保坂和志のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
既成の物語を拒否し新しい物語を作ろうとしている作者の心意気がびんびんと伝わってくる。交響曲のような作り込まれた音楽がミステリーなどの小説だとすると、保坂さんのそれはジャズ。だからルールは決めるけどどのように展開していくかは考えない。不幸なことを寸分も感じさせないとか、読みやすさを拒絶するとか、そういった方法論は面白いが、書きあぐねてる人の参考になるかというと疑問。彼のやり方を参考にして書けば、それはそれで保坂さんの真似と捉えられるような気がする。「入門」というタイトルとはかけ離れた独自の非常に高度な論だと思う。タイトルが相応しくないので、ちょっと星を少なくした。
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Posted by ブクログ
「小説家による小説論。本編とあとがきの二つに分かれた構成。【本編】小説を書くこととは、と心構えからはじまる。技術指南本ではなく小説に向き合う姿勢についてのエッセーに近い。①何を書く②誰を書く③風景を書く④ストーリーを書く⑤テクニックについて【あとがき+創作ノート】保坂和志氏が実際に執筆した際の創作ノート。」という趣旨。以下印象的な箇所の引用。一字一句正確にしるすというよりわたしの曖昧な印象を個人用メモ。感想については後述。
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p98.登場人物の心理が変化することが小説内での正確な意味での「時間」であり、それはストーリーに勝る。
p143.風景を書くことで文体が生まれる。取捨選択が行わ -
Posted by ブクログ
「生きる歓び」「小実昌さんのこと」の2編収録。
「小実昌さんのこと」に橋本治に恋愛論の講演を依頼したエピソードが出ているけれど(後に本にもなってて読んだのに、あんまり覚えてない)、そういえば橋本治も『生きる歓び』という同名の小説(短編集)を出していたっけ。近々、ちょっと読み返したいかも(やはりあまり覚えていない)。誕生日のお祝いにもらったんだよな。
P57 死ぬというのは「やっぱりなあ……」と思う。「やっぱり」のあとに何がつづくのが一番いいのかわからないけれど、つまりは生きている側から一方的に輪郭を与えられてしまう。
P101 八八年のバブルの真っ最中にぼくは、ビジネスマン向けの講座で「組 -
Posted by ブクログ
スタバに入り、薄いわりには、あまり、すぐに読み飛ばせない保坂和志の『私という演算』の仕上げに、目にいい、ブルーベリージュースを頼んで、取りかかった。
小一時間ほど、集中して、この小説とも評論ともつかぬ不思議な本を読み終えた。傍線をひいたところを、ぱらぱらと見返してみた。小津安二郎の『秋刀魚の味』を語る文章にひいた傍線が浮き上がって見えた。
「好き嫌いというのは出来の善し悪しのように判断の根拠が明確にしやすいものではないから、伝えようとするとかえって難しいし、今ここで好きの理由を書くつもりはないけれど、とにかく『秋刀魚の味』が特別好きで、小津安二郎の他の映画よりもずっと多く繰り返し見ている。