保坂和志のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
この著者の小説論を読んでいると、ほとんどマゾ的な快感を覚える。今までの自分の小説の読み方が全否定されている気持ちになるからだ。文体、印象、構造などはどうでもよく、大事なのは言葉の「現前性」、小説じたいがもつ「能産性」だという。そのうえで著者は情景描写とそこでの視線の運動に着目するのだが、その例証の手つきがすばらしい。特に情景描写を読む態度によって読者が二つにタイプ分けされ、それぞれのタイプによって「いい文章」の定義が違ってくるという主張は説得的だった。『フランドルの冬』(クロード・シモン)と『告白』(アウグスティヌス)を今まで面白いと思えなかった自分が恥ずかしい。読めていなかったのだ。
-
Posted by ブクログ
ネタバレネットに情報が溢れ出る昨今。考えないでもわかった気になる時代である。そんな時代だからこそ読みたい一冊だ。第一講から、思考に「公式」は役に立たない、「わかった」と思わずに考え続ける、とくる。
実に多くのテーマを論考しているが、一貫して流れているテーマは、『学問は「頭」でするものではない、本当は情緒でやるものだ』という岡潔の言葉に集約されていると思う。保坂和志の文章は実に論理的なのだが、一方で「文体とはペンの動きやためらいである」とか、「小説を書くことは、最初の何フレーズかのメロディが与えられればあとは即興を引き続けられるっていうのに近いようなイメージ」であるとか、「辺縁的な観念を大事にする -
Posted by ブクログ
たとえば村上春樹に「何枚レコード持ってます?」って訊いて、「ずいぶんたくさんあるみたいだ。しかしまだ十分ではないとしか答えようがない」って云われて、「は?なに言ってんのおまえ」ってなったとします。
そんな村上春樹ってどんな思考回路してんのかを、噛み砕いて言語化してくれたような、そんなイメージの本です。
「考える」こととは、いつも決断を下すためにあるのではない。出来事をあるがままに一旦受け止める。本能的に感じた違和感を逃さない。いかにも正論だったり、あまりにも理にかなってたりすることに対して素朴な疑問を持つ。そもそも「意味」って何?みたいな疑問も持つ。ようなことをいうのではないかしらと思いまし -
Posted by ブクログ
「生きる歓び」はまあいい
表題作はまあ冒頭がいいが、だんだん鮮烈な印象もなくなって平坦な道を進んでいくにすぎない。退屈しきる前に終るのが良い。
こみまささんの追悼小説のほうは、正直宗教的といふか、保坂氏以外には意味をなさないものである。
だらだらした文体は、結局エッセーのやうに小説を読める程度の利点しかないので、肝腎のエッセーがつまらなければ元も子もない。さういふ発見ができた短篇集だった。
要するに、表題作は猫の生き死にに関はってゐるのでまだサスペンスだが、こみまささんの方はただの思ひ出話である。
なほ、岡本太郎の強烈性にふれた箇所があった。保坂が美術館に同行して「くだらん!」 -
-
Posted by ブクログ
テクニックが書かれた本ではなく、小説に対する向き合い方や考え方が中心。
なので、技術を期待している人にはおすすめ出来ない。
参考になる点もあれば、そういう考えもあるね、だったり、別にそうは思わんが、といったものもあり、全体として肯定的、否定的に見えたのが半々といったところ。
面白いところとして、結果ではなく過程、細部に重きを置く考えが新鮮で一番印象深い。小説としての面白さが道中あればストーリーは不要といった考えで、確かに振り返ったときの読書体験としての良さは、そっちなのかもしれないと思った。村上春樹を思い出す。
残念なところとして、個人的な印象だが少々、古臭い感じがした。末尾のページを見る -