亡き夫・善助と営んでいた居酒屋「ぜんや」を一人で切り盛りする美人女将・お妙。
その妙にひそかに思いを寄せる、武家の次男坊・林只次郎。
林家の飯のタネ、鶯のルリオ。
そしてもちろん、美味しいごはん。
居酒屋なのは分かっているが、どうも、「つまみ」というより、「おいしいごはん」と言いたくなるような、家
...続きを読む庭的な雰囲気なのである。
妙は後家さんだが、湿ったところや隠微なイメージはどこにもない。
清潔で、ふんわり温かい…洗いたての白い手のひらのようなのである。
しかし、そこに不審な事件の影もちらつく。
読み終わってすぐに続きが読みたくなった。
すいません、次、いつ出ますか?
『花の宴』
花見に集まる男たち。
只次郎の兄嫁と、その父の、ちょっと温まるエピソード。
鯛茶漬け、桜餅。
『鮎売り』
騒動に巻き込まれ、転んで売り物のアユを落として傷めてしまった少女。
定価で売り切って帰らないと、兄嫁から叱られるというが、無論魚河岸の者たちは相手にしない。
鮎粥、花梨糖。
『立葵』
只次郎の長兄の娘…つまり姪のお栄はたいそう賢い。
学問をしたくてたまらないようでもある。
女に知恵が付くのを嫌う父や長兄には内緒で、只次郎は栄に勉強を教える決心をする。
武士の世の中も変わりつつあるのだ。
鴨丸ごと一羽使い切り料理。
捌くお妙さんがたくましい!
『翡翠蛸』
升川屋の妻・志乃の騒動再び。
しかし、まことに気持ちのいい(女性にとって)幕切れ。
上方では、土用は鰻ではなく蛸で決まり。
善助の姉・お勝から優しい言葉。
『送り火』
精進落としの穴子天。
只次郎の兄嫁・お葉の父、柳井。
まことにいい男であり、北町奉行所の吟味方与力としても有能だ。
この先も頼りにしたいものである。
…というのも不穏な影が…