保坂和志のレビュー一覧
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書きあぐねているわけではなく、別に小説を書こうともしていない会社員だが、ここで書かれていることは、小説に限らない表現全般、あるいは「表現」とは言わない仕事にも当てはまるような気がしていて、時々本棚から引っ張り出して再読してしまいます。
「…『自分にとって』と言うときの『自分』が、小説を書くためのいちばんの障害なのだという風に考えてみてほしい。ここで、『自分にとって』と言った人の『自分』とは、一つの作品を書く前と書き終わった後で変わっていない『自分』のことでしかな」い。(P.196)「…一度書き終わった作品にこだわらず、同じモチーフにもこだわらずに『次へ』『次へ』と行ってみる過程できっとわかるは -
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ネタバレ弟子の高橋くんからいただいた。
保坂和志の本は『季節の記憶』を読んだことがある。当時住んでいた下北沢でできたばかりのヴィレッジヴァンガードですごい山積みで売られていて、絶対に読んで欲しいという力強いポップがあって思わず買った。そんな記憶が鮮明に残っているのだけど、内容はさっぱり思い出せない。
創作に関する本はたいてい面白くて、この本も面白かった。具体的なメソッドよりも、より大事な心構えについてたっぷり書かれている。「小説とは一体何か、常に問いかけろ」というような内容で、それは漫画でも言えることだ。しかし、そんなことは全く気にしたことがない。気にしていたらここまでやってこれなかったかも -
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6人の作家さん毎に色が異なる厚手の紙の本。
写真はもちろんカラー。
角田光代さん
「トト」は2冊フォトエッセイを読んだので知ってる。
「トトが来る前は自分中心で、辛いことがあると全身で向かい合っていたのでしんどかった。」が、
「トトが来てからは、とりあえずトトにご飯をあげなきゃ、といった気持ちの逃し方ができた。」そうだ。
角田さんは犬が好きで、「トト」は犬の要素を持っていると言っていたのを思い出した。
他の猫よりも人懐っこいのかな。
村山由佳さん
猫が大好きなんですね。
「もみじ」に対する想いは尋常ではなく、エッセイを何冊も出しているみたい。
「もみじ」の生まれる瞬間にも立ち会ってるし、亡 -
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ネタバレ4編の作品とあとがき。
(あとがきも素敵な作品だった)
これらはエッセイだと思う。
「、」は「読点」でいいのだっけ? この「、」の打ち方が独特なので、最初は読みにくい感じがした。そのうち慣れた。
表紙の写真がすてき。著者に寄り添って立つ花ちゃん。とてもかわいい三毛猫さんだ。
私は猫と長いこと暮らしているので、「かわいい〜」「癒やされる〜」だけではないと知っている。
生き物なので、老いるし病気もする。家はボロボロになるし手間もかかる。それが猫だもの。
存在してるだけでかわいい。いとおしい。美しい。
安心して暮らせるように心を込めている、つもり。
この著者が、本当に猫たちを愛して一緒に生き -
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読んだのは単行本の方だが…まぁ、いいか…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
昔の保坂氏の本よりも読みやすかったような気が…前はパソコンで原稿書いていたらしいが、今では手書きに変えたんだとか…ネコメンタリーという番組でおっしゃっていましたが…それの影響もあるのかもしれませんね。→読みやすさ 社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
どこがどうと言うよりも、なんだか小説よりもエッセイみたいな内容なんですけれども、それでもイイですね! 内容よりも文章を味わうような、そんな小説かもしれないですね…。
文章の意味よりも、リズムだとかそういうものを味わってほしいみたいな…あとがきにはそんな内容が書 -
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ネタバレ片目がなく瀕死だった三毛猫の「花ちゃん」が著者に拾われ、18年生きて亡くなった。
様々な飼い猫たちの看取りと見送り。
猫かわいがりなのに感情が駄々洩れているわけでなくどこか遠い。
ベレーのお帽子を乗っけたような柄の花ちゃんが著者の足元で表紙写真に写っている。赤ん坊のころに膿を押し出し目薬を点して必死に治したという片目の目力は強い。
「こことよそ」を収録したことで著者が企図した「気まま。」という雰囲気が出ている。
P47 短い命を生きることだけがチャーちゃんちゃんのしたことで、短い命の子は言葉を残さず、最後の呼吸で月を見上げて鳴いたらそれっきり飛び散って、光や風や波になる、姿も形も動作も残さず -
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「ハレルヤ」「十三夜のコインランドリー」「こことよそ」「生きる歓び」の四篇が収録されている。
本書のあとがきには「感動したことを書く、あるいは心が激しく動いたことを書く、この本に集めた小説はすべてそういうシンプルなものです。」と書かれている。
同じ著者による『未明の闘争』でも見られたような、文法的な逸脱や論理の飛躍が本書ではより多く現れ、「融通無碍」という言葉が浮かぶ。
『未明の闘争』での逸脱や飛躍は、読者の意識を操作するための意図的なものだというようなことを保坂はどこかで書いていたと思うが、本書でのそれは、保坂がひたすら「心が激しく動いたことを書」こうとしたことから生じた副次的なものだと -
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Posted by ブクログ
猫が登場する穏やかな生活を描く保坂和志の小説作品の中でも殊更そのモチーフや作者自身に影響を与えてきたであろう花ちゃん、その別れを記した表題作とその他様々な人や猫やものとの別れを描いた短編2篇に加え、花ちゃんとの出会いとなった過去作『生きる歓び』の計4篇が収録。弱った花ちゃんを拾って世話して元気になり、「「生きることが歓び」なのだ。」と気付かせてくれた猫は神の如き祝福を作者や家族、そして小説の読者たちに与えてきた。その猫が神の近くへ旅立つことは悲しいことだけではなく、むしろ『ハレルヤ』と思わずにはいられない感触を我々にこれからも与えてくれるだろう。
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