエド。集塊派と敵対している。自由主義、開放的、国民皆保険や資源とインフラの共有を重視している。メンデレスは「薄汚い外向派」とか呼んで蔑視していた。
【艦】艦のAIの意識構築にクローンの人間細胞を使うようになって性格に望ましくない感情が発現するようになったそうだ。でも、艦の自主的な退役が認められるということは、ある程度人格が尊重されている?
【ギャラリー】惑星自体が何者かによって彫刻作品にされている星系。なぜか係争地帯になっている。どの惑星もそれぞれの種族に呼吸可能な目に見えない人型の空気が与えられる。理由も仕組みも分かっていない。《太陽に近い順に、涙粒、ぎざぎざの稲妻、脳(ブレイン)、反転都市、十二面体、フレア形ゴブレット、壊れた時計として知られ、それぞれがオブジェと呼ばれるようになった。》p.30。ダムはそのうちのブレインに不時着した。
【クレイ】アルヴァ・クレイ。レスキューのスペシャリスト。トラブル・ドッグ乗員。攻撃的な性格。
【再生の家】救援活動を任務とする組織。「生命最優先」がモットー。人や艦を復活させてメンバーとしているようだ。ソフィア・ニキタスが創設した。現在トラブル・ドッグはここの所属。この任務のためには少々乗員数が少なすぎる気がするが…。日本もこういう(国際救助隊的)位置づけの国にでもなればもう少し世界で重視されるかもね。なれる能力はあると思うが。
【サリー・コンスタンツ】トラブル・ドッグ艦長。元外向派の衛生兵。ペラパターンではトラブル・ドッグとは敵同士だった。ホーボーという艦の救出をしていた最中、トラブル・ドッグが軍艦時代から軍医だったジョージ・ウォーカーを失った。
【ジェネラリティ】マルチ・プリシティの中のどうやら地球発祥の人類が分布するエリア。
【集塊派】コングロムレイション。外向派と敵対している。個人の富の重視、保守的、格差社会、どうやら現在のアメリカの後継者とでも言える思考のようだ。
【重力発生装置】トラブル・ドッグに搭載されていて通路や床がちゃんと歩ける。僕らの世界のリアルでは宇宙船での人工重力そのものは遠心力で作れると思うがそうでなしに重力を発生することはできないのではないかと思われる。強いて言えば、滅茶苦茶重い物体を覆うように地球サイズの宇宙船を作れたら可能かもしれないけど。
【人類】トラブル・ドッグ《ぼくにわかるかぎりでは、人類というのは同時にふたつか三つのことしか考えることができない。できて六つだ。》p.44。それに対してぼくは船じゅうを常にチェックしていると。
【ソフィア・ニキタス】サリー・コンスタンツの母方のひいひいお祖母さん。月で生まれ16歳から姿を消す45歳までの間に《一千光年以上を旅し、百以上の異なる世界の砂と土に足跡を残した。その途中で、再生の家の設立者になった。》p.78。サリーは彼女の話をトラブル・ドッグに語り聞かせてもらうのが好きだ。
【大理石無敵艦隊】炉辺者の艦隊。指導者を失い隠れていた。
【ダム】たぶんヒースト・ファン・アムステルダムのこと。オナ・スダクの乗っていた定期客船。ギャラリー星系で何者かの攻撃を受け惑星のひとつに不時着。トラブル・ドッグが救援に向かう。
【チチョル】あまりにも辺鄙な星。アシュトン・チャイルドがいる。
【超光速航行】この作品ではワームホールを利用するようだ。個人的には、僕らの宇宙ではどんな知的生命体がいても超光速航行は永久に不可能で、他の知的生命体に遭遇することも他の恒星系に移住することもできないんではないかと思ってるのだけどどうなんでしょうね? ちなみに地球人外知的生命体自体は存在するだろうと思っているけど彼らによるいわゆるUFOはあり得ないと思ってます。いくらメンタリティが異なったとしても知的生命体ならああいう近寄り方をするとは思えないので。また、地球人が存在する期間が他の知的生命体の存在する期間とバッチリタイミングが合うという状況も想像しにくい。
【月】オナ・スダク《月明かりはそれ自体の特徴をもっている。独自の質感があるの》p.211。
【敵】〈無敵艦隊〉が恐れている存在。戦いを続けていたらそれに惹かれいずれやって来ると思われる。
【ドラフ族】小柄で孤独を好み気難しく政治に関心がなく青い皮膚の雌雄同体の生物で、機械と電子工学について優秀であらゆる艦に搭乗している。顔がいくつもあるようだ。「世界樹」から生まれ世界樹に帰る? 個であり全であるタイプか。たぶん、いちばん「わかってる」存在。
【トラブル・ドッグ】ペラパターンの大虐殺を実行したカーニヴォールの一隻。おそらくそれが原因で戦争に嫌気が差し退役、再生の家に入り、現在は救助艦として贖罪の任務を続けている。一人称は「僕」。艦長のサリー・コンスタンツは「彼女」と言っている。アバターは性別が曖昧に作られている。表紙カバー絵の人物はこのアバターだろう。右上にいるのが艦そのものだろう。AIには瀕死の女性兵士から採取された幹細胞と犬の遺伝子を取り入れている。ボディは機械だが少女であり狼でもある。乗員は軍艦だったときは307名、現在は艦長のサリー・コンスタンツ、レスキューのスペシャリストであるアルヴァ・クレイ、機関士のノッド(ドラフ族)、船医のジョージ・ウォーカーが殉職したので後にプレストン・メンデレス。超光速航行のときはワームホールを利用するようで、通常空間では核融合推進のようだ。
【ノッド】トラブル・ドッグの機関士。ドラフ族。彼の章は詩のような感じ。《すべてのものは修理可能/たぶん人間でさえも》p.449。
【ヒースト・ファン・アムステルダム】→ダム
【フェンリル】トラブル・ドッグの姉妹艦。
【プレストン・メンデレス】ジョージ・ウォーカーの代わりにトラブル・ドッグの衛生兵となった。ほぼ素人。ただの神経質な青年。24歳。第一声が「なんて骨董品なんだ」だったのでいつか艦に仕返しされるだろう。夜驚症。《ぼくはひとりに対応できない》p.227。
【ペラパターン】集塊派による無差別大虐殺が行われた惑星。直接命令を下したのはアネリダ・ディール艦長。知性ある木の森があったと書かれている、一種の聖域になっていたのかもしれない。
【ホーボー】なぜか海に沈没した外向派の偵察艦。その救援時のミス(というかうまくいかなかった出来事)がサリー・コンスタンツを苦しめる。ダム襲撃の数日前、ダムと同様に艦が自らシャットダウンしたような感じがある(要するに、艦の自殺)。
【マルチ・プリシティ】星間連合のような感じ。
【メンデレス】アネリダ・ディール逃亡後の〈正義の憤怒〉艦長。アネリダ・ディールを守っていた勢力の筆頭で今でも彼女を「マム」と呼ぶ。プレストンの父で軟弱な息子を再生の家に放り込み厄介払いした。
【ラウラ・ペトルーシュカ】惑星チョルで外向派のエージェントをしている。アシュトンを「おまえ」と呼ぶ。敵対勢力に所属しているが殺し合ったりはせず、むしろ同士とすら言える。アシュトンとともにトラブル・ドッグに乗るがそのときの騒動で脚に怪我をする。
【レスティピディース】惑星。ドラフ族の出身惑星。
【炉辺者】失われたとされている種族。宇宙中に救いの手を差し伸ばしていたがあるとき不意にいなくなった。ソフィア・ニキタスが〈再生の家〉を設立する発想の素となった。
Posted by ブクログ
大量殺戮を行い軍務を離れたAIや傷を負った人物が話を回しているが迫るものが無かった
マーダーボットで苦手な表紙も克服せねばと思ったが残念
Posted by ブクログ
楽しいスペオペ。
異種族のノッドの詩的な語りとか、誰かが芸術的惑星改造をした星系とか、宇宙船の AI とか、もうギミックだけで楽しい。(^^
戦闘シーンもあるものの、基本的に人助けの団体に所属している船が舞台なので、戦闘ばっかりみたいな話より楽しいところが多いんじゃないかな。
AI の女の子も、ラノベにありがちな少女っていうよりは戦争のプロフェッショナルみたいな感じで好印象。
続き物の 1 作目だと言うことなので、続きが楽しみ。
あと、この作者の既訳の本を読んでいたってことをあとがきで知ってちょっとびっくりしました。
Posted by ブクログ
少女と犬の遺伝情報を持つ、14歳の戦闘用AIを宿す重巡洋艦、しかも退役しており人命救助を現在のミッションとしていて、極めつけは僕っ娘。マップスを彷彿とさせる設定(義体は出てこないけど)、癖のある登場人物たち、奇抜な天体の設定、シリアスな空気をまといつつ、いっそコミックがしっくり来そうな縦横無尽のスペースオペラ。三部作の第一部とのことで、今後が楽しみ