新田次郎のレビュー一覧
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新田次郎の小説は昔よく読んだが、小説家としてこのような苦悩や葛藤を背負っていたとは思わなかった。
新田次郎と言えば一連の山岳小説が有名だが、小説を書くきっかけになったのは、「給料が少なかったので金を稼ぐため」で、本業である気象庁の仕事と小説執筆を両立させながらも、時に同僚から陰口を叩かれ傷ついていたこと。小説家一本に絞るために54歳で気象庁に辞職願を出したとき、本当は仕事を続けたいという気持ちから、不眠症になったということ。
「孤高の人」で、登山家と船の設計技師という2つを両立させていた加藤文太郎の描写に妙にリアリティがあったのは、作者のこうした背景があったからかもしれないと感じた。 -
Posted by ブクログ
新田次郎さんは、彼の小説と息子の藤原正彦さんのエッセーに書かれる素顔くらいしか知らなかったが、改めて読んでみると面白い経歴をお持ちである。気象庁に勤められて、満州まで行かれたのち、シベリアに抑留され、あの富士山レーダの建設を終えて、気象庁をやめて作家専業になる。東大出身の職員に囲まれながら、なかなか出世できない職場の中で、小説を書くという二足の草鞋を履き続けて、その両方に足跡を残すというのはなかなかできない。すごい人という言葉を超える内容がこの本にはあると感じた。
生活費のために小説を書き始めたとか、奥様(藤原ていさん)の本が売れたから触発されたとか書いてありますが、もともと文才に恵まれた血筋 -
Posted by ブクログ
ネタバレ歴史小説でした。
歴史小説って愛情だと思うんですよね。
作者さんが、どれだけその人物のことに愛情(興味)を持って調べて、その人物のことを形にしていくか……だと思うんです。
そういういみではこの小説は十分合格点でした。
でも、歴史小説なので、普段の小説を読むようについつい主人公に感情移入をしてしまって読むと、つらくなることがちょこちょこありました。
だって、歴史小説は絶対に主人公が勝つわけでもないし、いつかは登場人物が皆、死んでしまうんですもんね。
ちなみにこれはまだ、1冊目なので、武田信玄と名乗る前の「晴信」だった頃のお話です。
なので、そんなに人間が出来てもいないし(もちろ